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とりいだ
ふりがな文庫
“
取出
(
とりいだ
)” の例文
昨夜
(
ゆふべ
)
は夜もすがら静に
眠
(
ねぶ
)
りて、今朝は誰れより一はな懸けに目を覚し、顔を洗ひ髪を
撫
(
な
)
でつけて着物もみづから気に入りしを
取出
(
とりいだ
)
し
うつせみ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
と年増は
紙幣
(
さつ
)
を
取出
(
とりいだ
)
して二三枚握らすれば、車夫はにわかに笑顔になり、「ちと、もし、御手伝を致しましょう。」現金な野郎なり。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ハンカチイフもて抑へければ、絹の白きに
柘榴
(
ざくろ
)
の
花弁
(
はなびら
)
の如く附きたるに、貴婦人は
懐鏡
(
ふところかがみ
)
取出
(
とりいだ
)
して、
咬
(
か
)
むことの過ぎし
故
(
ゆゑ
)
ぞと知りぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
風呂敷を解いて小さい徳利を
取出
(
とりいだ
)
して、
栓
(
くち
)
の堅いのを抜きまして、首を横にしてタラ/\/\と
彼是
(
かれこ
)
れ茶椀に半分程入れて
政談月の鏡
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
私
(
わたくし
)
は
何氣
(
なにげ
)
なく
衣袋
(
ポツケツト
)
を
探
(
さぐ
)
つて、
双眼鏡
(
さうがんきやう
)
を
取出
(
とりいだ
)
し、
度
(
ど
)
を
合
(
あは
)
せて
猶
(
な
)
ほよく
其
(
その
)
甲板
(
かんぱん
)
の
工合
(
ぐあひ
)
を
見
(
み
)
やうとする、
丁度
(
ちやうど
)
此時
(
このとき
)
先方
(
むかふ
)
の
船
(
ふね
)
でも、
一個
(
ひとり
)
の
船員
(
せんゐん
)
らしい
男
(
をとこ
)
が
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
▼ もっと見る
取出
(
とりいだ
)
し始て
參上仕
(
さんじやうつかま
)
つり内々御聞申度事御座るに付是にて
酒
(
さけ
)
と
肴
(
さかな
)
を
御買下
(
おかひくだ
)
さるべし
輕少
(
すこし
)
ながら
御土産
(
おみやげ
)
なりと申故權三も一向に
樣子
(
やうす
)
了解
(
わから
)
ねば
辭退
(
じたい
)
するを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
この
夜
(
よ
)
も一文を懐中にせしままおそるおそる
取出
(
とりいだ
)
して閲覧を請ひけるに青軒子仔細らしく打見て墨を濃く摺り書体を
書かでもの記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
然
(
しか
)
るに、
中途
(
ちうと
)
で
消
(
き
)
えて
居
(
ゐ
)
た
大瀧氏
(
おほたきし
)
が
現
(
あら
)
はれて、
懷中
(
ふところ
)
から
磨製石斧
(
ませいせきふ
)
の
完全
(
くわんぜん
)
に
近
(
ちか
)
きを
取出
(
とりいだ
)
し、
坪井博士
(
つぼゐはかせ
)
の
前
(
まへ
)
に
出
(
だ
)
して。
探検実記 地中の秘密:20 大森貝塚の発掘
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
頓
(
やが
)
て彼れ
衣嚢
(
かくし
)
を探り
最
(
いと
)
太
(
ふと
)
やかなる
嗅煙草
(
かぎたばこ
)
の箱を
取出
(
とりいだ
)
し幾度か鼻に当て我を忘れて其香気を
愛
(
めず
)
る如くに見せ
掛
(
かく
)
る、
去
(
さ
)
れど余は
兼
(
かね
)
てより彼れに此癖あるを知れり
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
此
(
この
)
時
(
とき
)
程済は辛くも
篋
(
かたみ
)
を砕き得て、
篋中
(
きょうちゅう
)
の物を
取出
(
とりいだ
)
す。
出
(
い
)
でたる物は
抑
(
そも
)
何ぞ。
釈門
(
しゃくもん
)
の人ならで
誰
(
たれ
)
かは要すべき、大内などには有るべくも無き
度牒
(
どちょう
)
というもの三
張
(
