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可愛
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かはい
ふりがな文庫
“
可愛
(
かはい
)” の例文
成金のお客は勿論、当の薄雲太夫にした所で、そんな事は夢にもないと思つてゐる。
尤
(
もつと
)
もさう思つたのも
可愛
(
かはい
)
さうだが無理ぢやない。
南瓜
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
可愛
(
かはい
)
さうに
景氣
(
けいき
)
のよい
聲
(
こゑ
)
、
肺臟
(
はいざう
)
から
出
(
で
)
る
聲
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
いたのは十
年
(
ねん
)
ぶりのやうな
氣
(
き
)
がして、
自分
(
じぶん
)
は
思
(
おも
)
はず
立上
(
たちあが
)
つた。
見
(
み
)
れば
友人
(
いうじん
)
M君
(
エムくん
)
である。
湯ヶ原ゆき
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
ことの
起原
(
おこり
)
といふのは、
醉漢
(
ゑひどれ
)
でも、
喧嘩
(
けんくわ
)
でもない、
意趣斬
(
いしゆぎり
)
でも、
竊盜
(
せつたう
)
でも、
掏賊
(
すり
)
でもない。
六
(
むつ
)
ツばかりの
可愛
(
かはい
)
いのが
迷兒
(
まひご
)
になつた。
迷子
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「たかが一本の竹といふが、わしには、竹も
雀
(
すずめ
)
も
猫
(
ねこ
)
も人の子も、みな同じやうに
生命
(
いのち
)
のある、
可愛
(
かはい
)
いものに思はれてのう。」
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
湾内の水は
草色
(
くさいろ
)
の
氈
(
かも
)
を敷き詰めた如く、大小幾百の船は
玩具
(
おもちや
)
の様に
可愛
(
かはい
)
い。概して鳥瞰的に見る都会や港湾は美でないが、
此処
(
ここ
)
のは反対に美しい。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
▼ もっと見る
さうして私も雅さんと一処に肩身が狭くなりたいのですから。さうでなけりや、子供の内からあんなに
可愛
(
かはい
)
がつて下すつた雅さんの
尊母
(
おつか
)
さんに私は済まない。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
子鶉
(
こうづら
)
は急いで巣に帰つてみますと、案の定、母鶉は
可愛
(
かはい
)
い自分の独り子の
行衛
(
ゆくゑ
)
が知れなくなつたので大変心配して、もう物も
喰
(
た
)
べられないで、ねてをりました。
孝行鶉の話
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
可愛
(
かはい
)
い子供に死なれでもしたら、自分は世の中に一人ぽつちになつてしまつて、何の楽しみもなくなるのです。で、夜も昼もつきつきりで子供の看病をしました。
シャボン玉
(新字旧仮名)
/
豊島与志雄
(著)
とそんな意味の事を酔つて高飛車に云ふのだ。それを張の副官のやうな男の面前でもやるのだから一寸乱暴ぢやないか。息子がよほど
可愛
(
かはい
)
くて仕方がないのだらう。
南京六月祭
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
子
(
こ
)
だから
可愛
(
かはい
)
いが、いけないことがあると
叱
(
しか
)
りもすれば
勘當
(
かんだう
)
もする。
事
(
こと
)
によつたら
殺
(
ころ
)
すかも
知
(
し
)
れない。
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
『本當に、なんて
可愛
(
かはい
)
んでせう、どこつてかけた所のない、この肌の氣持のいゝこと。』
珠
(旧字旧仮名)
/
素木しづ
(著)
墓場の
薔薇
(
ばら
)
の花、
屍體
(
したい
)
から出た若い
命
(
いのち
)
、墓場の
薔薇
(
ばら
)
の花、おまへはいかにも
可愛
(
かはい
)
らしい、
薄紅
(
うすあか
)
い、さうして美しい
爛壞
(
らんゑ
)
の
薫
(
かをり
)
神神
(
かうがう
)
しく、まるで生きてゐるやうだ、
僞善
(
ぎぜん
)
の花よ、
無言
(
むごん
)
の花よ。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
併し、慣れるに
伴
(
つ
)
れて、
骨
(
こつ
)
を
呑
(
の
)
み込んで了ふと、すべてが御し
易
(
やす
)
くなつて来た。見物といふものも初めは恐かつたが今は
可愛
(
かはい
)
くなつた。彼は彼等の心もちを自由に浮沈させる事が愉快になつて来た。
手品師
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
伯母
(
をば
)
さんは子供の
頃
(
ころ
)
自分をば非常に
可愛
(
かはい
)
がつて
呉
(
く
)
れた。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
紙の袋をかむつた林檎の姿も
亦
(
また
)
