とゝの)” の例文
わすれてゐることはないかとかんがへて見るが、萬事手はづとゝのつてゐる。そこで金太郎は、二時間といふわづかな時間をもてあましてしまふ。
坂道 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
さてまたわれらの情は、たゞ聖靈のこゝろかなふものにのみもやさるゝが故に、その立つる秩序によりてとゝのへらるゝことを悦ぶ 五二—五四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
で、鼻はひしやげて、唇も厚かつたし、顔の輪廓もとゝのつた方ではなかつたにしても、決して悪い感じの顔ではないことに気がついた。
復讐 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
其後そのご雲飛うんぴ壮健さうけんにして八十九歳にたつした。我が死期しききたれりと自分で葬儀さうぎ仕度したくなどをとゝの遺言ゆゐごんして石をくわんおさむることをめいじた。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
あんなに喰ひ附いてゐたおほかみ連は薄情にも顏を見せず、町内附合ひで仕樣事なしの老人達が、型通りの仕度をとゝのへて檢屍を待つて居るのでした。
おもふに男心をとこごゝろたのみがたさよ周旋とりもちするとしてこととゝのふはうれしけれど優子いうこどのゝこゝろえたり三らうよろこびしとつたたまへとはあまりといへどむかしを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
眼鼻立めはなだちも同じやうにとゝのつてゐた。けれども彼女の表情には、何處となく打ち解けない所があり、態度にもしとやかなうちにいくらか隔てがあつた。
門口かどぐちだれ所有しよいうともかないやなぎが一ぽんあつて、ながえだほとんのきさはりさうにかぜかれるさま宗助そうすけた。には東京とうきやうちがつて、すこしはとゝのつてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ミュンヘンには、また自然科學しぜんかがく、(理科りか)にかんする方面ほうめん博物館はくぶつかんで、世界中せかいじゆう一番いちばんよくとゝのふたものが近頃ちかごろてられました。ドイツ博物館はくぶつかんといふのがそれです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
此方こなた海底戰鬪艇かいていせんとうていは、われ敵抗てきこうする艦隊かんたいありとらば、戰鬪凖備せんとうじゆんびとゝのふるしやおそしや、敵艦てきかん非裝甲軍艦ひさうかうぐんかんならば、併列水雷發射機へいれつすいらいはつしやき使用しようするまでもなく
でも、こゝには、金銀如山きんぎんやまのごとく綾羅りようら錦繍きんしう嘉肴かかう珍菓ちんくわ、ありあまつて、ほ、りないものは、お使者ししやおにたゝくととゝのへるんです、それに不足ふそくはありません。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
雖然お房は、周三が是迄これまで使つたモデルのうちですぐれて美しい………全て肉體美のとゝのつてゐる女である。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
申入るゝ者多かりしが今度このたび同宿どうしゆく杉戸屋すぎとやとみ右衞門が媒人なかうどにて關宿せきやどざい坂戸村さかとむらの名主是も分限ぶんげんの聞えある柏木庄左衞門かしはぎしやうざゑもんせがれ庄之助に配偶めあはせんとてすで約束やくそくとゝの双方さうはう結納ゆひなふ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
また源氏物語の「綜合」に、「いとど心をつくして、軸、表紙、紐の飾り、いよいよとゝのへ給ふ」
いよ/\といふた。荷物にもつといふ荷物にもつは、すつかりおくられた。まづをとこ一足ひとあしきに出發しゆつぱつして先方せんぱう都合つがふとゝのへ、それから電報でんぱうつて彼女かのぢよ子供こどもぶといふ手筈てはずであつた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
「御指揮に及ばず、其証拠を御覧に入れるのです」と松本は手を揚げて之を制しつ「彼は愈々いよ/\山木剛造の長女梅子と結婚の内約とゝのひ、伊藤侯爵が其媒酌人ばいしやくにんたることを承諾したのである、 ...
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
ロレ さゝ、嫁御寮よめごれう教會行けうくわいゆき身支度みじたくとゝのひましたかの?
