たし)” の例文
だが大事にいたらずむことはたしかだ、と金太郎は、そく度を増してゆく自轉車の上で、何の問題を解くときのやうに冷せいすい理した。
坂道 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
「誰かの細工だらうよ、だが、長崎屋でないことだけはたしかさ、自分の店の名の入つた藥袋へ金を入れて人にやるのは變ぢやないか」
銭形平次捕物控:167 毒酒 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
わたしはそれがなんのことだかたしかにはわからなかった。とにかくあしたの夜明けにはしっかり気をっていなければならなかった。
見て呵々から/\と打笑ひ扨も能氣味哉よききみかな惡漢共わるものども逃失にげうせたりと云つゝ半四郎のそばに立寄是々氣をたしかに持れよと抱起だきおこして懷中の氣付を與へ清水を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かう申せばまた誤解呼ごかいよばはりをするかもしれねど、簡単に誤解呼はりをする以上の事実があるのを僕はたしかな人から聞いたのゆえだめに候。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
すぐにおわかりになったものとえ『フムその懐剣かいけんならたしかに彼所かしこえている。よろしい神界しんかいのおゆるしをねがって、取寄とりよせてつかわす……。』
あいちやんはふたゝおもつてつゞけました、『二十四時間じかんだつたわ、たしか、ハテ、それとも、十二時間じかんだつたかしら?わたしは——』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
すると金魚屋きんぎょやは、そのころ時刻じこくだつたら、パチンコにいたとこたえたから、井口警部いぐちけいぶはその実否じっぴを、平松刑事ひらまつけいじめいじてたしかめさせることにした。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
やがて鏑矢かぶらやがぶうんとおとててんで行きますと、たしかに手ごたえがあったらしく、きゅうくもみだれはじめて、中から
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
来客らいきゃくかもしれない。機会は今だと思った彼女は、あたりを見まわして、誰もいないことをたしかめると、つと木彫の日光陽明門の額の前に近よった。
什器破壊業事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
夜がけて、四隣あたりが静かな所為せゐかとも思つたが、念のため、右の手を心臓の上に載せて、あばらのはづれにたゞしくあたおとたしかめながらねむりに就いた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あの死骸しがいをとこには、たしかに昨日きのふつてります。昨日きのふの、——さあ、午頃ひるごろでございませう。場所ばしよ關山せきやまから山科やましなへ、まゐらうと途中とちうでございます。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
やつら、資本家しほんか将軍しやうぐんたしかにった!——だがおれたち、どんそくあへ労働者らうどうしゃ農民のうみんにとつてそれがなん勝利しやうりであらう
見知らぬ人の一人——たしかに紳士である——が聖壇所の方へ進んで行つた。式は始つた。結婚の意向の解明ときあかしは濟んだ。
しかあるひはこれがぼくさいはひであるかもれない、たゞぼくいまこゝろたしかに不幸ふかうと感じてるのである、これをさいはひであつたと知ることは今後こんごのことであらう。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「そんなことがあるものかね、歩いて行こうと駕籠で行こうと信心ごころさえたしかならねえ……それはそうとお前」
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
つひには中央ちゆうおうヨーロッパからきたヨーロッパにだん/″\ひろがつてつたといふことだけはたしかにわかるのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
あるおとうと咽喉のどがかわいて、みずしがったときに、まだ、そのときまでたしかだったあには、みずなか一粒ひとつぶ名薬めいやくれておとうとませようとしました。
村の兄弟 (新字新仮名) / 小川未明(著)
小石川こいしかは傳通院でんづうゐんには、(かぬかへる)の傳説でんせつがある。おなじかへる不思議ふしぎは、たし諸國しよこく言傳いひつたへらるゝと記憶きおくする。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これはもちろん空想くうそうである。しかしもしはえ絶滅ぜつめつするというのなら、その前に自分のこの空想の誤謬ごびゅう実証的じっしょうてきたしかめた上にしてもらいたいと思うのである。
蛆の効用 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
金庫きんこあし車止くるまどめをたしかにしてくこと。地震ぢしんのとき金庫きんこうごし、とびらがしまらなくなつたれいおほい。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
門を出た時、半分以上は顔をあかくしてゐた。中にも足元のたしかでない程に酔つたのは目賀田であつた。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ってしまうと、おんなむねきゅうかるくなりました。そしてたしかに自分じぶんねがいがとどいたようながしました。おんなうちはいりました。それから一つきつと、ゆきえました。
まへは、なぜそんなにいれずみがしてあるのか、といふ以上いじように、たしかな説明せつめい出來できひとがないのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
「山浦清麿といえば、新刀でも、近世の上手。たとえ小柄にしても安すぎる。——だが、たしかか」
野槌の百 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どうせあっしにはていまい。そう思っていれあたしかだ」鶴さんは鼻で笑いながら、後向になった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
