した)” の例文
そのかわり、家来けらいたちは子ジカのしたと目を切りとって、それをむすこを殺した証拠しょうこしなとして、伯爵はくしゃくのところへもってかえりました。
山中さんちううらにて晝食ちうじき古代こだいそつくりの建場たてばながら、さけなることおどろくばかり、斑鯛ふだひ?の煮肴にざかなはまぐりつゆしたをたゝいてあぢはふにへたり。
熱海の春 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
十三絃じゅうさんげんを南部の菖蒲形しょうぶがたに張って、象牙ぞうげに置いた蒔絵まきえした気高けだかしと思う数奇すきたぬ。宗近君はただ漫然といているばかりである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ヂュリ そのやうなことをそちしたこそくさりをれ! はぢかしゃる身分みぶんかいの、彼方あのかたひたひにははぢなどははづかしがってすわらぬ。
ればさはれば高慢かうまんしたたゞらしてヤレ沙翁シヱークスピーヤ造化ざうくわ一人子ひとりごであると胴羅魔声どらまごゑ振染ふりしぼ西鶴さいくわく九皐きうかうとんびトロヽをふとンだつうかし
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
同じ京都の北の貴布禰神社きぶねじんじゃの旧祠官した氏も、鬼の子孫だと言われていた。大和の宇智郡地方には、鬼筋という家柄もあるそうです。
芋蟲いもむしあいちやんとはたがひしばらだまつてにらめをしてましたが、つひ芋蟲いもむし其口そのくちから煙管きせるはなして、したッたるいやうなねむさうなこゑ
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
裏戸口うらとぐちかきしたゑられた風呂ふろにはうししたしてはなめづつてやうほのほけぶりともにべろ/\とつていぶりつゝえてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
早口はやくちにやっているうちに、したがもつれて、かんしゃくばかりこってきました。そのおとうとほうはどこかへげて行ってしまいました。
長い名 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
笑うたびに大きな口がぱくぱく動いて、黄色い歯がむきだしになり、そのあいだから、どす黒いしたが、へらへらとのぞくのです。
魔法人形 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
雖然周三は、其れにすら何等の不滿を感ぜず、したと胃の腑の欲望よくぼうを充すよりも、寧ろ胸にゆたかな興趣きやうしゆくのを以つて滿足した。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
そして、再び奇怪なる少年の姿を見なおし、こいつ天狗てんぐ化身けしんではあるまいかと、したをまいた。はるかにながめた、呂宋兵衛るそんべえ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、そのときの、したのだしかたが、とても、ちゃめけがあって、いのきちは、よしむらさんのことを、よくおぼえてしまったのである。
ラクダイ横町 (新字新仮名) / 岡本良雄(著)
藤吉とうきちが、あたふたとってしまうと、春信はるのぶ仕方しかたなしにまつろうまえいた下絵したえを、つくえうえ片着かたづけて、かるくしたうちをした。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
きつねしたは小さいので、ぺろりとなめてもわずかなことです。しかし、ぺろりぺろりがなんどもかさなれば、一ごうあぶらもなくなってしまいます。
狐のつかい (新字新仮名) / 新美南吉(著)
お魚が出ると丸ごとけろりとたべました。野菜やさいが出ると手をふところに入れたまましただけ出してべろりとなめてしまいます。
紫紺染について (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
私たちの想像では、ベロベロとはめることで、したの田舎言葉をベロというのも、もとはそれから出ているのかと思っている。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
らずにあつなみだが、なかからわいてました。ジャックは、いったことがわかるのか、幸吉こうきちなみだにぬれたかおしたでぺろぺろとなめています。
花の咲く前 (新字新仮名) / 小川未明(著)
屋敷中探がす。居ない。したが痛くなる程呼んでも、答が無い。民やをやって、近所をあまねく探がさしたが、何処にも居ず、誰も知らぬ、と云う。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「そうどなったんだよ……。だれだか今、≪おおかみがきた≫ってどなったんだよ……」と、わたしはよくもまわらないしたで、やっと言いました。
したうちを一つ、それでも振りもぎつて歸ることもならず、柳橋の側につないだ屋形船のすだれを分けました。中は血の海。
ば助けつかはさんコリヤ十兵衞とよばれし時十兵衞は始終の樣子を聞て大岡殿の頓智とんちしたまきまことに恐れ入て冷汗ひやあせを流し居たりしゆゑ急に答へもいでず平伏するを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しばらくすると、ごーと山りがしてきまして、むこうのしげみのあいだから、たるのように大きな大蛇おろちが、真赤まっかしたをぺろりぺろりだしながら、ぬっとあらわれでました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
今川橋いまがはばしきは夜明よあかしの蕎麥掻そばがきをそめころいきほひは千きんおもきをひつさげて大海たいかいをもおどえつべく、かぎりのひとしたいておどろくもあれば、猪武者いのしゝむしやむか
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
