さん)” の例文
グズグズしている間には穴蔵のものが、紅蓮ぐれんの舌さきに焼き殺されてしまう。鏡の口が開いたので、火の早さは一さんになるであろう。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
沈丁花ちんちょうげの花のしたのをお風呂へ入れてあげるから入りなさい。そりゃいいにおいで気がさんじるから。」母は話さなかったが
桃のある風景 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
おもはず飛上とびあがつて総身そうしんふるひながら大枝おほえだしたを一さんにかけぬけて、はしりながらまづ心覚こゝろおぼえやつだけは夢中むちうでもぎつた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
○さて堂内人さんじて後、かの山長やまをとこ堂内に苧幹をがらをちらしおく㕝れいなり。翌朝よくてうおとこ神酒みき供物くもつそなふ、うしろさまにすゝみさゝぐ、正面にすゝむを神のいみ給ふと也。
ソレッ! というのでさんみだし、奥の間さして駈け入ろうとすると、かたえの廊下のまがかどから、静かな声がいて来て
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
くのかあ」とまだねむらなかつた船頭せんどう突然とつぜん特有もちまへ大聲おほごゑ呶鳴どなつた。おつぎはおどろいてまたさん土手どてはしつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
人々ひとびとが、海岸かいがんからさんじてしまってよるになりかけたころでした。ほんとうにうみうえはひじょうなあらしになったのであります。それは老人ろうじんのいったとおりでした。
カラカラ鳴る海 (新字新仮名) / 小川未明(著)
なにがし法學士はふがくし洋行やうかう送別會そうべつくわい芝山内しばさんない紅葉館こうえふくわんひらかれ、くわいさんじたのはの八ごろでもあらうか。其崩そのくづれが七八めい京橋區きやうばしく彌左衞門町やざゑもんちやう同好倶樂部どうかうくらぶ落合おちあつたことがある。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
衆奉じて以て主と爲すべきものなく、或はさんじて四方にき、或は上野うへのる。若し公をして耐忍たいにんの力無く、共にいかつて事を擧げしめば、則ち府下悉く焦土せうどと爲らん。
りきは一さんいゑて、かれるものならこのまゝに唐天竺からてんぢくはてまでもつて仕舞しまいたい、あゝいやいやいやだ、うしたならひとこゑきこえないものおともしない、しづかな、しづかな
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
勝伯かつはくが徳川方の大将となり官軍をむかえ戦いたりとせよ、その結果けっかはいかなるべきぞ。人をころざいさんずるがごときは眼前のわざわいぎず。もしそれしんの禍は外国の干渉かんしょうにあり。
善光寺如来ぜんこうじにょらい御神籤おみくじをいただいて第五十五の吉というのを郵便で送ってくれたら、その中にくもさんじて月重ねて明らかなり、という句と、花ひらいて再び重栄ちょうえいという句があったので
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
其他そのた裁判官さいばんくわんも有る、会社員も有る、鉄道の駅長も有る、なかには行方不明ゆくへふめいなのも有る、物故ぶつこしたのも有る、で、銘々めい/\げふちがふからしておのづから疎遠そゑんる、長い月日には四はうさんじてしまつて
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
と愚痴を云いながらようやどてのぼりましたが、頭髪あたまもとよりさんばらになって居り、月代さかやきりこわしたなりでひょろ/\しながら吾妻橋まで来たが、昼ならどのくらい人が驚くか知れません。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
太史公たいしこういはく、老子らうしたつとところみちは、(一二二)虚無きよむにして因應いんおうし、無爲むゐ變化へんくわす、ゆゑ著書ちよしよ(一二三)辭稱じしよう微妙びめうにしてがたし。莊子さうじ(一二四)道徳だうとくさんじて放論はうろんす、えうまたこれ自然しぜんせり。
と言つて、その儘あとをも見ずに、一さんに駈け出してしまつた。
さんじ大いによろこび越前守の
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
○さて堂内人さんじて後、かの山長やまをとこ堂内に苧幹をがらをちらしおく㕝れいなり。翌朝よくてうおとこ神酒みき供物くもつそなふ、うしろさまにすゝみさゝぐ、正面にすゝむを神のいみ給ふと也。
