“輪(わ)” の例文
其角は此時和泉の淡(あは)の輪(わ)といふ所にありしが、翁大坂にときゝて病ともしらずして十日に来り十二日の臨終(りんじゆう)に遇(あへ)り、奇遇(きぐう)といふべし。
そうかとおもうと、つむじ風のように、大きな輪(わ)や小さな輪をえがいて、ゆかいそうにアッカのまわりをグルグルと飛(と)びまわります。
そして、目の前の地面がぱっとわれて、大きな、まっ四角な平たい石があらわれてきました。その石の上には、輪(わ)がはまっていました。
その晩(ばん)、太郎(たろう)は母親(ははおや)に向(む)かって、二日(ふつか)も同(おな)じ時刻(じこく)に、金(きん)の輪(わ)をまわして走(はし)っている少年(しょうねん)のことを語(かた)りました。母親(ははおや)は信(しん)じませんでした。
金の輪 (新字新仮名) / 小川未明(著)
現在(げんざい)うけ合(あ)ひしは我(わ)れに覺(おぼ)えあれど何(なに)の夫(そ)れを厭(いと)ふ事(こと)かは、大方(おほかた)お前(まへ)が聞(きゝ)ちがへと立(たて)きりて、烟草(たばこ)輪(わ)にふき私(わたし)は知(し)らぬと濟(すま)しけり。
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
砂糖屋を出てから、いわゆる「主義者」の間を一、二ヶ所居候(いそうろう)して歩いた揚句(あげく)、とうとうまた三(み)の輪(わ)の大叔父の家へ転がり込んだ。
踊(をどり)を見(み)ながら輪(わ)の周圍(しうゐ)に立(た)つて居(ゐ)る村落(むら)の女等(をんなら)は手(て)と手(て)を突(つゝ)き合(あ)うて勘次(かんじ)の容子(ようす)を見(み)てはくすくすと竊(ひそか)に冷笑(れいせう)を浴(あび)せ掛(か)けるのであつた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
すがすがしい初日(はつひ)の光りがうしろからさして、ひっつめた髪(かみ)を照(て)らすのが、まるで頭のまわりに光りの輪(わ)をかけたように見えた。
美しき元旦 (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
ひら/\、と夕空(ゆふぞら)の雲(くも)を泳(およ)ぐやうに柳(やなぎ)の根(ね)から舞上(まひあが)つた、あゝ、其(それ)は五位鷺(ごゐさぎ)です。中島(なかじま)の上(うへ)へ舞上(まひあが)つた、と見(み)ると輪(わ)を掛(か)けて颯(さつ)と落(おと)した。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
この埴輪(はにわ)といふ言葉(ことば)の埴(はに)といふのは粘土(ねんど)といふことで、輪(わ)といふのは輪(わ)の形(かたち)に竝(なら)べることから出(で)た名前(なまへ)だといふことであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
この牛はほっそりしたすねをして、赤い胴(どう)に茶色の耳とほおをして、目は黒くふちをとって、口の回りに白い輪(わ)がはいっていた。
紅衣(こうい)の楽人(がくじん)たちが笛(ふえ)をはやし、白丁狩衣(はくちょうかりぎぬ)の男たちが鉾(ほこ)や榊をふって、歌いに歌う。そして輪(わ)になった女子供が花棒(はなぼう)ふりふりおどって歩く。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
離(はな)れさうで離(はな)れない燕(つばめ)の群(むれ)は、細長(ほそなが)い形(かたち)になつたり、圓(まる)い輪(わ)の形(かたち)になつたりして、村(むら)の空(そら)の高(たか)いところを揃(そろ)つて舞(ま)つて居(ゐ)ます。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そして糸のたまは、すっかり繰りほどけて、おへやの中には、わずか三まわり輪(わ)に巻けた長さしか残っておりませんでした。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
むかし雄略天皇は狩の途(みち)すがら三輪(わ)川に洗濯(せんだく)をしてゐる田舎娘を御覧になつて、「顔立(かほたち)のいゝ娘ぢや、大宮に召し抱へよう」
はんのきの林がぐるっと輪(わ)になっていて中にはみじかいやわらかな草がいちめん生(は)えてまるで一つの公園地のようでした。
二人の役人 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
漸(ようや)く眼(め)に慣(な)れて来(き)たのであろう。行燈(あんどん)の輪(わ)が次第(しだい)に色(いろ)を濃(こ)くするにつれて、狭(せま)いあたりの有様(ありさま)は、おのずから松(まつ)五郎(ろう)の前(まえ)にはっきり浮(う)き出(だ)した。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
