ふう)” の例文
まごころをこめておいのりしてくれたおかげで、ふうじがとけて、このとおりりっぱなわかものの姿すがたに、かわることができたのです。
たにしの出世 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
この香木こうぼく聖武しょうむ天皇の御代、中国から渡来したもので、正倉院しょうそういんふうじられて、勅許ちょっきょがなければ、観ることすらゆるされないものだった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分はもと洛中を騒がした鬼だが、余り悪戯いたづらが過ぎるとあつて貴方あなたの御先祖安倍晴明殿のために、この橋の下にふうぜられてしまつた。
貴女あなたをおうたがまをすんぢやない。もと/\ふうれて手紙てがみですから、たとひ御覽ごらんつたにしろ、それふのぢやありません。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
書いてはすて、書いてはすて、博士はなんども書きなおして、やっと一つう手紙てがみをかきあげると、ふうをして、宛名あてなをしたためた。
宗助そうすけ老師らうしこの挨拶あいさつたいして、丁寧ていねいれいべて、また十日とをかまへくゞつた山門さんもんた。いらかあつするすぎいろが、ふゆふうじてくろかれうしろそびえた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
今は待ちあぐみてある日宴会帰りのいまぎれ、大胆にも一通の艶書えんしょ二重ふたえふうにして表書きを女文字もじに、ことさらに郵便をかりて浪子に送りつ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
在所の年寄仲間は、御坊さんのうら竹林たけばやしなかにあるぬまぬし、なんでもむかし願泉寺の開基が真言のちからふうじて置かれたと云ふ大蛇だいじやたヽらねば善いが。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
てなことを、のんびり言っておいて、またごろりと横になろうとするところへ、ひとりの中間が、先生、お手紙、といってふうぶみを持って来る。
顎十郎捕物帳:05 ねずみ (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
暫時しばしと止め種々さま/″\請勸ときすゝめしゆゑ澁々しぶ/\ふみ取上てふう押切おしきりよむしたがひ小夜衣は少しも知らぬ眞心まごころえ伯父長庵が惡事をなげき我身を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
バツの惡くなつた金之丞は、六郎の不遠慮な蔭口かげぐちふうずる爲には、平次を外へ引張り出す外にはなかつたのです。
それかあらぬか佐助は十八歳の冬から改めて主人の計らいに依って春松検校の門に這入はいったすなわち春琴が直接教授することをふうじてしまったのである。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
御安心ごあんしんくださいまし。上書うわがきなんざ二のつぎ三のつぎ中味なかみからふうまで、おせんの相違そういはございません。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
八重やへさつしてすゝめつゝとりまかなひてふうらすにふみにはあらで一枚ひとひら短冊たんざくなりけり兩女ふたりひとしく雲形くもがた
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
彼女かのぢよ若々わか/\しくむねをどきつかせながら、いそいでつくゑうへ手紙てがみつてふうつた。彼女かのぢよかほはみる/\よろこびにかゞやいた。ゆがみかげんにむすんだ口許くちもと微笑ほゝゑみうかんでゐる。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
弁兆は食膳の吟味ぎんみに心をくばり、一汁いちじゅうの風味にもあれこれと工夫を命じた。団九郎の坐禅諷経をふうじて、山陰へ木の芽をとらせに走らせ、又、屡〻しばしば蕎麦そばを打たせた。
閑山 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
さっそく、どろぼうたちは手紙てがみふうを切って、読んでみました。すると、この子がおしろへつきしだい、ただちにいのちをとってしまえ、と書いてあるではありませんか。
なほ三八九念じ給へば、屏風のうしろより、三九〇たけばかりの小蛇こへびはひ出づるを、三九一是をもりて鉢にれ給ひ、かの袈裟をもてよくふうじ給ひ、そがままに輿に乗らせ給へば
やぶれたストーヴについて、不自由ふじいう外出がいしゅつについて、ふうられた手紙てがみについて、不親切ふしんせつ軍医ぐんいについて、よこつら竹刀しないばす班長はんちょうについて、夜中よなかにみんなたたおこ警報けいほうについて
父親はそのとき二人の男に手伝てつだって荷物のひもをほどかせて、やがて見えなくなったが、まもなく母親をれてもどって来た。かれのいないあいだに二人の男は荷物のふうを開いた。
「あ、おかあさんからだ。」といって、良吉りょうきちは、しいただいてふうけてみました。
母の心 (新字新仮名) / 小川未明(著)
此手紙以外このてがみいぐわいに、をんなにくには、如何どん秘密ひみつあとつけられてあるか、それは一さいわからぬ。こゝろおくに、如何どんこひふうめてあるか、それもとよりわからぬ。わたし想像さうぞう可恐おそろしくするどくなつてた。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
彼奴きゃつ騒々しい石塊いしころわい」とアフリカを踏破したスタンレーのような、大味な冒険心の持ち合わせはないが、騒々しい石塊の眼の前で、その雑音をふうする可く、喉仏の見える迄口を開け
小酒井不木氏スケッチ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その書簡てがみふうを開くと、その中からは意外な悲しいことやわずらわしいことが現われようとも、それは第二段の事で、差当っては長閑のどかな日に友人の手紙、それが心境に投げられた恵光けいこうで無いことは無い。
