すで)” の例文
(七)舜禹しゆんうあひだ(八)岳牧がくぼくみなすすむ。すなはこれ(九)くらゐこころみ、しよくつかさどらしむることすうねん(一〇)功用こうようすでおこり、しかのちまつりごとさづく。
曇後晴くもりのちはれ午前ごぜん時頃じごろ瓢箪山ひようたんやま到着たうちやくしてると、發掘はつくつすで進行しんかうして赤鉢卷隊あかはちまきたい活動くわつどうしてるが、一かうかはつたことい。
すでくの如しとせば、予等独自の眼光を以て万象を観んとする芸術の士の、梅花に好意を感ぜざるはかならずしも怪しむを要せざるべし。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「尽日春を尋ねて春を得ず。茫鞋ぼうあい踏みあまね隴頭ろうとうの雲。還り来ってかえって梅花の下を過ぐれば、春は枝頭に在ってすでに十分」(宋戴益)
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
矢場にはすでに弓道師範日置へき流に掛けては、相当名のある佐々木源兵衛が詰めかけていたが、殿のおでと立ちいでてうやうやしく式礼した。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
拂曉ふつげう目醒めさめて、海岸かいがん飛出とびだしてると、櫻木海軍大佐さくらぎかいぐんたいさ日出雄少年ひでをせうねん武村兵曹等たけむらへいそうらすで浪打際なみうちぎわ逍遙せうえふしながら、いづれも喜色滿面きしよくまんめんだ。
ゆかより引下しこぶしを上てすでうたんとなす此時近邊きんぺんの者先刻よりの聲高こゑだかを聞付何ことやらんと來りしが此體このていを見て周章あわて捕押とりおさへ種々靱負を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おそかなおのれより三歳みつわか山田やまだすで竪琴草子たてごとざうしなる一篇いつぺんつゞつて、とうからあたへつ者であつたのは奈何どうです、さうふ物を書いたから
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
奉公にやられると云う事は、つまり実業の見習みならいをする事だから、其の時すでに己の前途は、実業の一方面に限られてしまったのだ。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
けれども、三千代みちよが又たづねてると云ふ目前の予期が、すでに気分の平調をおかしてゐるので、思索も読書も殆んど手にかなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
今ならばこんな馬鹿げた事は勿論もちろんなかろうが、すでにその時にも亜米利加アメリカ人などは日本政府で払わなければいがといって居たことがある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
兵營へいえいからすでに十ちか行程かうていと、息詰いきづまるやうにしするよる空氣くうきと、ねむたさと空腹くうふくとにされて、兵士達へいしたちつかれきつてゐた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
これを自由落下といいますが、それに対する法則はニュートンよりも前に、イタリヤのガリレイという学者がすでに発見しました。
ニュートン (新字新仮名) / 石原純(著)
昔兵威をふるひて天下を取る者は、皆史書に見るところ也。将門天の与ふるところすでに武芸に在り、等輩を思惟するに誰か将門におよばんや。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
日本詩壇に於ける象徴詩の伝来、日なほ浅く、作未だ多からざるに当て、すでに早く評壇の一隅に囁々しようしようの語をす者ありと聞く。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
すでに衣服とするに足る織り物有り、土偶又織り物の痕を有す、余はすくなくともコロボツクルの衣服の或る物は織り物を以てつくりたりと確信かくしんす。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
すで古人こじんつた——物之最小而可憎者もののもつともせうにしてにくむべきは蠅與鼠はへとねずみである。蠅以癡。鼠以黠。はへはちをもつてしねずみはきつをもつてす其害物則鼠過於蠅そのものをがいするはすなはちねずみはへにすぐ其擾人則蠅過於鼠そのひとをみだすはすなはちはへねずみにすぐ……しかも驅蠅難於驅鼠はへをかるはねずみをかるよりもかたし
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
湯原ゆがはら温泉をんせんぼくになじみのふかところであるから、たとひおきぬないでもぼくつて興味きようみのないわけはない、しかすでにおきぬつたのちぼくには
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
読者はすですでにそれが何物であるかを悟り、筆者の悠長な書き振りをもどかしく思っていられることであろう。如何にも御想像の通りです。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
家財道具かざいだうぐもんそとはこばれたとき火勢くわせいすですべてのものちかづくことを許容ゆるさなかつた。いへかこんでひがしにもすぎ喬木けうぼくつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
すでに同一感情と生活意識の上に立って生きて居るとしますれば一つのものをべ、同じ所を、なるべく同じ所に居たいのはあたりまえです。
これはとばかりに、若者は真蒼まっさおになって主家しゅか駈込かけこんで来たが、この時すでに娘は、哀れにも息を引取ひきとっていたとの事である。
テレパシー (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
……それからすでに生水をお飲みになった方は、急いで医師の診察をうけられるか、それともすぐ梅酢うめずをちょこに二、三杯ずつ飲んで下さい……
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
だがその時、彼はその妻や子供のことを考えた。すでに老いの近づいたヘルンは、自分の死後における妻子の地位を考えた。
かぎなりにまがった縁先えんさきでは、師匠ししょう春信はるのぶとおせんとが、すで挨拶あいさつませて、いけこいをやりながら、何事なにごとかを、こえをひそめてはなっていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
諸君、祭司長は、只今ただいますでに、無言をもって百千万言を披瀝ひれきした。れ、げにも尊き祭始の宣言である。しかしながら、いまだ祭司長の云わざる処もある。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