こちとらアもらった路銀をせいぜいおもしろおかしくさんじてヨ、それに帰路かえりはお侍連の東道役とうどうやく、大いばりで江戸入りができようてんだからこんなうめえ話はねえサ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それをながめた竹童ちくどうが、試合場しあいじょう中央ちゅうおうで飛びあがるように手をふると、あなたにいた木隠こがくれたつみ加賀見かがみ山県やまがたの四人、矢来やらい木戸口きどぐちから一さんにそこへかけだしてきて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
越中ゑつちう、がたりあぶみはうし、うまにひらりとるよりはやく、一さんげてく。座頭ざとうはら
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かれしばらまた凝然ぢつとして上流じやうりう小船こぶねた。かれがついたとき土手どてを一さんきたいそいだ。土手どてやが水田すゐでんうてうね/\ととほはしつてる。土手どて道幅みちはゞせまくなつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そして、あしもとにたおれているびんをひろって、一もくさんむらほうはしりだした。
火を点ず (新字新仮名) / 小川未明(著)
此折このおりなにともおもはれず、めてかへりはとりでもべてと機嫌きげんられるほどものがなしく、すやうにして一さん家路いゑぢいそげば、けふこと/\くきてらうたゞ美尾みを病氣いたつきむねをいためぬ。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
みをさんぜんとて、これまで
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
思ひこみかく始末しまつに及びし事御わびは程なく黄泉あのよにて申上てと伏拜ふしをがみ夫より一さんに南の町奉行所へ駈込かけこみ私しは主殺しの大罪人だいざいにん御定法ごぢやうはふの御仕置しおき願奉つると申たてければ役人共は一時發狂人はつきやうにんと思ひしが容易よういならざるうつたへなればすぐに一通り調しらべ有てなは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
藻抜もぬけのやうにつてた、わしたましひもどつた、其方そなたをがむとひとしく、つえをかいみ、小笠をがさかたむけ、くびすかへすとあはたゞしく、一さんりたが、さといた時分じぶんやま驟雨ゆふだち
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かれそのされたいね穗先ほさきつかんでもみ幾粒いくつぶかをしごいてた。かれさらその籾粒もみつぶんでた。かれそれからまたさんはしつた。かれすこしのひどひまどつたやうにかんじた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
と燕作は、ふたたびかさのふちをおさえながら、一さんに石段から石段をかけのぼっていくと
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こうして富士見の馬場の剣林もそのまま四さんしたのだったが、片や神尾喬之助と喧嘩渡世の夫婦、それに、変り者の魚心堂居士、片や神保造酒を筆頭に、大矢内修理、比企一隆斎
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そして、太陽たいようは、きゅうねつひかりをましました。そのねつくもさんじてしまいました。そして、やっとうえびたばかりのは、ちいさながしぼんで、ほそみきかわいて、ついにれてしまいました。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「だまれ。いまほどな酒で酔いはいたさぬ。ほんの鬱気うつきさんじるため、薬湯代やくとうがわりに、折々、用いているまでだわ。この高時に酒進さけまいらせぬと、わが軍の士気は揚がらぬぞ、はははは」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
坂は照る照る鈴鹿すずかくもる=といい、あわせりたや足袋たび添えて=と唱える場合には、いずれもつかれを休めるのである、無益むえきなものおもいを消すのである、むしろ苦労をまぎらそうとするのである、うささんじよう
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
味方の目をしのんで、一さんに、ふもとへ走っていった小幡民部こばたみんぶとほかふたりは、やがて、夜のしらしら明けに、ふもと馬舎うまやから三とう駿馬しゅんめをよりだして、ヒラリと、それへまたがった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うささんじよう、こひわすれよう、泣音なくねしのばうとするのである。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)