みぎは)” の例文
波は漾々ようようとして遠くけむり、月はおぼろに一湾の真砂まさごを照して、空もみぎは淡白うすじろき中に、立尽せる二人の姿は墨のしたたりたるやうの影を作れり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
景色けしきだ、とこれから、前記ぜんき奥入瀬おいらせ奇勝きしようくこと一ばんして、くちあさぼらけ、みぎはまつはほんのりと、しまみどりに、なみあをい。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おつぎはみぎはへおりようとおもつてしのけてると其處そこがけつて爪先つまさきからちたちひさなつちかたまりがぽち/\とみづつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かの家の者一同ある日畠に行きて夕方に帰らんとするに、女川のみぎはにうづくまりてにこにこと笑ひてあり。次の日は昼の休みにまたこの事あり。
遠野物語 (新字旧仮名) / 柳田国男(著)
目はみぎはより底を見れども沖にてはこれを見じ、されどかしこに底なきにあらず、深きが爲に隱るゝのみ 六一—六三
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
げつくやうな砂を踏んで彼女はみぎはに立つて、ぼんやり波の戯れを見てゐたが、長く立つてゐられなかつた。目がくらくらして波と一緒に引込まれて行きさうであつた。
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
築山の羅漢柏あすはひのき、枝ぶりのくねつた松、ばらばらの寒竹、苔蒸した岩、瓢箪形の池の飛石、みぎは小亭ちん、取りあつめて、そのまま一つのすがたになつてる。動きの無い庭、幽かな庭。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
どつしりとした古風な石燈籠が一つこの池の水に臨んで、その邊には圓く厚ぽつたい「つはぶき」も多く集めてあつた。前手のみぎはのところに見える、あやめなぞの感じもよい。
山陰土産 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
憂愁を歌つた世界最初の詩人、シヤトオブリヤンの墓からみぎはつゞきに、「エメラルドの浜」と呼ばれるブルタアニユの北海岸、そこは河原撫子の乱れ咲くラ・ギモレエの岬なのです。
海の誘惑 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
嵐烈しく雪散る日辿り着きたる平泉、みぎはこほれる衣川を衣手寒く眺めやり、出羽にいでゝ多喜の山に薄紅うすくれなゐの花をで、象潟きさかたの雨に打たれ木曾の空翠くうすゐに咽んで、漸く花洛みやこに帰り来たれば
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
四日目にはバイカル湖が見える筈であると云つて誰も外の景色の變るのを樂しみにして居るやうであつたが、やつと二時頃に白い湖の半面が見え出した。みぎはに近い處は未だ皆氷つて居る。
巴里まで (旧字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
天滿與力てんまよりきは、渡船とせんもどしてみたけれど、ほとんど片足かたあし餘地よちもないので、腹立はらだたし舌打したうちして、みぎはつてゐたが、やがてたかく、とらえるやうにこゑげると
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
目にはバイカル湖が見えるはずであると云つて誰も外の景色の変るのを楽しみにして居るやうであつたが、やつと二時頃に白い湖の半面が見え出した。みぎはに近いところだ皆氷つて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
まづ四八長等ながらの山おろし、立ちゐる浪に身をのせて、四九志賀の大湾おほわだみぎはに遊べば、五〇かち人ののすそぬらすゆきかひにおどされて、五一比良ひらの高山影うつる、深き水底みなそこ五二かづくとすれど
所で「きりしとほろ」は旅人を肩へゆり上げると、毎時いつみぎはの柳を根こぎにしたしたたかな杖をつき立てながら、逆巻く流れをことともせず、ざんざざんざと水を分けて、難なく向うの岸へ渡いた。
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そのこまもすさめぬものと名に立てるみぎは菖蒲あやめ今日や引きつる
源氏物語:25 蛍 (新字新仮名) / 紫式部(著)
岸には芦荻ろてきや藻が繁つて、夕日がみぎはを赤く染めた。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
みぎはに沿ひて、つづきけり。
山羊の歌 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
みぎはの草にもわけてやる。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
かゝるみぎは仄白ほのじろ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
みぎはの櫻花りて
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
風情ふぜい一段いちだんで、みぎはには、所々ところ/″\たけひく燕子花かきつばたの、むらさきはなまじつて、あち此方こちまたりんづゝ、言交いひかはしたやうに、しろはなまじつてく……
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
彼は彼等のために聖十字を截りぬ、彼等即ち皆みぎはにおりたち、彼はその來れる時の如くとく去れり 四九—五一
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
泉水の末を引きて𥻘々ちよろちよろみづひくきに落せるみぎはなる胡麻竹ごまたけ一叢ひとむら茂れるに隠顕みえかくれして苔蒸こけむす石組の小高きに四阿あづまやの立てるを、やうやう辿り着きて貴婦人はなやましげに憩へり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