一松斎その人が、すでに、その極意を、何人から得たわけではなかった。彼にも、そこまで剣を練るには、いうにいわれぬ、悲苦艱難ひくかんなんがあったのだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
しかもこの不幸や遂に現世の不幸たるに留まる。不幸は不幸なりといへども、すでに現世を超越せる者に取りては畢竟ひつきやう何の痛痒つうやうをも感ずる者にあらざる也。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
かくて我らはすでにヨブ記という高山の絶頂を極めたわけである。ヨブは既に苦痛の果を受けて人生の秘義を悟り、その目的は達せられたわけである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
あいちやんはすでに三にん競技者プレーヤーが、その順番じゆんばんあやまつたために、女王樣ぢよわうさまから死刑しけい宣告せんこくくだされたとふことをきました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
すでに五軒も十軒も成功をした例があり、大膳坊が掘り出した金をわたくししたといふ話も聽かないのですから、正面から反對する理由は一つもなかつたのです。
ですから、となごと全體ぜんたいが、もと命令めいれい意味いみつてゐました。そのなが命令めいれい言葉ことばのうちに、それをしつめたものが出來できたことは、すでまをしました。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
お前の旅券及び乗船券等はすでに用意してある。俺は一足先にリバプールへ赴く。出帆は明日午後三時半である。
日蔭の街 (新字新仮名) / 松本泰(著)
遠くつらなれる高輪白金たかなわしろかねの高台には樹々のこずえすでにヤヽ黄を帯びて朝日に匂ひ、近く打ち続く後圃こうほの松林にはだ虫の声々残りてながら夜の宿ともひつべし
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
おそらくは大抵たいてい場合ばあひおいてさうなのであらう。噴火後ふんかご實測じつそくによつて一般いつぱん土地とち次第しだいさがつてくことはすでおほくの場合ばあひ證據立しようこだてられたところである。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
「時にはなりぬ」だけで詠歎えいたんのこもることはすでにいった。佐保の宅というのは、郎女いらつめの父大伴安麿やすまろの宅である。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
一同の囚人めしゅうどが徒党を組んですでに屋敷へ押懸けようと云うところを、此の文治が止めたが、ついあやまってお前の夫を殺してしまったのは誠に気の毒の事であった
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いけない——何か切迫した危険を感じて、彼が身をもって割って入ろうとした時、すでに隣人は自分の頭の上にのせられた兵隊式の帽子を大地に叩きつけていた。
遺産 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
しん魏楡きゆの地で石がものを言ったという。民の怨嗟えんさの声が石を仮りて発したのであろうと、ある賢者が解した。すで衰微すいびした周室は更に二つに分れて争っている。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
すでに一じんの薪となるべきを、幸にしる者にあひひて死灰しくわいをのがれ、韻客ゐんかくため題詠だいえい美言びげんをうけたるのみならず、つひには 椎谷侯しひやこうあいほうじて身を宝庫ほうこに安んじ
廿一にじゅういち日朝まだきに起き出でて見るに有明の月東の空に残りて雨はなごりなく晴れたり。心地よき事いわん方なし。七時上野停車塲に行けば長塚すでにありて吾を待つ。
滝見の旅 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
のこる所の二十七名は之よりすすむのみにしてかへるを得ざるもの、じつすすりて决死けつしちかひをなししと云ふてなり、すでにして日やうやたかく露亦やうやへ、かつ益渇をくわ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
ですから當時とうじにおいてすで協同一致きようどういつちして爲事しごとをするひとつの團體だんたい社會しやかいといふものが出來できてをり、またそれを支配しはいしてかしら、すなはち酋長しゆうちようのようなものがなくては
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
五万の群集は熱狂ねっきょう的な声援せいえんを送ったが、時すでおそく、一艇身半をへだてて伊太利は決勝線にんだ。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
広重ひろしげ北斎ほくさいの事は余すでに「浮世絵の山水画と江戸名所」と題せし論文に言ひたればここに論ぜず。)
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
すでに戮力を待つて成立すべしとせば、善事は其の行爲者に於て既に惡念を預想するものに非ずや。換言すれば、彼は多少の意味に於て惡人たる也、不道徳の人たる也。
美的生活を論ず (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
我國わがくに國債こくさい状態じやうたいると、今日こんにちすでに五十九億圓おくゑんたつして從來じうらい大勢たいせいもつはかれば年々ねん/\巨額きよがく國債こくさいえるのであつて百億圓おくゑんたつするもあまとほからざることである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
その時からすでに経過してしまった数年の間、しそれがそのままに打棄うっちゃられてあったならば、恐らくはこんな具合ぐあいにもなっているであろうに……という私の感じの方が
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
或學校あるがくかう學生間がくせいかん教頭排斥けうとうはいせきおこつて、すでにストライキをやらうとしたのだが、ストライキでは犧牲ぎせいおそれがあるとふので、ハガキ運動うんどうといふことだれかゞおもひついて
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
諸君もすでに御承知の事と思うが、私の見た所では塔の高さは約三尺大和薬師寺やまとやくしじの東塔を模したと云われ、三重であるが所謂いわゆる裳階を有するので、一寸ちょっと見ると六階に見える。
真珠塔の秘密 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)