ふた)” の例文
「みなみへ行ったなんて、ふたとこでそんなことを言うのはおかしいなあ。けれどもまあもすこし行ってみよう。りす、ありがとう。」
どんぐりと山猫 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「食えない者は、誰でもおれにいてな。晩には十銭銀貨わんだらふたツと白銅の五銭玉一ツ、みんなのポケットに悪くねえ音をさせてやるぜ」
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さうして、このふたつながら、ならんでおこなはれてゐました。そのとなごとが、今日こんにちでも、社々やしろ/\神主かんぬしさんたちのとなへる、祝詞のりとなのであります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
おなしきおなもんうりふたツの類型土器るゐけいどき各地かくちからるのである。それすうからかんがへても、大仕掛おほじかけもつ土器どき製造せいざうしたとへる。
今度こんどふたつのさけごゑがして、また硝子ガラスのミリ/\とれるおとがしました。『胡瓜きうり苗床なへどこいくつあるんだらう!』とあいちやんはおもひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
おどろいたのは、やまふたわかれの真中まんなかを、温泉宿をんせんやどつらぬいてながれる、かはを、何時いつへて、城趾しろあとはうたかすこしもおぼえがい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「うむ、一しよにしてくろ」とおつたはやはらかにいつた。勘次かんじふたつを等半とうはんぜてそれからまたおほきな南瓜たうなすつばかり土間どまならべた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
身もかりの身、すこしのあいだにむやくの事を思い、つみをつくり、りんね、もうしゅうの世に、ふたたびかえりたもうまじくそうろう
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
一杯にの大岩が押出している様子はい景色でどうも……だけれども五町田の橋銭はしぜにの七厘はふただけより高いじゃアありませんか
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それから紫檀したん茶棚ちやだなひとふたかざつてあつたが、いづれもくるひさうななまなものばかりであつた。しか御米およねにはそんな區別くべつ一向いつかううつらなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
このふたつの種類しゆるいはみなさまのおうちのにはでも、公園こうえんや、やまや、どこへつてもられます。ぎには樹木じゆもくかたちによつても區別くべつされます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
それはこのうちのネコでした。ネコはそっとしのんでいって、あかりのさしているところからふたあしばかりはなれたかべのそばに立ちどまりました。
それでどうてつふたつのうち、いづれかゞ使用しようされることになりましたが、はたしてどちらがさき使用しようされたかについてはいまなほ議論ぎろんがあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
ふたはあと」とか「はあとくずし」とか「新紋形二つはあと」とかいうような人情本臭い題名であって、シカモこの題名の上にふたどもえの紋を置くとか
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
松葉がたで、右手になる方は一つで、丁度ちやうどわたし等の渡つてく橋からはふた筋に分れて居る水が地面とすれすれに静かに流れて居るのである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
みずのくんのにいさんが、とくべつじかけのアクアラングをふたくみもっているので、それをかりてくるようにたのみました。
かいじん二十めんそう (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
此方こつちから算盤そろばんはじいて、この土地とち人間にんげん根性こんじやうかぞへてやると泥棒どろぼう乞食こじきくはへて、それをふたつにつたやうなものだなう。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「そのはずさ。今日は榛名はるなから相馬そうまたけに上って、それからふただけに上って、屏風岩びょうぶいわの下まで来ると迎えの者に会ったんだ」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「いいえ。わたしは このとおり ふたつの めが ちゃんと そろって いますから、たてふだは よく みてきました。」
一休さん (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
ビスマークのような顔をして、船長よりひとがけもふたがけも大きい白髪の水先案内はふと振り返ってじっと葉子を見たが、そのまま向き直って
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
なにをおたずねしたか、いまではもう大分だいぶわすれてしまいましたが、標本みほんのつもりでひとふたおもしてることにいたしましょう。
ふた抱へある栗の木つていふのは珍しいだらう。栗が落ちる頃は、毎朝、うちぢゆうの女が出て拾ふんだが、朝の間だけでは拾ひきれないほどなんだ。
村で一番の栗の木(五場) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
しかし豹一はふた月も寝ていなかった。絶えず何かの義務を自分に課していなければ気のすまぬ彼は、無為徒食むいとしょくの臥床生活がたまらなく情けなかった。
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
どうもすじなわふた筋縄で行かぬ人物であり、しかもその犯人は相当インテリゲンチャであると思うのであります。
国際殺人団の崩壊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
言譯いひわけきくみゝはなし家賃やちんをさめるかたなけるかみちふたつぞ何方どちらにでもなされとぽんとはたくその煙管きせるうちわつてやりたいつらがまち目的もくてきなしに今日けふまでと
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
