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ふと
ふりがな文庫
“
不圖
(
ふと
)” の例文
新字:
不図
「さればにて
候
(
さふらふ
)
、
別段
(
べつだん
)
是
(
これ
)
と
申
(
まを
)
して
君
(
きみ
)
に
勸
(
すゝ
)
め
奉
(
たてまつ
)
るほどのものも
候
(
さふら
)
はねど
不圖
(
ふと
)
思附
(
おもひつ
)
きたるは
飼鳥
(
かひどり
)
に
候
(
さふらふ
)
、
彼
(
あれ
)
を
遊
(
あそ
)
ばして
御覽候
(
ごらんさふら
)
へ」といふ。
十万石
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
不圖
(
ふと
)
落付かぬ何やらの音が聞えた。紙とガラスの二重になつてゐる窓の障子の間にまひ込んだ何やらの羽蟲が立つる音である。
樹木とその葉:14 虻と蟻と蝉と
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
扨て公園の岡の茶店に憩ひながら、先刻の稚兒の事が
不圖
(
ふと
)
胸に浮んだが、その稚兒が男だつたか女だつたか、はつきり
記憶
(
おぼ
)
えてゐなかつた。
貝殻追放:017 泉鏡花先生と里見弴さん
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
四邊
(
あたり
)
を
見𢌞
(
みまは
)
せば
不圖
(
ふと
)
眼にとまる
經机
(
きやうづくゑ
)
の上にある薄色の折紙、取り上げ見れば維盛卿の筆と覺しく、
水莖
(
みづぐき
)
の跡
鮮
(
あざ
)
やかに走り書せる二首の和歌
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
不圖
(
ふと
)
小六
(
ころく
)
が
斯
(
こ
)
んな
問
(
とひ
)
を
御米
(
およね
)
に
掛
(
か
)
けた。
御米
(
およね
)
は
其時
(
そのとき
)
疊
(
たゝみ
)
の
上
(
うへ
)
の
紙片
(
かみぎれ
)
を
取
(
と
)
つて、
糊
(
のり
)
に
汚
(
よご
)
れた
手
(
て
)
を
拭
(
ふ
)
いてゐたが、
全
(
まつた
)
く
思
(
おもひ
)
も
寄
(
よ
)
らないといふ
顏
(
かほ
)
をした。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
「
何故
(
なぜ
)
家は
此
(
か
)
うなんだらうと、
索寞
(
さくばく
)
といふよりは、これぢや
寧
(
むし
)
ろ
荒凉
(
くわうりやう
)
と
謂
(
い
)
ツた方が適當だからな。」と
呟
(
つぶや
)
き、
不圖
(
ふと
)
また奧を
覗
(
のぞ
)
いて、
燥
(
いら
)
ツた聲で
青い顔
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
物言
(
ものい
)
ふは
用事
(
ようじ
)
のある
時
(
とき
)
慳貪
(
けんどん
)
に
申
(
まをし
)
つけられるばかり、
朝起
(
あさおき
)
まして
機嫌
(
きげん
)
をきけば
不圖
(
ふと
)
脇
(
わき
)
を
向
(
む
)
ひて
庭
(
には
)
の
草花
(
くさばな
)
を
態
(
わざ
)
とらしき
褒
(
ほ
)
め
詞
(
ことば
)
十三夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
譯讀を止して練習課題に變へた時、私は
不圖
(
ふと
)
彼の方を見た。と、私は、いつも
凝視
(
みつ
)
めてゐるあの碧い眼に、私が押へられてゐるのに氣が附いた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
腹這ひになつてお
粥
(
かゆ
)
を召上り乍ら
不圖
(
ふと
)
思ひ出したやうに「圭一郎はなんとしとるぢやろ」と言はれると、ひとり手にお父さまの指から箸が辷り落ちます。
業苦
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
不圖
(
ふと
)
見れば、王瀧川の上流遠く、雲の
幾重
(
いくへ
)
ともなく重れる間より、髣髴としてあらはれ渡れる偉大なる山の半面。
秋の岐蘇路
(旧字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
すべて
人
(
ひと
)
は
感情
(
かんじやう
)
の
動物
(
どうぶつ
)
で、
樂
(
た
)
しき
時
(
とき
)
には
何事
(