この思いやりの心、むずかしく言えば博愛心、慈悲心、相愛心があれば世の中は必ず静謐せいひつで、その人々はたしかに無上の幸福によくせんこと、ゆめゆめ疑いあるべからずだ。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
わづかに五六ねん地上ちじやう此變化このへんくわである。地中ちちう秘密ひみつはそれでも、三千餘年よねんあひだたもたれたとおもふと、これを攪亂くわんらんした余等よらは、たしかに罪惡ざいあくであるとかんがへずにはられぬのである。
美濃みのの、神大根王かんおおねのみこという方のむすめで、兄媛えひめ弟媛おとひめという姉妹きょうだいが、二人ともたいそうきりょうがよい子だという評判をお聞きになって、それをじっさいにおたしかめになったうえ
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
きづゝたをれたのもすくなくない樣子やうすで、このすでに十二三ばかりすゝみて、海岸かいがんなる櫻木大佐さくらぎたいさ住家すみかからは、たしかに三十以上いじやうへだゝつたとおもはるゝある高山かうざん絶頂ぜつてうたつしたときには、そのかず餘程よほどげんじて
本線シグナルつきの電信柱は、すぐ四方に電報でんぽうをかけました。それからしばらく顔色をえて、みんなの返事へんじをきいていました。たしかにみんなから反対はんたい約束やくそくをもらったらしいのでした。
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
批評家ひひやうかがそれをうますぎると云つた爲めに、氏は巧すぎるといふ事が何故なぜいけないのだと云つたやうな駁論ばくろんを書いて居られましたが、たしかに巧すぎるといふ事丈けは否定ひてい出來ないと思ひます。
三作家に就ての感想 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
し七ぐわつ以前いぜんのやうな經濟状態けいざいじやうたいがそのまゝ持續ぢぞくしたならば、あの不安定ふあんていなる状態じやうたいすゝむにしたがつて益々ますます不安定ふあんていになつて、經濟界けいざいかい破壞はかいされるだらうとふことは、たしかな事實じじつかんがへてる。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
れしくるまたしかに香山家かやまけものなりとは、車夫しやふ被布はつぴぬひにもれたり、十七八とえしはうつくしさのゆゑならんが、年齡としごろむすめほかにりともかず、うはさの令孃ひめれならんれなるべし
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
揺れあがる波の平になりにけりしばしとどまり鴨のたしかさ
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「わたしはユッセルへ、おまえの話の真偽しんぎたしかめさせにやる」とかれは言った。「幸いそれが真実しんじつなら、あしたは放免してやる」
町内の本道は何んにも知りませんよ。主人の死んだのは、たしかに卒中で、これは間違ひはない、萬一見立て違ひなら、此坊主首を
するとおとこいたって志繰こころたしかな、やささしい若者わかもので、ほかおんななどにはもくれず、かたかた決心けっしんをしてることがよくわかりました。
あいちやんは心中しんちゆうすこぶ不安ふあんかんじました、たしかにあいちやんは女王樣ぢよわうさまとは試合しあひをしませんでしたが、何時いつ其時そのときるだらうと思つて居ました
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
前よりは一段とその物の存在をたしかにする意味になるから、客観的態度に重きを置いた叙述と云わねばなりません。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そして幻の女は、まちがいなくこの女であるとたしかめた。美枝子もはじめて会った彼に、たいへん熱情をよせた。
脳の中の麗人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あんな出來事があなたを過敏にすることはたしかですからね。それにあなたは獨りで寢ない方がいゝと思ひますから。子供部屋の方へ行くと約束なさいね。
筆致ひつちたしかなてん全體ぜんたいき/\してゐるところ、じつにこれがそんなふる一萬年前いちまんねんぜんにもちか時代じだい出來できたものであらうかと、たれうたがふのもむりはありません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
彼等かれらてんぷらをあいするやうに「しるこ」をもかならず——あいするかどうかは多少たしよう疑問ぎもんはあるにもせよ、かくおうはすすめて價値かちのあることだけはたしかであらう。
しるこ (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
あなたがたがこのうたからけるかんじは、たしかにさうした方面ほうめんおもなのだとかんがへてもらはねばなりません。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
土産物みやげもの女中ぢよちゆうむすめ分配ぶんぱいしてしまつた。彼等かれらたしかによろこんだ、しかぼくうれしくもなんともない。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
パトロンというのが、ころされた刈谷音吉かりやおときちじやないですか。こちらはあなたがあの老人ろうじんのところへ、つきに一かいか二かいよるになつてからくということをちやんとたしかめてあるのですが
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
今日こんにちではこの和名わめいをオランダミツバというから、すなわち菫はたしかにオランダミツバとせねばならなく、それがけっしてスミレではないことを、だれでも承知していなければならない。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
軍艦ぐんかん! このたしかに、日出雄少年ひでをせうねんある關係くわんけいつてるとしんじます。
ふ。さけこゑは、たしかに筋向すぢむかひの二階家にかいやの、軒下のきしたのあたりとおぼえた。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)