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軒
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のき
ふりがな文庫
“
軒
(
のき
)” の例文
越前
(
ゑちぜん
)
の
府
(
ふ
)
、
武生
(
たけふ
)
の、
侘
(
わび
)
しい
旅宿
(
やど
)
の、
雪
(
ゆき
)
に
埋
(
うも
)
れた
軒
(
のき
)
を
離
(
はな
)
れて、二
町
(
ちやう
)
ばかりも
進
(
すゝ
)
んだ
時
(
とき
)
、
吹雪
(
ふゞき
)
に
行惱
(
ゆきなや
)
みながら、
私
(
わたし
)
は——
然
(
さ
)
う
思
(
おも
)
ひました。
雪霊記事
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
ふしぎにおもって、おとうさんがあおむいて見ると、
軒
(
のき
)
さきの高いたなの上にのせられて、たにしの子が
日向
(
ひなた
)
ぼっこしていました。
たにしの出世
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
原田氏
(
はらだし
)
は
星亨氏
(
ほしとほるし
)
幕下
(
ばつか
)
の
雄將
(
ゆうしやう
)
で、
關東
(
くわんとう
)
に
於
(
お
)
ける
壯士
(
さうし
)
の
大親分
(
おほおやぶん
)
である。
嶺村
(
みねむら
)
草分
(
くさわけ
)
の
舊家
(
きうけ
)
であるが、
政事熱
(
せいじねつ
)
で
大分
(
だいぶ
)
軒
(
のき
)
を
傾
(
かたむ
)
けたといふ
豪傑
(
がうけつ
)
。
探検実記 地中の秘密:03 嶺の千鳥窪
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
ももひきぞうりばきのいでたち、ふたりは二十五、六ぐらい、によったふうである。
軒
(
のき
)
に近づくとふたりはひとしくかぶりものをとる。
告げ人
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
古ぼけた
葭戸
(
よしど
)
を立てた
縁側
(
えんがは
)
の
外
(
そと
)
には
小庭
(
こには
)
があるのやら無いのやら
分
(
わか
)
らぬほどな
闇
(
やみ
)
の中に
軒
(
のき
)
の
風鈴
(
ふうりん
)
が
淋
(
さび
)
しく鳴り虫が
静
(
しづか
)
に鳴いてゐる。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
からは
灰
(
はひ
)
にあとも
止
(
とゞ
)
めず
煙
(
けぶ
)
りは
空
(
そら
)
に
棚引
(
たなび
)
き
消
(
き
)
ゆるを、うれしや
我
(
わが
)
執着
(
しふちやく
)
も
遺
(
のこ
)
らざりけるよと
打眺
(
うちなが
)
むれば、
月
(
つき
)
やもりくる
軒
(
のき
)
ばに
風
(
かぜ
)
のおと
清
(
きよ
)
し。
軒もる月
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
いずれも表の構えは押し
潰
(
つぶ
)
したように
軒
(
のき
)
が
垂
(
た
)
れ、
間口
(
まぐち
)
が
狭
(
せま
)
いが、暖簾の向うに中庭の
樹立
(
こだ
)
ちがちらついて、離れ家なぞのあるのも見える。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
と空ろな頭で考えて、小屋の
軒
(
のき
)
に並んだ絵看板を眺めると、様々な魔奇術の場面が、毒々しい油絵で、さも奇怪に、物凄く、描いてある。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
おなじ
宿場
(
しゅくば
)
の
軒
(
のき
)
をながしていた
坂東巡礼
(
ばんどうじゅんれい
)
の三十七、八ぐらいな女——わが子をたずねて坂東めぐりをして
歩
(
ある
)
くお
時
(
とき
)
という
女房
(
にょうぼう
)
が
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
大きな金の日の丸の扇をあずまやの
軒
(
のき
)
から差し出して、空に向かって両手であおぎながら、雷の神を招き落とそうとしました。
雷神の珠
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
軒
(
のき
)
をならべて続いている大きい商店が、第一、巳之助には珍らしかった。巳之助の村にはあきないやとては一軒しかなかった。
おじいさんのランプ
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
民家が
軒
(
のき
)
を
列
(
なら
)
べた村などで屋敷の特色をもって呼びにくい処では、戸主の平兵衛とか源蔵とかの名前を屋敷の名にしているが
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
其時
(
そのとき
)
野々宮さんは廊下へ
下
(
お
)
りて、
下
(
した
)
から自分の部屋の
軒
(
のき
)
を
見上
(
みあ
)
げて、
一寸
(
ちよつと
)
見給へ
藁葺
(
わらぶき
