うはさ)” の例文
肥後守は侘助椿のほかにも、肩の羽の真つ白なかささぎや、虎の毛皮や、いろんな珍しい物をあちらから持ち帰つたやうにうはさせられてゐる。
侘助椿 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
いで芝八山へと急ぎ行次右衞門道々考へけるは天一坊家來に九條殿くでうどのの浪人にて大器量人とうはさある山内伊賀亮には逢度あひたくなしされば赤川大膳を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わたしが何かの話の工合で、先方の父親に兜町かぶとちやうの景気を一寸うはさした時、若者が露骨にいやな顔を見せたことも、わたしは見逃みのがさなかつた。
愚かな父 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
十七のあきたおつぎの姿すがたがおしなくもたことをおもしては、他人ひとうはさいて時々とき/″\つてもたい心持こゝろもちがした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
つきかはつてからさむさが大分だいぶゆるんだ。官吏くわんり増俸ぞうほう問題もんだいにつれて必然ひつぜんおこるべく、多數たすううはさのぼつた局員きよくゐん課員くわゐん淘汰たうたも、月末げつまつまでほゞ片付かたづいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
とうさんのうちではよく三郎さぶらううはさをします。三郎さぶらう木曾きそはうはなしもよくます。あの木曾きそやまなかとうさんのうまれたところなんですから。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
武は、モウ成人おとなになつて、此湖水などへは舟で幾度も遊びに来たことが有り升。しかし其後鼻でつりをしたといふうはさは、一度もきこえません。
鼻で鱒を釣つた話(実事) (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
うはさらなかつた隧道トンネルこれだとすると、おとひゞいた笹子さゝご可恐おそろしい。一層いつそ中仙道なかせんだう中央線ちうあうせんで、名古屋なごや大𢌞おほまはりをしようかとおもつたくらゐ。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
づこんなりふれた問答もんだふから、だん/\談話はなしはながさいて東京博覽會とうきようはくらんくわいうはさ眞鶴近海まなづるきんかい魚漁談ぎよれふだんとう退屈たいくつまぬかれ、やつとうらたつした。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
そのうはさは、たちまち町中にひろがりました。たいへんなさわぎになりました。町中の人たちが、上人さまのいほりの方へおしかけてきました。
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
その翌日あくるひ、こんなうはさがぱつとちました。昨日きのふ乞食こじきのやうなあのぼうさんは、あれはいま生佛いきぼとけといはれてゐるお上人樣しやうにんさまだと。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
するとかういふうはさを聞いて、今までは路で行き合つても、挨拶さへしなかつた友だちなどが、朝夕遊びにやつて来ました。
杜子春 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それから一年程経つて失敗に失敗を重ねて、茫然ぼんやり田舎に帰つて行つた相だが、間もなく徴兵のくじが当つて高崎の兵営に入つたといふうはさを聞いた。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
真木は金の融通をしてもらふこともあつたし、材木を借りることもあるらしかつた。二人は商売上の話もしたが、遊びや女の話、仲間のうはさも出た。
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
今は別居して喫茶店をはじめてゐる……といふやうなうはさばなしの一端が私の耳に聞きとれたが、そのおかみではなからうかと私はひそかに思つた。
老残 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
芸妓買げいしやがひはなさる、昨年あたりはたしか妾をかこつてあると云ふうはささへ高かつた程です、だ当時黄金かねがおありなさると云ふばかりで、彼様あんなけがれた男に
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
家の人達のうはさでは、近ごろ二番目息子の吉三郎さんが、下女のお夏と親し過ぎるので、御兩親が心配して、その娘を
まちには、病院びやうゐん新院長しんゐんちやういての種々いろ/\うはさてられてゐた。下女げぢよ醜婦しうふ會計くわいけい喧嘩けんくわをしたとか、會計くわいけい其女そのをんなまへひざつて謝罪しやざいしたとか、と。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
第一の銀行よ。梅「成程なるほどうはさには聞いてりましたが立派りつぱなもんですね……あれは。近「橋だ、鎧橋よろひばしといふのだ。 ...
