いく)” の例文
モミの木からは、毎年毎年新しい芽がでて、のびていきますから、そのふしの数をかぞえれば、その木がいくつになったかわかるのです。
山家やまがあたりにむものが、邸中やしきぢう座敷ざしきまでおほききのこいくつともなくたゝるのにこうじて、大峰おほみね葛城かつらぎわたつた知音ちいん山伏やまぶしたのんでると
くさびら (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いくたびか、ねむられぬままに、からだをうごかしていたちょうはついに、つきひかりびながら、どこへとなく、ってしまいました。
冬のちょう (新字新仮名) / 小川未明(著)
見究みきわめようとしているのであったが、いくじょうとも知れないほど深く湛えた蒼黒い水は、頼正の眼をさえぎって水底を奥の方へ隠している。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
書窓しょそうから眺めると、灰色はいいろをした小雨こさめが、噴霧器ふんむきく様に、ふっ——ふっと北からなかぱらの杉の森をかすめてはすいくしきりもしぶいて通る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
町幅一杯まちはばいっぱいともいうべき竜宮城りゅうぐうじょうしたる大燈籠おおどうろうの中にいく十の火を点ぜるものなど、火光美しくきてことに目ざましくあざやかなりし。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それからいく百年間の意識の闇が続いたものか、再び気が付いた時は、(すなわち、それは今のことだが)一人の波斯ぺるしゃの軍人として
木乃伊 (新字新仮名) / 中島敦(著)
さればこのたび川島家と縁談整いて、輿入こしいれ済みし時は、浪子も息をつき、父中将も、継母も、伯母も、いくも、皆それぞれに息をつきぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
いま苦勞くらうこひしがるこゝろづべし、かたちよくうまれたる不幸ふしやはせ不相應ふさうおうゑんにつながれていくらの苦勞くらうをさすることあはれさのまされども
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
今度こんどふたつのさけごゑがして、また硝子ガラスのミリ/\とれるおとがしました。『胡瓜きうり苗床なへどこいくつあるんだらう!』とあいちやんはおもひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
しなはやしいくつもぎて自分じぶんむらいそいだが、つかれもしたけれどものういやうな心持こゝろもちがして幾度いくたび路傍みちばたおろしてはやすみつゝたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
声色づかいではいくらそれが上手でも結局は声色づかいで、永久に名優ではないのでありますから、全く価値がないのであります。
一月や二月、そぎやんこつしてみたとこツで、いくりやんもなりやせんぢやなツか。そりよりや、おまい、はよう戻つてやつた方がよかばい。
牛山ホテル(五場) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
B あゝ、あれは駄目だめだよ。葉書はがきまいぐらゐの短文たんぶんで、ちよつといた面白おもしろことやう名士めいしいくらもないからな。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
金時計きんどけいだの金鎖きんぐさりいくつもならべてあるが、これもたゞうつくしいいろ恰好かつかうとして、かれひとみうつだけで、ひたい了簡れうけん誘致いうちするにはいたらなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いくつもの時計が揃って遅れていたというのには、何か特別の意味がなければならぬ。だが、人々はそこまで深く考えなかった。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
五七けんほどなる四角或は三角なる雪の長さは二三十けんもあらんとおもふが谷によこたはりたる上に、なほいくつとなく大小かさなりたるなど
清見寺の鐘の音に送り迎へられし夕べあしたのいくそたび、三保の松原になきあかしゝ月あかき一夜は、げに見はてぬ夢の恨めしきふし多かりき。
清見寺の鐘声 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
したがつて、今度のじつ力主の名人せい度は、たとへいく分えげつないかんじはあつても、たしかに棋界きかいしん歩といふべきであらう。何も勝負せうふだ、たゝかひだ。
果然くわぜんれはいくばくもなくして漢族かんぞくのためにほろぼされた。ひと拓拔氏たくばつしのみならず支那塞外しなさくぐわい蠻族ばんぞくおほむねそのてつんでゐる。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
赤帽のあとから来た紳士は貧相なせた人であるが、この人は腰をかけないで太った紳士の前に立ったままつづけさまにいくつもお辞儀じぎをしていた。
蝗の大旅行 (新字新仮名) / 佐藤春夫(著)
このやくもたつなども、ふる書物しよもつ説明せつめいにさへ、いくすぢものくもかこんだところから、いはれたものとしてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
うそきやがれ、——今日はおいくのところへ行くと聽いて、あわてて飛起きて來やがつたらう——顏を洗つたのか」
それでも習いたいのなら大阪にはいくらもよい師匠があるどこへなと勝手に弟子入りをしや私の所は今日限りめてもらいますこちらから断りますと
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
いく丁斑魚めだかでも滿足まんぞくられんなら、哲學てつがくずにはられんでせう。いやしく智慧ちゑある、教育けういくある、自尊じそんある、自由じいうあいする、すなはかみざうたる人間にんげんが。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「そりゃ君の説は勘定かんじょうが少し違うぜ、地球の曲線カーブは一マイルについていくらいくらだぜ。君の先の例に取ったなんマイル以上にある船の帆柱ほばしら云々うんぬん
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ロレ 南無なむやフランシス上人しゃうにんまもらせられい! はれ、けったいな、今宵こよひこの老脚らうきゃくいくたび墓穴はかあな蹉躓けつまづいたことやら!……れぢゃ、そこにゐるのは?
