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寐間着
さりとて
其夜は
寐らるヽところならず、
強ひて
床へは
入りしものヽ
寐間着も
着かへず
横にもならず、さてつく/″\と
考へれば
目の
前に
晝間の
樣々が
浮かびて
糸織のなへたるにふらんねるを
重ねし
寐間着の
小袖めさせかへ、いざ
御就蓐と
手をとりて
助ければ、
何其樣に
醉ふては
居ないと
仰しやつて、
滄浪ながら
寐間へと
入給ふ。
足を
運び
給はゞ
忍ぶが
岡の
緑樹の
朝つゆ、
寐間着のまゝにも
踏み
給ふべし、
螢名所の
田畑も
近かり、
只天王寺の
近き
爲に、
蚊はあまり
少なからねど、
吹き
拂ふに
足る
風十分なり