萬物ばんぶつなべとゝのふり、折りめ正しく、ぬめらかに
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
とゝのひきよき妻がさね
この日 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
善美ぜんびまつたくとゝのへば
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
出づれば、その道まさり、その伴ふ星またまさる、しかしてその己がさがに從ひて世の蝋をとゝのかたすこといよ/\いちじるし 四〇—四二
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
まことに狹い家ですが、よくとゝのつて、何から何まで一と目に見られるやうになつて居り、商賣柄の大金などは、此處には置いてない樣子です。
寢室の窓を開けて、何ももすつかり、きちんととゝのへて、化粧臺の上に置いてあるのを見ると、私はいさんで室を出た。
十四あさぼく支度したく匆々そこ/\宿やどした。銀座ぎんざ半襟はんえりかんざし其他そのたむすめよろこびさうなしなとゝのへて汽車きしやつた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
彼女かのぢよはその方面はうめんに、これといふほど判然はつきりしたとゝのつた何物なにものつてゐなかつたからである。二人ふたり兎角とかくして會堂くわいだう腰掛べんちにもらず、寺院じゐんもんくゞらずにぎた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
『クロマニヨン』じんは、頭腦ずのうおほきく恰好かつこうとゝのうてをり、けっして野蠻人やばんじんといふことの出來できない體格たいかくぬしでありますからこそ、かようなものがつくられたのです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
夫は何故なりやと尋るに然ればかね御門跡樣ごもんぜきさまへ百兩あげたいと思ひ御屋敷より頂戴ちやうだい御目録おもくろく又は入ぬ物を賣拂うりはらひ漸々やう/\百兩とゝのへし故此御講おかううちに上る願ひ是を見給へと百兩包を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
巨額きよがく金銀貨きんぎんくわ積込つみこみもをはると、わたくし武村兵曹たけむらへいそうとは身輕みがる旅裝たびじたくとゝのへて搖籃ゆれかごなかへと乘込のりこんだ。
足のかたちでもこし肉付にくつきでも、またはどうならちゝなら胸なら肩なら、べて何處どこでもむツちりとして、骨格こつかくでも筋肉きんにくでも姿勢しせいでもとゝのツて發育はついくしてゐた。加之それにはだしろ滑々すべ/″\してゐる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
かれはしばらく奈美子なみこ同棲どうせいしてゐた郷里きやうり世帯しよたいをたゝんで、外国ぐわいこくへわたる準備じゆんびとゝのへるために、そのとき二人ふたり上京じやうきやうして、竹村たけむらちかくに宿やどつてゐた。かれなんとなくいら/\してゐた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
ときに、一歩いちぶ路用ろようとゝのへて、平吉へいきちがおはむきに、なゝツさがりだ、掘立小屋ほつたてごやでも一晩ひとばんとまんねな兄哥あにい、とつてくれたのを、いや、瓜井戸うりゐど娼妓おいらんつてらと、れいおれが、でから見得みえつた。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さま/″\の聲下界にてうるはしきふしとなるごとく、さま/″\のくらゐわが世にてこの諸〻の球の間のうるはしきしらべとゝのふ 一二四—一二六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
そんな問答のうちに、平次は支度をとゝのへて外へ出ました。明神下から本郷一丁目まで、八五郎との問答は續きます。
絨毯は敷かれ、寢臺ベッドの掛布は花綵で飾られ、かゞやくやうに眞白な寢臺の上掛は擴げられ、化粧臺もとゝのへられ、家具も磨かれ、花瓶には花がられてあつた。
よろこれいもそこ/\支度したくとゝの其日そのひ出立せしが日光と云は元來うそなれば夫より芝邊しばへんへ行て四五日
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
日本につぽんにおいても將來しようらいまうけられる博物館はくぶつかんは、かうした設備せつびとゝのへる必要ひつようがあるとおもひます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
丁度ちやうど此時このとき休憩所きうけいしよでは乘船のりくみ仕度したくとゝのつたとへ、濱島はまじましきりにわたくしこゑきこえた。
列座れつざ方々かた/″\、いづれもかね御存ごぞんじのごとく、それがし勝手かつて不如意ふによいにて、すで先年せんねん公義こうぎより多分たぶん拜借はいしやくいたしたれど、なか/\それにて取續とりつゞかず、此際このさい家政かせい改革かいかくして勝手かつてとゝのまをさでは、一家いつかつひあやふさふらふ
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ぐチヨークをとゝの畫板ぐわばんひつさまたそとした。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
お里は二十歳といふにしては、少しふけて居りますが、これが一番美しく、やゝ淋しい感じのするのは、顏立ちのとゝのひ過ぎてゐるせゐかもわかりません。
これ彼と結びてはたらき、まづ凝固こりかたまらせ、後己が材としてそのかたとゝのへる物に生命いのちを與ふ 四九—五一
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
つゝとわし片翼かたつばさながひらいたやうに、だんをかけてれつとゝのふ。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
我嘗て騎兵の陣を進め、戰ひを開き、軍をとゝのへ、或時はまた逃げのびんとて退くを見き 一—三
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
格子戸の中、あかりから遠い土間に立つたのは、二十三——四の年増、ガラツ八が言ふほどの美い縹緻きりやうではありませんが、身形みなりも顏もよくとゝのつた、しつかり者らしい奉公人風の女です。
身扮みなりが綺麗で、小商人の番頭か何んかのやうにとゝのつて居るばかりでなく、左右の足には少しの不揃ひはあるが、昆布卷のボロを取つてしまつて、ゐざりでも何んでもなく、それに色こそ黒けれ