マアぼうは、そんなことを決していうのじゃありませんよ、坊はやっぱりそのままがわたしにはいくいいのか知れぬ
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
「大層結構です、ぜひうかがいましょう」と、やがて彼女は言った。——「でも、あなたはまだほんとにお若いのね! おいくつですの、失礼ですけれど?」
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
でも、いまからかんがえれば、わたくしにはこれでも生前せいぜんからいくらか霊覚れいかくのようなものがめぐまれていたらしいのでございます。
書生を懲らしめる酒の話はいくらもあるが、安政二年の春、始めて長崎から出て緒方の塾に入門したその即日そくじつに、在塾の一書生が始めて私にあっうには
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
日本食事は一向まだ研究がしてない。味噌汁一わんに飯三杯はいくカロリーになるか滅多にしっている医者もあるまい。それだから食餌療法が我邦に行われん。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
伽話とぎばなしにだってこの様な大名生活はないだろう。彼女に見せてやったなら、どんな事を云うであろうか。老女中が次々と五十いくツかの部屋を見せてくれた。
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
「忍剣どのも加わるとあれば、千兵せんぺいにまさる今日きょうの味方、穴山一族の武者どもが、たとえ、いくいくあろうとも、おそるるところはござりませぬ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、とうとう、大きなてっぺんのけたくりの木の前まで来た時、ぼんやりいくつにもわかれてしまいました。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
みさきの道を出て、いよいよ本村にはいるころから、みんなはしぜんと小声にしゃべっていた。一本松の村までにはいくつかの町や村の、たくさんの部落ぶらくがあった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
たのまうします。坊「ドーレ。金「何卒どうぞこれを。坊「ア、成程なるほど難渋寺なんじふじかへ、よろしい、此方こちらへ。金「それでこの並焼なみやきはおいくらでげす。坊「並焼なみやきは一と二百だね。 ...
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ねエMさんがあなたに歌をかいて下さいって。いくつでも出来るだけ」Mさんというひとはピチピチとした弾力のある子供っぽい愛くるしい顔をしているくせ
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
山麓さんろくから頂上ちようじようまでのあひだにいろ/\模樣もようかはつたいくつかの森林帶しんりんたいがかさなつてゐるわけです このように土地とち高低こうていによつてあらはれる森林帶しんりんたいのことを『垂直的森林帶すいちよくてきしんりんたい
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
ブラ/\と面白おもしろき空想をつれにしてどて北頭きたがしら膝栗毛ひざくりげあゆませながら、見送みおくはててドヤ/\と帰る人々が大尉たいゐとしいくつならんの、何処いづこ出生しゆつしやうならんの、あるひ短艇ボートこと
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
ふでぢくさきはうだけを小刀こがたななにかでいくつにもりまして、朝顏あさがほのかたちにげるといゝのです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
新吉しんきち見物けんぶつしたくてたまらないのですが、そうは出来ません。十いく頭という馬のかいばをつくらねばなりません。何十しゅという動物の食べものをつくらねばなりません。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
玄竹げんちくさけからいとかんずるやうになつては、人間にんげん駄目だめだなう。いくんでも可味うまくはないぞ。』
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
いくら考え直しても、やはり追いかけられていると云う気もちをとりさることができなかった。
追っかけて来る飛行機 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
聞てしやう兵衞は默然もくぜんとして居たりしが又大岡殿仰らるゝ樣其方なんなんいく日何故古郷を立て江戸えどへ來りしぞしやう兵衞ヘイ二三年あと身代しんだい零落れいらくに付き稼ぎの爲めまかり出しと云ふを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その紫色の帯のところまでは、かろうじて見えるが、それから上は、見ようとして、いくら身を悶掻もがいても見る事が出来ない、しかもこの時は、非常に息苦しくて、眼はひらいているが
女の膝 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
サンスクリットの原書は一つでありますが漢訳の経文はいくつにもなって居りまして、その文の同じかるべきはずのものがあるいは同じのもあればまた違って居るのもあります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「じゃ、あなたは、エムリーヌ・カペルさん、十二から四ついたら、いくのこりますか。」
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
お夏の擧動は其夜甚だ怪しかつた。翌朝法界屋が立つて行つた後、お夏は門口に出て、其男の行つた秋田の方を眺め/\、いく等叱つてもおどしても二時間許り家にはいらなかつた。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
それで私はここでいくらかのすぐれた科学者の事蹟じせきについて皆さんにお話ししてようとするのにあたって、まずガリレイのことから始めるのが、当然の順序であると考えるのです。
ガリレオ・ガリレイ (新字新仮名) / 石原純(著)