)
だと云つた。成程
珍
(
めづ
)
らしく屋根に瓦を
置
(
お
)
いてなかつた。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
借家
(
しやくや
)
は或実業家の別荘の中に建つてゐたから、
芭蕉
(
ばせう
)
が
軒
(
のき
)
を
遮
(
さへぎ
)
つたり、広い池が見渡せたり、
存外
(
ぞんぐわい
)
居心地のよい
住居
(
すまひ
)
だつた。
身のまはり
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
と、十数間離れたあなたに——もと来た方の家の
軒
(
のき
)
に、その軒よりも高いほどに、
身長
(
たけ
)
高い一本の
御幣
(
ごへい
)
のようなものが、風に靡いて立っていた。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
なぞと誠におとなしい
夫故
(
それゆゑ
)
押
(
お
)
される
憂
(
うれ
)
ひはございません、けれども
軒
(
のき
)
の
下
(
した
)
にはギツシリ
爪
(
つめ
)
も立たんほど立つて
居
(
を
)
ります。
牛車
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
その銀色の面を区ぎる
軒
(
のき
)
の線の美しさ。左半分が天平時代の線で、右半分が鎌倉時代の線であるが、その相違も今は調和のある変化に感じられる。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
それに、なによりも恐ろしいことには、
母屋
(
おもや
)
の
軒
(
のき
)
に、大きなフクロウが七
羽
(
わ
)
もならんでとまっているではありませんか。
ニールスのふしぎな旅
(新字新仮名)
/
セルマ・ラーゲルレーヴ
(著)
卯平
(
うへい
)
は
清潔好
(
きれいずき
)
なのでむつゝりとしながら
獨
(
ひとり
)
で
居
(
ゐ
)
る
時
(
とき
)
には
草箒
(
くさばうき
)
で
土間
(
どま
)
の
軒
(
のき
)
の
下
(
した
)
を
掃
(
は
)
いては
鷄
(
とり
)
が
足
(
あし
)
の
爪
(
つめ
)
で
掻
(
か
)
き
亂
(
みだ
)
した
庭葢
(
にはぶた
)
の
周圍
(
あたり
)
をも
掃
(
は
)
きつけて
置
(
お
)
いた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
いつも
木
(
き
)
の
根
(
ね
)
や、
家
(
いえ
)
の
軒
(
のき
)
でねたり、
林
(
はやし
)
の
中
(
なか
)
でねたりしていた。
朝
(
あさ
)
早
(
はや
)
く
起
(
お
)
きると、
子供
(
こども
)
が
遊
(
あそ
)
んでいるのを
探
(
さが
)
して
歩
(
ある
)
いた。
つばめと乞食の子
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
小屋の前の
軒
(
のき
)
の下に写真がいくつもいくつも掲げられてその下に大勢の子供、米屋の小僧、小料理屋の出前持ち、子を背負う女中などが群れていた。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
猫はすぐ鼻のさきに、大きなししがふいにあらわれたので、あわてて、長ぐつのまま、あぶないもこわいもなく、
軒
(
のき
)
のかけひの上にかけあがりました。
猫吉親方:またの名 長ぐつをはいた猫
(新字新仮名)
/
シャルル・ペロー
(著)
其處から
納屋
(
なや
)
へ行つて見ると、
軒
(
のき
)
の下に仁王樣の草鞋のやうなのが十足ばかりブラ下げてあり、そのうち三足には明かに新しい足形が附いて居ります。
銭形平次捕物控:153 荒神箒
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
と結んだ主人は、折から縁の
日向
(
ひなた
)
におろしてある鳥籠に小猫がじゃれているのを見ると、
起
(
た
)
って行って猫を追い、籠を
軒
(
のき
)
に吊るしておいて座に帰った。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
何処かの茶店に休んで餅を食っている時に、
軒
(
のき
)
近く飛んで来た鶯が、その手にしている餅——もしくは皿の中に在る餅——に糞をしたというのである。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
ふと見れば片側の
軒
(
のき
)
にそひて、つた
蔓
(
かずら
)
からませたる
架
(
たな
)
ありて、その
下
(
もと
)
なる
円卓
(
まるづくえ
)
を囲みたるひと
群
(
むれ
)
の客あり。こはこの「ホテル」に宿りたる人々なるべし。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
件
(
くだん
)
の石を
軒
(
のき
)
の
外
(
そと
)
に
直
(
なほ
)
し
置
(
おき
)
、朝飯などしたゝめて彼の石を見んとするに石なし、いかにせし事やらんとさま/″\にたづねもとむれども行方しれずとなん。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