湖はなにもなかったようにもとのしずかさにかえった、大きな波紋がゆっくりゆっくり、輪(わ)をひろげてゆくばかりである。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
〔永遠の光〕神の光ベアトリーチェに注ぎ、反映(てりかへ)してその冠となりゐたり。聖書に見ゆる輪(わ)後光は即ち受福者の福祉の象徴
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
それはその頃三(み)の輪(わ)辺(へん)の或(ある)寺に残っていた墓碣(ぼけつ)の中で、寺が引払いにならない中(うち)に、是非とも撮影して置きたいと思っていたものがあったためで。
勲章 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
アフリカ某地方(ちはう)の土人は土堀(つちほ)り用の尖(とが)りたる棒(ぼう)に石製(せきせい)の輪(わ)をば鍔(つば)の如くに篏(は)めて重(をも)りとし、此道具(どうぐ)の功力(こうりよく)を増す事有り。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
そして麻糸(あさいと)が引(ひ)かれるにつれて、糸巻(いとまき)はくるくるとほぐれて、もう部屋(へや)の中にはたった三(み)まわり、輪(わ)になっただけしか、糸(いと)は残(のこ)っていませんでした。
三輪の麻糸 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そのかごは、外側に二本の軸がとびだし、それがかごをとりまく大きいじょうぶな輪(わ)の軸受けあなへはいっている。
宇宙の迷子 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そしてそのかなしみのあまり、じぶんの胸(むね)がはれつしてしまわないようにと、鉄(てつ)の輪(わ)を三本、胸にはめたのでした。
淡(たん)の輪(わ)がよいの船であろう、「紀淡丸」と記した汽船が桟橋(さんばし)を離れて行くのだが、四五百噸(トン)にも足らないほどの船体がぐるりと船首を向き変えるとき
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ロレ 灰色目(はひいろめ)の旦(あした)が顰縮面(しかめつら)の夜(よる)に對(むか)うて笑(ゑ)めば、光明(ひかり)の縞(しま)が東方(とうばう)の雲(くも)を彩(いろど)り、剥(は)げかゝる暗(やみ)は、日(ひ)の神(かみ)の火(ひ)の輪(わ)の前(まへ)に、さながら醉人(ゑひどれ)のやうに蹣跚(よろめ)く。
マタンは、もたせた車の輪(わ)のこしきの上に、よじのぼりました。そして、リンゴのほうへ、手をのばしました。
名なし指物語 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
しかし、この話は、傳説(あるひは、風説)のやうなものであり、輪(わ)に輪をかけたやうなものであらう。
「鱧の皮 他五篇」解説 (旧字旧仮名) / 宇野浩二(著)
で、わたしと、わたしのその三人の連れとは、八時ややすぎるころ、三(み)の輪(わ)ゆきの電車の入谷の車庫まえで円タクを下りた。——下りたのではない、下ろされた。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
水車(すいしゃ)の運動はことなき平生(へいぜい)には、きわめて円滑(えんかつ)にゆくけれど、なにかすこしでも輪(わ)の回転(かいてん)にふれるものがあると、いささかの故障(こしょう)が全部(ぜんぶ)の働きをやぶるのである。
箸 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ここを通る電車は東京駅—三(み)の輪(わ)間を往復している。竜泉寺町の次は終点の三の輪で、てまえは千束町である。停留場のすぐわきに線路を跨(また)いで東西に通りがある。
安い頭 (新字新仮名) / 小山清(著)
船長はちょっと立ちどまり、丁度金(かね)の輪(わ)でもはずすように「さん・せばすちあん」の円光をとってしまう。それから彼等は樟(くす)の木の下にもう一度何か話しはじめる。
誘惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そして車の輪(わ)のあいだから、おく病(びょう)そうにこちらをうかがっている犬に、むちをふりまわしてみせた。
何処(どこ)へ行つても道路は好いが、鉄輪(わ)の響くのと石灰質の白い土から反射する日光の強いのに閉口する。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛、与謝野晶子(著)