中々
可愛
(
かはい
)
いものです。
果物の木の在所
(新字旧仮名)
/
津村信夫
(著)
私はあの方を
可愛
(
かはい
)
く思つてをります。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
とんぼ
可愛
(
かはい
)
や
雨情民謡百篇
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
越
(
こ
)
しての
肩縫
(
かたぬひ
)
あげ
可愛
(
かはい
)
らしき
人品
(
ひとがら
)
なりお
高
(
たか
)
さま
御覽
(
ごらん
)
なされ
老人
(
としより
)
なき
家
(
いへ
)
の
埒
(
らち
)
のなさ
兄
(
あに
)
は
兄
(
あに
)
とて
男
(
をとこ
)
の
事
(
こと
)
家内
(
うち
)
のことはとんと
棄物
(
すてもの
)
私一人
(
わたしひとり
)
が
拍
(
う
)
つも
舞
(
ま
)
ふもほんに
埃
(
ほこり
)
だらけで
御座
(
ござ
)
いますと
笑
(
わら
)
ひて
誘
(
いざな
)
ふ
座蒲團
(
ざぶとん
)
の
上
(
うへ
)
おかまひ
遊
(
あそ
)
ばすなと
沈
(
しづ
)
み
聲
(
ごゑ
)
にお
高
(
たか
)
うやむやの
胸
(
むね
)
の
關所
(
せきしよ
)
たれに
打明
(
うちあ
)
けん
相手
(
あひて
)
もなし
朋友
(
ともだち
)
の
誰
(
た
)
れ
彼
(
か
)
れ
睦
(
むつ
)
まじきもあれどそれは
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
此
(
こ
)
のね、
可愛
(
かはい
)
らしいのが、
其
(
そ
)
の
時
(
とき
)
の、
和蘭陀館
(
オランダやかた
)
の
貴公子
(
きこうし
)
ですよ。
御覽
(
ごらん
)
、——お
待
(
ま
)
ちなさいよ。
恁
(
か
)
うして
並
(
なら
)
べたら、
何
(
なん
)
だか、もの
足
(
た
)
りないから。
印度更紗
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
しばらく四人は、鹿の仔のまはりに立つて
眺
(
なが
)
めてゐた。栄蔵はそれが
可愛
(
かはい
)
くてたまらなかつた。小さな鼻の先が、黒くぬれてゐるのも可愛かつた。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
上着
(
うはぎ
)
は
白天鵞絨
(
しろびろうど
)
、眼は
柘榴石
(
ざくろいし
)
、それから手袋は桃色
繻子
(
じゆす
)
。——お前たちは皆
可愛
(
かはい
)
らしい、支那美人にそつくりだ。
動物園
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「あれ、
可愛
(
かはい
)
い鳥が出て来てなくよ。あの鳥はお時計のどこにゐるの。」と、腕白な一郎がきゝました。
鳩の鳴く時計
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
私のやうなものでも
可愛
(
かはい
)
いと思つて下さるなら、財産を
遺
(
のこ
)
して下さる
代
(
かはり
)
に私の意見を聴いて下さい。意見とは言ひません、私の願です。一生の願ですからどうぞ聴いて下さい
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
それから感情が
鎮
(
しづ
)
まると、「これも皆お前が
可愛
(
かはい
)
いからだ」といふやうな愚痴を、わたしはしきりと説いた。
酔醒
(
ゑひざめ
)
の風が冷いやうに、娘の心の離反に対する不安がわたしには冷かつた。
愚かな父
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
可愛
(
かはい
)
い一人娘を棄てるやうにして千代松に呉れたのである。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
木犀
(
もくせい
)
、
可愛
(
かはい
)
い
從姉妹
(
いとこ
)
の匂、子供の戀、眞味を飾る
微笑
(
ほゝゑみ
)
。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
可愛
(
かはい
)
の人よ
おさんだいしよさま
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
可愛
(
かはい
)
いこの
一族
(
いちぞく
)
は、
土手
(
どて
)
の
續
(
つゞ
)
くところ、
二里
(
にり
)
三里
(
さんり
)
、
蘆
(
あし
)
とともに
榮
(
さか
)
えて
居
(
ゐ
)
る
喜
(
よろこ
)
ぶべきことを、
日
(
ひ
)
ならず、やがて
發見
(
はつけん
)
した。——
房州
(
ばうしう
)
へ
行
(
ゆ
)
く
時
(
とき
)
である。
木菟俗見
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「や、たつぷん、ちやつぽん。」と松さんは、
戯謔
(
おどけ
)
て口真似した。そして「
可愛
(
かはい
)
らしい音だなァ。」といつた。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
刃
(
やいば
)
に貫き、水に
溺
(
おぼ
)
れ、貴様はこれで苦くはなかつたか。
可愛
(
かはい
)
い奴め、
思迫
(
おもひつ
)
めたなあ!
