何故なにゆゑ)” の例文
讀者どくしや諸君しよくん御記臆ごきおくだらう。弦月丸げんげつまるまさに子ープルスかう出發しゆつぱつせんとしたとき何故なにゆゑともなくふかわたくしまなことゞまつた一隻いつさうあやしふねを。
ハヾトフは其間そのあひだ何故なにゆゑもくしたまゝ、さツさと六號室がうしつ這入はひつてつたが、ニキタはれいとほ雜具がらくたつかうへから起上おきあがつて、彼等かれられいをする。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
何故なにゆゑ御前様おんまへさまにはやうの善からぬわざよりに択りて、折角の人にすぐれし御身を塵芥ちりあくたの中に御捨おんす被遊候あそばされさふらふや、残念に残念に存上ぞんじあげまゐらせ候。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
すべひとたるものつね物事ものごとこゝろとゞめ、あたらしきことおこることあらば、何故なにゆゑありてかゝこと出來できしやと、よく其本そのもと詮索せんさくせざるべからず。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
何故なにゆゑと云ふに、もしこれが西洋であるならば少くも一世紀二世紀を要すべき思想の變化をば自分は僅か五年十年の短時間に見る事が出來る。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
すると翌日よくじつかへつて大層たいそう謝罪しやざいをされるから何故なにゆゑ返事へんじをしなかつたとたづねると返事へんじ端書はがきしてきましたといふのです。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
真正の宗教は意識中心の推移によりて、自己の変換、生命の革新を求めるの情である。世には往々何故なにゆゑに宗教は必要であるかなどと問ふ人がある。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
何故なにゆゑといはんも事あたらしや、お互に後世に於て、鼻突合はすうれひなければなり。憂はむしろ、に作るをよしとす。
青眼白頭 (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
自分は敢て問ふ、仏蘭西フランスの婦人は何故なにゆゑみづから奮ひ立つておのおの自己の教育を男子とひとしくすることを謀らないのか。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
以て貴殿きでんめひ小夜衣を身請して御當家へおくとのお約束ゆゑ金子きんすをばお渡し申せしに何故なにゆゑ然樣のことを仰せられ候やと申に長庵大いにいかけしからぬことを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あゝれ『きたるこゝろ』だらうか、何故なにゆゑ自然しぜんあいするこゝろきよたかくして、少女せうぢよ人間にんげん)をふるこゝろは『きたるこゝろ』、『いやらしいこゝろ』、『不健全ふけんぜんなるこゝろ
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「これにて見苦しとはれも得言はじ。我鏡に向きて見玉へ。何故なにゆゑにかく不興なる面もちを見せ玉ふか。われも諸共もろともに行かまほしきを。」少しかたちをあらためて。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
しにがことして斯々云々かく/\しか/″\とも物語ものがたりなば何處どこまでらるゝはぢならんとおもへば何故なにゆゑ登樓あがりたるか今更いまさらせんなきことしてけりとおもふほどむねさわがれてあしふるひぬ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さつき申した通り、何故なにゆゑサラミヤ姫はたゞひとりでこの夜の庭園に忍び出たか、——それにはある悲しい物語があるのですが、これももう暫く尋ねぬ事にして、——。
青白き公園 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
此日このひかぎり、探檢たんけんにはかなかつた。何故なにゆゑならば、とて主墳發見しゆふんはつけん見込みこみいからであつた。
もとより何故なにゆゑといふわけはないので、墓石はかいしたふれたのを引摺ひきずりせて、ふたツばかりかさねてだいにした。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