輪(わ)の音(おと)が、雨(あめ)を圧(あつ)して代助の耳(みゝ)に響いた時、彼は蒼白(あをしろ)い頬(ほゝ)に微笑を洩(もら)しながら、右(みぎ)の手を胸(むね)に当(あ)てた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「小三郎が忘れて行った「鎌(かま)、輪(わ)、ぬ」の手拭を持出したのは、細工過ぎて憎いじゃありませんか」
最初(さいしよ)ドード鳥(てう)は、一(いつ)の輪(わ)を描(か)いて競爭(レース)進路(コース)を定(さだ)めました、(「輪(わ)の形(かたち)は些(や)や正確(せいかく)でなくても關(かま)はない」とドード鳥(てう)が云(い)ひました)それから其處(そこ)に居(ゐ)た一隊(たい)のものが皆(みン)な
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
私(わちき)は母と一緒に上野の先の箕(み)の輪(わ)という処へ参りましたは、前々(ぜん/\)勤めていた家来の家(うち)で有りますから、そこへ往って暫く厄介になって居ます内に、母が煩(わずら)い付きましたが
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それでも、情愛こまやかに、追いつ追われつ、身顫(みぶる)いする林の上に大きな輪(わ)を画くのである。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
頭髪(おぐし)は頭(あたま)の頂辺(てっぺん)で輪(わ)を造(つく)ったもので、ここにも古代(こだい)らしい匂(におい)が充分(じゅうぶん)に漂(ただよ)って居(お)りました。
頭が禿げるまで忘れぬほどに思い込んだことも、一ツ二ツと轄(くさび)が脱(ぬ)けたり輪(わ)が脱(と)れたりして車が亡(な)くなって行くように、だんだん消ゆるに近づくというは、はて恐ろしい月日の力だ。
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
文學上(ぶんがくじよう)の一種(いつしゆ)の誇張(こちよう)といふもので、いくらか輪(わ)をかけて感(かん)じ深(ふか)くいひ表(あらは)すのが、文學(ぶんがく)のほんとうの爲方(しかた)だと、今(いま)ですらも考(かんが)へてゐる學者(がくしや)・文學者(ぶんがくしや)が多(おほ)いのですから、これくらゐのことは
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
キラリ山刀が閃(ひらめ)いたかと思うと月(つき)の輪(わ)の辺から真っ赤な血が滝のように迸(ほとばし)った。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
姻戚(いんせき)関係もおおっぴらで、もっとも縁の深いのが九条家で、月(つき)の輪(わ)関白兼実(かんぱくかねざね)の娘玉日姫(たまひひめ)と宗祖の結婚がはじまりで、しかも宗祖は関白の弟、天台座主(てんだいざす)慈円の法弟であったのだから関係は古い。
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
黒門町の家で壁辰を待って、すぱり、すぱりと煙草の輪(わ)を吹き上げている。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
劍舞(けんぶ)するのもある。中(なか)に一團(いちだん)七八人(にん)の水兵等(すいへいら)は、浪(なみ)に突出(つきだ)されたる磯(いそ)の上(うへ)に睦(むつま)しく輪(わ)をなして、遙(はる)かに故國(こゝく)の天(てん)を望(のぞ)みつゝ、節(ふし)おもしろく君(きみ)が代(よ)の千代八千代(ちよやちよ)の榮(さかえ)を謳歌(おうか)して居(を)るのであつた。
道(みち)は、川の表面(ひょうめん)のように平(たいら)で、綺麗(きれい)で、車(くるま)の輪(わ)や靴(くつ)の底(そこ)をしっかりと、しかし気持(きもち)よく支(ささ)えてくれます。これはわたしたちのお祖父様方(じいさまがた)が作(つく)って下(くだ)さったものの中(なか)でもいちばん立派(りっぱ)なものです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
しかし、心臓はいつまでも激しく鼓動して、息をするのも苦しいほどである。まず第一に輪(わ)さを作って、それを外套(がいとう)へ縫いつけなければならなかった——が、これはわずか一分ばかりの仕事である。
實(げ)に誠(まこと)名(な)は畜生(ちくしやう)の熊(くま)なれや不義(ふぎ)に曇(くも)りし胸(むね)の月(つき)の輪(わ)
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
時に輪(わ)は点(てん)となり、うつくしき虫となり
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)