掃除さうぢ)” の例文
「隣の庭のやぶの中にありましたよ。ろくに掃除さうぢをしない上に、草がひどいから、虫も蛇も出さうで、難儀な搜しものでしたよ、親分」
掃除さうぢんだひやりとした、東向ひがしむき縁側えんがはると、むかやしきさくらたまあらつたやうにえて、やほんのりと薄紅うすべにがさしてる。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
には卯平うへい始終しじゆくさむしつて掃除さうぢしてあるのに、蕎麥そばまへに一たん丁寧ていねいはうきわたつたのでるから清潔せいけつつてたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
墓塲はかば掃除さうぢ男衆をとこしゆたすくるまではたらけば、和尚おしやうさま經濟けいざいより割出わりだしての御不憫ごふびんかゝり、としは二十からちがうてともなきことをんな心得こゝろゑながら
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
昼寐ひるね夜具やぐきながら墓地ぼちはう見下みおろすと、いつも落葉おちばうづもれたまゝ打棄うちすてゝあるふるびたはか今日けふ奇麗きれい掃除さうぢされて、はな線香せんかうそなへられてゐる。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
寢食しんしよくことまをすにおよばず、器物きぶつ取扱とりあつかひことみづこと掃除さうぢこと其外そのほかさい仕事しごとくわんしてみん銘々めい/\獨立心どくりつしんつておこなへば自然しぜん責任せきにんおもんずるやうになる。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
せんものと未明みめいより下男げなん善助相手あひてとし寶澤にも院内ゐんない掃除さうぢさせけるがやゝ片付かたづきて暮方になりはやのこる方なく掃除さうぢ仕舞しまひければ善助は食事しよくじ支度したくをなし寶澤は神前の油道具あぶらだうぐ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
書齋しよさいまへ小庭こには奇麗きれい掃除さうぢがしてつて、其處そこへはとりれないやうにしてあります。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
案内して下さいとふと、「へいかしこまりました」とつてはかへ案内して掃除さうぢしてくれましたから、はかの前にむかつてわたし縁類えんるゐでもなんでもないが、先祖代々せんぞだい/\囘向ゑかうをしながら、只見とみると
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
かれまはりを掃除さうぢするニキタは、其度そのたびれい鐵拳てつけんふるつては、ちからかぎかれつのであるが、にぶ動物どうぶつは、をもてず、うごきをもせず、いろにもなんかんじをもあらはさぬ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
此石その先農夫せんのうふいへうしろの竹林を掃除さうぢして竹の根などるとてかの石一ツを掘得ほりえたり。
それから、Mairマイル のところに行つた。部屋もゆかも綺麗に掃除さうぢがしてあり、卓のうへには置物なども置いて呉れてあつた。家族のものは此部屋を私に貸して手狭いところに移つたらしい。
南京虫日記 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
たまには激浪げきらう怒濤どたうもあつてしい、惡風あくふう暴雨ぼううもあつてしい、とつて我輩わがはいけつしてらんこのむのではない、空氣くうきが五かぜよつ掃除さうぢされ、十あめよつきよめられんことをこひねがふのである。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
「父は掃除がやかましくて、障子のさんや、長押なげしの上を一々指で撫でて見る人でした。現に昨日もその欄間をよく掃除さうぢさせたばかりで」
水底みづそこ缺擂鉢かけすりばち塵芥ちりあくた襤褸切ぼろぎれくぎをれなどは不殘のこらずかたちして、あをしほ滿々まん/\たゝへた溜池ためいけ小波さゝなみうへなるいへは、掃除さうぢをするでもなしにうつくしい。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いつの掃除さうぢをしたものか朝露あさつゆ湿しめつた小砂利こじやりの上には、投捨なげすてたきたな紙片かみきれもなく、朝早い境内けいだいはいつもの雑沓ざつたふに引かへてめうに広く神々かう/″\しくしんとしてゐる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
障子しやうじもないすゝつた佛壇ぶつだんはおつぎを使つかつて佛器ぶつきその掃除さうぢをして、さいきざんだ茄子なすつたいもと、さびしいみそはぎみじかちひさな花束はなたばとをそなへた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
つままつらん夕烏ゆふがらすこゑ二人ふたりとりぜんさいものふてるやら、あさがけに水瓶みづがめそこ掃除さうぢして、一日手桶てをけたせぬほどの汲込くみこみ、貴郎あなたひるだきで御座ございますとへば
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
門番もんばんところで花を買つて十せん散財さんざいして、おはか掃除さうぢして下さい、塩原多助しほばらたすけはか此方こちらでございませうか、わたし塩原しほばら縁類えんるゐの者でございますが、始めてまゐつたのではかは知りませぬから
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
此石その先農夫せんのうふいへうしろの竹林を掃除さうぢして竹の根などるとてかの石一ツを掘得ほりえたり。
