くすり)” の例文
旧字:
いまでは、いいくすりがたくさんにありますけれど、まだ世間せけんひらけなかった、むかしは、家伝薬かでんぐすりなどをもちいて病気びょうきをなおしたものであります。
おばあさんと黒ねこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
『早くけえつて寝るこつた。恁麽こんだ時何処ウ徘徊うろつくだべえ。天理様拝んで赤痢神が取付とツつかねえだら、ハア、何で医者いしやくすりが要るものかよ。』
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
大いそぎで薬品やくひん調合ちょうごうにとりかかり、それができあがると、夕方ゆうがたから夜にかけて、ぼくはからだ透明とうめいにするそのくすりをのみつづけたんだ——
俄盲目にはかめくらかんるいけれども、もらつた手拭てぬぐひきず二重ふたへばかりいて、ギユツとかためますと、くすり効能かうのう疼痛いたみがバツタリ止まりました。
好きなものが毒になり、嫌いなものがくすりになる。好きなものを食うて、嫌いなものに食われる。宇宙の生命いのちは斯くしてたもたるゝのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
鈍痴漢とんちんかんの、薄鈍うすのろ奴等やつらくすり糸瓜へちまもあるものか、馬鹿ばかな、軽挙かるはずみな!』ハバトフと郵便局長ゆうびんきょくちょうとは、この権幕けんまく辟易へきえきして戸口とぐちほう狼狽まごまごく。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
長病ながわずらいの少年が——火葬場やきばくすりまでもらおうというものが、この夜寒に、——しかも重い病人に、荷物をもたせて、綿のはいったものもきせずに——
○人病あればこめかゆくはせてくすりとす。重きは山伏をむかへていのらす。(病をいのらする事源氏にも見えたる古風也。)
『阿母さん、昨日きのふ校長さんが君んとこ阿父おとうさんは京のまちで西洋のくすりや酒を売る店を出すんだつて、本当かて聞きましたよ。本当に其様そんな店を出すの。』
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
なに遠慮ゑんりよをしねえでびるほどやんなせえ、生命いのちあやふくなりや、くすりらあ、其為そのためわしがついてるんだぜ、なあねえさん。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
余は久しく流離の苦を嘗め来たった。どうだ。諸子にもたまにはそういう経験がくすりだろうと。此の一言で直ちに国外に奔った大夫も二三に止まらない。
盈虚 (新字新仮名) / 中島敦(著)
ノートもくすりが沁み込んで、頁をめくるとパッと匂いがした。私はしばらく見なかった作品を味うようにして読んだ。
性に眼覚める頃 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
大分だいぶ考へがちがつてた様だね。——けれども其苦痛があとからくすりになるんだつて、もとは君の持説ぢやなかつたか」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
若旦那わかだんな、そいつァ御無理ごむりでげすよ。おせんは名代なだい親孝行おやこうこうくすりいにったといやァ、うそかくしもござんすまい。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
手離せないんです。それに因念事は一層藤吉には知らせず仕舞にした方がくすりだらうつて、兄も申しますんで……
淡雪 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
貴嬢あなたなにをおつしやいますいままでほど待遊まちあそばしたのにまたそんなことをヱお心持こゝろもちがおわるひのならおくすりをめしあがれ阿母おつかさまですか阿母おつかさまはうしろに。
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
でも、王子は、きょうは計略けいりゃくをめぐらして、階段かいだんじゅうにチャンというべたべたするくすりをぬらせておきました。
あるとき竜王りゅうおうのおきさきが、ふとしたことからたいそうおも病気びょうきになりました。いろいろにをつくして、くすりというくすりをのんでみましたが、ちっともきめがありません。
くらげのお使い (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
汁粉屋の茶碗というけれども、さすがに維新前に出来たものだけに、やきくすりも悪くない。平仮名ひらがなでおてつと大きく書いてある。私は今これを自分の茶碗につかっている。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「おや、どうかしたのかい。たいへん顔色がわるいよ」といながらたなからくすりはこをおろしました。
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
病者ばうざの心地や悪しからむ、振出ふりだしてふ薬飲ませばやと、常にくすりあはするかたに往くに、こはいかに棚落ちて箱どもの薬ちり/″\になり、百味箪笥といふものさへ倒れぬれば
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
まだまだ落人おちゅうども通ろう。怪我人もよろうて通ろう。門を閉じておいては、それらの衆が気づかずに過ぎてしまう。——れる場所がなかったらくすりへもむしろをしいて、はいれる限りおれせい
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
年わかき内科医きみは日ごと来てわが静脈じやうみやくくすり入れゆく
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
入口の硝子戸の前にくすりらるる色なる狂犬きやうけんを染め
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「もつと、いいくすりも、あるんですけど。」
火の鳥 (新字旧仮名) / 太宰治(著)
吃逆しゃっくりくすり 秋 第二百二十三 吃逆しゃっくりの薬
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
