大地だいち)” の例文
あるとし台風たいふうおそったとき、あやうくこぎになろうとしたのを、あくまで大地だいちにしがみついたため、片枝かたえだられてしまいました。
曠野 (新字新仮名) / 小川未明(著)
大地震だいぢしんのときは大地だいちけてはつぼみ、ひらいてはぢるものだとは、むかしからかたつたへられてもつと恐怖きようふされてゐるひとつの假想現象かそうげんしようである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
大地だいちは自然につゞいてゐるけれども、其上にいへてたら、忽ち/\ぎれになつて仕舞つた。いへなかにゐる人間にんげんも亦れになつて仕舞つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
今更いまさら申上もうしあぐるまでもなく、すべての神々かみがみうえには皇孫命様こうそんのみことさまがおひかえになってられます。つまりこの御方おかた大地だいち神霊界しんれいかい主宰神しゅさいしんおわしますので……。
だい地震の災害は戦争や何かのやうに、必然に人間のうみ出したものではない。ただ大地だいちの動いた結果、火事が起つたり、人が死んだりしたのにすぎない。
そのうちについに答えが出たものと見え、かれはつるはしをふりかぶって、大地だいちへはっしとばかり打ちこんだ。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
はな眞紅まつかなのが、ゆる不知火しらぬひ、めらりとんで、荒海あらうみたゞよ風情ふぜいに、日向ひなた大地だいちちたのである。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あたへんとて懷中より三りやう出し長助へ渡しけるに長助は大地だいち鰭伏ひれふし此御恩このごおんわすれまじとてよろこびけり是よりはべつしてこの長助而已のみ毎度まいどつねはじめの惡巧わるだくみを内通ないつうして又七を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しきの火花が、大空にとびちりました。さかんな音楽のひびきが、大地だいちをふるわせました。
これが、此の廢殘はいざんさかひにのさばつてもつとも人の目を刺戟しげきする物象ぶつしやうだ………何うしたのか、此の樹のこずえあかいと一筋ひとすじからむで、スーツと大地だいちに落ちかゝツて、フラ/\やはらかい風にゆらいでゐた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
俺の足の下には大地だいちがある。俺の爪先は、日々夜々に地心へと向うて入って行く。俺の周囲ぐるりには空気と空間とがある。俺は此周囲に向うて日々夜々に広がって行く。俺の仕事は此だ。此が俺の仕事だ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
土方ひじかたは、つづけざまに、こう怒鳴どなって、大地だいちへ伏してしまった。
近藤勇と科学 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
と、軍曹ぐんそうことば途切とぎつてドタンと、軍隊靴ぐんたいぐつ大地だいちみつけた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
わが足は大地だいちにつきてはなれ得ぬその身もてなほあくがるる空
柳原燁子(白蓮) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
ある時は大地だいちの匂ぷんぷんとにほふキヤベツの玉もぎて居り
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そして卒然いきなり起上おきあがつて少年こどもの前にひざまづあたま大地だいちけて
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
またひかった! そのたび大空おおぞらが、えるように青白あおじろいほのおでいろどられて、あかるく家屋かおくも、木立こだちも、大地だいちからがってられた。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
とにかく人畜じんちくまれる程度ていどおいて、大地だいち開閉かいへいするといふことは、わがくにおいてはけつしておこない現象げんしようてよい。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
それから一時間じかんすると、大地だいちめる太陽たいやうが、さへぎるものゝない蒼空あをぞらはゞかりなくのぼつた。御米およねはまだすや/\てゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
高天原たかまがはら神界しんかいから一だんくだったところが、りもなおさずわれわれの大地だいち神界しんかいで、ここに君臨くんりんあそばすのが、もうすまでもなく皇孫命様こうそんのみことさまにあらせられます。
だから身体は見えなくても、大地だいちに接するところには、赤外線男の足跡が残らにゃならんと思うよ
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼はすでに突兀とつこつたる巌石を肩に支えながら、みずらの髪をひたいに乱して、あたかも大地だいちいて出た土雷つちいかずちの神のごとく、河原によこたわる乱石の中に雄々しくも立ち上っていた。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
すらりと大地だいちなゝめながるゝかとすれば、千本せんぼんうで帆柱ほばしらに、のきうへへまつすぐに舞上まひあがる。
祭のこと (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大地だいちあた靴音くつおときしてたかよる空氣くうき反響はんきやうした。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