なにごと
)
も
樂
(
たの
)
しく
見
(
み
)
え、
悲
(
かな
)
しき
時
(
とき
)
には
何事
(
なにごと
)
も
悲
(
かな
)
しく
思
(
おも
)
はるゝもので、
私
(
わたくし
)
は
今
(
いま
)
、
不圖
(
ふと
)
此
(
この
)
悽愴
(
せいさう
)
たる
光景
(
くわうけい
)
に
對
(
たい
)
して
物凄
(
ものすご
)
いと
感
(
かん
)
じて
來
(
き
)
たら
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
不圖
(
ふと
)
氣
(
き
)
が
付
(
つ
)
いた
時
(
とき
)
お
品
(
しな
)
ははき/\として
天秤
(
てんびん
)
を
擔
(
かつ
)
いだ。
林
(
はやし
)
が
竭
(
つ
)
きて
田圃
(
たんぼ
)
が
見
(
み
)
え
出
(
だ
)
した。
田圃
(
たんぼ
)
を
越
(
こ
)
せば
村
(
むら
)
で、
自分
(
じふん
)
の
家
(
いへ
)
は
田圃
(
たんぼ
)
のとりつきである。
青
(
あを
)
い
煙
(
けぶり
)
がすつと
騰
(
のぼ
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
『さァ、
何方
(
どつち
)
が
何方
(
どつち
)
?』と
呟
(
つぶや
)
いて、
功能
(
こうのう
)
を
試
(
ため
)
すために
右手
(
めて
)
に
持
(
も
)
つた一
ト
片
(
かけ
)
を
少
(
すこ
)
し
舐
(
な
)
めました、すると
愛
(
あい
)
ちやんは
忽
(
たちま
)
ち、
其顎
(
そのあご
)
の
下
(
した
)
を
強
(
したゝ
)
か
打
(
う
)
たれたのに
氣
(
き
)
がついて、
不圖
(
ふと
)
見
(
み
)
ると
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
そのうちに
不圖
(
ふと
)
思ひ附いたやうに、食事中自分の膳を離れて、例の新しい雨傘を取りに立つて行きました。それを大事さうに自分の膳の側に置いて、それから復た食ひ始めました。
幼き日:(ある婦人に与ふる手紙)
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
時どき私はそんな路を歩きながら、
不圖
(
ふと
)
、其處が京都ではなくて京都から何百里も離れた仙臺とか長崎とか——そのやうな
市
(
まち
)
へ今自分が來てゐるのだ——といふ錯覺を起さうと努める。
檸檬
(旧字旧仮名)
/
梶井基次郎
(著)
私が此下宿へ初めて移つた晩、此女が來て、亭主に別れてから自活して居たのを云々と話した事があつたが、此頃になつて、
不圖
(
ふと
)
した事から、それが全然根も葉も無い事であると解つた。
菊池君
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
それが
不圖
(
ふと
)
したことからある
近親
(
みより
)
の人の眼を患つて肥前
小濱
(
をはま
)
の
湯治場
(
たうぢば
)
に滯留してゐた頃、母と乳母とあかんぼと
遙
(
はる
)
ばる船から海を渡つて見舞に行つた當時の出來事だということがわかつた。
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
それから二つ三つ世間話をしてゐる間に、をぢさんは
不圖
(
ふと
)
かんがへた。この半七ならば祕密を明かしても差支へはあるまい、いつそ何も彼も打明けて彼の智慧を借りることにしようかと思つた。
半七捕物帳:01 お文の魂
(旧字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
『うん、あの
話
(
はなし
)
か。あれは
幾度
(
いくど
)
聽
(
き
)
いても
面白
(
おもしろ
)
いな。』と、
言
(
い
)
ひかけた
但馬守
(
たじまのかみ
)
は、
不圖
(
ふと
)
玄竹
(
げんちく
)
の
剃
(
そ
)
り
立
(
たて
)
の
頭
(
あたま
)
に、
剃刀創
(
かみそりきず
)
が二ヶ
所
(
しよ
)
ばかりあるのを
發見
(
はつけん
)
して、『
玄竹
(
げんちく
)
、だいぶ
頭
(
あたま
)
をやられたな。どうした。』
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
不圖
(
ふと
)
自分は柔い
羽
(
はね
)
で撫で開けられるやうに靜かに目を
開
(
あ
)
いた。
女の子
(旧字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
