てき)” の例文
みかんばたけの上に出ると、大池のつつみがみえました。そこに二十人くらいのてきが、手に手にかまを持っていました。草をかっていたのです。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
こうした場合ばあい、もしすこしでもひるむことがあればてきはあなどって逆襲ぎゃくしゅうするのがきまりだから、ますます攻勢こうせいなければならない。
しらかばの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
でもまあ無事ぶじでよかつた。人間にんげんめ! もうどれほど俺達おれたち仲間なかまころしやがつたか。これを不倶戴天ふぐたいてんてきとゆはねえで、なにふんだ。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
そのうち、やっと起きあがった警官けいかん加勢かせいにかけつけ、りょううでを水車みずぐるまのようにふりまわして、目に見えぬてきにおどりかかっていった。
海戰かいせん午前ごぜん三十ぷんはじまつて、東雲しのゝめころまでをはらなかつた。此方こなた忠勇ちうゆう義烈ぎれつ日本軍艦につぽんぐんかんなり、てき世界せかいかくれなき印度洋インドやう大海賊だいかいぞく
また維新の際にもる米人のごとき、もしも政府において五十万ドル支出ししゅつせんには三せきの船をつくりこれに水雷を装置そうちしててきに当るべし
幾月いくつきかをすごうちに、てき監視みはりもだんだんうすらぎましたので、わたくし三崎みさきみなとからとおくもない、諸磯もろいそもう漁村ぎょそんほうてまいりましたが
詰侍つめざむらい部屋へや長屋ながやにいる常備じょうび武士ぶしを、番士ばんしは声をからして起しまわる。たちまち、ものとってけあつまるてきはかずをすばかり。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それをきいて、ほかのものたちも若者わかもののあとにしたがいました。若者はてきのなかにとびこんで、さんざんに敵をやっつけました。
こつなどのは、質屋しちやのことを御存ごぞんじかな。』と、玄竹げんちく機智きちは、てき武器ぶきてきすやうに、こつな言葉ことばとらへて、こつなかほいろあかくさせた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
其父そのちちたたかひて(七三)くびすめぐらさずして、つひてきせり。呉公ごこういままた其子そのこふ。せふ(七四)其死所そのししよらず。ここもつこれこくするなり
一対一の戦闘が、こうして、きりなく続く。そして、勇敢な蜜蜂は、ちからてきせず、一つ一つ、その犠牲となつてしかばねを地上にさらすのである。
光は影を (新字新仮名) / 岸田国士(著)
おまえさんみたいなちっぽけなものが気をつけなければならないてきが、たくさんいることは知っているのかい、と、ききました。
おゝ、自然しぜんてきたいして、みづから、罵倒ばたうするやうな木像もくざうでは、前方さき約束やくそくげんのも無理むりはない……駄物だもの駄物だもの駄物だもの
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたしは村の中を歩いて、どこか芝居しばいにつごうのいい場所を見つけようとした。それに村の人びとの顔色を見て、てきか味方かさぐろうとした。
おもいました。そこで天子てんしさまにねがって、自分じぶん御褒美ごほうびいただわりに、宗任むねとうはじめてきのとりこをのこらずゆるしてやりました。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「ああ、あなたの考えはへんし過ぎている、片意地過ぎているようです。拙者は机竜之助をてきとはするが、あなたを敵とする気にはなれないのです」
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
私達はたゞくじを引いただけよ。そして仕方が無いと思つてゐるのよ。——しかし杉山さん。私達はお前さんのかたきなの? お前さんは私達のてきなの?
