奉公ほうこう)” の例文
はなが、東京とうきょう奉公ほうこうにくるときに、ねえさんはなにをいもうとってやろうかとかんがえました。二人ふたりとおはなれてしまわなければなりません。
赤いえり巻き (新字新仮名) / 小川未明(著)
曾祖母ひいばあさん、祖父おぢいさん、祖母おばあさん、伯父おぢさん、伯母おばさんのかほから、奉公ほうこうするおひなかほまで、家中うちぢうのものゝかほ焚火たきびあかうつりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
その一つは鹿児島県の南の島、奄美大島あまみおおしまで採集せられたもの、すずめ啄木鳥きつつきとの姉妹は奉公ほうこうに出ていて、家に年とった親をのこしていた。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
針屋はりやへやってくれるん。そして十八になったら大阪おおさか奉公ほうこうにいって、月給みんな、じぶんの着物買うん。うちのお母さんもそうしたん
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
掛一たい志操こゝろざしよろしからぬ者に付同惡とぞんじこと仇討あだうちせつさまたげ致し候故是非ぜひなくきずを付候と申ければして又其方敵討かたきうちいたさん爲に遊女奉公ほうこう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
はなさないでもおまへ大抵たいていつてるだらうけれどいま傘屋かさや奉公ほうこうするまへ矢張やつぱりれは角兵衞かくべゑ獅子しゝかぶつてあるいたのだからとうちしをれて
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
われこと奉公ほうこうにやればぜね借金しやくきんくなるし、よきことだつて輕業師かるわざげでもしつちめえばそれこそらくになつちあんだが
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
昔、大阪の町へ奉公ほうこうに来た男がありました。名は何と云ったかわかりません。ただ飯炊奉公めしたきぼうこうに来た男ですから、権助ごんすけとだけ伝わっています。
仙人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あの嫉妬家やきもちやき奉公ほうこうするのはよしゃれ。彼奴あいつ制服しきせ青白あをじろ可嫌いやいろぢゃゆゑ、阿呆あはうほかれもぬ、いでしまや。……おゝ、ありゃひめぢゃ。
この下女はもと由緒ゆいしょのあるものだったそうだが、瓦解がかいのときに零落れいらくして、つい奉公ほうこうまでするようになったのだと聞いている。だからばあさんである。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかしそちも言うとおり、弱年の者じゃから、何かひとかどの奉公ほうこうをいたしたら、それをしおに助命いたしてつかわそう
佐橋甚五郎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ぼくは奉公ほうこうはしたくありません。奉公するとパリにじっとしていなければならないし、そうすると二度ともうあなたがたに会うことができません。
だがかの女らの友だちは、ケートと愛称あいしょうした。ケートは二十年ちかくもニューヨークの富豪ふごう、ベンフヒールド氏の家に奉公ほうこうして女執事おんなしつじをつとめた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
おめえの奉公ほうこうさきも、ちゃあんとわかってる。だがな、いいか、三日たったら、きっとかねをもらうぞ。約束やくそくをまもらなかったら、ただではおかねえぞ。
其爲そのため亞尼アンニー一人ひとりさびしくいへのこされて、つひわたくしいへ奉公ほうこうやうになつたのですが、御存ごぞんじのとうり、正直しやうじきをんなですから、私共わたくしどもをかけて使つかつてうち
千助せんすけじゆんさかづき𢌞まはつてとき自分じぶん國許くにもとことなぞらへて、仔細しさいあつて、しのわかものが庄屋しやうや屋敷やしき奉公ほうこうして、つま不義ふぎをするだんるやうに饒舌しやべつて
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それゆえ母はわずか二三年、多くも四年ほど新町に奉公ほうこうしただけで、じきに津村家へとついだことになる。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
おくからのこえは、このはるまで十五ねんながあいだ番町ばんちょう武家屋敷ぶけやしき奉公ほうこうあがっていた。春信はるのぶいもうと梶女かじじょだった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
故郷の京都へい戻り、あちこち奉公ほうこうしたが、英語の読める丁稚でっち重宝ちょうほうがられるのははじめの十日ばかりで、背中の刺青がわかって、たちまち追い出されてみれば
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
赤猪子あかいのこはたいそう喜んで、それなりおよめにも行かないで、一心にご奉公ほうこうを待っておりました。しかし宮中きゅうちゅうからは、何十年たっても、とうとうおしがありませんでした。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
書林ほんや小僧こぞうおこつて、あんな吝嗇しみつたれやつはありやアしない、おれたび使賃つかひちんれた事がない、自分のうちならばもうきやしないと思つても、奉公ほうこううへだから仕方しかたがなく
西洋の丁稚 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
そして、それができあがったとき、親方から、ながかった奉公ほうこうのおひまをいただきました。
名なし指物語 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
新吉は、両親がなく、たった一人の姉さんは東京のおじさんの家へ奉公ほうこうに行ってしまい、自分は小学校へ二年ほどかよったきりで、この鍛冶屋の丁稚でっちになってしまったのです。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
それが、小学校を出て奉公ほうこうをする様になった当時は、一時んでいたのだけれど、どうしたものか二十歳を越してから又再発して、困ったことには、見る見る病勢がつのって行くのであった。
夢遊病者の死 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
一年とさだめたる奉公人ほうこうにん給金きうきんは十二箇月のあひだにも十兩、十三月のあひだにも十兩なれば、一月はたゞ奉公ほうこうするか、たゞ給金きうきんはらふか、いづれにも一ぽうそんなり。其外そのほか不都合ふつがふかぞふるにいとまあらず。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
