周圍まはり)” の例文
新字:周囲
かくの如く、これらの不朽の薔薇の二の花圈はなわはわれらの周圍まはりをめぐり、またかくの如く、その外の内の圈と相適あひかなひたり 一九—二一
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
「おい、どうしたんだい」と、その周圍まはりあつまりました。「またか。晝稼ひるかせぎになんかにるからさ。しつかりしろ、しつかりしろ」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
此世界このせかい地球ちきうとなまろきものにて自分じぶんひながら日輪にちりん周圍まはりまはること、これをたとへば獨樂こまひながら丸行燈まるあんどう周圍まはりまはるがごとし。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
すると……婦人をんな主人あるじふのは……二階座敷にかいざしきのないなかを、なまめかしいひと周圍まはりを、ふら/\とまはりめぐつた影法師かげぼふしとはちがふらしい。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
まづしい店前みせさきにはおほがめかふわに剥製はくせい不恰好ぶかっかううをかはつるして、周圍まはりたなには空箱からばこ緑色りょくしょくつちつぼおよ膀胱ばうくわうびた種子たね使つかのこりの結繩ゆはへなは
けれども三にんともあしうごかさない。そして五六にんおな年頃としごろ小供こどもがやはり身動みうごきもしないでばあさんたち周圍まはりいてるのである。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
或る日いつものやうに何心なく歸つて見ますと、弟は布團の上に突つ伏してゐまして、周圍まはりは血だらけなのでございます。
高瀬舟 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
棒の如く立つてゐた旅人は、驚いて周圍まはりを見た。そこはかとなき薄暗が曠野の草に流れてゐる。其顏には、いふべからざる苦痛が刻まれてゐた。
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
私が横に成つて、グウ/\鼾をかく眞似をすると、子供等は驚喜したやうに笑ひ乍ら、私の周圍まはりを𢌞つて居りました。
その時間には大部分の者が同じやうに縫ひものをやつてゐた。だが、一クラスだけは、スキャチャード先生の椅子の周圍まはりに立つて、相變らず本を讀んでゐた。
自分は父の身體を楯にして、其の周圍まはりを逃げ歩いたが、父は直ぐ座敷へ上つて了つたので、自分は更にかどの大きな柿の木の周圍をクル/\と𢌞つて逃げた。
父の婚礼 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
應接間おうせつまとほると、おほきな洋卓テーブル周圍まはり天鵞絨ビロードつた腰掛こしかけならんでゐて、あはしてゐる三四人さんよにんが、うづくまるやうあごえりうづめてゐた。それがみんなをんなであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「あれが鍋島だ。樹がよく茂つてるから、あの周圍まはりにはよく魚が寄つてると云ふぢやないか。」
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
其の周圍まはりには子供が大勢泣いたり、騷いだり、喧嘩したりしてゐる。さう云ふ狹い横町をば、包を持ち尻を端折はしをつた中年の男が幾人も、突當る人の中をいそがしさうに通つて行く。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
目の周圍まはりにいろんな隈をとつたりする遊女の厚化粧は決して此國の誇る趣味ではない。
巴里の旅窓より (旧字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
家の周圍まはりにズシンと落ちる椰子の實の音を聞いてゐる時に、突然思出されたものか。
「おゝてえまあ」群集ぐんしふなかから假聲こわいろでいつた。をどりれつ先刻さつきからくづれてごと勘次かんじとおつぎの周圍まはりあつまつたのである。おつぎはこのこゑくとともみだけた衣物きものあはつくろうた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
これつて人智じんちは、人間にんげん唯一ゆゐいつ快樂くわいらくいづみとなつてゐる。しかるに我々われ/\自分じぶん周圍まはりに、いさゝか知識ちしきず、かずで、我々われ/\全然まるで快樂くわいらくうばはれてゐるやうなものです。勿論もちろん我々われ/\には書物しよもつる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
平次は死體から離れると、板倉屋の家の周圍まはりを一と廻りしてみました。
家の周圍まはりの敷地の設計つくりは、昔の一定の形式に則つたもので、人工的な花壇や刈込んだ植込、一段高くなつてゐる平場テレス、どつしりした石造の手摺、(その上に裝飾の壺が置いてある)、銅像が一つ二つ
そは我かしこにて、魂を神に知らすものなる信仰に入り、後ピエートロこれが爲にかくわがひたひ周圍まはりをめぐりたればなり 一〇—一二
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
かんかん炎天えんてんにつツつて、うしがなにかかんがえごとをしてゐました。あぶがどこからかとんできて、ぶんぶんその周圍まはりをめぐつてさわいでゐました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
黒い角を生やした鬼が、超然と岩の上に坐つて、絞首臺の周圍まはりに群がつた群集を眺めてゐる繪も、さうだつた。
獨樂こまひながら行燈あんどう周圍まはりまはるはすなは地球ちきう公轉こうてんふものにて、行燈あんどう一廻ひとまはりまはりてもと塲所ばしよかへあひだに、春夏秋冬しゆんかしうとう時候じこうへんじ、一年をすなり。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
