はた)” の例文
「ウィルソン霧函」が、現在世界の物理学の主流となっている原子物理学の領域ではたしている任務の重さが十分理解されるであろう。
「茶碗の湯」のことなど (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
やぶれたるせん棋士きしけう中やはたして如何に? どんな勝負せうふ事もはい後に生くわつ問題もんだいうら附けるとなれば一そう尖鋭化せんえいくわしてくる事は明かだが
はたして島本しまもとは、とくに注意ちゅういはしなかつたけれど、金魚きんぎょたつていいました。そして、ひらひらしていてうつくしかつた、といつたんです
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
花柳くわりうに身をはたしたるものゆゑはなしもおもしろく才もありてよく用をべんずるゆゑ、をしき人にぜにがなしとて亡兄ばうけいもたはむれいはれき。
宗助そうすけにも御米およねにもおもけないほどたまきやくなので、二人ふたりともなにようがあつての訪問はうもんだらうとすゐしたが、はたして小六ころくくわんするけんであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其時そのとき貴方あなたひとに、解悟かいごむかひなさいとか、眞正しんせい幸福かうふくむかひなさいとかこと効力かうりよくはたして、何程なにほどふことがわかりませう。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
もっとわたくし申上もうしあぐるところがはたして日本にほんふる書物しょもつせてあることとっているか、いないか、それはわたくしにはさっぱりわかりませぬ。
のきいた運転士うんてんしくるまをつけたところが、はたしてそれであつた、かれ門前もんぜんくるまをおりて、右側みぎがわ坂道さかみち爪先上つまさきあがりにのぼつてつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
今や工学士油蹈天は、大任たいにんはたして、めでたくこの砂漠へ帰ってきたのであった。醤の喜びは、察するに余りある次第であった。
怨んで、出逢ひ次第討ちはたすと言つてゐたよ。尤も高木勇名といふ男は、一年ほど前から大病で、身動きも出來ないといふことだ
此日雲飛はちにつた日がたので明方あけがた海岱門かいたいもんまうで見ると、はたして一人のあやしげな男が名石めいせきかついで路傍みちばたに立て居るのを見た。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
栃木県の一部にはこの鳥をキヨモリという処があることを、これも『本草啓蒙』に録しているが、はたして現在まで伝わっているかどうか。
いさゝか平常ふだん化粧けしやうたがふことなかりしとぞ。いま庇髮ひさしがみ、あのおびたゞしくかほみだれたるびんのほつれは如何いかにはたしてこれなんてうをなすものぞ。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はたせる哉、鴎外は必定てっきり私が自己吹聴のため、ことさらに他人の短と自家の長とを対比して書いたものと推断して、怫然むっとしたものと見える。
鴎外博士の追憶 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
勘作はそのことばに従って石磴をおりて往った。そして、土手を内へ入って人家のある方へ歩いていると、はたして牛を牽いた老人ろうじんがやって来た。
ある神主の話 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
それは自分がはたす仕事ではなく、果させてもらう仕事であります。この意味で他力の道は易行いぎょうの道であり衆生の道であります。
益子の絵土瓶 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
それでどうてつふたつのうち、いづれかゞ使用しようされることになりましたが、はたしてどちらがさき使用しようされたかについてはいまなほ議論ぎろんがあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
ついでだからつてくが、わたくしはじこのふね乘組のりくんだときから一見いつけんしてこの船長せんちやうはどうも正直しようじき人物じんぶつではいとおもつてつたがはたしてしかり、かれいま
老人越遊ゑついうすゝめしこと年々なり。もとより山水にふけるへきあり、ゆゑに遊心いうしんぼつ々たれども事にまぎれはたさず。丁酉の晩夏ばんかつひ豚児せがれ京水をしたがへ啓行けいかうす。
汝の知らんと欲するは、はたされざりし誓ひをば人他のつとめによりてつぐのひ、魂をして論爭あらそひまぬがれしむるをうるやいなやといふ事是なり。 一三—一五
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
それでもかれ強健きやうけん鍛練たんれんされたうでさだめられた一人分にんぶん仕事しごとはたすのはやゝかたぶいてからでもあなが難事なんじではないのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
コロボツクルの男子中はたして衣服をつけざる者有りとせばアイヌはじつに其無作法ぶさはふおどろきしならん。氣候の寒暖かんだんは衣服の有無を决定けつていするものにあらず。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
かくも、山頂さんてう凸起とつきする地點ちてん調査てうさこゝろみ、はたして古墳こふんであるかいなかをたしかめる必用ひつようしやうじたので、地主側ぢぬしがは請願せいぐわんもあり
帰国以来僕は心に創痍きずを得て、いまだ父の墓参をもはたさずにゐる。家兄の書信にると八十吉は十二で死んでゐるから僕の十一のときであつた。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
これで何百年来この山国をさわがした𤢖の眷族けんぞくも、はたして全滅したであろうか。あるいなお其余類そのよるいが山奥にひそんでいるであろうか。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