女は何故なにゆゑともなく、急に恥しくなつて、飛び上つて、毛皮を引き寄せて、堅く体に巻き付けた。
何故なにゆゑと云ふに、小生の死するは世間の人の御身を嘲り笑ふを見るに忍びざるが為に候。小生の遺書一度世に公にせらるるに至らば、世の人の御身を笑ふことは止み申すべく候。
やうやく気を沈めて其人のさまをつく/″\打ち眺むれば、まがふかたなき狂女なり。さては鬼にもあらずと心稍々やゝ安堵したれば、何故なにゆゑにわれをむるやと問ひしに、唯ださめ/″\と泣くのみなり。
鬼心非鬼心:(実聞) (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
されど何故なにゆゑか予は物心覺えし日より、わが我儘なる心に常に何をか求め憧れつつ遣瀬なきおもひ束の間も忘るることなく、曉は曉の、夕暮は夕暮の悲しさに堪へず、此の念ひ消えぬ苦しさに惱みては
何故なにゆゑか世に数ならぬ身一つをしとも思ひ悲しとも聞く
源氏物語:40 夕霧二 (新字新仮名) / 紫式部(著)
何故なにゆゑか生埋にされ叫べどもわめけど呼べど人は來らず
和歌でない歌 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
何故なにゆゑか、我は淋しき。
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
また醫員いゐんのハヾトフも時々とき/″\ては、何故なにゆゑかアルコール分子ぶんしはひつてゐる飮物のみものせ。ブローミウム加里かりめとすゝめてくので。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ゾラが「作品ウウブル」の主人公たる畫家クロオドは愛する妻を殘して、何故なにゆゑ夜半に獨り、そが未成の畫面に對してくびれて死んだか。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
その擧動ふるまひのあまりに奇怪きくわいなのでわたくしおもはず小首こくびかたむけたが、此時このとき何故なにゆゑともれず偶然ぐうぜんにもむねうかんでひとつの物語ものがたりがある。
我を可憐いとしと思へる人の何故なにゆゑにさはざるにやあらん。かくまでに情篤なさけあつからぬ恋の世に在るべきか。疑ふべし、疑ふべし、と貫一の胸は又乱れぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
斯樣かやうすればわるい、何故なにゆゑわるいかといふてん自分じぶんこゝろはせてて、自分じぶん其理由そのりいう發明はつめいし、成程なるほどこれはい、わるいといふところ自分じぶん合點がつてんせしむる。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
水のあわとなし其上此度の大罪私しに於ても何故なにゆゑに右樣所業しよげふ致し候更々さら/\分明わかり申さず候と申立る依て一同へも段々だん/\手續てつゞき尋問たづねに相成翌日又々久八六右衞門兩人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
何故なにゆゑにあのやうに泣いて居たかを何よりも不思議がるのは無理もないことではありませんか。
嘆きの孔雀 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
といふこと産聲うぶごゑをあげたときから何故なにゆゑとなくにしみて、いろ/\しみもひましやうけれど、そつくりれかゞつてくとでもつたらわたし強情がうじやうてゝとりついて
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何故なにゆゑなれば高貴なる婦人を最も近く観る時はすべて偽造的である。すべ贅沢ぜいたくの陳列及び事事ことごとしき嬌飾けうしよくそれ等よりも、卓越した機敏と貞淑な点をかへつてひくい階級の婦人に見いだすのです。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
我に問ふ、何故なにゆゑに久しく文を論ぜざるかと。我は反問せむとす、何故に久しく論ずべき文をいださゞるかと。我が文學上の評論をなさんといひしちかひは、今やいたづら事になりなむとす。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
ぼくは一ねんこゝにおよべば倫理學者りんりがくしや健全先生けんぜんせんせい批評家ひゝやうか、なんといふ動物どうぶつ地球外ちきうぐわい放逐はうちくしたくなる、西印度にしいんど猛烈まうれつなる火山くわざんよ、何故なにゆゑなんぢ熱火ねつくわ此種このしゆ動物どうぶつ頭上づじやうにはそゝがざりしぞ!