かんざしゆら氣勢けはひは、彼方あちらに、おぢやうさんのはうにして……卓子テエブル周圍まはりは、かへつて寂然ひつそりとなりました。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
屋根やねうへかくして、そらとほ小鳥ことりにつかないやうにしてあります。その小屋こや周圍まはりに、ほそ丈夫ぢやうぶいとんだ鳥網とりあみおほきなのが二つも三つもつてあるのです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
山高帽やまたかばうをとこにぎやかなまちすみに、ひややかに胡坐あぐらをかいて、周圍まはり何事なにごとおこりつゝあるかをかんぜざるものゝごとくに、えゝ御子供衆おこどもしゆう御慰おなぐさみとつては、達磨だるまふくらましてゐる。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
闇の中に目を閉ぢてゐても、辰男は絶えず周圍まはりの汚れた燒跡を頭に描き鼻で嗅いでゐた。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
智惠子は身の周圍まはりを取片附けると、改めて嬉しげな顏をして、『よく被來いらしつたわね!』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
黄蜀葵ねりはたけ周圍まはりつくられてみじかくきにはあつおほきな黄色きいろはなひらく。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
其後そのご院長ゐんちやうアンドレイ、エヒミチは自分じぶん周圍まはりもの樣子やうすの、ガラリとかはつたことやうやみとめた。小使こづかひ看護婦かんごふ患者等くわんじやらは、かれ往遇ゆきあたびに、なにをかふものゝごと眼付めつきる、ぎてからは私語さゝやく。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
かの使徒の光——我に命じて語らしめし——は、わが默しゝ時、直ちに歌ひて我を祝しつゝ、三たびわが周圍まはりをめぐれり 一五一—
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
いま云つたイライザやジョンやヂョウジアァナは、もう客間で、おかあさんのリード夫人の周圍まはりに集つてゐた。
つき此地球このちきう周圍まはりまはるものにて其實そのじつは二十七日と八ときにて一廻ひとまはりすれども、地球ちきうつきとの釣合つりあひにて丁度ちやうど一廻ひとまはりしてもとところかへるには二十九日と十三ときなり。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
ひとりで苦笑にがわらひして、迫上せりあがつた橋掛はしがかりをるやうに、谿川たにがはのぞむがごとく、いけ周圍まはり欄干らんかんづたひ。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
夕飯前に吾儕が温まりに行くと、湯槽の周圍まはりには大人や子供が居て、多少吾儕に遠慮する氣味だつた。吾儕は寧ろ斯の山家の人達と一緒に入浴するのを樂んだ。不相變あひかはらず、湯はぬるかつた。
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
がとつぷりとれたときかれ道端みちばた草刈籠くさかりかごおろした。其處そこにははたけ周圍まはり一畝ひとうねづつにつくつた蜀黍もろこしたけたかつてる。草刈籠くさかりかごがすつと地上ちじやうにこけるとき蜀黍もろこしおほきれてがさりとつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
これはもう周圍まはりものうよりみとめてゐるところで、只今たゞいまもドクトル、エウゲニイ、フエオドロヰチがふのには、貴方あなた健康けんかうためには、すべから氣晴きばらしをして、保養ほやうせん一とんければならんと。これ實際じつさいです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
地獄にマーレボルジェといふところあり、その周圍まはりを卷く圈の如くすべて石より成りてその色鐡に似たり 一—三
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
「はてな……それまたなんだつて、蜘蛛くもでもけるやうに、へん周圍まはり𢌞まはるんだ。」
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
私が今住む家は殆んど周圍まはりを音樂で取繞とりまかれて居るやうなところにあります。
周圍まはりに、いほどいて、黒人くろんぼ召使めしつかひが三にんで、つゝしんで給仕きふじいてところ
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
無邪氣な唱歌が私の周圍まはりに起りました。私は二人の子供を側へ呼びまして
ところ旦那樣だんなさま別嬪べつぴんさんが、うやつて、手足てあし白々しろ/″\座敷ざしきなかすゞんでなさいます、周圍まはりを、ぐる/\と……とこからつぎ簀戸よしどはううらから表二階おもてにかいはうと、横肥よこぶとりにふとつた
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
榎木えのきしたには、あかちひさなたまのやうなが、そこにも、こゝにも、一ぱいちこぼれてました。とうさんは周圍まはりまはつて、ひろつても、ひろつても、ひろひきれないほど、それをあつめてたのしみました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
うしてつちてからも、しま周圍まはりに、そこからえて、みきばかりも五ぢやう、八ぢやう、すく/\とみづからた、れない邪魔じやまつて、ふねけること出來できないで、うみなかもりあひだを、しほあかりに
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あいにくかぜつよくなつて、いへ周圍まはりきまはるゆきが、こたつのしたふきたまつて、パツとあかりさうで、一晩ひとばんおびえてられなかつた。——下宿げしゆくかへつた濱野はまのさんも、どうも、おち/\られない。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)