たまご)” の例文
と、子家鴨達あひるたちは、いままでたまごからんでいたときよりも、あたりがぐっとひろびろしているのをおどろいていました。すると母親ははおや
くてぞありける。あゝ、何時いつぞ、てんよりほしひとつ、はたとちて、たまごごといしとなり、水上みなかみかたよりしてカラカラとながる。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
めすのほおじろは、うつぎのはなく、やぶのなかつくりました。そして、そのなかへ、かわいらしいたまごを三つとしたのです。
平原の木と鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おつぎは勘次かんじないとき牝鷄めんどり消魂けたゝましくいてればぐにとやのぞいてあたゝかいたまごひとつをつて卯平うへいむしろころがしてやることもあつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「しつ、あななかたまごみつけてゐるんだよ。そしてね、來年らいねんはるになつてたまごがかへると蜘蛛くもはち子供こども御飯ごはんになるのさ」
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
かあさんになつた小鳥ことりうへなかたまごをあたためてをりました。するとまた今日けふ牝牛めうしがそのしたへやつてました。
お母さん達 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
城の前の谷川に月の光がさして、そして水が自然に静まる時があったら、そのたまご水鏡みずかがみに写してごらんなさい。夢の姿がはっきり見えてきます。
夢の卵 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
大變たいへん差支さしつかへるわ』とあいちやんはいそいでつて、『たまごなどねらつちやなくつてよ、そんな、そんなたまごなんてしかないわ。なまなものいやなこッた』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
主人しゅじんは、あたりを見まわしたが、もちろん、店さきでまだたまご熱心ねっしんに見くらべている客よりほかに、だれもいなかった。
倹約けんやくするためにわたしたちは荒物屋あらものやで買ったゆでたまごと、パンを食べた。でもマチアはうまいものはたいへんこのんでいた。
「その十力じゅうりき金剛石こんごうせきは春の風よりやわらかく、ある時はまるくあるときはたまごがたです。きりより小さなつぶにもなれば、そらとつちとをうずめもします」
けれども先生せんせい其家そのいへかこ幾畝いくせかの空地くうちみづからたがやして菜園さいゑんとし種々しゆ/″\野菜やさいゑてます。また五六羽ごろつぱにはとりふて、一もちゆるだけのたまごつてます。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
たまごや生まれたばかりのヒヨコをさらってきたり、そのほかさまざまのわるいことをやってのけたのですからね。
かの、ほととぎすが、他の鳥のたまごを生んで、その鳥にひなを育てさせるということを観察して、学界に報告したのは、ロンドンから帰ってまもないことでした。
ジェンナー伝 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
このとりについて面白おもしろいことは、はとやかさゝぎ、栗鼠等りすなどつくつた、ふるにはひつてたまごむことです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
自分じぶんかごつて、つなたかむねにひきあげさせて、つばめたまごむところをさぐるうちに、ふとひらたいものをつかみあてたので、うれしがつてかごおろ合圖あひずをしたところが
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
その虫と申しますのは、はじめははう虫でいますのが、つぎにはたまごになり、またそのつぎには飛ぶ虫になりまして、順々に三度姿すがたをかえる、きたいな虫だそうでございます
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
足に結びつけた、つなにすがりついている多くの小姓も万千代も、手や足にすりきずをこしらえてだらけになっているが、さすがに、戦国の少年、三河武士みかわぶしたまごたちである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ランチュウのがありまして、こいつは、うまくそだてりや、たいしたものになるでしよう。いえ値段ねだんはいいです。さしあげるんですよ。えさは、当分とうぶんのうち、たまご黄身きみにしてください。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
ピソライトといふすゞめたまごのようなものが、火山灰かざんばひなかころがつてゐることがある。これは雨粒あめつぶ火山灰かざんばひうへころがつて出來できたものにぎないのである。火山かざんはまたどろ噴出ふんしゆつすることがある。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
とうさんはおうち裏木戸うらきどそとをさん/″\あそまはりまして、木戸きどのところまでかへつてますと、たか枳殼からたちうへはうたまごでもみつけようとしてるやうなおほきなくろ蝶々てふ/\つけました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
腐れかけた麦藁屋根むぎわらやね、ぼろ/\くずれ落ちる荒壁、小供の尿いばりみた古畳ふるだたみが六枚、茶色にすすけた破れ唐紙が二枚、はえたまごのへばりついた六畳一間の天井と、土間の崩れた一つへっついと、糞壺くそつぼの糞と
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
其上そのうへかれ一窓庵いつさうあんかんがへつゞけにかんがへた習慣しふくわんがまだまつたらなかつた。何所どこかにたまごいだ牝鷄めんどりやう心持こゝろもちのこつて、あたま平生へいぜいとほ自由じいうはたらかなかつた。其癖そのくせ一方いつぱうでは坂井さかゐことかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
昨日きのうのように、たまごがしてしまっては、べられやしないよ。」と、賢二けんじが、いいますと、おねえさんは、女中じょちゅうをしかりつけて