飛ぶただちくう大地だいちの入りかはるこの驚きにわれくつがへる
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
すみれは、そのころは、もういえのうちの生活せいかつにあきてしまって、ふたたび、大地だいちうえかえりたいとおもこころが、しきりにしたのでありました。
つばきの下のすみれ (新字新仮名) / 小川未明(著)
また構造物こうぞうぶつ地震動ぢしんどうつてしようじ、それが振動繼續中しんどうけいぞくちゆう開閉かいへい繰返くりかへすこともあるが、問題もんだい大地だいち關係かんけいしたものであつて、構造物こうぞうぶつおこ現象げんしようすのではない。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
が、横なぐりに打ち下した竹馬が、まだ青い笹の葉に落花をはらったと思うが早いか、いきなり大地だいちにどうと倒れたのは、沙門ではなくて、肝腎の鍛冶の方でございました。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
二日ふつか午後ごごけむり三方さんぱうながら、あきあつさは炎天えんてんより意地いぢわるく、くはふるに砂煙さえん濛々もう/\とした大地だいち茣蓙ござ一枚いちまい立退所たちのきじよから、いくさのやうなひとごみを、けつ、くゞりつ
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
元来はせいであるべき大地だいちの一角に陥欠かんけつが起って、全体が思わず動いたが、動くは本来の性にそむくと悟って、つとめて往昔むかしの姿にもどろうとしたのを、平衡へいこうを失った機勢に制せられて
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ふかざめ大地だいちの上はあるかねばそこにごろりところがりにけり
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
このとき、一ぴきのおけらが、ぐちからて、だれも、それにのつかなかったまに、まちほうして、大地だいちをはっていったのであります。
おけらになった話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
寢苦ねぐるしおもひのいきつぎに朝戸あさどると、あのとほれまはつたトタンいた屋根板やねいたも、大地だいちに、ひしとなつてへたばつて、魍魎まうりやうをどらした、ブリキくわん瀬戸せとのかけらもかげらした。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この桃の枝は雲の上にひろがり、この桃の根は大地だいちの底の黄泉よみの国にさえ及んでいた。
桃太郎 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あをことごとれて、しづかな湿しめが、硝子越がらすごしに代助のあたまんでた。なかいてゐるものは残らず大地だいちうへに落ちいた様に見えた。代助はひさりでわれかへつた心持がした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
すみれは、竹子たけこさんと、おかあさんのはなしくと、ふたたび大地だいちかえられるのをって、うれしくてたまりませんでした。
つばきの下のすみれ (新字新仮名) / 小川未明(著)
れると、意氣地いくぢはない。そのとりより一層いつそうものすごい、暗闇やみつばさおほはれて、いまともしびかげいきひそめる。つばさの、時々とき/″\どツとうごくとともに、大地だいち幾度いくどもぴり/\とれるのであつた。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あきしずかな、午後ごごでありました。よわひかりが、かる大地だいちうえにみなぎっていました。のぶは、熱心ねっしんに、ははが、はこけるのをながめていました。
青い花の香り (新字新仮名) / 小川未明(著)
はしのそばに、一人ひとりのみすぼらしいふうをしたおんなが、つめたい大地だいちうえへむしろをいて、そのうえにすわり、粗末そまつ三味線しゃみせんかかえてうたをうたっていました。
ある冬の晩のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
おそりますが、しばらくご猶予ゆうよねがいます。」といって、大地だいちにすわってふかねんじ、なが瞑目めいもくしていました。
北海の白鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
馬子まごは、はらだちまぎれに、あらあらしく、たづなをくと、うまは、あたま上下じょうげにふって、反抗はんこうをしめし、前足まえあしちからをいれて、大地だいちへしがみつこうとしました。
道の上で見た話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
乳色ちちいろふゆそらから、まぶしいほど、ひかり大地だいちながれていました。かぜのないしずかなゆきのないくにには、やがて、はる間近まぢかへやってくるようにかんぜられるのでありました。
友だちどうし (新字新仮名) / 小川未明(著)
あとには、そらほしかがやいていました。大地だいちくろ湿しめって、草木くさきおとなくねむっていました。
港に着いた黒んぼ (新字新仮名) / 小川未明(著)
大地だいちをゆるがす砲車ほうしゃのきしりと、ビュン、ビュンとなく空中くうちゅうくような銃弾じゅうだんおとと、あらしのごとくそばをぎて、いつしかとおざかる馬蹄ばていのひびきとで、平原へいげん静寂せいじゃくやぶられ
戦友 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのまま大地だいちうえへかがんでしまいました。
波荒くとも (新字新仮名) / 小川未明(著)