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
生際
(
はえぎは
)
の
白粉
(
おしろい
)
が薄くなつて、健康らしい皮膚が、黒く顔を出してゐる
丈
(
だけ
)
でも、こつちの方が
遙
(
はるか
)
に頼もしい気がする。子供らしくつて
可愛
(
かはい
)
かつたから、体操を知つてゐるかいと
訊
(
き
)
いて見た。
京都日記
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
寮長は
顎髯
(
あごひげ
)
を上に向け、南画のなかの人物のやうに背中を丸くして、一心に
凝視
(
みつ
)
めてゐた。強度の近眼でよく見ようとする努力のために、今年の芽を
可愛
(
かはい
)
く
萌
(
ふ
)
いてゐる花床を知らず/\踏んでゐた。
朧夜
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
可愛
(
かはい
)
帽子
未刊童謡
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
眞白
(
まつしろ
)
な
腕
(
うで
)
について、
綿
(
わた
)
がスーツと
伸
(
の
)
びると、
可愛
(
かはい
)
い
掌
(
てのひら
)
でハツと
投
(
な
)
げたやうに
絲卷
(
いとまき
)
にする/\と
白
(
しろ
)
く
絡
(
まつ
)
はる、
娘心
(
むすめごころ
)
は
縁
(
えにし
)
の
色
(
いろ
)
を、
其
(
そ
)
の
蝶
(
てふ
)
の
羽
(
は
)
に
染
(
そ
)
めたさう。
一席話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
はじめから、
形
(
かたち
)
と
云
(
い
)
ひ、
毛色
(
けいろ
)
と
云
(
い
)
ひ、
剩
(
あまつさ
)
へ
其
(
それ
)
が、
井戸川
(
ゐどがは
)
の
橋
(
はし
)
の
欄干
(
らんかん
)
で、
顏洗
(
かほあら
)
ひを
遣
(
や
)
つて
居
(
ゐ
)
た
猫
(
ねこ
)
と
同一
(
おなじ
)
ことで、
續
(
つゞ
)
いては、お
春
(
はる
)
の
可愛
(
かはい
)
がつた
黒
(
くろ
)
にも
似
(
に
)
て
居
(
ゐ
)
る。
二た面
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
まあ
那樣事
(
そんなこと
)
は
措
(
お
)
いて、
其時
(
そのとき
)
船
(
ふね
)
の
中
(
なか
)
で、
些
(
ちつ
)
とも
騷
(
さわ
)
がぬ、いやも
頓
(
とん
)
と
平氣
(
へいき
)
な
人
(
ひと
)
が
二人
(
ふたり
)
あつた。
美
(
うつく
)
しい
娘
(
むすめ
)
と
可愛
(
かはい
)
らしい
男
(
をとこ
)
の
兒
(
こ
)
ぢや。
※弟
(
きやうだい
)
と
見
(
み
)
えてな、
似
(
に
)
て
居
(
ゐ
)
ました。
旅僧
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
お
秋
(
あき
)
が
納戸
(
なんど
)
に
居
(
ゐ
)
た
姿
(
すがた
)
を、
猛然
(
まうぜん
)
と
思出
(
おもひだ
)
すと、
矢張
(
やつぱ
)
り
鳴留
(
なきや
)
まぬ
猫
(
ねこ
)
の
其
(
そ
)
の
聲
(
こゑ
)
が、
豫
(
かね
)
ての
馴染
(
なじみ
)
でよく
知
(
し
)
つた。お
秋
(
あき
)
が
撫擦
(
なでさす
)
つて、
可愛
(
かはい
)
がつた、
黒
(
くろ
)
、と
云
(
い
)
ふ
猫
(
ねこ
)
の
聲
(
こゑ
)
に
寸分
(
すんぶん
)
違
(
たが
)
はぬ。
一席話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