尼ヶ崎橋に立つて
不圖
(
ふと
)
東京の今川橋に居るやうな氣になつた。
京阪聞見録
(旧字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
不圖
(
ふと
)
昔の夢が胸に浮んで來た。
夢
(旧字旧仮名)
/
吉江喬松
、
吉江孤雁
(著)
ところが
不圖
(
ふと
)
見ると廊下の角に當る柱が眼に見えて斜めになり、且つそれから直角に渡された雙方の横木がぐつと開いてゐるのに氣がついた。
樹木とその葉:34 地震日記
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
打ち見やりて時頼
莞爾
(
につこ
)
と打ち
笑
(
ゑ
)
み、
二振三振
(
ふたふりみふり
)
、
不圖
(
ふと
)
平見
(
ひらみ
)
に映る我が顏見れば、こはいかに、内落ち色
蒼白
(
あをじろ
)
く、ありし昔に似もつかぬ悲慘の容貌。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
「肉は決して
胃
(
い
)
の
腑
(
ふ
)
の要求ばかりじやない。」周三は
不圖
(
ふと
)
此様なことを考へた。其をきツかけに、彼はまた何時もの
思索家
(
しさくか
)
となつた。頭は直に曇つて来る。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
近頃
不圖
(
ふと
)
思ひ出して、あゝして置いては轉宅の際などに何處へ散逸するかも知れないから、今のうちに表具屋へ
遣
(
や
)
つて
懸物
(
かけもの
)
にでも仕立てさせやうと云ふ氣が起つた。
子規の画
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
友仙
(
いうぜん
)
の
帶
(
おび
)
に
緋
(
ひ
)
ぢりめんの
帶
(
おび
)
あげも
人手
(
ひとで
)
を
借
(
か
)
りずに
手
(
て
)
ばしこく
締
(
し
)
めたる
姿
(
すがた
)
、
不圖
(
ふと
)
見
(
み
)
たる
目
(
め
)
には
此樣
(
このやう
)
の
病人
(
びやうにん
)
とも
思
(
おも
)
ひ
寄
(
よ
)
るまじき
美
(
うつ
)
くしさ、
兩親
(
ふたおや
)
は
見返
(
みかへ
)
りて
今更
(
いまさら
)
に
涙
(
なみだ
)
ぐみぬ
うつせみ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
懷中時計
(
くわいちうどけい
)
は
海水
(
かいすい
)
に
濡
(
ひた
)
されて、
最早
(
もはや
)
物
(
もの
)
の
用
(
よう
)
には
足
(
た
)
らぬが、
時
(
とき
)
は
午前
(
ごぜん
)
の十
時
(
じ
)
と十一
時
(
じ
)
との
間
(
あひだ
)
であらう、
此時
(
このとき
)
不圖
(
ふと
)
心付
(
こゝろづ
)
くと、
今迄
(
いままで
)
は、たゞ
浪
(
なみ
)
のまに/\
漂
(
たゞよ
)
つて
居
(
を
)
るとのみ
思
(
おも
)
つて
居
(
を
)
つた
端艇
(
たんてい
)
が
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
所
(
ところ
)
が
不圖
(
ふと
)
傍
(
わき
)
を
見
(
み
)
ると
自分
(
じぶん
)
の
身長
(
せい
)
くらゐもある
大
(
おほ
)
きな
菌
(
きのこ
)
が
出
(
で
)
て
居
(
ゐ
)
るのに
氣
(
き
)
がつくや、
早速
(
さつそく
)
其兩面
(
そのりやうめん
)
と
後
(
うし
)
ろとを
見終
(
みをは
)
つたので、
次
(
つぎ
)
には
其頂
(
そのいたゞ
)
きに
何
(
なに
)
があるかを
能
(
よ
)
く
檢査
(
けんさ
)
する
必要
(
ひつえう
)
が
起
(
おこ
)
つて
來
(
き
)
ました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
不圖
(
ふと
)
四面打開きたる一帶の高地に出でゝわれは思はず足を
停
(
とゞ
)
めぬ。
秋の岐蘇路
(旧字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
小池も
不圖
(
ふと
)
其の女の黒髮を見付けて、こんなことを言つてみた。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
だから自分は、此公園に
上
(
のぼ
)
つた時、
不圖
