“ふと”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:フト
語句割合
43.4%
不図23.5%
18.5%
不圖5.7%
偶然2.3%
肥満2.0%
0.5%
浮屠0.5%
不斗0.4%
肥滿0.4%
0.4%
肥太0.3%
0.3%
0.1%
不計0.1%
不途0.1%
人間0.1%
伏菟0.1%
0.1%
嘴太烏0.1%
0.1%
太棹0.1%
富土0.1%
巫徒0.1%
布斗0.1%
成長0.1%
浮渚0.1%
肥大0.1%
0.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
ただ相対して乗っている、よくふとった娘だなアと思う。あの頬の肉の豊かなこと、乳の大きなこと、りっぱな娘だなどと続いて思う。
少女病 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
ギーッ、ギーッという音に、不図ふと気がついたのは例の熊岡警官だった。彼は部厚ぶあつ犯罪文献はんざいぶんけんらしいものから、顔をあげて入口を見た。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
親仁おやぢわめくと、婦人をんな一寸ちよいとつてしろつまさきをちよろちよろと真黒まツくろすゝけたふとはしらたてつて、うまとゞかぬほどに小隠こがくれた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
不圖ふと落付かぬ何やらの音が聞えた。紙とガラスの二重になつてゐる窓の障子の間にまひ込んだ何やらの羽蟲が立つる音である。
その翌日のこと、二郎はいつもの山へ出掛けはしたが、偶然ふと昨日、両親から言われたことを思い出して、池の畔りへは行かなかったのである。
稚子ヶ淵 (新字新仮名) / 小川未明(著)
薄暗い廻り梯子を踏んで上がつて行くと肥満ふとつた南欧人らしい女主人が招牌かんばんどほりの金輪に乗つてゐる白鸚鵡に餌をやつてゐたりした。
旧東京と蝙蝠 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
したなあ。奥さん犬のふとやつを是非一丁飼いなさい。——猫は駄目ですばい、飯を食うばかりで——ちっとは鼠でもりますか
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
『垂加文集』に〈庚申縁起こうしんえんぎ、帝釈猿を天王寺に来たらしむ云々、これ浮屠ふと通家説を窃みこれを造るのみ〉とあれど、遠く三国時代に訳された『六度集経』に
或人が不斗ふと尋ねると、都々逸どどいつ端唄はうたから甚句じんくカッポレのチリカラカッポウ大陽気おおようきだったので、必定てっきりお客を呼んでの大酒宴おおさかもり真最中まっさいちゅうと、しばらく戸外おもて佇立たちどまって躊躇ちゅうちょしていたが
私はそのかげで毎夜美くしい姉上や肥滿ふとつた氣の輕るい乳母と一緒に眠るのが常であつた。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
商売にするふとが暇さえあれば山さ突っぱしるだから怪体けたいだあてばさ。いい人でもいるだんべさ。は、は、は、‥‥。うんすらいてこすに、一押し手を貸すもんだよ
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
青い日本服をきた混血児が、なよ/\とした腰に支那人の中学生の腕をからませて踊っていた。もと神戸の元町のボントン・バーにいた、肥太ふとった女がひどく酔って悪臭を放っていた。
スポールティフな娼婦 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
其奇跡を尋んとおもふ事としありしに、文化八年七月ふとおもひたちて友人四人(●嘯斎●擷斎●扇舎●物九斎)従僕等じゆぼくらに食類其外用意の物をもたせ、同月五日未明にたちいで
雌は鬣円く鱗薄く尾が腹よりもふといといい、画師不服の体を見て、われらすなわち竜だからたしかに見なさいといって、雌雄の竜にって去ったとづ、同書四三七に
さて雄雌の鳴き声が風にれて卵に達すれば孵るのだ、『類函』四三八に、竜をえがく者のかたへ夫婦の者来り、竜画をた後、竜の雌雄さま同じからず、雄はたてがみ尖りうろこ密にかみふとしも
あづかなほ追々おひ/\に門弟ふえければ殊の外に繁昌はんじやうなし居たるに此程半四郎の實父半左衞門は不計ふとかぜ心地こゝちにてわづらひ付しかば種々醫療いれうに手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
風にさからつてげたをりふたしろく舞ひ戻つた様に見えた時、三四郎は飛んだ事をしたのかと気が付いて、不途ふと女の顔を見た。顔は生憎あいにく列車のそとに出てゐた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「知らねえと思ふ人間ふとに何故聞かつしやるだ。」と百姓は蟷螂かまきりのやうにくれた顔をあげた。「これはあ、索靖さくせいといふえれえ方の書だつぺ。」
もつとも、大饗に等しいと云つても昔の事だから、品数の多い割りに碌な物はない、餅、伏菟ふと蒸鮑むしあはび干鳥ほしどり、宇治の氷魚ひを近江あふみふな、鯛の楚割すはやり、鮭の内子こごもり焼蛸やきだこ大海老おほえび大柑子おほかうじ、小柑子、橘
芋粥 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ふと、片側の一軒立いっけんだち、平屋の白い格子の裡に、薄彩色のすそをぼかした、艶なのが、絵のように覗いて立つ。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「へい、もう、刻限で、危気あぶなげはござりましねえ、嘴太烏ふとも、嘴細烏ほそも、千羽ヶ淵の森へんで寝ました。」
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
御来宅おいでを願つてはなはだ勝手過ぎたが、こし御注意せねばならぬことがあるので」と、葉巻莨はまきたばこけむりふと棚引たなびかせて「ほかでも無い、例の篠田長二しのだちやうじのことであるが、 ...
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
はっきりと大きくはうなったものの、すぐとその後から、ゴウゴウゴウと何処どこかの無電がしっきりなく邪魔をしかけて、それからの義太夫も太棹ふとも聴いてる方で頭をやすりでこすられるようで苦しかった。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
日向ひゅうが南那珂みなみなか鵜戸うど村大字富土ふと
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
これらは魔法というべきではなく、神教を精誠せいせいによって仰ぐのであるから、魔法としては論ぜざるべきことである。仏教巫徒ふとの「よりまし」「よりき」の事と少し似てはいるであろう。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
また伊勢の大鹿おほかおびとが女、小熊をくま子の郎女に娶ひて、生みませる御子、布斗ふと比賣の命、次に寶の王、またの名は糠代ぬかで比賣の王二柱。
龍馬が常に云つていました、おれは若い時親に死別れてからはお乙女とめあねさんの世話になつて成長ふとつたので親の恩より姉さんの恩がふといつてね。
千里駒後日譚 (新字旧仮名) / 川田瑞穂楢崎竜川田雪山(著)
愛鷹あしたか山の南麓なる浮島ヶ原なども、古来有名なためにかえってもったいぶった伝説もあるが、決して島が浮遊するわけではなく、神代紀にいわゆる浮渚ふと在平処の浮渚で
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
山高帽を少し阿弥陀あみだかぶった中年の肥大ふとった男などが大きな葉巻をくわえて車掌台にもたれている姿は、その頃のベルリン風俗画の一景であった。
喫煙四十年 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
原罪のふとい映像にうち貫かれた両の眼に、みじろぎもなく、氷雪いちめんの深いひづみをたたえて秘かに空しくあれば、清浄といふ、己はもうあの心にも還る事はできないのだ。
逸見猶吉詩集 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)