ちょう
)
ありたり。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
(手早く帽とジャケツとを脱ぎ捨て、大いなる白の前掛を
取出
(
とりいだ
)
して掛く。)
家常茶飯 附・現代思想
(新字新仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
と机の
抽斗
(
ひきだし
)
より西洋紙の手帖を
取出
(
とりいだ
)
しぬ。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
トお勢は
団扇
(
うちわ
)
を
取出
(
とりいだ
)
して文三に勧め
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
昨夜
(
ゆうべ
)
は
夜
(
よ
)
もすがら
靜
(
しづか
)
に
眠
(
ねぶ
)
りて、
今朝
(
けさ
)
は
誰
(
た
)
れより
一
(
いち
)
はな
懸
(
が
)
けに
目
(
め
)
を
覺
(
さま
)
し、
顏
(
かほ
)
を
洗
(
あら
)
ひ
髮
(
かみ
)
を
撫
(
な
)
でつけて
着物
(
きもの
)
もみづから
氣
(
き
)
に
入
(
い
)
りしを
取出
(
とりいだ
)
し
うつせみ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
渠
(
かれ
)
はこの
惨憺
(
みじめ
)
さと
溽熱
(
むしあつ
)
さとに
面
(
おもて
)
を
皺
(
しわ
)
めつつ、手荷物の
鞄
(
かばん
)
の
中
(
うち
)
より何やらん
取出
(
とりいだ
)
して、
忙々
(
いそがわしく
)
立去らむとしたりしが、たちまち左右を
顧
(
かえりみ
)
て
取舵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
かくても貫一は
膝
(
ひざ
)
を
崩
(
くづ
)
さで、
巻莨入
(
まきたばこいれ
)
を
取出
(
とりいだ
)
せしが、
生憎
(
あやにく
)
一本の莨もあらざりければ、手を鳴さんとするを、満枝は
先
(
さきん
)
じて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
掲げ其中より
取出
(
とりいだ
)
したる
柳樽
(
やなぎだる
)
も
家内
(
かない
)
喜多留
(
きたる
)
と
記
(
しる
)
しゝは妻を
娶
(
めとる
)
の祝言にや
麻
(
あさ
)
を
白髮
(
しらが
)
とかい附しは麻の如くに
最
(
いと
)
直
(
すぐ
)
に
共
(
とも
)
白髮
(
しらが
)
まで
消光
(
くらす
)
なる可し其の
外
(
ほか
)
鯣
(
するめ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
秋の雨しとしとと降りそそぎて、虫の
音
(
ね
)
次第に消え行く郊外の
佗住居
(
わびずまい
)
に、
倦
(
う
)
みつかれたる
昼下
(
ひるさが
)
り、尋ね
来
(
きた
)
る友もなきまま、独り
窃
(
ひそか
)
に浮世絵
取出
(
とりいだ
)
して眺むれば、ああ
浮世絵の鑑賞
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
昔はお武家が大小を
帯
(
さ
)
してお歩きなすったものですが、廃刀以来幾星霜を経たる今日に至って、お虫干の時か何かに、刀箪笥から長い
刀
(
やつ
)
を
取出
(
とりいだ
)
して、これを
兵児帯
(
へこおび
)
へ帯して見るが
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
取出
(
とりいだ
)
し、大急ぎにてかき始む。為事に熱中しつつ。
家常茶飯 附・現代思想
(新字新仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
袂
(
たもと
)
より
取出
(
とりいだ
)
して再び三たび口を
拭
(
ぬぐ
)
う。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
淋
(
さび
)
しきまゝに
琴
(
こと
)
取出
(
とりいだ
)
し
獨
(
ひと
)
り
好
(
この
)
みの
曲
(
きよく
)
を
奏
(
かな
)
でるに、
我
(
わ
)
れと
我
(
わ
)
が
調
(
てう
)
哀
(
あは
)
れに
成
(
な
)
りて、いかにするとも
彈
(
ひ
)