(
ふと
)
次の樣な考を起した。
葬列
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
山深いところなどで
不圖
(
ふと
)
聞きつけた松風の音や遠い谷川のひゞきに我等はともすると自分の寄る邊ない心の姿を見るおもひのすることがある。
樹木とその葉:08 若葉の頃と旅
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
中宮の御所をはや過ぎて、
垣越
(
かきごし
)
の
松影
(
まつかげ
)
月を漏らさで墨の如く暗き
邊
(
ほとり
)
に至りて、
不圖
(
ふと
)
首を擧げて暫し
四邊
(
あたり
)
を眺めしが、俄に心付きし如く早足に
元來
(
もとき
)
し道に戻りける。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
不圖
(
ふと
)
氣
(
き
)
が
付
(
つ
)
いて
見
(
み
)
ると
角
(
かど
)
に
大
(
おほ
)
きな
雜誌屋
(
ざつしや
)
があつて、
其
(
その
)
軒先
(
のきさき
)
には
新刊
(
しんかん
)
の
書物
(
しよもつ
)
が
大
(
おほ
)
きな
字
(
じ
)
で
廣告
(
くわうこく
)
してある。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
都て不快な
衝動
(
しようどう
)
を
與
(
あた
)
へたに
抱
(
かゝ
)
はらず、
而
(
しか
)
も心には何んといふことは無く
爽快
(
そうくわい
)
な氣が通ツて、例へば重い石か何んぞに
壓
(
お
)
ツ
伏
(
ぷ
)
せられてゐた草の
芽
(
め
)
が、
不圖
(
ふと
)
石
(
いし
)
を除かれて
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
十六日は
必
(
かな
)
らず
待
(
まち
)
まする
來
(
き
)
て
下
(
くだ
)
されと
言
(
い
)
ひしをも
何
(
なに
)
も
忘
(
わす
)
れて、
今
(
いま
)
まで
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
しもせざりし
結城
(
ゆふき
)
の
朝
(
とも
)
之
助
(
すけ
)
に
不圖
(
ふと
)
出合
(
であひ
)
て、あれと
驚
(
おどろ
)
きし
顏
(
かほ
)
つきの
例
(
れい
)
に
似合
(
にあは
)
ぬ
狼狽
(
あわて
)
かたがをかしきとて
にごりえ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
喫烟室
(
スモーキングルーム
)
へ
行
(
ゆ
)
くも
面倒
(
めんだう
)
なり、
少
(
すこ
)
し
船
(
ふね
)
の
規則
(
きそく
)
の
違反
(
ゐはん
)
ではあるが、
此室
(
こゝ
)
で
葉卷
(
シユーガー
)
でも
燻
(
くゆ
)
らさうと
思
(
おも
)
つて
洋服
(
やうふく
)
の
衣袋
(
ポツケツト
)
を
探
(
さぐ
)
りて
見
(
み
)
たが一
本
(
ぽん
)
も
無
(
な
)
い、
不圖
(
ふと
)
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
したのは
先刻
(
せんこく
)
ネープルス
港
(
かう
)
を
出發
(
しゆつぱつ
)
のみぎり
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
不圖
(
ふと
)
私は自分の眼の前にこまかにさし交はしてゐるその冬枯の木の枝のさきに妙なものゝ附いてゐるのを見つけた。初めは何かの花の蕾かとも思つた。
樹木とその葉:36 自然の息自然の声
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
所
(
ところ
)
がそれが
偶然
(
ぐうぜん
)
御米
(
およね
)
のために
妙
(
めう
)
な
行爲
(
かうゐ
)
の
動機
(
どうき
)
を
構成
(
かたちづく
)
る
原因
(
げんいん
)
となつた。
過去
(
くわこ
)
一
週間
(
しうかん
)
夫
(
をつと
)
と
自分
(
じぶん
)
の
間
(
あひだ
)
に
起
(
おこ
)
つた
會話
(
くわいわ
)
に、
不圖
(
ふと
)
此
(
この
)
知識
(
ちしき
)
を
結
(
むす
)
び
付
(
つ
)
けて
考
(
かんが
)
へ
得
(
え
)
た
彼女
(
かのぢよ
)
は
一寸
(
ちよつと
)
微笑
(
ほゝゑ
)