疵だらけのお秋 (新字旧仮名) / 三好十郎(著)
たとえようもなく愛想のいいキャラコさんの問いかけには、この無愛想の山男もてきしがたかったのである。
キャラコさん:04 女の手 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
それには種々しゆ/″\理由りゆうがあるでせうが、そのひとつはてき襲撃しゆうげきのがれ、猛獸もうじゆうがいけるためであつたでせう。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
てきかたを望めば、超勇焼け、揚威戦闘力を失して、敵の右翼乱れ、左翼の三艦は列を乱してわが比叡赤城を追わんとし、その援軍水雷艇は隔離して一辺にあり。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「すると助手は『何分衆寡しゅうかてきせずで不覚を取りました』と言うから僕は一策を授けてやった。星野君、君は一人で大勢を相手にする場合の秘訣を知っているかい?」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
三一てきすべからねば、おそらくはうけがひ給はじ。媒氏なかだちの翁ゑみをつくりて、大人うしくだり給ふ事甚し。
「火には水というてきがあります。もえてえだけもえりゃア消えやしょう。下拙げせつはいま一ねむり……」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
しかし彼の敵愾心てきがいしんは人々を最初からてきと決めていたから、憎まれてかえってサバサバと落着いた。
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
曰ふ、會津藩士あひづはんしは、性直にして用ふ可し、長人ちやうじんの及ぶ所に非ざるなりと。夫れくわいちやうてきなり、かも其の言かくの如し。以て公の事をしよすること皆公平こうへいなるを知るべし。
なう、上人しゃうにんわしそのてきにくみはせぬ、かうしてたのみにたのも、たがひのためおもふからぢゃ。
いはばわたしにとつてはじつこうてき手だつたのだが、先生今や東北青ぜう下につて久しくあひ見ゆるない。時々おもひ出すと、わたしには脾にくたんへないものがあるのである。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
いへには垣なければ盜人ぬすびとり、ひとには咎あれば、てき便べんとなる。やくといふのはそんなものだ。
「何もないよ。おれたちのてきは世界中にないんだよ。」と外の家来がいばった顔をした。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
かれてきといふ言葉ことば意味いみ正當せいたうかいない樂天家らくてんかとして、わかをのび/\とわたつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
文句もんく色々いろ/\へて、あるひつよく、あるひよわく、あるひのゝしり、あるひはふざけ、種々樣々しゆ/″\さま/″\こといてやつた。中途ちうとへたたれてはまつたてき降伏かうふくするわけだから、れい持藥ぢやくのつもりで毎日まいにちいた。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
ゐのしゝきば犬齒けんし發達はつたつしたもので、このきば獲物えものっかけたり、てきふせいだりします。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
なぜだか知らないが、たれてきに持つよりも、お前さんを敵に持つのは厭だわ。こう思うのは最初にお前さんの邪魔をわたしがしたからかも知れないわ。それともどういうわけか知ら。
が、二人は、衆寡しゅうかてきせず、たちまち甲板上で、荒くれ水夫たちに組敷かれてしまった。
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
刮目くわつもくして待つてると、みやこはななる者が出た、本も立派りつぱなれば、手揃てぞろひでもあつた、さうして巻頭くわんたう山田やまだの文章、にくむべきてきながらも天晴あつぱれ書きをつた、かれの文章はたしかに二三だん進んだと見た
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
或る物は手にてただちにぎりしなるべく、或る物にはつかくくり付けしならん。使用しようの目的は樹木じゆもくたたり、木材を扣き割り、木質ぼくしつけづり取り、じうたふし、てききづつくる等に在りしと思はる。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
六郎が祖父は隠居所いんきょじょにありしが、馳出はせいでて門のあきたるを見て、外なる狼藉者ろうぜきものを入れじと、門をとざさんとせしが、白刃振りてせまられ、いきおいてきしがたしとやおもいけん、また隠居所に入りぬ。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
一口に勝者という者の中にも一番強い者を相手にした者は一番えらい勝者である。また同じくてきと称する者の中にも種類が数多あまたある。強きもあれば弱きもある。赤鬼あかおにもいれば青鬼あおおにもおろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
大胆だいたんてきかすめてそのをとこ作業さげふつゞけた
おほいなるてき目の前にをどでよと
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ことあるそのてきあるその
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
てき味方みかたはもうよくわかる
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
かなしきてきとならむとは
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
もっとたかがって、いたらいいじゃないか? はるさきがけとなるくらいなら、おれみたいにてきおそろしがらぬ勇気ゆうきがなければならない。
平原の木と鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
てき姿すがたは、ぜんぜん見えないのだ。どうやってトーマスをかれの手からうばいかえして助けてやればいいのか、さっぱりわからなかった。
ガチョウは、ニールスが一生けんめい走ってくるのを見ますと、すぐ、おそろしいてきいかけられているにちがいない、とさとりました。
そしてその竹童も、無事ぶじにこのたちをやぶってげのびたと卜斎ぼくさいいて、てきでも味方みかたでもないが、なんとなくうれしくおぼえた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たとひ此の弾丸山を砕いてにするまでも、四辺しへんの光景単身みひとつてきがたきを知らぬでないから、桂木は呼吸いきを引いて、力なく媼の胸にひそんだが。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そのときからだじゅうにけながら、じっとっててきをにらみつけたままんでいたので、弁慶べんけい往生おうじょうだといって、みんなおどろきました。
牛若と弁慶 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)