ここでは
注連
(
しめ
)
飾りが町家の
軒
(
のき
)
ごとに立てられて、通りの
角
(
かど
)
には年の暮れの市が立った。
橙
(
だいだい
)
、
注連
(
しめ
)
、
昆布
(
こんぶ
)
、
鰕
(
えび
)
などが行き通う人々の
眼
(
め
)
にあざやかに見える。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
『
君勇
(
きみゆう
)
』とか『
秀香
(
ひでか
)
』とか、
都
(
みやこ
)
の
歌妓
(
うたひめ
)
の
名
(
な
)
を
染
(
そ
)
めた
茶色
(
ちやいろ
)
の
短
(
みじか
)
い
暖簾
(
のれん
)
が、
軒
(
のき
)
に
懸
(
か
)
け
渡
(
わた
)
されて、
緋毛氈
(
ひまうせん
)
の
床几
(
しようぎ
)
を
背後
(
うしろ
)
に、
赤前垂
(
あかまへだれ
)
の
女
(
をんな
)
が、
甲高
(
かんだか
)
い
聲
(
こゑ
)
を
絞
(
しぼ
)
つてゐた。
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
一、此所を寝物語と申すは、
江濃
(
がうのう
)
軒
(
のき
)
相隣
(
あひとな
)
り、壁を隔てて互に物語をすれば、其詞相通じ問答自由なるゆゑなり。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
斯
(
か
)
うした
言葉
(
ことば
)
の
通
(
つう
)
じない
燕
(
つばめ
)
も、
村
(
むら
)
に
住
(
す
)
み
慣
(
な
)
れて、
家々
(
いへ/\
)
の
軒
(
のき
)
に
巣
(
す
)
をつくり、くちばしの
黄色
(
きいろ
)
い
可愛
(
かあい
)
い
子供
(
こども
)
を
育
(
そだ
)
てる
時分
(
じぶん
)
には、
大分
(
だいぶ
)
言葉
(
ことば
)
がわかるやうになりました。
ふるさと
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
今もその
城址
(
じょうし
)
には立派な城門や
櫓
(
やぐら
)
が残り、花の季節などには絵のようであります。雪に深い町でありますから、店の前に更に
軒
(
のき
)
を設けて雪よけの囲いをします。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
入口にはいつもの魚屋があって、
塩鮭
(
しおざけ
)
のきたない
俵
(
たわら
)
だの、くしゃくしゃになった
鰯
(
いわし
)
のつらだのが台にのり、
軒
(
のき
)
には赤ぐろいゆで
章魚
(
だこ
)
が、五つつるしてありました。
山男の四月
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
青木さんはふと一人
言
(
ごと
)
のやうにさうつぶやいて、
軒
(
のき
)
先に
見
(
み
)
える
晴
(
は
)
れた
夜
(
よ
)
空をぢつと
見
(
み
)
上げた。が、さういふ空
想
(
さう
)
の明るさとは
反対
(
はんたい
)
に
氕持
(
きもち
)
は
妙
(
めう
)
に
暗
(
くら
)
く
沈
(
しづ
)
んで
行
(
い
)
つた。
夢
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
軒
(
のき
)
の低い町並みではあるけれど、割合と色々な商い店が
揃
(
そろ
)
っていて、荷箱のように小さい、
鳩
(
はと
)
と云う酒場などは、銀座を唄ったレコードなんかを掛けていたりした。
清貧の書
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
それは透のことであろうと私は察したので、いかにも其の通りだと答えると、男はわたしを路ばたの或る家の
軒
(
のき
)
ランプの下へ連れて行って、一枚の名刺をとり出して見せた。
深見夫人の死
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
我が家に近き町はずれよりは、
軒
(
のき
)
ごとに
紅燈
(
こうとう
)
の影美しく飾られて
宛然
(
さながら
)
敷地祭礼の如くなり。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
其建物
(
そのたてもの
)
をいへば
松田
(
まつだ
)
は
寿仙
(
じゆせん
)
の
跡也
(
あとなり
)
常磐
(
ときは
)
は
萬梅
(
まんばい
)
の
跡也
(
あとなり
)
今この
両家
(
りやうけ
)
は
御
(
ご
)
一
人
(
にん
)
前
(
まへ
)
四十五銭と呼び、五十銭と呼びて、ペンキ
塗
(
ぬり
)
競争
(
きやうそう
)
硝子張
(
がらすはり
)
競争
(
きやうそう
)
軒
(
のき
)
ランプ
競争
(
きやうそう
)
に
火花
(
ひばな
)
を
散
(
ち
)
らし
居
(
を
)
り
候由
(
そろよし
)
に
候
(
そろ
)
。
もゝはがき
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
その優雅な名前にも似ず、それは
軒
(
のき
)
も傾いたような、ぼろぼろのきたない居酒屋でした。
Sの背中
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