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
はづかしさに、涙にむせび、声を震はせ、「こは殿にはものに狂はせたまふか、何故なにゆゑありての御折檻ごせつかんぞ」と繰返してはきこゆれども、此方こなた憤恚いかりに逆上して、お村のことばも耳にも入らず、無二無三に哮立たけりた
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ハウプトマンの劇「沈鐘」の主人公、鐘作りのハインリツヒは何故なにゆゑ「山の乙女」に迷つたか、妻を捨てたか、子を捨てたか。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
なさざれば其方をつと有ると思ふかやをつとはやなきなり因て我にしたがふべしと云ひければお梅は不審いぶかり何故なにゆゑをつとなしと云ひ給ふととふに粂之進は微笑ほゝゑみ其方が夫喜八は火附盜賊を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
日頃ひごろ沈着ちんちやくで、何事なにごとにも動顛どうてんしたことのない大佐たいさおもてには、此時このとき何故なにゆゑか、心痛しんつうきはまりなきいろえたのである。
蔵を持ぬしに返し長途の重荷を人にゆづりて、我れはこの東京を十年も二十年も今すこしも離れがたき思ひ、そは何故なにゆゑと問ふ人のあらば切りぬけ立派に言ひわけの口上もあらんなれど
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
或時あるとき徒然つれ/″\なるにまかせて、書物しよもつ明細めいさい目録もくろく編成へんせいし、書物しよもつにはふだを一々貼付はりつけたが、這麼機械的こんなきかいてき單調たんてう仕事しごとが、かへつて何故なにゆゑ奇妙きめうかれ思想しさうろうして、興味きようみをさへへしめてゐた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
何故なにゆゑに男子と女子とは対等の生活をたのしむことが出来ないのであらうか。其れは男子が女子を従属物だと思ふ野蛮な気習を改めず、女子も遅疑ちぎしてその気習から脱する勇気が無いからであると。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
石橋いしばしわたしとのこの時の憤慨ふんがいふ者は非常ひじやうであつた、何故なにゆゑ山田やまだ鼎足ていそくちかひそむいたかとふに、これよりさき山田やまだ金港堂きんこうどうから夏木立なつこだちだいする一冊いつさつを出版しました、これ大喝采だいくわつさい歓迎くわんげいされたのです
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
その證據しようこにはかつこひめにくるしもだえたひとも、ときつて、普通ふつうひととなるときは、何故なにゆゑ彼時あのとき自分じぶんこひめにくまで苦悶くもんしたかを、自分じぶんうたがうものである。すなはかれこひちかられてないからである。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
彼が何故なにゆゑに日本の花柳界を愛するかと云へば、最初は無論、單純に女と云ふ事からであつたが、今日では江戸文明の保護者なるが爲めである。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
世話せわにこそなれおんもなにもなきが、つねごろ種々さま/″\苦勞くろうをかけるうへにこの間中あひだぢうよりの病氣びやうき、それほどのことでもかりしを、何故なにゆゑうさぎて、こゝろにも所置しよちありしかもしれず
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「さやうですか。さうしてその添れんと云ふのは、何故なにゆゑに添れんのです」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
何故なにゆゑに禁じられたる果実は味うるはしく候ふや。禁制は甘味かんみを添へ、破戒は香気を増す。谷川の流れを見給へ。
夜あるき (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
おくさまのもとの用心ようじんをとわたし、れもれもよとおつしやつて、おなじう寐間ねまへは入給いりたまへど、何故なにゆゑとなうやすからぬおもひのありて、はねども面持おもゝちたゞならぬを、且那だんなさま半睡はんすい御覽ごらんじて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
自分は歸朝の途中にアラビヤの沙漠を眺めた時、開拓好きの英吉利人、機械の萬能を信ずる米國人、彼等は何故なにゆゑ此廣々した空地に果樹園を作らなかつたのだらう。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
さらばうはさもうそにはあらず、うそどころかきしよりは十倍じふばい二十倍もつとし、さても、其色そのいろ尋常なみえなば、つち根生ねおひのばらのはなさへ、絹帽しるくはつとはさまれたしとねがふならひを、美色びしよくにて何故なにゆゑならん
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)