おき)” の例文
やまおきならんでうかこれも無用なる御台場おだいば相俟あひまつて、いかにも過去すぎさつた時代の遺物らしく放棄された悲しいおもむきを示してゐる。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ものすごい、おきほうから、たえずなみは、ドドウ、ドドウとがけのしたせている。そして、かなたのそらは、くらでありました。
海の踊り (新字新仮名) / 小川未明(著)
おきに出ると、船は少し揺れてきましたが、太郎は元気でした。松本さんが船長と懇意こんいなので、船の中をあちこち見せてもらいました。
金の目銀の目 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
つぎの日、並木のまばらな田舎路をドライヴして馬家溝ばかこう横川よこかわおきほか四烈士の墓を見た。荒原の真ん中に高い記念碑が建っている。
踊る地平線:01 踊る地平線 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
をりからあめのあとのおもて打沈うちしづめる蒼々漫々さう/\まん/\たるみづうみは、水底みなそこつきかげはうとして、うすかゞやわたつて、おき大蛇灘おろちなだ夕日影ゆふひかげはしつた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
金華山きんかざんおきのたいは、目の下一尺もあって、値がただみたようで、いいおさかなですことの、なんのかんのと、えらいお世話です。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
外に出ておきをながめた。鰺漁あじりょうに出ているコトエの両親たちの帰りまでが、今日はとくべつおそいように、おばんには思えた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
おきなる島山しまやまいたゞき紫嵐しらんつゝまれ、天地てんちるとして清新せいしんたされてときはま寂寞じやくばくとしていつ人影じんえいなく、おだやかにせてはへすなみろう
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
船がしだいしだいにおきへ流れだしたとき、ぼくはあわててとめようとしました、だがそれはむだでした、諸君、ぼくの大罪だいざいをゆるしてください
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
吾等われら叫聲さけびごゑたちま怒濤どたうひゞき打消うちけされてしまつたが、たゞる、黒暗々こくあん/\たるはるか/\のおきあたつて、一點いつてん燈光とうくわうピカリ/\。
ふねができがると、うさぎは木のふねりました。たぬきはつちの舟にりました。べつべつにふねをこいでおきへ出ますと
かちかち山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
私が十六の時、おきはたに大火があつた。さうしてなつかしい多くの酒倉も、あらゆる桶に新らしい金いろの日本酒を滿たしたまま眞蒼に炎上した。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
見て吉兵衞は杢右衞門に向ひ兵庫ひやうごおきを今日出帆しゆつぱんせんは如何といふ杢右衞門は最早もはや三が日の規式ぎしき相濟あひすみ殊に長閑のどかなるそらなれば御道理ごもつともなりとて水差みづさし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
も十おきるのに、大變たいへんらくなんですとさ。ところ貴方あなたこの日本全國につぽんぜんこく鰹船かつをぶねかずつたら、それこそたいしたものでせう。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「いや、長崎から越後港えちごみなとへ、南蛮呉服なんばんごふくをつんできた親船おやぶねが、このおきにとまってるんでさ。どうせ南へ帰る便船びんせんだ、えんりょなく乗っていくがいい」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もしくは思う男に贈っていたことで、是がおそらくは『万葉集』に、「わたつみのたまきの玉」もしくは「いもがためわが玉ひろふおきべなる玉よせもちこ」
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
所の人は俗におきしまと呼んでいますが、いつの頃からか、島全体が、M県随一の富豪であるT市の菰田こもだ家の所有になっていて、以前は同家に属する漁師達の内
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
おきのほうから潮風しおかぜに吹かれて木の葉が二枚ひらひらと飛んできて、わしのそでにかかりました。それを手に取ってみると御熊野みくまのの山にたくさんあるなぎの葉なのです。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
おきとほつてゐて、印南野いなびぬ草原くさはらを、はるかにてゐる。そのうちに、とほ加古川かこかは川口かはぐちえてた。あの川口かはぐちは、つてゐるんだ。なつかしい舟泊ふなどまりのあるところだ。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
こうして、ガンたちは、またも暴風ぼうふうの中にはいりましたので、ますますおきへ吹き流されました。暴風は、一時も休まず、ガンたちも、片時かたときもじっとしていることができません。
かにばたれとも宿めどおきなびきしきみことわれを 〔巻十一・二七八二〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
横浜おきで歓迎船が見えだしてから、ぼくはあわてて、あなたの写真を内田さんと一緒にらせてもらいました。あなたの衣裳いしょうも顔もしわくちゃにレンズのなかにぼけて写っていました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
もつとも「チヌノウミ」は元來ぐわんらい和泉いづみ南部なんぶのチヌといふところおきせうしたのではあるが‥‥。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
昭和二年十月しようわにねんじゆうがつ、プラーグにける地震學科ぢしんがくか國際會議こくさいかいぎ出席しゆつせきしたかへみち大活動だいかつどうひんせるヴエスヴイオをひナポリから郵船ゆうせん筥崎丸はこざきまる便乘びんじようし、十三日じゆうさんにちアデンおき通過つうかするころ本稿ほんこうしる