丁度あつらえたように十五夜のまん丸な月が其上に出て居た。然し其時はあわたゞしい旅、山に上るもはたさなかった。今はじめて其ふところ辿たどるのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しかれども水神ありて華陰かいんの夜に現われ、たまを使者に托して、今年祖龍そりゅう死せんとえば、はたして始皇やがて沙丘しゃきゅうに崩ぜり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
唯物論者ゆゐぶつろんしやや一般の科学者は物体が唯一ゆゐいつの実在であつて、万物は皆物力の法則に従ふと言ふ。しかし実在の真相ははたしてかくのごときものであらうか。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
其からは落第の恥辱をすすがねばかぬと発奮し、切歯せっしして、扼腕やくわんして、はたまなこになって、又鵜の真似を継続してった。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
お前ははたして、しんじつはたしてここにいるならば、わたしの今の話を聴取ることが出来るだろう——今ちょっとあの鴉をお前の墓の上へ飛ばせて御覧
(新字新仮名) / 魯迅(著)
二郎が耳にした物悲しき横笛フリュートの音、今又この死体を飾る、可憐なる野菊の花束、これははたして何を語るものであろう。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それから二人は、「まあかく行ってみよう」と云って、一緒に墓所へ出掛けて行った。見ると、はたして、墓石の字の、「本」が「木」になっている。
□本居士 (新字新仮名) / 本田親二(著)
途中で一度彼は席を離れて、何か仲間に通信でもしたい風でしたが、私が傍を離れなかったのではたしませんでした。
急行十三時間 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
舌打ちをしながら押し分けて進むと、いつか爪先が仰ぐようになる。此笹原が峠の頂上だったのだ。東の斜面を少し下った処にはたして雪田が現われた。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
長吉は観劇に対するこれまでの経験で「夜」と「川端かわばた」という事から、きっところに違いないと幼い好奇心から丈伸せのびをして首をのばすと、はたせるかな
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
前様めえさまア留守勝でうちの事は御存じござんねえが、悪戯いたずらはたすかは知らねえが、頑是がんぜがねえとおにもなんねえ正太郎だから、少しぐれえの事は勘弁して下さえ
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「無礼をするな、拙者は御徒町おかちまちの島田虎之助じゃ、はたいならば時を告げてきたれ、恨みがあらばそのよしを言え」
その次にふり向いたとき、はたせるかな、殆ど目の前の対岸から、はつきりと彼の方を向き、ためらひながら何か云ひたげにしてゐるやうな相手の顔を見た。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
これに対してヨブは答えるのである「神がはたしてかくの如きものならば世のこの状態は何のゆえぞ、善人かえって衰え悪人かえって栄えつつあるにあらずや」
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
ここおい呉起ごき公主こうしゆの・しやういやしむを(一〇四)はたして武矦ぶこうす。武矦ぶこうこれうたがうてしんぜず。呉起ごきつみるをおそれ、つひり、すなはく。
従来藤原村ふじはらむら三十六万町歩即凡そ十三里四方ありとごうする者はたしてしんなりやいなや動植物どうしよくぶつおよび鉱物の新奇しんきなるものありや否等をきはむるにり、又藤原村民の言に曰く
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
(多分肺結核であらう。男は話をし乍らも、何遍も咳入った)そこで仕方なしに、那覇で仕事の口を捜さうとしてる中に有金を使ひはたして宿屋を逐ひ出された。
奥間巡査 (新字旧仮名) / 池宮城積宝(著)
きらひて幼年なれば今四五年も相待あひまつべしととゞめ候故本意ほんいなくは思へども師匠の仰せ默止難もだしがたく是迄は打過うちすぎ候なり此度こそさいはひに日頃の宿願しゆくぐわんはたすべき時なり何卒此儀このぎ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
はたして妻は糟毛かすげがお産をしました。親の乳も余りはりません こうしも小さい。月が少し早いようですと報告した。予も起きて往て見ると母牛のうしろ一間いっけんばかりはなれて。
牛舎の日記 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
私はその子の麦稈帽むぎわらぼうを軽くたたいた。かの小さな美しい城の白光はっこうはたしていつまでこのおさない童子どうしの記憶にあかるであろうか。そしてあの蒼空が、雲の輝きが。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
このあいちやんはローリーてうはたしていくとしとつてるか、それをかないうち承知しようちしませんでした、がローリーてううしても其年齡そのとしふのをこばんだものですから
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
はたして外国人に干渉かんしょうの意あらんにはこの機会きかいこそいっすべからざるはずなるに、しかるに当時外人の挙動きょどうを見れば、別にことなりたる様子ようすもなく、長州騒動そうどう沙汰さたのごとき
アウステルリッツのどの赫々たる日がこの光栄に——かつて「精神エスプリ」がはたし得た最も輝かしい光栄
あのチブスは、ローウッドで傳染の使命をはたすと、次第に衰へて行つた。しかしそのうちに病氣の害毒と犧牲者の數とが學校に世間の注意を惹くやうな結果を齎した。
どもは天の眷属けんぞくでございます。つみがあってただいままで雁の形をけておりました。只今ただいまむくいをはたしました。私共は天に帰ります。ただ私の一人の孫はまだ帰れません。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)