なら)” の例文
わたしはおまえさんのためをおもってそうってげるんだがね。とにかく、まあ出来できるだけはやたまごことや、のどならことおぼえるようにおし。
猛狒ゴリラるいこのあな周圍しうゐきばならし、つめみがいてるのだから、一寸ちよつとでも鐵檻車てつおりくるまそとたら最後さいごたゞちに無殘むざんげてしまうのだ。
見ると、長い頭髪は肩に垂れて、手に細い杖をならしながら、鋭い眼を見廻して来るのは、村で知らぬ者がない狂人であった。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
戸外おもてには風の音、さらさらと、我家わがいえなるかのかえでの葉をならして、町のはずれに吹き通る、四角よつかどあたり夕戸出ゆうとでの油売る声はるかなり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
田原町たわらまちの角に新聞売が鈴をならしているのを見て、重吉は銅貨をさがし出して、『毎夕まいゆう新聞』に『国民』の夕刊をまけさせた。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
草に結んだ露は夢からさめ、鈴蘭すずらんはいちはやく朝の鐘をならしました。草も木も太陽の方へあたまをあげて、よろこびました。
(新字新仮名) / 竹久夢二(著)
『ではわたくしなどはいたずらくるしみ、不満ふまんならし、人間にんげん卑劣ひれつおどろいたりばかりしていますから、白痴はくちだと有仰おっしゃるのでしょう。』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
フトがつくと、さきんでゐるラランがなに旨味うまいものでもたべてゐるやうなおとをたてゝ、のど気持きもちよくならしてゐる。ペンペはもう我慢がまんができないで
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
日の影九六さるにかたぶくころ、快庵禅師寺に入りて九七しやくならし給ひ、遍参へんざんの僧九八今夜こよひばかりの宿をかし給へと、あまたたびべども九九さらにこたへなし。
宮「左様か、金吾、由次、少々山三郎が内々頼む事があって他聞を憚ると云うから、其方そちらへ出て往って居れ、用があれば手をならすから、そして酒の支度をしろ」
そして世間には誰れもその不都合をならす者は一人も無く、学者は皆翕然きゅうぜんとしてこれに従うたのである。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
宗助そうすけくら座敷ざしきなか默然もくねん手焙てあぶりかざしてゐた。はひうへかたまりだけいろづいてあかえた。そのときうらがけうへ家主やぬしうち御孃おぢやうさんがピヤノをならした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
婢を呼んでいてみようと思って、盃を置いて手をならそうとして両手を合わせていると、ふと己のむこうへ来て坐った者があった。山田は伊沢が便所から帰って来たものだと思った。
雨夜続志 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
講演や文章でかなりならした。油布の支那服なぞ着て、大陸政策の会合なぞへも出た。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
和殿が先祖文石大白君あやしのおおしろぎみと共に、ひとし桃太郎子もものおおいらつこに従ひて、淤邇賀島おにがじまに押し渡り、軍功少からざりけるに。何時いつのほどよりかひまを生じて、互に牙をならし争ふこと、まことに本意なき事ならずや。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
しきりになめたれば心さはやかになりのどうるほひしに、熊は鼻息はないきならしてねいるやう也。
かくも不規則なる所夫おっとに仕え細君がく苦情をならさぬと思えば余は益々いぶかしさにえず、ついに帳番に打向うちむかいて打附うちつけに問いたる所、目科の名前が余の口より離れ切るや切らぬうち帳番は怫然ふつぜんと色を
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
ならして責めむ。世の人も知らぬにはあらず
靜々しづ/\ならして出來るは是なん赤川大膳あかがはだいぜんなりやがて座に就て申樣拙者せつしやは徳川天一坊殿家來けらい赤川大膳と申者なり何等の御用向ごようむきにて參られしとたづねければ與力等よりきら平伏へいふくして私し共は當月番たうつきばん町奉行松平日向守組與力くみよりき堀十左衞門片岡逸平なり奉行日向守申付には
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かくの如く私が好んで日和下駄ひよりげたをカラカラならして行く裏通うらどおりにはきまって淫祠いんしがある。淫祠は昔から今に至るまで政府の庇護を受けたことはない。
一日あるひことで、十八九の一人ひとり少年せうねんうま打乘うちのり、荷鞍にぐらけた皮袋かはぶくろに、銀貨ぎんくわをざく/\とならしてて、店頭みせさき翻然ひらりり、さて人參にんじんはうとふ。
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今日はわけても霧の深い日で、ポー、ポーとならす笛の音も、何となく不吉ふきちなしらせをするように聞かれるのであった。
おさなき灯台守 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
『ではわたくしなどはいたづらくるしみ、不滿ふまんならし、人間にんげん卑劣ひれつおどろいたりばかりしてゐますから、白癡はくちだと有仰おつしやるのでせう。』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
七日目になア其の亥刻こゝのつ前じゃったか、下駄をいて墓場へき、線香を上げ、其処そこりんならし、長らく血盆経を読んでしもうて、わしがすうと立って帰ろうとすると
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
我は再び演説を始めしに、書記の服着たる男一僕を隨へたるが我前に來て、しもべおほすゞならさする其響耳を裂くばかりなれば、われ我詞をし得ずして止みぬ。この時號砲鳴りぬ。
わたくしおもはずひざたゝいた。短慮たんりよ一徹いつてつ武村兵曹たけむらへいそううでならして、漫々まん/\たる海洋かいやうにらまわしつゝ
一軒残らず家の前に立って、常の如く経を唱え、磐をならした。物をやる者はなかったが、僧は務めの如く毎日村を托鉢し歩いた。それが十日もつづくと、飄然ひょうぜん何処ともなく姿を隠してしまった。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