くすりくひ隣の亭主箸持参
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
しろくすり
桜さく島:春のかはたれ (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
「なに、こればかしの病気びょうきは、じきになおってしまう。あとになって、また、あのくすり必要ひつようなときがあるだろう。」と、あにこたえました。
村の兄弟 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そしてくすりで、ねこをねむらせておいた。ねこがつぎに目をさましたときには、羊毛とおなじように、けむりのようにきえていたんだ
可愛かあいらしい手を出してひざしたなでつてる、あゝ/\可愛かあいだ、いまのうくすりるよ、……煙草たばこ粉末こなぢやアかへつてけない
患者かんじゃおおいのに時間じかんすくない、で、いつも簡単かんたん質問しつもんと、塗薬ぬりぐすりか、※麻子油位ひましあぶらぐらいくすりわたしてるのにとどまっている。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
をまねきてくすりなどあたへしがそのしるしもなく、両親ふたおやはさら也、あたりよりはせよりしものどもゝ娘のそばありてなみださしぐみつゝつかねまつのみ也。
こゝにるよお千代ちよ阿母おつかさんだよいゝかへわかつたかへおとつさんもお呼申よびまをしたよサアしつかりしてくすり一口ひとくちおあがりヱむねがくるしいアヽさうだらうこのマアあせ
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
まへのはぶる/\ふるへる程でもない様だから、平生から治薬じやくに度胸のすわくすりを東京の医者に拵らへて貰つて飲んで見ろ。なほらない事もなからうと云ふのである。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
有難ありがとうはござんすが、おやませるおくすり人様ひとさまにおねがもうしましては、お稲荷様いなりさまばちあたります」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
奥方おくがたがこのごろおもやまいにかかって、いろいろの医者いしゃせてもすこしもくすりえないものですから、ちょうど自分じぶんのにいさんが芦屋あしや道満どうまんといって、その時分じぶん名高なだか学者がくしゃ
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
を、そつばして、おくすりつゝみつて、片手かたてまる姿見すがたみ半分はんぶんじつて、おいろさつあをざめたときは、わたしはまたかされました。……わたし自分じぶんながら頓狂とんきやうこゑつたんですよ……
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さててきしくすりなどふくして、木村氏のもとにありしが、いつまでも手をむなしくしてあるべきにあらねば、月給八円の雇吏やといとしぬ。その頃より六郎酒色しゅしょくふけりて、木村氏に借銭しゃくせん払わすること屡々しばしばなり。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
にがちゃれて、森永もりながのドロップスなど出してくれた。余等は注文ちゅうもんしてもぎ立ての玉蜀黍をの火で焼いてもらう。あるじは岡山県人、四十余の細作ほそづくりな男、余作君に過日こないだくすりは強過ぎ云々と云って居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
あせくすり 夏 第百七十九 野菜の功
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
ホモイはくすりけとって
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
くすりくいとなりの亭主箸持参
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
めったに、薬売くすりうりの小父おじさんのってきた、くすりむようなことはなかったけれど、小父おじさんは、こちらにくればきっとりました。
二番めの娘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ぼくは下宿げしゅくにかえると、さっそくくすり調合ちょうごうにかかったんだ。そこへ前からぼくのことをうさんくさい目でみていた下宿げしゅくのおやじが、文句もんくを言いにきたんだ。
もしまた医学いがく目的もくてきくすりもって、苦痛くつううすらげるものとすなれば、自然しぜんここに一つの疑問ぎもんしょうじてる。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ると煎餅せんべいのやうなうすつぺらの蒲団ふとんつめ引掻ひつかくとポロ/\あかおちる冷たさうな蒲団ふとんうへころがつてるが、独身者ひとりものだからくすりぷくせんじてむ事も出来できない始末しまつ、金
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
千代ちいちやんひどく不快わるくでもなつたのかいふくくすりましてれないかうした大変たいへん顔色かほいろがわろくなつてたおばさん鳥渡ちよつと良之助りやうのすけこゑおどかされてつぎ祈念きねん
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
げいがよくって愛嬌あいきょうがあって、おまけに自慢気じまんげなんざくすりにしたくもねえッておひとだ。——どこがわるくッて、どうたおれたんだか、さ、そこをおいらに、くわしくはなしてかしてくんねえ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
天子様てんしさまのおそばにつかえて、天文てんもんうらないでは日本にっぽん一の名人めいじんという評判ひょうばんだったのをさいわい、あるとき悪右衛門あくうえもん道満どうまんたのんで、てもらいますと、奥方おくがた病気びょうきはただのくすりではなおらない
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)