可哀
(
かはい
)
さうな、
氣
(
き
)
の
毒
(
どく
)
らしい、あの、しをらしい、
可愛
(
かはい
)
い
蟲
(
むし
)
が、
何
(
なん
)
にも
知
(
し
)
つた
事
(
こと
)
ではないんですけれど、でも
私
(
わたし
)
、
鉦
(
かね
)
たゝきだと
思
(
おも
)
ひますだけでも、
氷
(
こほり
)
で
殺
(
ころ
)
して、
一筋
(
ひとすぢ
)
づゝ
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「それ/\、お
冠
(
かんむり
)
の
通
(
とほ
)
り、
嘴
(
くちばし
)
が
曲
(
まが
)
つて
來
(
き
)
ました。
目
(
め
)
をくる/\……でも、
矢張
(
やつぱ
)
り
可愛
(
かはい
)
いねえ。」
印度更紗
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
楕圓形
(
だゑんけい
)
の
葉
(
は
)
は、
羽状複葉
(
うじやうふくえふ
)
と
云
(
い
)
ふのが
眞蒼
(
まつさを
)
に
上
(
うへ
)
から
可愛
(
かはい
)
い
花
(
はな
)
をはら/\と
包
(
つゝ
)
んで、
鷺
(
さぎ
)
が
緑
(
みどり
)
なす
蓑
(
みの
)
を
被
(
かつ
)
いで、
彳
(
たゝず
)
みつゝ、
颯
(
さつ
)
と
開
(
ひら
)
いて、
雙方
(
さうはう
)
から
翼
(
つばさ
)
を
交
(
かは
)
した、
比翼連理
(
ひよくれんり
)
の
風情
(
ふぜい
)
がある。
人魚の祠
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
晝間
(
ひるま
)
あのお
春
(
はる
)
が
納戸
(
なんど
)
に
絲
(
いと
)
を
繰
(
く
)
つて
居
(
ゐ
)
る
姿
(
すがた
)
を
猛然
(
まうぜん
)
と
思出
(
おもひだ
)
すと、
矢張
(
やつぱ
)
り
啼留
(
なきや
)
まぬ
猫
(
ねこ
)
の
其
(
そ
)
の
聲
(
こゑ
)
が、
豫
(
かね
)
ての
馴染
(
なじみ
)
でよく
知
(
し
)
つた、お
春
(
はる
)
が
撫擦
(
なでさす
)
つて
可愛
(
かはい
)
がつた
黒
(
くろ
)
と
云
(
い
)
ふ
猫
(
ねこ
)
の
聲
(
こゑ
)
に
寸分
(
すんぶん
)
違
(
ちが
)
はぬ。
二た面
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
否
(
いゝえ
)
、つゞれさせぢやありません。
蟋蟀
(
こほろぎ
)
は、
私
(
わたし
)
は
大
(
だい
)
すきなんです。まあ、
鳴
(
な
)
きますわね……
可愛
(
かはい
)
い、
優
(
やさ
)
しい、あはれな
聲
(
こゑ
)
を、
誰
(
だれ
)
が、
貴方
(
あなた
)
、
殿方
(
とのがた
)
だつて……お
可厭
(
いや
)
ではないでせう。
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
其
(
その
)
時
(
とき
)
は、
其
(
その
)
下蔭
(
したかげ
)
は
矢張
(
やつぱり
)
こんなに
暗
(
くら
)
かつたが、
蒼空
(
あをぞら
)
に
日
(
ひ
)
の
照
(
て
)
る
時
(
とき
)
も、と
然
(
さ
)
う
思
(
おも
)
つて、
根際
(
ねぎは
)
に
居
(
ゐ
)
た
黒
(
くろ
)
い
半被
(
はつぴ
)
を
被
(
き
)
た、
可愛
(
かはい
)
い
顏
(
かほ
)
の、
小
(
ちひ
)
さな
蟻
(
あり
)
のやうなものが、
偉大
(
ゐだい
)
なる
材木
(
ざいもく
)
を
仰
(
あふ
)
いだ
時
(
とき
)
は
三尺角
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