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
なほ何處いづこにか惡魔あくまのひそみて、あやなきものをもおもはするよ、いざゆきふらばかぜふかばけ、方寸はうすんうみ波騷なみさわぎておき釣舟つりふねおもひもみだれんか、ぎたるそらかもめ春日はるひのどかになりなんむね
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
Mは体をらし濡らし、ずんずんおきへ進みはじめた。僕はMには頓着とんじゃくせず、着もの脱ぎ場から少し離れた、小高い砂山の上へ行った。それから貸下駄をしりの下に敷き、敷島しきしまでも一本吸おうとした。
海のほとり (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あのおきに、たくさんの小船こぶねにまじって、あの女の船が出て行くよ。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
おき横川よこかわと一緒に招魂社にまつられてもイイわけだ。
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
そして、おきへ向ってこぎ出しました。
おきへ出ると酔うぜ。きっと」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
おきほうには小舟おぶねが續いている。
そのかぜもなく、なみおだやかなであったから、おきのかなたはかすんで、はるばると地平線ちへいせん茫然ぼんやりゆめのようになってえました。
赤い船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
やまおきに並んで泛ぶこれも無用なる御台場おだいば相俟あいまって、いかにも過去った時代の遺物らしく放棄された悲しい趣を示している。
敦賀つるが良津りやうしんゆゑ苦勞くらうはないが、金石かないははうふねおきがかりして、なみときは、端舟はしけ二三里にさんりまれなければらぬ。これだけでもいのちがけだ。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
海の上ではだれも気にするものはなく、その笑い声まで櫓の音でくぎられながら、船はしだいにおきにすすみ、やがて対岸の村へと近づいてゆく。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
此時このとき電光艇でんくわうていはるかのおきから海岸かいがんちかづきたり、櫻木海軍大佐さくらぎかいぐんたいさは、無事ぶじ一隊いつたい水兵すいへいとも上陸じやうりくしてたので、陸上りくじやう一同いちどうたゞちに其處そこ驅付かけつけた。
あるとき為朝ためともうみばたに出て、はるかおきほうをながめていますと、しろいさぎとあおいさぎが二つれってうみの上をんで行きます。為朝ためともはそれをながめて
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
おきへ行って肥料こやしを釣ったり、ゴルキが露西亜ロシアの文学者だったり、馴染なじみの芸者がまつの木の下に立ったり、古池へかわずが飛び込んだりするのが精神的娯楽なら
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
康頼 (おきを眺める)この島に来るのなら! (考える)来るかもしれないぞ。わしは昨夜から不思議に胸騒むなさわぎがしていたのだ。何か大きな幸福が来るような……
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
「じゃ、こうしちゃいられねえ。てめえたちは、穴蔵あなぐらにいる子分を呼びあげて、すぐおきの鼻へ、船をまわして見張っていろ。おれはあとから、早船はやぶねで追いつくから」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
愉快ゆくわい! 電車でんしや景氣けいきよくはしす、函嶺はこね諸峰しよほうおくゆかしく、おごそかに、おもてあつしてちかづいてる! かるい、淡々あは/\しいくもおきなるうみうへたゞよふてる、かもめぶ、なみくだける
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
熊野くまのやまめぐりをしたときうたですが、おきとほはなれてうかんでゐるとりのようなふね、それがいま、そこにをつたかとおもふと、瞬間しゆんかんおよばないとほいところにかけつてつてゐることよ。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
児等こらしあらば二人ふたりかむをおきくなるたづあかときこゑ 〔巻六・一〇〇〇〕 守部王
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
おきはたの寫眞を見る人は柳、栴檀、櫨などのかげに、而も街の眞中まんなかを人工的水路の
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
いままた、ファルステルブーのおきのモークレッペン島のあたりに住んでいる水鳥たちが、三角やら、長い曲線きょくせんやら、クサビがたやら、半円やら、さまざまの妙な形をして飛んできました。
守らせおきの方は船手ふなてへ申付深川新地しんちより品川おき迄御船手ふなてにて取切御そなへの御船は沖中おきなかへ押出し其外鯨船げいせん數艘すそうを用意し嚴重げんぢうこそそなへける然ば次右衞門は桐棒きりぼう駕籠かごに打乘若徒わかたう兩人長柄ながえ草履ざうり取を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
が、勿論盗人の舟はそのあいだにもうおきの闇へ姿を隠していたのである。
保吉の手帳から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
二人ふたり空腹くうふく疲労つかれのために、もはや一歩いっぽうごくことができずに、おきほうをながめて、ぼんやりとかんばかりにしてっていました。
黒い旗物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
遠近をちこちやまかげもりいろのきしづみ、むねきて、稚子をさなごふね小溝こみぞとき海豚いるかれておきわたる、すごきはうなぎともしぞかし。
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大人おとなっぽくひざをだいておきを見ている大吉とにはさまれてすわると、どうしたのか自転車のことは口に出したくなくなった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)