喧嘩けんくわ)” の例文
が、道行みちゆきにしろ、喧嘩けんくわにしろ、ところが、げるにもしのんでるにも、背後うしろに、むらさと松並木まつなみきなはていへるのではない。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ばんごと喧嘩けんくわをしてめてやるのだが隨分ずゐぶんおもしろいよとはなしながら、鐵網かなあみうへもちをのせて、おゝ熱々あつ/\指先ゆびさきいてかゝりぬ。
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
海岸かいがんで、とび喧嘩けんくわをしてけたくやしさ、くやしまぎれにものをもゆはず、びをりてきて、いきなりつよくこつんと一つ突衝つゝきました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
かきは顔をしかめて、しよんぼり立つてこの喧嘩けんくわをきいてゐましたがこのとき、にはかに林の木の間から、東の方を指さして叫びました。
かしはばやしの夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
お前からいふと、おれ虚弱きよじやくだからとひたからうが、俺からいふとお前が強壯きやうさうぎるとひたいね。しか他一倍ひといちばい喧嘩けんくわをするからいぢやないか。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「えゝよ卅までひとりぢやかねえかられげはいまにむことんだから」勘次かんじ喧嘩けんくわでもするやう容子ようすこはばつたしたでいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
このんで見んこと則ち眼の毒なる可し又花のもと醉人すゐじん騷客さうかく所狹ところせまきまで雜沓ざつたうすれば喧嘩けんくわ口論間々まゝありて側杖打るゝ人もあり然るを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
よひくちにははしうへ与太よた喧嘩けんくわがあるし、それから私服しふくがうるさく徘徊うろついてゝね、とう/\松屋まつやよこで三にんげられたつてふはなしなんだよ。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
八太郎の家はもう犬で一杯で、わんわん、くんくん、えたり鳴いたり、喧嘩けんくわしたりふざけたり、大変な騒ぎでした。
犬の八公 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
それを人間で言へばやりや刀の代りに使つて、のべつ幕なしに喧嘩けんくわをしたり、戦争をしたり、始末におへないので、世界中は治まりがつきませんでした。
悪魔の尾 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
こんなふうはなしをしてゐたら、おしまひには喧嘩けんくわになつてしまひませう。ところが喧嘩けんくわにならないまへに、一ぴきかへるみづなかからぴよんとしてました。
お母さん達 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
『ミユンヘン人は何でも真直まつすぐに物云ひますから、先生も喧嘩けんくわなすつちやいけませんよ』などと云つたことがある。
日本媼 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
まちには、病院びやうゐん新院長しんゐんちやういての種々いろ/\うはさてられてゐた。下女げぢよ醜婦しうふ會計くわいけい喧嘩けんくわをしたとか、會計くわいけい其女そのをんなまへひざつて謝罪しやざいしたとか、と。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そして、ひとかど、かんがんで、眞面目まじめかほをして、一寸ちよつとつて頂戴ちやうだいつて頂戴ちやうだいつたら、と喧嘩けんくわしてゐる。
篠田は語りつづく「人間のもつとも耻づかしいのは、虚言うそを吐くことです、喧嘩けんくわすることです、まけることです」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
左様さうすれば、口は減るし、喧嘩けんくわの種は無くなるし、あるひは家庭うち一層もつと面白くやつて行かれるかも知れない。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
何ともしやうがないことぢやないか。僕は喧嘩けんくわするつもりはないんだし、また喧嘩を吹かけられる程の弱味のない人間なんだから喧嘩がはじまる訳はないんだ。
椎の若葉 (新字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
鈴木三重吉すずきみへきち久保田万太郎くぼたまんたらうの愛読者なれども、近頃は余り読まざるべし。風采瀟洒せうしやたるにもかかはらず、存外ぞんぐわい喧嘩けんくわには負けぬ所あり。支那にわたか何か植ゑてゐるよし。
学校友だち (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
なんのかのとくだでも巻いてゐたか何様どうか知らないが、細くない根性の者同士、喧嘩けんくわもせずに暮して居た。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「だつて二人になると、お互の間の闘争と妥協とで精一杯だ。正直になれば喧嘩けんくわだ。狭くなれば探り合ひかマヤカシだ。意志なんてものを認める余裕はありはしないよ。」
静物 (新字旧仮名) / 十一谷義三郎(著)
岩田屋いはたや旦那だんなれられてはまつて、まつさんと喧嘩けんくわアしてかへつてた時になんとおひだえ、あゝ口惜くやしい、真実しんじつ兄弟きやうだいにまで置去おきざりにされるのもおれが悪いばかりだ
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ところが、ある朝、つばめがツーイ/\と、とんで来て見ますと、畑のまん中で、作物たちの、喧嘩けんくわがはじまつてゐました。よく見るとそれは、なすときんまくわとでした。
きんまくわ (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
ぴき小猿こざるが「おれのお父様とつちあんはおまへえらいんだぜ、うさぎ喧嘩けんくわをしてつたよ」とひました。
喧嘩けんくわなら喧嘩けんくわでもいが、しりえんもゆかりもない船客せんかくにもつてるとはひどい。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
当前あたりまへなら内へ帰るべきであらう。店賃たなちんが安いので此頃このごろ越して来た、新しいこけらぶきから雨の漏る長屋である。しかしそこは恐ろしい敵がゐる。八はいつでも友達と喧嘩けんくわをすることをはばからない。
金貨 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「なア、畜生でも……これは屹度きつとこの小い熊の子のために親同志が喧嘩けんくわをして死んだのだらう……」と云つてゐる時、やぶかげからコソ/\と小い猪の子が出て来て、ぐ逃げてしまひました。