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
芝居しばゐ土間どま煙草たばこつて、他人たにんたもとがしたものも、打首うちくびになるといふうはさつたはつたときは、皆々みな/\あをくなつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「それでも仏蘭西では銅貨を廃して、小さい Aluminium にするなんといふうはさがあるから、今に Sou も珍らしい物になるかも知れません。」
金貨 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
話はここでも、本線の方と同じやうに、昨日までの雨と洪水のうはさでした。大抵南の方のことでした。狐禅寺こぜんじでは、北上きたかみ川が一丈六尺増したとたれかが云ひました。
化物丁場 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
「今、船の中で、あなたのおうはさをしてゐたところです。噂をすれば影とやらです。全く。今から何方どちらへ。」
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
と、このうはさはやくも軍艦ぐんかん」の全體ぜんたいつたはつたが、れもその本分ほんぶんわすれて「どれ、どんなをとこだ」などゝ、我等われらそばんでやう不規律ふきりつことすこしもく。
三月にわたる久きをかの美き姿の絶えず出入しゆつにゆうするなれば、うはさおのづから院内にひろまりて、博士のぼうさへつひそそのかされて、垣間見かいまみの歩をここにげられしとぞ伝へはべる。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
さくらはなうめとめてやなぎえだにさく姿すがたと、くばかりもゆかしきをこヽろにくきひとりずみのうはさ、たつみやびこヽろうごかして、やまのみづに浮岩あくがるヽこひもありけり
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
もう一軒の地主である寺本といふ家では濁酒だくしゆの醸造をはじめて、まだ十年とたない今日こんにち、家屋敷まで他人手ひとでに渡してしまつた……といふ、そんなうはさや、それから
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
そのうちに、赫映姫かぐやひめならぶものゝないほどうつくしいといふうはさを、ときみかどがおきになつて、一人ひとり女官じよかん
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
隙間すきまもなうくろとばり引渡ひきわたせ、こひたすくるよるやみそのやみまちものふさがれて、ロミオが、られもせず、うはさもされず、わしこのかひななか飛込とびこんでござらうやうに。
このあたりには、よく狐めがゐて人をばかすといふうはさだが、わしは狐ぢやない。くずの葉を見せ変へて、小判だなんといはぬから、よくあらためて受けとりな。さあさ。
狐の渡 (新字旧仮名) / 土田耕平(著)
それでラマ塔には、タクマールの幽霊が出るといふうはさがあつてだれもそばへは寄らないのでした。
ラマ塔の秘密 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
これは多分たぶんあのペンペのうはさちがひない。すると元気げんき正直しやうじきなペンペもんでしまつたのか。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
何故なぜなら、そのころ、さういふ野蠻やばん戰慄せんりつすべきうはさが、世間せけんやかましくつたはつてゐたからだ。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
『君たちを掘り出すつもりでやつて來たのだが、まア/\うはさの樣でなくてよかつた。』
樹木とその葉:34 地震日記 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
四五日目にちめ一人ひとり二人ふたりもあればいゝはうなので、道子みちこはそのころしきりひとうはさをする浅草公園あさくさこうゑん街娼がいしやうにならうと決心けつしんしたが、どのへんていゝのか見当けんたうがつかないので、様子やうすをさぐりに
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
ところがをかしいこともあればあるもので、将門の方で貞盛を悪く思ふとか悪くうはさするとかならば、媢嫉猜忌ばうしつさいきの念、俗にいふ「やつかみ」で自然に然様さういふ事も有りさうに思へるが
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
長兄は秋田の第十七聯隊から出征し、黒溝台こくこうだいから奉天ほうてんの方に転戦してそこで負傷した。その頃は、あの村では誰彼だれかれが戦死した。この村では誰彼が負傷したといふうはさが毎日のやうにあつた。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
泥棒のうはさの立つ毎に、ひよつとして自分の本箱や行李かうりの中に、ポケットなどに他人の金入れが紛れこんではゐないか、夜臥床とこをのべようと蒲団をさばく時飛び出しはしないか、と戦々兢々せん/\きよう/\とした。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
千島ちしま事抔ことなどうはさしあへるを耳にしては、それあれかうと話してきかせたく鼻はうごめきぬ、洋杖ステツキにて足をかれし其人そのひとにまで、此方こなたよりゑみを作りて会釈ゑしやくしたり、何処いづくとさしてあゆみたるにあらず
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
口のるい、うはさの好きな人達は
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
気のれしうはさに立てる
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
答らるゝに伊豆守殿點頭うなづかれ成程當節たうせつは越前を名奉行と人々うはさを致すやに聞及べりされは越前はきらひなり兎角に我意がい振舞ふるまひ多く人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
『今日僕は妙なことを聞いて来た。学校の職員の中に一人新平民が隠れて居るなんて、其様そんなことを町の方でうはさするものが有るさうだ。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
また其前そのまへ改革かいかく淘汰たうたおこなはれるにちがひないといふうはさおもおよんだ。さうして自分じぶん何方どつちはう編入へんにふされるのだらうとうたがつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それ以来吉原よしはらは、今でもあいつのうはさで持ちきつてゐるやうだ。かくこれで見ても、なんでも冗談じようだんだと思ふのは危険だよ。
南瓜 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
トルストイの『アンナ・カレニナ』の終りの章に多くの人が蜂小屋の近くで塞耳維セルビア戦争のうはさをしてゐるところがある。
その上、いろんなうはさがたつてゐました。センイチのおかみさんが、毎日あんなにたくさん鳥や獣を持つてくるのが変だと、町の人々は話し合ひました。
悪魔の宝 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
しばらくしておしなはゝみゝへもへびうはさつたはつた。それからといふものおしなはゝは一でも卯平うへい自分じぶんうちからはなさない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
松川彼処かしこすまひてより、別にかはりしこともなく、二月ふたつき余も落着おちつけるは、いと珍しきことなりと、近隣きんりんの人はうはさせり。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
カラ/\と打ち笑ふ男の声聞えて、主人の利八と物語りつゝ、階子はしご上りきたるは、今しもお熊のうはさせる其人なるべし
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)