雪深きみぎは小芹こぜりがために摘みかはやさん親無しにして
源氏物語:48 椎が本 (新字新仮名) / 紫式部(著)
糸檜葉のしだ見ればみぎはにも夕光ゆふかげおよび暮れがたみあり
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
うながされてみぎはやみに車おりぬほの紫の反橋そりはしふぢ
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
丁度ちやうどわたしみぎはに、朽木くちきのやうにつて、ぬましづんで、裂目さけめ燕子花かきつばたかげし、やぶれたそこ中空なかぞらくも往來ゆききする小舟こぶねかたちえました。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
我まづ目を低きみぎはにそゝぎ、後これを擧げて日にむかひ、その光我等の左を射たるをあやしめり 五五—五七
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
彼はかしられて足の向ふままにみぎはかたへ進行きしが、泣く泣く歩来あゆみきたれる宮と互に知らで行合ひたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
霜さゆるみぎはの千鳥うちわびて鳴く悲しき朝ぼらけかな
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
ああ、君よ、ゆめみるひとの夕ながめ——みぎはしらみて
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
近きみぎは瑠璃るり
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
前日ぜんじつくちあさみぎはるゝ飴色あめいろ小蝦こえびしたを、ちよろ/\とはしつた——真黒まつくろ蠑螈ゐもりふたつながら、こゝにたけぢやうあまんぬる。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
心ありて池のみぎはに落つる花あわとなりてもわが方に寄れ
源氏物語:46 竹河 (新字新仮名) / 紫式部(著)
白き眼つどへ、ものわびし、われはみぎは
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ちひさなのは、河骨かうほね點々ぽつ/\黄色きいろいたはななかを、小兒こどもいたづらねこせてたらひいでる。おほきなのはみぎはあしんだふねが、さをさしてなみけるのがある。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
降り乱れみぎはこほる雪よりも中空なかぞらにてぞわれはぬべき
源氏物語:53 浮舟 (新字新仮名) / 紫式部(著)
水枝みづえ照るみぎは繁木しげきそのなかに。
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
どれかが、黄金わうごん魔法まはふによつて、ゆき大川おほかは翡翠ひすゐるらしい。圓山川まるやまがはおもていま、こゝに、の、のんどりとなごやはらいだくちびるせて、蘆摺あしずれにみぎはひくい。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
遠近をちこちみぎはの波は隔つともなほ吹き通へ宇治の川風
源氏物語:48 椎が本 (新字新仮名) / 紫式部(著)
ほのかなる暮のみぎは
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
なかに一ところ湖神こしんもうけの休憩所きうけいしよ——応接間おうせつまともおもふのをた。村雨むらさめまたしきりはら/\と、つゆしげき下草したぐさけつゝ辿たどると、むやうな湿潤しつじゆんみぎはがある。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
峰の雪みぎはの氷踏み分けて君にぞ惑ふ道にまどはず
源氏物語:53 浮舟 (新字新仮名) / 紫式部(著)
鳴きさやぎみぎははしる。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
なにをかこゝろむる、とあやしんで、おこみぎはつて、枯蘆かれあしくきごしに、ほりおもてみつめた雪枝ゆきえは、浮脂きらうへに、あきらかに自他じた優劣いうれつきぎけられたのを悟得さとりえて、おもはず……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やみかすと、たかおほき坊主ばうずて、から三尺さんじやくばかりたかところちう胡座あぐらいたも道理だうりみぎは足代あじろんでいたわたしたうへ構込かまへこんで、らうことか、出家しゆつけくせ
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
くらおくから、黄金色こがねいろ赤味あかみしたくもが、むく/\と湧出わきだす、太陽たいやう其処そこまでのぼつた——みぎはあしれたにも、さすがにうすひかりがかゝつて、つのぐむ芽生めばえもやゝけぶりかけた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ちやうひとみはなして、あとへ一歩ひとあし振向ふりむいたところが、かは曲角まがりかどで、やゝたか向岸むかうぎしの、がけうち裏口うらぐちから、いはけづれるさま石段いしだん五六段ごろくだんりたみぎはに、洗濯せんたくものをしてむすめが、あたかもほつれくとて
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あたり公園こうゑんひろいけあり。ときよし、かぜよしとて、町々まち/\より納涼すゞみひとつどふ。わらべたち酸漿提灯ほゝづきぢやうちんかざしもしつ。みづともしびうつくしきよるありき。みぎはちひさふねうかべて、水茶屋みづぢやや小奴こやつこ莞爾にこやかに竹棹たけざをかまへたり。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)