んだ。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
此の沒趣味な變人が、
不圖
(
ふと
)
たツた一ツ趣味ある行爲を爲るやうになツた。といふのは去年の冬の初、北國の空はもう
苦
(
にが
)
りきツて、毎日
霰
(
あられ
)
の音を聞かされる頃からの事で。
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
打水
(
うちみづ
)
のあと
輕
(
かろ
)
く
庭下駄
(
にはげた
)
にふんで、
裳
(
もすそ
)
とる
片手
(
かたて
)
はすかし
骨
(
ぼね
)
の
塗柄
(
ぬりえ
)
の
團扇
(
うちわ
)
に
蚊
(
か
)
を
拂
(
はら
)
ひつ、
流
(
なが
)
れに
臨
(
のぞ
)
んで
立
(
たつ
)
たる
姿
(
すがた
)
に、
空
(
そら
)
の
月
(
つき
)
恥
(
はぢ
)
らひてか
不圖
(
ふと
)
かゝる
行
(
ゆ
)
く
雲
(
くも
)
の
末
(
すゑ
)
あたり
俄
(
にわか
)
に
暗
(
くら
)
くなる
折
(
をり
)
しも
たま襻
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
或日彼の細君から「若山さん、二圓あるとお羽織が出來ますがねエ」と言つて嘆かれた事を
不圖
(
ふと
)
いま思ひ出した。
樹木とその葉:20 貧乏首尾無し
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
雖然
(
けれども
)
悠長な
而
(
そ
)
して不斷の力は、ともすると人の壓伏に打勝ツて、其の幽韻は
囁
(
さゝや
)
くやうに人の鼓膜に響く。風早學士は
不圖
(
ふと
)
此の幽韻を聞付けて、何んといふことは無く耳を傾けた。
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
いとしき
事
(
こと
)
とひかけては
幾度
(
いくたび
)
母
(
はヽ
)
の
袖
(
そで
)
しぼらせしが、その
母
(
はヽ
)
にも
又
(
また
)
十四といふとし
果敢
(
はか
)
なく
別
(
わか
)
れて
今
(
いま
)
は
身
(
み
)
一つのいたはしさ、かの
學士
(
がくし
)
どの
其病床
(
そのびやうしよう
)
に
不圖
(
ふと
)
まねかれて
盡力
(
じんりよく
)
したるが
原因
(
もと
)
となり
経つくゑ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
其時
不圖
(
ふと
)
した事から、偶然ある附添の看護婦と口を利く樣になつた。
変な音
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
傍らに同じく腰をおろしてゐた年若い友は
不圖
(
ふと
)
何か思か出した樣に立ち上つたが、やがて私をも立ち上らせて對岸の岡つゞきになつてゐる村落を指ざしながら
みなかみ紀行
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
それこそ
空々寂々
(
くう/\じやく/\
)
で、
不圖
(
ふと
)
立起
(
たちあが
)
ツて、急に何か思出したやうに慌しく書棚を覗き𢌞る。
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
もう
何
(
ど
)
うでも
厭
(
い
)
やに
成
(
な
)
つたのですからとて
提燈
(
ちようちん
)
を
持
(
もち
)
しまゝ
不圖
(
ふと
)
脇
(
わき
)
へのがれて、お
前
(
まへ
)
は
我
(
わが
)
まゝの
車夫
(
くるまや
)
さんだね、
夫
(
それ
)
ならば
約定
(
きめ
)
の
處
(
ところ
)
までとは
言
(
い
)
ひませぬ、
代
(
かは
)
りのある
處
(
とこ
)
まで
行
(
い
)
つて
呉
(
く
)
れゝば
夫
(
それ
)
でよし
十三夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
不圖
(
ふと
)
氣がついて一つの押入をあけて見ると其處の布團はぐつしよりだ。
周章
(
うろた
)
へて他のをあけて見ると其處も同斷である。臺所、便所にまでポチ/\と音が聞えだした。
樹木とその葉:34 地震日記
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
不
常用漢字
小4
部首:⼀
4画
圖
部首:⼞
14画
“不”で始まる語句
不可
不思議
不憫
不図
不味
不審
不埒
不幸
不愍
不相変