其夜
(
そのよ
)
の
雁
(
かり
)
も
立去
(
たちさ
)
らず、
餌
(
ゑ
)
にかはれた
飼鳥
(
かひどり
)
のやう、よくなつき、
分
(
わ
)
けて
民子
(
たみこ
)
に
慕
(
した
)
ひ
寄
(
よ
)
つて、
膳
(
ぜん
)
の
傍
(
かたはら
)
に
羽
(
はね
)
を
休
(
やす
)
めるやうになると、はじめに
生命
(
いのち
)
がけ
恐
(
おそろ
)
しく
思
(
おも
)
ひしだけ、
可愛
(
かはい
)
さは
一入
(
ひとしほ
)
なり。
雪の翼
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
可愛
(
かはい
)
さの
餘
(
あま
)
り
其
(
その
)
不注意
(
ふちうい
)
なこの
兒
(
こ
)
の
親
(
おや
)
が、
恐
(
おそろ
)
しくかみさんの
癪
(
しやく
)
にさはつたのだ。
迷子
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
またアノ
可愛
(
かはい
)
いふりをして、
頷
(
うなづ
)
いて、
其
(
その
)
まゝ
泣
(
な
)
きやんで、ベソを
掻
(
か
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
迷子
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
これ
大弓場
(
だいきうば
)
の
爺樣
(
ぢいさん
)
なり。
人
(
ひと
)
に
逢
(
あ
)
へば
顏相
(
がんさう
)
をくづし、
一種
(
いつしゆ
)
特有
(
とくいう
)
の
聲
(
こゑ
)
を
發
(
はつ
)
して、「えひゝゝ。」と
愛想
(
あいさう
)
笑
(
わらひ
)
をなす、
其顏
(
そのかほ
)
を
見
(
み
)
ては
泣出
(
なきだ
)
さぬ
嬰兒
(
こども
)
を——、「あいつあ
不思議
(
ふしぎ
)
だよ。」とお
花主
(
とくい
)
は
可愛
(
かはい
)
がる。
神楽坂七不思議
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
……
母
(
はゝ
)
ぢや
人
(
びと
)
のを
故
(
わざ
)
と
穿
(
は
)
いて
來
(
き
)
たらしい、
可愛
(
かはい
)
い
素足
(
すあし
)
に
三倍
(
さんばい
)
ほどな、
大
(
おほき
)
な
塗下駄
(
ぬりげた
)
を
打
(
ぶ
)
つけるやうに、トンと
土間
(
どま
)
へ
入
(
はひ
)
つて
來
(
き
)
て、
七輪
(
しちりん
)
の
横
(
よこ
)
へ
立
(
た
)
つた、十一二だけれども、
九
(
こゝの
)
ツぐらゐな、
小造
(
こづく
)
りな
松の葉
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
處
(
ところ
)
が、
少
(
わか
)
い
御新造
(
ごしんぞ
)
より、
年
(
とし
)
とつた
旦那
(
だんな
)
團右衞門
(
だんゑもん
)
の
方
(
はう
)
が、
聊
(
いさゝ
)
か
煩惱
(
ぼんなう
)
と
云
(
い
)
ふくらゐ
至極
(
しごく
)
の
猫好
(
ねこずき
)
で、
些
(
ちつ
)
とも
構
(
かま
)
はないで、
同
(
おな
)
じやうに
黒
(
くろ
)
よ、
黒
(
くろ
)
よ、と
可愛
(
かはい
)
がるので
何時
(
いつ
)
ともなしに
飼猫
(
かひねこ
)
と
同樣
(
どうやう
)
に
成
(
な
)
つたと
言
(
い
)
ふ。
二た面
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
可
常用漢字
小5
部首:⼝
5画
愛
常用漢字
小4
部首:⼼
13画
“可愛”で始まる語句
可愛想
可愛相
可愛気
可愛御堂
可愛児
可愛好
可愛嶽
可愛いお方