斯
(
かく
)
て傳吉は小娘に
誘引
(
いざなは
)
れ
許
(
と
)
ある家に入て見れば
柱
(
はしら
)
は
曲
(
まが
)
りて
倒
(
たふ
)
れ
軒
(
のき
)
は
傾
(
かたぶ
)
き屋根
落
(
おち
)
ていかにも
貧家
(
ひんか
)
の有樣なれば傳吉は
跡先
(
あとさき
)
見回し今更立ち出んも如何と見合ける中に小娘は
盥
(
たらひ
)
へ
温湯
(
ぬるゆ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
そこでも土産物やたべものの店がならんでいた。
軒
(
のき
)
の低い
家並
(
やなみ
)
に、
大提灯
(
おおぢょうちん
)
が一つずつぶらさがっていて、どれにもみな、うどん、すし、さけ、さかななどと、太い字でかいてあった。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
谷中
(
やなか
)
の
感応寺
(
かんおうじ
)
を
北
(
きた
)
へ
離
(
はな
)
れて二
丁
(
ちょう
)
あまり、
茅葺
(
かやぶき
)
の
軒
(
のき
)
に
苔
(
こけ
)
持
(
も
)
つささやかな
住居
(
すまい
)
ながら
垣根
(
かきね
)
に
絡
(
から
)
んだ
夕顔
(
ゆうがお
)
も
白
(
しろ
)
く、四五
坪
(
つぼ
)
ばかりの
庭
(
にわ
)
一
杯
(
ぱい
)
に
伸
(
の
)
びるがままの
秋草
(
あきぐさ
)
が
乱
(
みだ
)
れて、
尾花
(
おばな
)
に
隠
(
かく
)
れた
女郎花
(
おみなえし
)
の
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
寄附申込書をかかえて
軒
(
のき
)
なみを駈けずり廻りはするが、そのくせ出入りの仕立屋やおさんどんの仕払いはしない——そんな博愛家そんな同情家が私たちのあいだには何人いるかしれません。
妻
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
大通りの
軒
(
のき
)
を境に、火焔と毒瓦斯とが、上下に入り乱れて、噛み合っていた。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
まことに
此時
(
このとき
)
、
日
(
ひ
)
も
麗
(
うら
)
らかに
風
(
かぜ
)
和
(
やは
)
らかく
梅
(
うめ
)
の花、
軒
(
のき
)
に
匂
(
かんば
)
しく
鶯
(
うぐひす
)
の声いと楽しげなるに、
室
(
しつ
)
を
隔
(
へだ
)
てゝ
掻
(
か
)
きならす
爪音
(
つまおと
)
、いにしへの物語ぶみ、そのまゝの
趣
(
おもむき
)
ありて身も心も
清
(
きよ
)
く
覚
(
おぼ
)
えたり、
此
(
こ
)
の帰るさ
隅田の春
(新字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
しかし、もうそのときには、
妻
(
つま
)
の
身体
(
からだ
)
は
絶対
(
ぜつたい
)
に
動
(
うご
)
かすことが出来なかつた。さうして、
再
(
ふたゝ
)
び
夏
(
なつ
)
が
私達
(
わたしたち
)
の家にめぐつて来た。いちごは庭一
面
(
めん
)
に
新鮮
(
しんせん
)
な
色
(
いろ
)
を浮べ出した。
桜桃
(
あうたう
)
が
軒
(
のき
)
の
垣根
(
かきね
)
に
連
(
つ
)
らなつた。
美しい家
(新字旧仮名)
/
横光利一
(著)
朝の間、蝶子は廓の中へはいって行き
軒
(
のき
)
ごとに西瓜を売ってまわった。
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
聞えないかの低い声で
鼻唄
(
はなうた
)
をうたいながら歩いている源吉爺さんを
先達
(
せんだつ
)
にして、トヨは毎日の道順にしたがい、
軒
(
のき
)
の傾いた商家がたち並んでいる広い村道から、
埃
(
ほこり
)
っぽい
田圃径
(
たんぼみち
)
へと通り抜けてゆく。
南方郵信
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
そのうちに楽隊の音は、
軒
(
のき
)
下からのぞけば見えそうなところまで近づいて来ました。が、こんなとき、うっかりのぞいたりしようものなら、親方の
金
(
かな
)
づちがこつんと向こうずねにぶつかって来ます。
曲馬団の「トッテンカン」
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
軒
(
のき
)
にちょっとした
装飾
(
そうしょく
)
をつけた
陳列窓
(
ちんれつまど
)
が私の足を引きとめた。
みちのく
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
“軒”の意味
《名詞》
(のき)屋根の端で壁などから張り出した部分。
(出典:Wiktionary)
軒
常用漢字
中学
部首:⾞
10画
“軒”を含む語句
軒燈
軒端
一軒
軒蛇腹
軒庇
軒先
軒昂
軒並
十軒店
軒別
一軒立
軒行燈
軒前
精養軒
軒提灯
志道軒
幾軒
安井息軒
一軒家
軒目
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