くに
得
(
え
)
堪
(
た
)
えず、
涙
(
なみだ
)
ふりこぼして
押
(
おし
)
やりぬ。
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
……どれ、(樹の蔭に
一
(
ひと
)
むら
生茂
(
おいしげ
)
りたる
薄
(
すすき
)
の中より、
組立
(
くみた
)
てに
交叉
(
こうさ
)
したる三脚の竹を
取出
(
とりいだ
)
して
据
(
す
)
ゑ、次に、
其上
(
そのうえ
)
に
円
(
まる
)
き板を置き、
卓子
(
テエブル
)
の如くす。)
紅玉
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼は
外套
(
オバコオト
)
の
衣兜
(
かくし
)
より一袋のボンボンを
取出
(
とりいだ
)
して
火燵
(
こたつ
)
の上に置けば、
余力
(
はずみ
)
に袋の口は
弛
(
ゆる
)
みて、紅白の玉は
珊々
(
さらさら
)
と
乱出
(
みだれい
)
でぬ。こは宮の最も好める菓子なり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
委く承知なされぬ故なり
兎角
(
とかく
)
に知ぬ事は疑心の發るもの然ば
拙僧
(
せつそう
)
が
詳細
(
くはしく
)
認めて御目に掛んと筆を
取出
(
とりいだ
)
し佐州相川郡尾島村淨覺院門前に
捨子
(
すてご
)
に成せられしを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
秋の雨しとしとと降りそそぎて、虫の
音
(
ね
)
次第に消え行く郊外の
侘住居
(
わびずまい
)
に、
倦
(
う
)
みつかれたる
昼下
(
ひるさが
)
り、尋ね
来
(
きた
)
る友もなきまま、
独
(
ひと
)
り
窃
(
ひそか
)
に浮世絵
取出
(
とりいだ
)
して
眺
(
なが
)
むれば、ああ
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
と治平は
真青
(
まっさお
)
になりブル/\慄え出すを見て、ガラリと鞄を
投
(
ほう
)
り出し、どたアりと
大胡座
(
おおあぐら
)
をかいて、
隠
(
かくし
)
からハンケーチを
取出
(
とりいだ
)
し、チンと
涕
(
はな
)
をかんで物をも云わず巻煙草に火を移し
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
うろうろ
四辺
(
あたり
)
を見廻す
間
(
ひま
)
に、時彦は土間に立ちたるまま、粛然として帯の間より、懐中時計を
取出
(
とりいだ
)
し、丁寧に
打視
(
うちなが
)
めて、少年を仰ぎ見んともせず
化銀杏
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
歎
(
なげ
)
くべきことならずと
嫣然
(
につこ
)
と
笑
(
ゑ
)
みて
靜
(
しづ
)
かに
取出
(
とりいだ
)
す
料紙
(
りやうし
)
硯
(
すゞり
)
、
墨
(
すみ
)
すり
流
(
なが
)
して
筆先
(
ふでさき
)
あらためつ、
書
(
か
)
き
流
(
な
)
がす
文
(
ふみ
)
誰
(
た
)
れ/\が
手
(
て
)
に
落
(
お
)
ちて
明日
(
あす
)
は
記念
(
かたみ
)
と
見
(
み
)
ん
名殘
(
なごり
)
の
名筆
(
めいひつ
)
たま襻
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
と見れば葡萄棚ありてあたり薄暗し。娘は奥まりたる
離座敷
(
はなれざしき
)
とも覚しき
一間
(
ひとま
)
の障子外より押開きてづかづかと内に
上
(
あが
)
り破れし
襖
(
ふすま
)
より夜のもの
取出
(
とりいだ
)
して
煤
(
すす
)
けたる畳の上に敷きのべたり。
葡萄棚
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
差添のお役人が懐から仰せ渡され
書
(
がき
)
を
取出
(
とりいだ
)
して読上げます。
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「こう
老爺様
(
じいさん
)
まあ待ちねえ、
婆様
(
ばあさん
)
ちょいと。」と呼留めて、
売溜
(
うりだめ
)
の財布より銅貨四銭
取出
(
とりいだ
)
し、二人の手に
頒
(
わか
)
ち与えて