急ぎ日ならず江戸に着ければ知己しるべ周旋せわにて日本橋むろ町三丁目の番人にかゝへられつとめけるが元來正直しやうぢきの九助故町内の氣請きうけよく月に三貫文の外に草履ざうり草鞋わらんぢ其他荒物あめなど賣ける中駿河するが町越後屋三家の掃除さうぢ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
此處邊こゝらすこ掃除さうぢしたいものだな、ニキタ。ひどにほひだ。』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「お客が歸るとお島さんを呼んで掃除さうぢをさせつかれたからと仰有つて一杯召し上がつて、朝のうち忘れてゐたきうを据ゑさしたやうで」
かれ座敷ざしきうち掃除さうぢをして毎朝まいあさ蒲團ふとん整然ちやん始末しまつするやう寡言むくちくちからおつぎに吩咐いひつけた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
が、暮方くれがた掃除さうぢると、おなじやうに、ずらりとならんでそろつてた。これきのこなればこそ、もまはさずに、じつとこらへてわたしにははなさずにかくしてた。わたし臆病おくびやうだからである。
くさびら (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今日けふよりすぐにおまをしまする、敷金しきゝん唯今たゞいまいてまゐりまして、引越ひきこしはこの夕暮ゆふぐれ、いかにも急速きふそくでは御座ござりますが直樣すぐさま掃除さうぢにかゝりたう御座ござりますとて、なん仔細しさいなく約束やくそくはとゝのひぬ。
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そして知らず/\あとを追ふて仲店なかみせつきるあたりまで来たが、若い芸者の姿すがた何処どこ横町よこちやうまがつてしまつたものか、もう見えない。両側りやうがはの店では店先を掃除さうぢして品物をならべたてゝゐる最中さいちゆうである。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「お傳はお勝手のお仕舞、六助は小買物で外に居たさうで。金太は舞臺の掃除さうぢで、與三郎は木戸を閉めて居たさうでございます」
五月雨さみだれのしと/\とする時分じぶん家内かないあさあひだ掃除さうぢをするときえんのあかりでくと、たゝみのへりを横縱よこたてにすツと一列いちれつならんで、ちひさい雨垂あまだれあしえたやうなもののむらがたのを
くさびら (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
始終とほしごたごたしてらち御座ござりませぬといふ、めうことのとおもひしが掃除さうぢのすみて日暮ひぐれれがたに引移ひきうつきたりしは、合乘あひのりのほろかけぐるま姿すがたをつゝみて、ひらきたるもん眞直まつすぐりて玄關げんくわんにおろしければ
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
平次の女房のまだ若くも美しくもあるお靜が、入口の掃除さうぢをしてゐるところへ、大きい影法師を這はせて、ノツソリと八五郎は立ちました。
「この手紙は昨夜ゆふべ宵のうちに格子の中へ投り込まれたらしいが、見付けたのは今朝掃除さうぢのときだ、お前の方は——」
尤もこの女は掃除さうぢ氣違ひで、朝から晩まではうきと雜巾を離さないといふ變り者で、男をきたながつて、自分の亭主も側へ寄せつけないといふから怖いでせう
見渡したところ、一と通り掃除さうぢも屆き、火鉢には極く最近炭火を起した形跡もあり、其邊の樣子が何んとなく人間臭く整頓してゐるではありませんか。
一應も二應もつた家で、庭の掃除さうぢもよく行屆き、向うの方には銘木めいぼくたくはへて置く物置やら土藏やら、滅多に開けたことのない門などが見えてをります。
「たまには耳も掃除さうぢして置くんだぜ、いゝ若い者が、こんな汚い耳をして居ちや、お琴さんだつて、結構なことを囁やく氣にもなれないだらうぢやないか」
その後ろ姿を見送つて、小さい窓のところに引返すと、小僧の品吉が、せつせと庭の掃除さうぢなどをして居ります。
「暮れ六つには店を閉めて、多勢の奉公人が手分けをして掃除さうぢをするんだぜ。顏を知らないのが一人でもマゴマゴして居りや、直ぐ大騷ぎになるぢやないか」
座敷牢の中は掃除さうぢが屆かないものか、いくらかほこりつぽくなつて居り、雨戸を開けると、頑丈な格子を通して、青葉にされた光線が、無氣味な青さを漂はせます。
仕事場の方では、手代の伊之助が指圖して、近所の衆が掃除さうぢやら佛の始末やらに働いてゐる樣子。
「へツ、たつた一人で置くから、掃除さうぢする張合ひもないんで、これで、引つ張り込む女の子の當てでもありや、たつた半日でめるやうに綺麗にしてお目にかけますよ」
日照ひでり續きの庭に箒目はうきめ美しく掃除さうぢが屆いて、其處には足跡らしいものもなく、縁側は行止りですから、若しお鈴が人に殺されたものとすれば、曲者は外から入つたのでなく
掃除さうぢをして置く樣に、人が來ると見つともないからと、米松どんに言ひつけられました」
お榮はお勝手に頑張ぐわんばつて居たわけではなく、曲者はお榮が部屋の掃除さうぢでもして居る間に、そつと忍び込んで、仕掛けた味噌汁の鍋の中に、毒藥を抛り込む隙は充分にある筈です。
六疊はまだ掃除さうぢが濟まなかつたものか、斑々はん/\たる血潮で、昨夜の慘劇ざんげきがよく解ります。
下足番の種吉が一人で掃除さうぢをして居りましたが、それに訊くと、お孃さんの姿なんか見掛けないと、——劍もほろゝの挨拶ぢやありませんか、片輪者の癖に、小癪こしやくにさはる男ですが
親分さんですかえ、お見それ申しました、——そのことなら、もう何度も話しましたが、正直のところ、私は何んにも知りませんよ、お客が皆んな出てしまつた後は、あつしが掃除さうぢ
放埒はうらつに身を持崩した末五十過ぎてから兄の家に轉げ込み、障子も張れば便所の掃除さうぢもすると言つた、恐ろしく氣の輕い男で、鼻唄交りにその日/\を暮してゐる札付の放浪者ボヘミアンでした。
いや、曲者が入つたのは、まだ宵のうちだ、——この通りお茶も呑まずに居るし、よく掃除さうぢした煙草盆には、灰殼はひがらも殘つては居ない。——曲者は多分伊八のよく知つて居る人間だらう。
あゆみを移して、その小さい建物の前に立つと、入口の掃除さうぢをして居たらしい娘が