からだはあせびっしょり、目の光はどんよりとして、したはハアハアあえいでいる口からだらりとたれ、おまけに口からはあわを吹いているというありさまでした。
うれしいことにカピはもっと人づき(人づき合い)がよかった。それでわたしが足を引きずり引きずり歩いて行くと、ときどきかれのぬくいしたが手にさわった。
彼の理想というが、これは彼の理想でなくしてその実の理想である。腹がいっぱいになり刺身さしみが食いたいというのは、腹の理想でなく、したの理想である。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
したはだらりと長くたらして、目はぞっとするほど、ギラギラ光っていました。鼻づらを、アヒルの子のほうへぐっと近づけて、するどい歯をむきだしました。——
いまいましげにしたうちして、トーマスをはなした。二人がむやみにあばれて、げんこつをぶんぶんふりまわすので、透明人間とうめいにんげんもいささかもてあましてきたらしい。
大久保おほくぼはちらとそれをると、いきなり険悪けんあくをして、「ちよツ」と苛々いら/\しげにしたうちしながら、こぶしをかためて、彼女かのぢよ鼻梁はなばしらたかとおもふほどなぐりつけた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
さびしいときわたくしはよくうま相手あいてあそびますが、うまほうでもあのおおきなしたってわたくしかおめたりします。それはまことに可愛かわいらしいものでございまして……。
主人のどなりと細君の足とはほとんど並行へいこうしたので、主人はしたうちして細君をながめたが、細君は、主人の小言こごとに顔の色もうごかさず、あえてまたいいわけもいわない。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
勝手かつて氣焔きえんもやゝくたぶれたころで、けだ話頭わとうてんじてすこしたたゞれをいやさうといふつもりらしい。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
わたししたきました、なか/\批評ひゝやうどころではない、敬服けいふくしてしまつたのです、そこで考へた、かれが二ねんおくれて予備門よびもんに入つて来たのは、意味いみ無くして遅々ぐづ/\してたのではない
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
天つ御国をつちに 建てんと叫ぶ我がしたに 燃ゆれど尽きぬ博愛の 永久のほのほ恵みてよ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
じつ此度このたび大喪使長官様たいさうしちやうくわんさまといふのは、よるもトロ/\まどろみたまふ事もございませんといふ、大層たいそう御丁寧ごていねいおつしやいますから、わたくしどもにはしたまはらなくつてひにくいくらゐで
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
犬の大好だいすきな林太郎は、いままでなきそうにしていた顔をきゅうに明かるくいきいきとさして、そのにしゃがみながら片手かたてをさしだし、ちょっちょっとしたをならしてよびました。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
長いしたを出してぺろぺろとぼくや妹のくびの所をなめて、くすぐったがらせる犬、けんかならどの犬にだって負けない犬、めったにほえない犬、ほえると人でも馬でもこわがらせる犬
火事とポチ (新字新仮名) / 有島武郎(著)
夫婦めおととなって三年を経た。そういう二人でありながら、その仲の親しさむつまじさは、ほとんど新婚と変わりなく、人眼なければ呼び合う言葉など、甘く、遠慮なく、したたるいのであった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
されば是等これら餽物おくりもの親御からなさるゝは至当の事、受取らぬとおっしゃったとて此儘このままにはならず、どうか条理の立様たつよう御分別なされて、まげてもまげても、御受納とした小賢こざかしく云迯いいにげに東京へ帰ったやら
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
回々教フイフイけう旅行者りよかうしやたちはすつかり面喰めんくらつて、ラランをなかからしたが、やつと正気しやうきづいたラランはした自由じゆうがきかないほど、くちなか火傷やけどしてゐた。カラカラとわらふどころではなかつた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
小山の妻君が研究顔に「この取合せ物はんでございます」お登和嬢「それは仏蘭西ふらんすのそうめんとが入れてあります」大原した打鳴うちならし「アア美味い」とチュウチュウ音をさせスープをすする。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
寝巻に細帯をまきつけながら、じれったそうなした打ち。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
と答えて、照彦様はしたを出した。ナカナカ平民的だ。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
からすは、けれどこゝろなかではあかしたをぺろりとだして
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
彼はのびをして牡牛のしたを指先でつきあげた。
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
このしたの君さいなみにみぬとも。
こんどはアーンとしたを出してごらん
熱あるしたにしみるとき。
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
したられた
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)