先刻さっきから三人四人と絶えず上って来る見物人で大向おおむこうはかなり雑沓ざっとうして来た。前の幕から居残っている連中れんじゅうには待ちくたびれて手をならすものもある。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
呼鈴よびりんはげしくならして、「矢島をこれへ。」と御意あれば、かしこまりて辷出すべりいづるおはした入違いりちがいに、昨日きのう馬をぎょせし矢島由蔵、真中の障子を開きて縁側にひざまず
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今日も今日、父なる燈台守は、やぐらのうえに立って望遠鏡を手にし、霧笛きりぶえならしながら海の上を見戍みまもっていた。
おさなき灯台守 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
まえさん、ほかにすることがないもんだから、ばかげた空想くうそうばっかしするようになるのさ。もし、のどならしたり、たまごんだり出来できれば、そんなかんがえはすぐとおぎちまうんだがね。
『ヒヤ/\、壯快さうくわい! 壯快さうくわい!。』と轟大尉とゞろきたいゐならした。
先刻さつきから三人四人と絶えずあがつて来る見物人で大向おほむかうはかなり雑沓ざつたふして来た。まへまくから居残ゐのこつてゐる連中れんぢゆうには待ちくたびれて手をならすものもある。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
悲歎の涙は、硫黄ゆおうを流して草をただらす。長い袖は、なまぐさい風を起して樹を枯らす。もだゆるはだは鱗をならしてのたうちうねる。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
毎夜さわがしく蓄音機をならし立てていたのであるが、いつの間にか、もとのようになって、あたりの薄暗い灯影ほかげ水溜みずたまりおもてに反映しているばかりである。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
異様なる持主は、その鼻を真俯向まうつむけに、長やかなる顔を薄暗がりの中に据え、一道の臭気を放って、いつか土間に立ってかの杖で土をことこととならしていた。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かははうからはげしく吹きつける風が屋根やねの上の電線をヒユー/\ならすのと、星の光のえて見えるのとで、風のある夜は突然とつぜん冬が来たやうな寒い心持こゝろもちをさせた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
春と冬は水かず、椿の花の燃ゆるにもべにを解くばかりのしずくもなし。ただ夏至げしのはじめの第一じつ、村の人の寝心にも、疑いなく、時刻もたがえず、さらさらと白銀しろがねの糸をならして湧く。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
河の方からはげしく吹きつける風が屋根の上の電線をヒューヒューならすのと、星の光のえて見えるのとで、風のある夜は突然冬が来たような寒い心持をさせた。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
途端に糸切歯をきりりとならして、脱兎だっとのごとく、火鉢の鉄瓶を突覆つッかえすと、すさまじい音がして𤏋ぱッと立った灰神楽、灯も暗く、あッという間に、蝶吉の姿はひらひらとして見えなくなる。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ラディオばかりでは物足らないと見えて、昼夜時間をかまわず蓄音機で流行唄はやりうたならし立てる家もある。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
剪刀はさみ一所いっしょになつて入つて居たので、糸巻の動くに連れて、それいわへた小さな鈴が、ちりんとかすかに云ふから、いとけない耳に何かささやかれたかと、弟は丸々まるまるツこいほお微笑ほほえんで、うなずいてならした。
蠅を憎む記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
毎朝まいちょう役所へ出勤する前、崖の中腹ちゅうふくに的を置いて古井戸の柳を脊にして、凉しい夏の朝風あさかぜ弓弦ゆみづるならすを例としたがもなく秋が来て、朝寒あささむある日、片肌脱かたはだぬぎの父は弓を手にしたまま
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
御安心ごあんしんなさいまし、大丈夫だいぢやうぶでせう。」といふところへ、濱野はまのさんが、下駄げたならしてんでもどつて、「づか/\にはからはひりますとね、それ、あのぢいさん。」といふ、某邸ぼうてい代理だいり夜番よばん
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あたりを構わず橋板の上に吾妻下駄あずまげたならひびきがして、小走りに突然お糸がかけ寄った。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
されば敷石をなら穿物はきものに音立てて、五ツ紋の青年わかものはつかつかとその格子戸の前。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あたりをかまはず橋板はしいたの上に吾妻下駄あづまげたならひゞきがして、小走こばしりに突然とつぜんいとがかけ寄つた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
急に唇をきっと結び、笑くぼを刻みながら涙をこらえて、キリリとなら皓歯しらはの音。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
路地は人ひとりやっと通れるほど狭いのに、大きな芥箱ごみばこが並んでいて、寒中でも青蠅あおばえはねならし、昼中でもいたちのような老鼠ろうねずみが出没して、人が来ると長い尾の先で水溜みずたまりの水をはねとばす。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
其主人そのあるじだまつてますうちは、わたしかねたゝきに五體ごたいふるはすときでした……もつとも、坊主ばうずは、たゞぼんやりとねずみ腰法衣こしごろもでぶら/\とまへちますばかり、かねちつともならさなかつたつてことでした……
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)