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
広小路に
出
(
いづ
)
れば車もあり、阿関は紙入れより紙幣いくらか
取出
(
とりいだ
)
して小菊の紙にしほらしく包みて、録さんこれは誠に失礼なれど鼻紙なりとも買つて下され
十三夜
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
寝屋
(
ねや
)
の屏風
太鼓張
(
たいこばり
)
の
襖
(
ふすま
)
なぞ破れたるを、妻と二人して今までは互に
秘置
(
ひめお
)
きける古き
文
(
ふみ
)
反古
(
ほご
)
取出
(
とりいだ
)
して読返しながら張りつくろふ楽しみもまた
大厦高楼
(
たいかこうろう
)
を家とする
富貴
(
ふうき
)
の人の
窺知
(
うかがいし
)
るべからざる所なるべし。
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
……どれ、(樹の蔭に一むら
生茂
(
おいしげ
)
りたる
薄
(
すすき
)
の中より、組立てに
交叉
(
こうさ
)
したる三脚の竹を
取出
(
とりいだ
)
して据え、次に、その上の
円
(
まろ
)
き板を置き、
卓子
(
テェブル
)
のごとくす。)
紅玉
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
廣小路
(
ひろこうぢ
)
を
出
(
いづ
)
れば
車
(
くるま
)
もあり、
阿關
(
おせき
)
は
紙入
(
かみい
)
れより
紙幣
(
しへい
)
いくらか
取出
(
とりいだ
)
して
小菊
(
こぎく
)
の
紙
(
かみ
)
にしほらしく
包
(
つゝ
)
みて、
録
(
ろく
)
さんこれは
誠
(
まこと
)
に
失禮
(
しつれい
)
なれど
鼻紙
(
はながみ
)
なりとも
買
(
か
)
つて
下
(
くだ
)
され
十三夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
綾子、
袱紗包
(
ふくさづつみ
)
を開きて、
昨日
(
きのう
)
の毎晩新聞を
取出
(
とりいだ
)
し、「時に。」と開直りて、「ま、これを。」と
仔細
(
しさい
)
ありげ。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
池のほとりの松が根につまづきて赤土道に手をつきたれば、羽織の
袂
(
たもと
)
も泥に成りて見にくかりしを、居あはせたる美登利みかねて我が
紅
(
くれない
)
の絹はんけちを
取出
(
とりいだ
)
し
たけくらべ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
ある薄月夜にあまたの仲間の者と共に浜へ越ゆる
境木峠
(
さかいぎとうげ
)
を行くとて、また笛を
取出
(
とりいだ
)
して吹きすさみつつ
遠野の奇聞
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
封
(
ふう
)
じ
目
(
め
)
ときて
取出
(
とりいだ
)
せば
一尋
(
ひとひろ
)
あまりに
筆
(
ふで
)
のあやもなく、
有難
(
ありがた
)
き
事
(
こと
)
の
數々
(
かず/\
)
、
辱
(
かたじけ
)
なき
事
(
こと
)
の
山々
(
やま/\
)
、
思
(
おも
)
ふ、
戀
(
した
)
ふ、
忘
(
わす
)
れがたし、
血
(
ち
)
の
涙
(
なみだ
)
、
胸
(
むね
)
の
炎
(
ほのほ
)
、
此等
(
これら
)
の
文字
(
もじ
)
を
縱横
(
じゆうわう
)
に
散
(
ち
)
らして
軒もる月
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
古くより持つたへし錦絵かずかず
取出
(
とりいだ
)
し、褒めらるるを嬉しく美登利さん昔しの羽子板を見せよう、これは己れの
母
(
かか
)
さんがお
邸
(
やしき
)
に奉公してゐる頃いただいたのだとさ
たけくらべ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
左手
(
ゆんで
)
に
提
(
ひさ
)
げたる
革鞄
(
かばん
)
の
中
(
うち
)
より、
小
(
ちいさ
)
き旗を
取出
(
とりいだ
)
して、臆面もなくお貞の前に差出しつ。
化銀杏
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
封じ目ときて
取出
(
とりいだ
)
せば
一尋
(
