)” の例文
これから駒津岳の頂上へ懸けて偃松が深いので、元は登降になり困難であったが、今は多少の切明けもあるのでやや登りよくなった。
さかうへ煙草屋たばこやにて北八きたはちたしところのパイレートをあがなふ。勿論もちろん身錢みぜになり。舶來はくらい煙草たばこ此邊このへんにはいまれあり。たゞしめつてあじはひならず。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
父が歩くにつれて、地上にくっきり映っている父の影が揺れて行ったが、滋幹はそれをまないようになり離れて附いて行った。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
闔廬かふろいはく、『こころみに婦人ふじんもつてすきか』と。いはく、『なり』と。ここおいこれゆるす。宮中きうちう美女びぢよいだし、百八十にんたり。
に入りさいわたるのは学術の本義ですけれども、学生時代に色々な学説を聞かされるということはなり厄介に感ずるものです。
人工心臓 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
私が悪いことと知りながらした罪にいて、またなり大きい後悔をしないでは居られませんでした。お歌ちやんにあやまりますと
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
小幡が菩提所の淨圓寺はなりに大きい寺であつた。門を這入はいると、山吹が一ぱいに咲いてゐるのが目についた。ふたりは住職に逢つた。
半七捕物帳:01 お文の魂 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
革命的の思想もこの地は然程さほどで無いが印度インド本土にはなりさかんだと云ふ事で、新聞は支那の革命戦争の記事を小さくわづか二三行で済ませて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
かような場合ばあひかへりみると、屋外おくがい避難ひなんしてなる場合ばあひは、わづか二三秒にさんびよう軒下のきしたはなれることが出來できるような位置いちにあるときにかぎるようである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
御性質ごせいしつ相違そうい次第次第しだいしだいつよまってき、すえ人間界にんげんかいほうでは、豐玉姫系とよたまひめけい玉依姫系たまよりひめけいとの区別くべつなりはっきりつくようになってります。
日本にほん金解禁きんかいきん如何いかなる用意よういもつてするかはなり注目ちうもくされてために、金解禁きんかいきんくに内外ないぐわいおい大問題だいもんだいであつたのである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
すなわちならんといえども、夫婦ともに一家の経済を始末せんと思わば、婦人にも分りやすき法を用うるこそ策の得たるものというべけれ。
小学教育の事 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「生徒の賞罰しょうばつは校長の権利である、われわれは校長に一任してなりだ、静粛せいしゅくに静粛にわれわれは決してさわいではいかん」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
だんじて非なりと信ずるゆえに、たとえ当年とうねんの男伊達だての意気を思慕しぼするとはいえ、こんにちの男一匹は長兵衛そのままを写してなりとは思わぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ともうなり長くお里と遣り合った後らしい。安子さんは言われるまゝに荷札を検めたが、紛れもなく村島千吉様とある。
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
尊王賤覇なおなり、彼らのある者は遂に幕府を倒して、王政に復古せんと欲し、手につばきして動乱の風雲を飛ばさんと試みたるものすらありき。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
しかしてその不斉一その粗悪なるは、その製出者と営業者とに徳義心を欠くが故なりというもなり、かんがみざるべけんや。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
そこでパーシウスは涙をいて、出来るだけ勇ましい顔になって、その見知らぬ人に向ってなり元気に答えました。
『それで!其理由そのわけは』と帽子屋ばうしやひました。『つゞけやしないだらう。つぎつまでにはなりあひだがある、うちひとおもひ/\の仕事しごとをする。 ...