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
脱いだ着物をたたんでいると、たもとの中から一通のふうぶみが出て来た。
艶書 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
わたしのいない間に、母は新しい隣人りんじんから、灰色の紙にしたためた手紙を受取っていた。しかもそれをふうじた黒茶色の封蝋ふうろうときたら、郵便局の通知状か安葡萄酒やすぶどうしゅせんにしか使わないような代物しろものだった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
「私、ふうという家の三ばん目の女ですの。すぐ隣村ですの。」
封三娘 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
同じ日本のたくさんの人びとが牢獄ろうごくふうじこめられた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
つめたき壁にふうじたるひつぎのなかに隱れすむ
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
煖炉の背後にふうぜられて、1310
ふうじたる、白日まひるびの日のさすひと
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
手文筥てふばこふうじもあへず
おもひで (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
ふうずる事を……
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
牢城の管営かんえい(獄営奉行)、また差撥さはつ(牢番頭)などへ宛てて、それぞれ添書てんしょを書いた上、大銀たいぎん二十五両二ふうをも、あわせ贈って
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大抵たいていこれにはむかし名僧めいそうはなしともなつてて、いづれも讀經どきやうをり誦念しようねんみぎりに、喧噪さわがしさをにくんで、こゑふうじたとふのである。ばうさんはえらい。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
定め乳母うばに相談せんものとひそかに乳母を呼て彼の艷書ふみふうの儘に見せければ乳母は大いに打驚き是は此儘に捨置難すておきがたし旦那樣へ御見せ申さんとて立んとるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「幸七は惡人だが、殺された傳右衞門も隨分イヤな人間さ、あんな人間とは附き合ひ度くないな。伜の傳四郎は良い男だよ、馬鹿な道樂を少しふうじさへすれば」
ふうときて取出とりいだせば一尋ひとひろあまりにふでのあやもなく、有難ありがたこと數々かず/\かたじけなきこと山々やま/\おもふ、したふ、わすれがたし、なみだむねほのほ此等これら文字もじ縱横じゆうわうらして
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
水神すいじんさまのもうでありながら、わけがあって、十年ものながいあいだ、たにしのからのなかにふうじ込められていたのが、きょう、およめさんが水神すいじんさまのおやしろ参詣さんけいして
たにしの出世 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
わたくし宜道ぎだうです」とわかそうこたへた。宗助そうすけすこおどろいたが、またうれしくもあつた。すぐ懷中くわいちゆうかられい紹介状せうかいじやうしてわたすと、宜道ぎだうちながらふうつて、そのくだした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
福島正則の如きまできんを承知で家康と婚を結ぼうとする、いわんや黒田如水などはわざわざ九州から出ばってきて家康を護衛する、名目は三成の天下の野望やぼうふうずるためとあるのだが
家康 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
黄金わうごんの、浦安うらやすたへなるふうに。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
つぼみふうひらかれたるものよ。
さるほどに、やままたやまのぼればみねます/\かさなり、いたゞき愈々いよ/\そびえて、見渡みわたせば、見渡みわたせば、此處こゝばかりもとを、ゆきふうずる光景ありさまかな。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かれも少しさけの気をさまして、いそがわしくふうを切った。またその下にも封緘ふうかんがしてある。よほど大事なことだなと思った。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひらかせ見れば手紙一通有り養母も不審いぶかしとは思へ共城富の名宛なあてゆゑひらき見ても宜しかるべしとふう押開おしひらきて見るに
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
子心こごヽろにも義理ぎりかれてかなかちて胡亂胡亂うろうろするを、さとしいろ/\にたのみて此度このたびふうぶみに、あらんかぎりの言葉ことば如何いかきけん、文章ぶんしやう艶麗えんれい評判ひやうばんをとこなりしが。
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かれ未來ふうじられたつぼみのやうに、ひらかないさきひとれないばかりでなく、自分じぶんにもしかとはわからなかつた。宗助そうすけはたゞ洋々やう/\の二かれ前途ぜんと棚引たなびいてゐるがしただけであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
幸ひ來合せた寄進主の春木屋治兵衞、住職と談合の上、寛永寺の役僧と、寺社奉行から出張の同心立會の上、三つの千兩箱は本堂に移され、治兵衞の手でふうを切ることになりました。
黄金おうごんの、浦安のたへなるふうに。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)