ひとひろ
)
あまりに筆のあやもなく、有難き事の数々、
辱
(
かた
)
じけなき事の山々、思ふ、
恋
(
した
)
ふ、忘れがたし、血の涙、胸の炎、これ等の
文字
(
もんじ
)
を
縦横
(
じうわう
)
に散らして
軒もる月
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
月いと清うさしいでて、葉裏を
透
(
すか
)
して照らすにぞ、
偶然
(
ふと
)
思い付く頬の三日月、また
露
(
あらわ
)
れはせざるかと、懐中鏡を
取出
(
とりいだ
)
せば、きらりと輝く照魔鏡に怪しき人影映りけるにぞ、はっと鏡を取落せり。
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
羽織
(
はをり
)
の
袂
(
たもと
)
も
泥
(
どろ
)
に
成
(
な
)
りて
見
(
み
)
にくかりしを、
居
(
ゐ
)
あはせたる
美登利
(
みどり
)
みかねて
我
(
わ
)
が
紅
(
くれない
)
の
絹
(
きぬ
)
はんけちを
取出
(
とりいだ
)
し、これにてお
拭
(
ふ
)
きなされと
介抱
(
かいほう
)
をなしけるに、
友達
(
ともだち
)
の
中
(
なか
)
なる
嫉妬
(
やきもち
)
や
見
(
み
)
つけて
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
と菓子皿を
取出
(
とりいだ
)
して、盛りたる
羊羹
(
ようかん
)
に
楊枝
(
ようじ
)
を添え
化銀杏
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
押入れ探ぐつて何やらの小風呂敷
取出
(
とりいだ
)
し、これはこの子の
寐間着
(
ねまき
)
の
袷
(
あはせ
)
、はらがけと三尺だけ貰つて行まする、御酒の上といふでもなければ、
醒
(
さ
)
めての思案もありますまいけれど
にごりえ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
火鉢
(
ひばち
)
の
火
(
ひ
)
は
黒
(
くろ
)
く
成
(
な
)
りて
灰
(
はい
)
の
外
(
そと
)
に
轉々
(
ころ/\
)
と
凄
(
すさ
)
まじく、まだ
如月
(
きさらぎ
)
の
小夜嵐
(
さよあらし
)
引
(
ひき
)
まどの
明放
(
あけばな
)
しより
入
(
い
)
りて
身
(
み
)
に
染
(
し
)
む
事
(
こと
)
も
堪
(
た
)
えがたし、いかなる
故
(
ゆゑ
)
とも
思
(
おも
)
はれぬに
洋燈
(
らんぷ
)
を
取出
(
とりいだ
)
してつく/″\と
思案
(
しあん
)
に
暮
(
く
)
るれば
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
古
(
ふる
)
くより
持
(
もち
)
つたへし
錦繪
(
にしきゑ
)
かず/\
取出
(
とりいだ
)
し、
褒
(
ほ
)
めらるゝを
嬉
(
うれ
)
しく
美登利
(
みどり
)
さん
昔
(
むか
)
しの
羽子板
(
はごいた
)
を
見
(
み
)
せよう、これは
己
(
お
)
れの
母
(
かゝ
)
さんがお
邸
(
やしき
)
に
奉公
(
ほうこう
)
して
居
(
ゑ
)
る
頃
(
ころ
)
いたゞいたのだとさ、をかしいでは
無
(
な
)
いか
此
(
この
)
大
(
おほ
)
きい
事
(
こと
)
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
押入
(
おしい
)
れ
探
(
さ
)
ぐつて
何
(
なに
)
やらの
小風呂敷
(
こぶろしき
)
取出
(
とりいだ
)
し、これは
此子
(
このこ
)
の
寐間着
(
ねまき
)
の
袷
(
あはせ
)
、はらがけと三
尺
(
じやく
)
だけ
貰
(
もら
)
つて
行
(
ゆき
)
まする、
御酒
(
ごしゆ
)
の
上
(
うへ
)
といふでもなければ、
醒
(
さ
)
めての
思案
(
しあん
)
もありますまいけれど、よく
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
て
下
(
くだ
)
され
にごりえ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
取
常用漢字
小3
部首:⼜
8画
出
常用漢字
小1
部首:⼐
5画
“取”で始まる語句
取
取縋
取柄
取除
取次
取敢
取交
取做
取着
取付