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
が、如何に緻密ちみつの計画と、巧妙の変装を以てしても、白昼はくちゅうの非常線を女装じょそうで突破することはなりの冒険であった。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
其内そのうちやまなかは、一日々々いちにち/\つた。御米およねからはなりなが手紙てがみがもう二ほんた。もつとも二ほんともあらたに宗助そうすけこゝろみだやう心配事しんぱいごといてなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
此處こゝなりれます。』と老爺ぢいさんぼくそばこしおろして煙草たばこひだした。けれど一人ひとり竿さをだけ場處ばしよだからボズさんはたゞ見物けんぶつをしてた。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
召抱めしかゝへ先是にてなりに合べし然らば片時へんじも早く京都へ立越べしと此旨を御城代へとゞけける使者は赤川大膳是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
富「それ、ういうお堅いから二人で夫婦養子にどんな処へでもなりたかのある処へ行けます、お隅さん」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
道は雲仙の山脚さんきゃくが海に落ちこんでいる急峻きゅうしゅんな部分に通じているので、なり険しい絶壁の上を、屡々しばしば通らなければならぬが、そのために風致は歩々ほほ展開して行く。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
三田の文科ぶんくわ生になつてからは、さすがに寫眞熱しやしんねつもさめてしまつたが、りよ行の時だけは、もうなりふるびた上に舊式きうしきになつたその寫眞器しやしんきを相かはらず伴侶はんりよにしてゐた。
その上、サア・オルコツクは、富士山ふじさんへ登つたり、熱海あたみの温泉へはひつたり、なり旅行も試みてゐる。
日本の女 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
のこる所の二十七名は之よりすすむのみにしてかへるを得ざるもの、じつすすりて决死けつしちかひをなししと云ふてなり、すでにして日やうやたかく露亦やうやへ、かつ益渇をくわ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
玄竹げんちく藥箱くすりばこなりおもいものであつた。これは玉造たまつくり稻荷いなり祭禮さいれい御輿みこしかついだまちわかしうがひどい怪我けがをしたとき玄竹げんちく療治れうぢをしてやつたおれいもらつたものであつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
好奇の粋客すいきゃくもしわが『矢筈草』の後篇を知らんことを望み玉はば喜楽きらくなり香雪軒こうせつけん可なり緑屋みどりやまたあしからざるべし随処の旗亭きていに八重をへいして親しく問ひ玉へかし。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
そしての作はその意味としてなり成功したものでしょう。だが、これは僕自身としてのママへの希望ですが、ママは何故なぜ、ひとのことなんか書いてるのですか。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
大下宇陀児氏もなり働き「或るローマンス」「山野先生の死」「秘密結社」などを発表しました。いずれも同氏が得意とする学生物でありまして、温情的な作でした。
探偵文壇鳥瞰 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ある政党の如きは抽象的に漫然と積極主義を唱え、鉄道の敷設なり、港湾の修築可なり、軍備の拡張また可なり、なんでもかでも百般の施設すべて積極的に引受ける。
選挙人に与う (新字新仮名) / 大隈重信(著)
必ずしも藤を春とし牡丹を夏とするの要なし。なし西瓜すいか等また必ずしも秋季に属せずしてなり。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
なり正確に分っているに反して、彼等は、女中が長吉や松永の不審な挙動を見た時間から、兇行も多分その頃行われたものであろうと推定しているに過ぎないのです。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
勿論もちろん此樣こん絶島ぜつたうことだから、けつして立派りつぱ建築たてものではない、けれどなり巨大おほき板家いたやで、もんには海軍かいぐんいへ筆太ふでぶとしるされ、ながき、不恰好ぶかくかうへや何個いくつならんでへるのは
秦野屋はともともいわず、きせるをくわえて、帰って行くかごかきの影を見送っている。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
 室には、食器は一通りそなえてあるし、隅の書庫には、英独仏の聖書をはじめ、小説や雑誌などがなりある、天井には、ベルンで見たような、担荷が二つかけてあった。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
まだこの小さな村が洪水おおみずで荒されない前、この桑畑に人家が幾軒もあった頃、まだこの村の人が町や、他へ移って行かなかった前までは、人家もなりあったので、その薬売は
(新字新仮名) / 小川未明(著)
なりに重要なものであると思う、日本近代のアルピニストが、スウィスの山を恋う心は、王朝に於ける、宗教全盛時代の求法者が、天竺を慕う心にもまして、熱情的なものである
なり濶い面積の平野に躑躅や山菖蒲が咲いてゐて高原氣分を漂はせてゐる荒寞の景が人を襲ふが、此處こゝは雪がまだ山々にむらぎえむら殘りの頃か、さなくば秋の夕べの物淋しい頃が
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
和名わめい漢字かんじ和訓わくん充當じうたうしたものが、理由りいうなく誤訓ごくんされた惡例あくれいなりある。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
したがつてまた、『地方的ちはうてきまた國家的こくかてき偏見へんけん』からは離脱りだつしてゐるつもりだけれども、日本人にほんじんと、日本語にほんごと、日本にほん風俗ふうぞく自然しぜんとにたいして、まだなりおほくの『愛着あいちやく』をつていることあらそはれない。
生活に生じて来る様々の現象にもややに処すことが出来るだろうと思って。
野蒜の酢味噌すみそ、ひたし物の嫁菜はにがかった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「おしい子やな、ようお眠んかいな。」
(新字新仮名) / 横光利一(著)
此処は低いが四方が開けているのでなり眺望が好い。野営地からは見えなかった五竜岳や鹿島槍岳が唐松岳の南に頭をもたげて来た。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
おもふに、ゑがける美人びじんは、ける醜女しうぢよよりもなりつたく、かん武帝ぶてい宮人きうじん麗娟りけんとしはじめて十四。たまはだへつややかにしてしろく、うるほふ。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
マス君はしば/\真直まつすぐな鋭い剣を送つたが、たま/\其れを避け外したカ君の右腕うわんから血が流れた。なり深い負傷であるにかゝはらずカ君は戦闘を続けた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
士卒しそついまかず、百せいしんぜず。ひとにしてけんかろし。ねがはくはきみ寵臣ちようしんくにたつとところもつぐんかんせしめば、すなはならん