叔母が時々、二つきも三つきも家にいなくなったのを私は覚えている。そして、それは後からきいたことではあるが、叔母が父をのがれてひとりこっそりと他人の家に奉公ほうこうに行っていたのであった。
おまえのおっかさんはおいらが甲府へ逃げてしまって奉公ほうこうしようというのを止めてくれたけれども、真実ほんと余所よそへ出て奉公した方がいくらいいか知れやしない。ああ家に居たくない、居たくない。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「——皆、あまり働かないで、なまけたり、ずる寝をしたがる傾きがあるが、戦争に勝てば、いくらでも休めるじゃないか、奉公ほうこうするのも、今をのぞいて何時奉公するんだ、と隊長は言われました」
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
『ぼろ奉公ほうこう
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
地下ちかなお奉公ほうこう
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うちにいては、なんのためにもならぬから、いいとこをさがして、奉公ほうこうなさい。そして、おともだちに、まけないようにしなければならぬ。
子供はばかでなかった (新字新仮名) / 小川未明(著)
忍び出夜にまぎれて千住の方へと行たりけり此左仲はもと下總しもふさ銚子在てうしざいの百姓の悴なりしが江戸へ出て御旗本を所々しよ/\渡り侍士さぶらひを勤め夫より用人奉公ほうこう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
とうさんの幼少ちひさ時分じぶんにはおうちにおひなといふをんな奉公ほうこうしてまして、半分はんぶん乳母うばのやうにとうさんをおぶつたりいたりしてれたことをおぼえてます。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
從來じうらいかれとほ奉公ほうこういくらでも慰藉ゐしやみち發見はつけんしてたのは割合わりあひあたゝかなふところほとんどつひやしつゝあつたからである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いまさらよそのうちに奉公ほうこうするよりも、わたしにはこの流浪るろうの旅がずっと自由で気楽なばかりでなく、エチエネットや、アルキシーやバンジャメン
元二げんじじゆんさかづき𢌞まはつてとき自分じぶん國許くにもとことりて仔細しさいあつて、しのわかものが庄屋しやうや屋敷やしき奉公ほうこうして、つま不義ふぎをする、なかだちは、をんな寵愛ちようあいねこ
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ある水車すいしゃごや(1)に、こなひきのおじいさんが住んでいました。おじいさんのとこには、おかみさんもいず、子どももなく、若いものが三人奉公ほうこうしているだけでした。
他所よそくちさがせとならばあししまじ、いづ奉公ほうこう秘傳ひでん裏表うらおもてふてかされて、さてもおそろしきことひとおもへど、なにこゝろ一つでまたこのひとのお世話せわにはるまじ
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ほとんどひといきに、二三日前にちまえ奉公ほうこうた八さい政吉まさきちから、番頭ばんとう幸兵衛こうべえまで、やけ半分はんぶんびながら、なかくちからあたふたとんで徳太郎とくたろうは、まげ刷毛先はけさきとど
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「先生、ぼく、あしたの晩、大阪へ奉公ほうこうにいきます。学校は主人が夜学へやってくれます」
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
あにきもねえもんだ、あにきたぬき)の腹鼓はらつゞみが聞いてあきれるとぬかしやアがるから、やい畜生ちくしやう手前てめえ懶惰者なまけもんでべん/\と遊んでゐるから、何処どこ奉公ほうこうつたつて置いてくれる者もないから
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
もはやこんな老婆ろうばになりましたので、もとよりご奉公ほうこうにはえられませんが、ただ私がどこまでもおおせをまもっておりましたことだけを申しあげたいと存じましてわざわざおうかがいいたしました
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
そして、もう奉公ほうこうるには、あまりとしをとってしまったので、自分じぶんは、むらのこってたんぼて、くわをとってはたらくことにいたしました。
赤いえり巻き (新字新仮名) / 小川未明(著)
與吉よきちが三つにつたのでおつぎはよそ奉公ほうこうすことに夫婦ふうふあひだには決定けつていされた。ころ十五のをんなでは一ねん給金きふきん精々せい/″\ゑんぐらゐのものであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
するとあの人がせんにおよめに来るまえに奉公ほうこうしていたおくさんが、エジプトへ行くというので、そのおくさんにたのんで子どもの乳母うばにしてもらった。
渡世としお三婆々さんばゝよばれたり娘も追々おひ/\成長せいちやうして容貌きりやうも可なりなるにはや年頃になれば手元におくも爲によからじ何方いづかたへ成とも奉公ほうこういださんと口入の榎本屋えのもとや三藏を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そこで、女の子は思いきっておばあさんのいうことをきいて、このうちに奉公ほうこうすることにしました。
そうでもござんしょうが、いちどんこそ災難さいなんだ。んにもらずにおともて、おせんにったばっかりに、大事だいじ奉公ほうこうをしくじるなんざ、辻占つじうらない文句もんくにしても悪過わるすぎやさァね。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ましてやこの大島田おほしまだをりふしは時好じこう花簪はなかんざしさしひらめかしておきやくらへて串談じようだんいふところかば子心こゞころにはかなしくもおもふべし、去年きよねんあひたるときいま駒形こまかた蝋蠋ろうそくやに奉公ほうこうしてまする
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
私はただその気高けだか艶麗あでやかな人を、今でも神か仏かと、思うけれど、あとで考えると、先ずこうだろうと、思われるのは、うばの娘で、清水谷しみずだにの温泉へ、奉公ほうこうに出ていたのを、祭にいて
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)