北風にたこは上がる (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしはおまえさんのためをおもってそうってげるんだがね。とにかく、まあ出来できるだけはやたまごことや、のどならことおぼえるようにおし。
「こつちなんぞぢや、あといくらでも出來できらあな」といひながらたどりをつた。たまごすこうごくとはかりさをがぐら/\と落付おちつかない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
つてるわよ、わたしたまごべたわ、眞箇ほんとうよ』ときはめて正直しやうぢきあいちやんがひました、『ちひさなをんなだつてへびのやうに矢張やツぱりたまごべるわ、けど』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
わたしはちちおけを取りにうちへかけて行った。そしてうちの中にいるあいだにバターとたまご麦粉むぎこ食卓しょくたくが上にならべて、それから小屋までかけてもどった。
銀のかごを国王から作ってもらい、その中に香木こうぼくくずで作った巣を入れ巣の中に黄金おうごんたまごを置いておきました。そして朝と晩とには必ず中をのぞいてみました。
夢の卵 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
なにしろ路傍みちばたくさいきれが可恐おそろしい、大鳥おほとりたまごたやうなものなんぞ足許あしもとにごろ/″\してしげ塩梅あんばい
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おばさんはたまごをみんなふろしきにうつすと、最後に小さい卵を正九郎しょうくろうの手ににぎらせていうのだった。「これは駄賃だちんだよ。いまうんだばかりだからまだぬくといだら。」
空気ポンプ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
まだ朝の風はつめたいけれども学校へ上り口の公園のさくらいた。けれどもぼくは桜の花はあんまりきでない。朝日にすかされたのを木の下から見ると何だかかえるたまごのような気がする。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
見れば、細いヤナギの草むらの中に、あのかわいらしいダンフィンがたまごをだいているではありませんか! そばには、白ガチョウのモルテンが、ダンフィンをまもるようにして、立っています。
天皇がまだ皇子おうじ大雀命おおささぎのみことでいらっしゃるとき、ある年摂津せっつ日女島ひめじまという島へおいでになって、そこでお酒盛さかもりをなすったことがありました。すると、たまたまその島にがんがたまごをうんでおりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
百姓家ひゃくしょうや裏庭にわで、家鴨あひるなかうまれようとも、それが白鳥はくちょうたまごからかえ以上いじょうとりうまれつきにはなんのかかわりもないのでした。
うつくしいちょうは、自分じぶんたまごをどこにんだらいいかとまどっているふうでありました。なるたけあたたかな、安全あんぜん場所ばしょさがしていたのでした。
冬のちょう (新字新仮名) / 小川未明(著)
おつぎはばしてはたまごを一つ/\につてたもとれた。おつぎはたもとをぶら/\させて危相あぶなさう米俵こめだはらりた。其處そこにもたまごは六つばかりあつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
わたしがりんごをそぐ(小さく切る)と、おっかあはたまごこなぜてころもをしらえ、ちちを少しずつ混ぜていた。
難儀なんぎさも、へびも、毛虫けむしも、とりたまごも、くさいきれも、しるしてあるはずはないのぢやから、薩張さツぱりたゝんでふところれて、うむとちゝした念仏ねんぶつとなんで立直たちなほつたはいが
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
としとったおかあさんはとなりにわとり今日きょうはじめてたまごをうんだが、それはおかしいくらいちいさかったこと、背戸せどひいらぎはちをかけるつもりか、昨日きのう今日きょう様子ようすたが
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
ただ一つ、大きな黄金おうごんたまご形のものが転がってるきりでした。皆はあっけにとられました。
夢の卵 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
縱令よし、それがまつたたまごかへ邪魔じやまをしないにせよ』とつてはとは、『それにしても、わたし晝夜ちうやへび見張みはらなければならない!さうへば、わたしはこの三週間しうかんちツともひつじかげないが!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
学校がっこうで、ならったとおりにやったのよ。どうして、うちですると、うまくたまごがふくらまないんでしょう。」と、さも不思議ふしぎそうにいいました。
北風にたこは上がる (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひょうの大きさははとのたまごぐらいあった、落ちるときには耳の遠くなるような音を立てた。
おばさんが、前だれにたまごを入れて持ってきた。そして正九郎しょうくろうのふろしきをたたみの上にひろげて、そこへ前だれから移した。いつものおばさんとすこしもかわりはない。おばさんも知らないのだ。
空気ポンプ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
このうちに、なかとされたたまご孵化ふかして、一ぴきのはちとなり、めいめいは、いずこへとなくんでゆきました。
雪くる前の高原の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
らんの根もとにはたまごのからがふせてあって、それに道のほこりがつもって、うそ寒いように見えました。しかし、店の中は、すりガラスでよくは見えませんが、あたたかそうな湯気ゆげがたっています。
いぼ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
たまごちちがぷんとうまそうなにおいを立てた。
あるところに金持かねもちがありまして、毎日まいにち退屈たいくつなものですから、にわとりでもって、新鮮しんせんたまごましてべようとおもいました。
金持ちと鶏 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「自転車屋へいってナ、たまごを二十せん、買っといで。」
空気ポンプ (新字新仮名) / 新美南吉(著)