こひ)” の例文
旧字:
人間にんげん女房にようぼうこひしくるほど、勇気ゆうきおとろへることはない。それにつけても、それ、そのかばんがいたはしい。つた、またばしやり、ばしやん。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「あの時にいさんがくならないで、だ達者でゐたら、今頃いまごろわたくしうしてゐるでせう」と三千代は、其時をこひしがる様に云つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
など打返うちかへそのむかしのこひしうて無端そゞろそでもぬれそふ心地こゝちす、とほくよりおとしてあゆるやうなるあめちか板戸いたどうちつけのさわがしさ、いづれもさびしからぬかは。
雨の夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
のくらゐ苟且かりそめならぬこひ紀念きねんが、其後そのゝちたゞわすられて此背負揚このしよいあげなかのこつてゐるものとは。如何どうしても受取うけとれぬ。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
ひさかたのあまつみそられるせなむこそこひまめ 〔巻十二・三〇〇四〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
芭蕉翁がおく行脚あんぎやのかへるさ越後に入り、新潟にひがたにて「海にる雨やこひしきうき身宿みやど寺泊てらどまりにて「荒海あらうみ佐渡さどよこたふ天の川」これ夏秋の遊杖いうぢやうにて越後の雪を見ざる事ひつせり。
うし角文字つのもじといふのは、かくだいうたに「二ツ文字もじうし角文字つのもじすぐ文字もじゆがみ文字もじとぞきみおぼゆれ」これこひしくといふかくだいの歌で、二ツ文字もじはこの字で、うし角文字つのもじは、いろはのいの字
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
こひふち・峯の薬師・百済の千塚ちづかなど、通ひなれては、そなたへ足むくるもうとましきに、折しも秋なかば、汗にじむまで晴れわたりたる日を、たゞ一人、小さき麦稈帽子うち傾けて、家を出でつ。
筬の音 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
従兄妹いとここひし合つて、青木さんの境遇きやうぐうにすれば多少たせう早過はやすぎもしたのであつたが、たがひおもひつめた若々わか/\しい熱情ねつじやうのまゝにおもつて結婚生活けつこんせいくわつにはいつた二人は、まる三年かんたそのころになつて
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
人ふたり無才ぶさいの二字を歌に笑みぬこひ二万ねんながき短き
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
かなしくもこひしくも見え給ふわがわかきソフィヤのきみ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
無言むごん辿たどこひなかの深き二人ふたり眼差まなざし
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
こひはれぬ嫉妬ねたみもて
友に (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
こひしき人のあとゆかし
寡婦の除夜 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
いけどしぢゞいが、女色いろまよふとおもはつしやるな。たぬまご可愛かあいさも、極楽ごくらくこひしいも、これ、おなことかんがえたゞね。……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はなし段々だん/\すゝんだ。わたし詰問きつもんたいして、つまは一ととほり弁解べんかいをしてから、それこひふほどではなかつたと説明せつめいする。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
天意には叶ふが、人のおきてに背くこひは、其こひぬしの死によつて、始めて社会からみとめられるのが常であつた。かれは万一の悲劇を二人ふたりの間にゑがいて、覚えず慄然とした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おもひてなるべきこひかあらぬかしてつまはじきされなんはづかしさにはふたゝあはかほもあらじいもとおぼせばこそへだてもなくあいたまふなれつひのよるべとさだめんにいかなるひと
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わたつみのうみでたる飾磨河しかまがはえむ日にこそこひまめ 〔巻十五・三六〇五〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
芭蕉翁がおく行脚あんぎやのかへるさ越後に入り、新潟にひがたにて「海にる雨やこひしきうき身宿みやど寺泊てらどまりにて「荒海あらうみ佐渡さどよこたふ天の川」これ夏秋の遊杖いうぢやうにて越後の雪を見ざる事ひつせり。
こひ』は華厳けごん寂寞じやくまくに蒸し照る空気うちあふる。
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
よきこゑの『こひ辻占つじうら
霜夜 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
非情ひじやうのものが、こひをしたとがめけて、ときから、たゞ一人ひとりで、いままでも双六巌すごろくいはばんをして、雨露あめつゆたれても、……貴下あなたことわすれられぬ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いま一つ招魂社せうこんしやうしろ木立こだちのなかにも、なまめかしい此物語このものがたりあとつけられてあるが、其後そのゝち関係くわんけいは一さいわからぬ。いまこひなかはつゞいてゐるかいなか、それ判然はんぜんせぬ。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
凡てあの時代の人間にんげんは男女に限らず非常に窮屈なこひをした様だが、左様さうでもなかつたのかい。——まあ、どうでもいから、成る年寄としよりおこらせない様につてくれ
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ひとりにしさとにあるひとめぐくやきみこひなする 〔巻十一・二五六〇〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
さばめむ、こひ歓楽よろこび
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
わたづみぞここひなれば
友に (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
おもたまふぞとさしのぞかれ君様きみさまゆゑと口元くちもとまでうつゝをりこゝろならひにいひもでずしてうつむけばかくたまふはへだてがまし大方おほかたりぬれゆゑのこひぞうらやましとくやらずがほのかこちごとひとふるほどならばおもひにせもせじ御覧ごらんぜよやとさし
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
高信たかのぶさんは、南祖坊なんそばうだんはしに一いきしてむかうむきに煙草たばこつた。わたしは、龍神りうじんしやしつゝも、大白樺おほしらかばみきすがつて、ひがしこひしい、ひがしみづうみ差覗さしのぞいた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一人ひとり一人ひとりに向つて、口答試験を都々逸で負けて置いて呉れると、いくらでもうたつて見せるがなと云ふと、一人ひとり声で、すいさばきの博士の前で、こひの試験がして見たいとうたつてゐた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あららぎのくれなゐのむときはちちははこひ信濃路しなのぢにして
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
きじきじちゝこひ
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
珊瑚さんごみやこひ
友に (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
昨日きのふ何方いづかた宿やどりつるこゝろとてかはかなくうごめては中々なか/\にえもまらずあやしやまよふぬばたまやみいろなきこゑさへにしみておもづるにもふるはれぬ其人そのひとこひしくなるとともはづかしくつゝましくおそろしくかくはゞわらはれんかく振舞ふるまはゞいとはれんと仮初かりそめ返答いらへさへはか/″\しくは
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
なつかしい。わたし貴下あなた七歳なゝつ年紀とし、おそばたお友達ともだち……過世すぐせえんで、こひしうり、いつまでも/\、御一所ごいつしよにとおもこゝろが、我知われしらずかたちて、みやこ如月きさらぎゆきばん
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はとはとはゝこひし。
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
御勝手ごかつてになさい、にべのないことおびたゞしい。やうでございませうとも、成程なるほどれたのではない。まどをたよるほどくらさがして滅入めいことまたおびたゞしい。わたしいへこひしくなつた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのは、ものぐるはしく、面影おもかげしろい、かみくろい、もすその、むねの、ちゝのふくらみのある友染いうぜんを、端坐たんざしたひざかして、うちつけに、明白めいはくに、ゆめ遠慮ゑんりよのないやうにこひかたつた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あいも、こひも、憧憬あこがれも、ふつゝかに、たゞおもふとのみ、しぼつてつた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こひあだは、双方さうはうつた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)