浮屠ふと)” の例文
はじめて冠して、江戸に東遊し、途に阪府を経、木世粛もくせいしゆく(即ち巽斎である。)を訪はんと欲す。偶々人あり、余をらつして、まさに天王寺の浮屠ふとに登らんとす。
僻見 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
『垂加文集』に〈庚申縁起こうしんえんぎ、帝釈猿を天王寺に来たらしむ云々、これ浮屠ふと通家説を窃みこれを造るのみ〉とあれど、遠く三国時代に訳された『六度集経』に
丁謂が寂照と知ったのは年なお若き時であり、後に貶所へんしょに在りて専ら浮屠ふと因果の説を事としたと史にはある。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
またその浮屠ふと黙霖もくりんに復したる書中にも「幕府一日感悟すれば、則ち朝を終えずして、天下平らがん」の言あり。これ明かに幕府を以て、実力的政府と識認したるものにあらずや。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)