三六 猿の経立ふつたち御犬おいぬの経立は恐ろしきものなり。御犬とは狼のことなり。山口の村に近きふた石山いしやまは岩山なり。
遠野物語 (新字旧仮名) / 柳田国男(著)
もしかの女が私はやなぎの娘ですからたくへ届けてくださいといったなら、おかみさんはふた返事へんじで応ずるのであった、ところが文子にはそれができなかった。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
国直の浮絵は上野うえのふたどう浅草雷門あさくさかみなりもんの如き、その台榭だいしゃ樹木じゅもくの背景常に整然として模様にひとしき快感を覚えしむ。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
霧島火山きりしまかざんはこのふたつの活火口かつかこう交互こうご活動かつどうするのが習慣しゆうかんのようにえるが、最近さいきんまでは御鉢おはち活動かつどうしてゐた。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
私は自動車を途中で降り、ふた停留所を歩き、それから小路に入り、家に帰ってきた。笠原はあおい、浮かない顔をして室の中に横坐りに坐っていた。私の顔をみると
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
画家はいそがわしくひとはけふたはけ払いて、ブラシを投げ捨て、大股おおまたに、二三歩にて戸の処にき、呼ぶ。
若しその中に少しでも賑やかな通りを求めるとすれば、それはわづか両国りやうごくから亀沢町かめざわちやうに至る元町もとまち通りか、或ははしから亀沢町に至るふた通り位なものだつたであらう。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
さア、やれ、よるよ、くろづくめのきものた、るから眞面目まじめな、嚴格いかめしい老女らうぢょどの、はやをしへてたも、清淨無垢しゃうじゃうむくみさをふたけたこの勝負しょうぶける工夫くふうをしへてたも。
ふたアリがかりで色んな道具や材料を仕込んで来て、S岬のお屋敷にアンナ湯殿を作り上げて、何をなさるのかと思うと、(中略)おかしくって見ちゃいられませんでしたが
S岬西洋婦人絞殺事件 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ここにさきつま一一九ふたつなきたからにめで給ふ一二〇おびあり。これ常にかせ給へとてあたふるを見れば、金銀きがねしろがねを飾りたる太刀たちの、一二一あやしきまできたうたる古代の物なりける。
さて一同いちどう裏庭にわいてみますと、そこではいま大騒おおさわぎの最中さいちゅうです。ふたつの家族かぞくで、ひとつのうなぎあたまうばいあっているのです。そして結局けっきょく、それはねこにさらわれてしまいました。
おたがいがわかれるとき、こういいました。みちが、そこからふたすじになっていました。
白壁のうち (新字新仮名) / 小川未明(著)
さもない顔で居ようとするほど居られなくなって春泉を立出で、秋元へ帰ってかの写真を一番に取出し、突然いきなり机へ投附けて、おのれッおのれッと肚裡はらのうちふたつばかり云って唇を噛んだが
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
怪しい火と見たのは、その人の手に持っていた提灯ちょうちんでありました。その提灯とても、ふた引両ひきりょうの紋をつけた世間並みの弓張提灯で、後ろには「加」という字が一字記してあるだけです。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
今年元禄ふたとせにや、奥羽おうう長途の行脚あんぎや只かりそめに思ひ立ちて呉天ごてんに白髪のうらみを重ぬといへども、耳にふれてまだ目に見ぬさかひ、もし生きて帰らば、と定めなき頼みの末をかけ
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
で、世界の魔法について語ったら、ひと月やふた月で尽きるわけのものではない。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
おじいさんは、「おやおや。」とおもいながら、いよいよちいさくなっていますと、そのうちのおかしららしいのが、なかすわって、そのみぎひだりほかおにたちがずらりとふたかわに並びました。
瘤とり (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
又まづしきものゝわらべらは五七人十人たうをなし、茜木綿あかねもめん頭巾づきんにあさぎのへりをとりたるをかむり、かの斗棒とぼうを一本さし、かのふた神を柳こりに入れて首にかけ〽さいの神くわんじん
春の日も午近くなれば、大分青んで来た芝生に新楓しんふうの影しげく、遊びくたびれてふたともえに寝て居る小さな母子おやこの犬の黒光くろびかりするはだの上に、さくら花片はなびらが二つ三つほろ/\とこぼれる。風が吹く。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ただ、創口の一個所に鈍器で撃ったようなえぐれがある。こんなところをると、刃物でやったとばかし思えぬような節もある。しかし、それも、ふたつにわけて考えれば、たやすく解決される。
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
文化十一年十二月二十八日、抽斎は始て藩主津軽寧親やすちかに謁した。寧親は五十歳、抽斎の父允成は五十一歳、抽斎自己は十歳の時である。想うに謁見の場所は本所ほんじょふたの上屋敷であっただろう。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ごろりところげてだいなり、坐團布ざぶとん引寄ひきよせてふたつにをつまくらにしてまた手當次第てあたりしだいほんはじめる。陶淵明たうえんめい所謂いはゆる「不甚解くらゐいがときに一ページむに一時間じかんもかゝることがある。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
なお照彦てるひこ様がはなさない。土曜日は予習復習の責任がないから、ふた人で思い存分遊びたいのである。正三君においてもこれはけっしてつらいお相手でない。秋晴れの土曜日曜の早くたってしまうこと!
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ふた試合投げて勝ちたるうで振りつつおもふ都度つど笑む独りたのしく
遺愛集:02 遺愛集 (新字新仮名) / 島秋人(著)
ちよんちよんとふた足かた足で歩みしろ眼をつかひけるかな
小熊秀雄全集-01:短歌集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)