熊と猪 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
いふまでもなく先生はわたしの三田文科ぶんくわ生時だいからの先生であるが、球突たまつきでは始終ししう喧嘩けんくわあひ手で、銀座裏ぎんざうらの日勝亭せうてい勝負せうふあらそつて、その成績せいせきで風月どう洋食ようしよくのおごりつこをしたなどもしばしばである。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
それはまつたれにちがひなかつたが、たゞあいちやんははれたのが口惜くやしくてたまらず、『まァ、おそろしいこと、澤山たくさん動物どうぶつ喧嘩けんくわしてるンですもの。其麽そんなところもの狂人きちがひだわ!』とつぶやきました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
喧嘩けんくわの一部分として、ひとおこらせるのは、おこらせる事自身よりは、おこつたひと顔色かほいろが、如何に不愉快にわがえいずるかと云ふ点に於て、大切なわが生命をきづつける打撃にほかならぬと心得てゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あつ 喧嘩けんくわをするんぢやないよ よしなつてば
馬方うまかた馬方うまかた喧嘩けんくわをはじめました。すなツぽこりの大道だいどうべたで、うへになつたりしたになつたり、まるであんこ のなか團子だんごのやうに。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
ことの起原おこりといふのは、醉漢ゑひどれでも、喧嘩けんくわでもない、意趣斬いしゆぎりでも、竊盜せつたうでも、掏賊すりでもない。むつツばかりの可愛かはいいのが迷兒まひごになつた。
迷子 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ところがこのとき、さっきの喧嘩けんくわをした二ひきの子供のふくろふがもう説教を聴くのはきてお互にらめくらをはじめてゐました。
二十六夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
大門際おほもんぎわ喧嘩けんくわかひとるもありけり、よや女子をんな勢力いきほひはぬばかり、春秋はるあきしらぬ五丁町てうまちにぎわひ、おくりの提燈かんばんいま流行はやらねど
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
失望しつはう煩悶はんもんとがごツちやになツてへず胸頭むなさき押掛おしかける………其の苦惱くなう、其のうらみ、誰にうつたへやうと思ツても訴へる對手あひてがない。喧嘩けんくわは、ひとりだ。悪腕わるあがき
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
殺せし時手傳てつだひて共々とも/″\殺したで有うなと故意わざと疑ひのことばまうけられしかば彌十はおもてたゞ否々いや/\私し儀は其節喧嘩けんくわの聲を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ひなたの枇杷びはの花に来る蜂の声と、お宮の杉のうへと宝蔵倉のむねにわかれて喧嘩けんくわをしてゐる烏の声のほかは何もきこえないくらゐしづかにすぎていきました。
鳥右ヱ門諸国をめぐる (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
今はふさがつてゐるけれど、四五日てばどれかが明くといふことである。かへりみちで、日本媼の息子は、『民顕ミユンヘン人は何でも真直まつすぐに物いふから喧嘩けんくわしてはいけませんよ』
南京虫日記 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
かゝあとろつぴ催促せえそくき/\したんだが、くつちやらんねえからつて喧嘩けんくわかけるつちんだからかゝあ忌々敷えめえがしがつてたがさき不法ふはふなんだから駄目だめでさね、それどこぢやねえ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
木精は風がはりなたちで、人は人、自分は自分といふ風で、ほかの妖精を自分の国に住まはせません。それだからといつて、別だん、他の妖精と喧嘩けんくわをするわけでもありません。
虹猫と木精 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
あらゆる記憶の数々かず/\が電光のやうにひらめく。最初地方町ぢかたまちの小学校へ行くころは毎日のやうに喧嘩けんくわして遊んだ。やがてはみんなから近所の板塀いたべい土蔵どざうの壁に相々傘あひ/\がさをかゝれてはやされた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
あの釣と昼寝と酒より外には働く気のない老朽な父親、泣く喧嘩けんくわする多くの子供、就中わけても継母——まあ、あの家へ帰つて行つたとしたところで、果してこれから将来さき奈何どうなるだらう。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
僕はけふ往来に立ち、車夫と運転手との喧嘩けんくわを眺めてゐた。のみならず或興味を感じた。この興味は何であらう? 僕はどう考へて見ても、芝居の喧嘩を見る時の興味と違ふとは考へられない。
この国には喧嘩けんくわもなければ裁判もなく、人の悪口を言ふものも無ければ
蚊帳の釣手 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
小六ころくこの氣樂きらくやうな、愚圖ぐづやうな、自分じぶんとはあまりにへだつてゐるあにを、何時いつ物足ものたりなくはおもふものゝ、いざといふ場合ばあひに、けつして喧嘩けんくわはしなかつた。此時このとききふ癇癪かんしやくつのられた氣味きみ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
自分等じぶんらる三ぐわつ喧嘩けんくわをした——丁度ちやうどれが狂人きちがひになる以前まへさ——』(三月兎ぐわつうさぎはう茶匙ちやさじして)——『それは心臟ハート女王クイーンつてひらかれた大會議だいくわいぎがあつて、わたしういふうたうたつたときでした ...
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
(これこれみんな喧嘩けんくわをするな‼)
清作はもちろん弁解のことばなどはありませんでしたし、面倒臭くなつたら喧嘩けんくわしてやらうとおもつて、いきなり空を向いて咽喉のどいつぱい
かしはばやしの夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
さうおこつてはこまる喧嘩けんくわしながら歩行あるく往来わうらいひとわらふぢやアないか。だつてあなたが彼様あんなことばつかしおつしやるんだもの。
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
なんだつて、また……大病人たいびやうにん釣臺つりだいでかゝへてて、往來わうらい喧嘩けんくわ出來できない義理ぎりですから、睨着にらみつけてのまんま歩行あるいたさうです。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)