にわ)” の例文
もちろん、老人ろうじんこころざしとならなかったばかりか、B医師ビーいしは、老人ろうじんきだったらしいすいせんを病院びょういんにわえたのでありました。
三月の空の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ああ!」とおかみさんがこたえた。「うち後方うしろにわにラプンツェルがつくってあるのよ、あれをべないと、あたしんじまうわ!」
町はずれの町長のうちでは、まだ門火かどびを燃していませんでした。その水松樹いちいかきかこまれた、くらにわさきにみんな這入はいって行きました。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
にわ木戸きど通用口つうようぐちのドアも、みんなしめるのをわすれていたんだ。そのうえ、庭の木戸はあけっぱなしになっていたんだが……」
どうにも仕方しかたがありませんでした。それでみな相談そうだんして、そのくせむまでしばらくのあいだ、王子を広いにわじこめることになりました。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
折々おりおりにわ会計係かいけいがかり小娘こむすめの、かれあいしていたところのマアシャは、このせつかれ微笑びしょうしてあたまでもでようとすると、いそいで遁出にげだす。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
にわいたえんばな——金魚鉢きんぎょばちから六しゃくほどのへだたりがあつたが、そのえんばなにウィスキイのかくびんと、九たにらしいさかずきが二つおいてあつた。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
かまおもしをしてしまうと、こんどはまた、おにわからえだをたくさんあつめてて、ちいさくっては、おかまの下にれました。
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
にわ若草わかくさ一晩ひとばんのうちにびるようなあたたかいはるよいながらにかなしいおもいは、ちょうどそのままのように袖子そでこちいさなむねをなやましくした。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
おれは筆と巻紙をほうり出して、ごろりと転がって肱枕ひじまくらをしてにわの方をながめてみたが、やっぱり清の事が気にかかる。その時おれはこう思った。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と、にわのほうへよびいれました。おチエはすなおににわのほうへはいってきましたが、右手みぎてあたまをなんべんもかいています。
消えもりたいおせんの風情ふぜいは、にわ秋海棠しゅうかいどうが、なまめきちる姿すがたをそのままなやましさに、おもてたもとにおおいかくした。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
そして両側りょうがわ広々ひろびろとしたおにわには、かたちまつそのほどよくみになってり、おくはどこまであるか、ちょっと見当けんとうがつかぬくらいでございます。
ふたりはハッとして顔をむけると、ふんぷんとゆれ散ったふじの花をあびて鎧櫃よろいびつをせおった血まみれな武士ぶしが、気息きそくもえんえんとして、にわさきにたおれているのだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なんだね、お前達まえたちこれだけが全世界ぜんせかいだとおもってるのかい。まあそんなことはあっちのおにわてからおいよ。なにしろ牧師ぼくしさんのはたけほうまでつづいてるってことだからね。
滝田くんせっしたのは、十月二十七日の夕刻ゆうこくである。ぼくは室生犀生くんと一しょに滝田くんの家へ悔みに行った。滝田くんにわめんした座敷ざしきに北をまくらよこたわっていた。
滝田哲太郎君 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
かわについてどんどんきましたら、花菖蒲はなしょうぶにわいちめんにかせたちいさいいえがありました。」
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
しかし、馬や牡牛は、畑で働いていましたが、納屋なやの前のにわでは、牡羊おひつじがぶらついていました。
さてその抽斎が生れて来た境界きょうがいはどうであるか。允成のにわおしえが信頼するに足るものであったことは、言をたぬであろう。オロスコピイは人の生れた時の星象せいしょうを観測する。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
あの『十六夜日記いざよいにっき』で名高い阿仏尼あぶつにが東国へ下る時に、そのむすめ紀内侍きのないしのこしたといわれる「にわおしえ」一名「乳母の文」にも、「庭の草はけづれども絶えぬものにて候ぞかし」
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
ふたりに同時どうじられてもこまるから、主人はふたりをにわへつれこんだ。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
と、母屋おもやのおにわからおっかさんが
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
おじいさんのうちまちはしになっていまして、そのへんはたけや、にわひろうございまして、なんとなく田舎いなかへいったようなおもむきがありました。
おじいさんの家 (新字新仮名) / 小川未明(著)
王子は朝から夕方まで、このにわの中にじこめられまして、どこを見ても、自分があがれるような高いものは、なに一つありませんでした。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
カモは野天のてんでねるほうがすきだったものですから、にわでねむっていたのですが、ニワトリたちがバタバタにげていく音に目をさましました。
どこもかしこも金銀きんぎんやさんごでできていて、おにわには一年中いちねんじゅうくりかきやいろいろの果物くだものが、りきれないほどなっていますよ。
くらげのお使い (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
わたしは、おんなより金魚きんぎょほううつくしいとおもうんですよ。あなたはにわ老人ろうじん立話たちばなしをしたつていいましたね。そのとき金魚きんぎょは、どんな恰好かっこうしてました?
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
するとそこで院長いんちょうは六号室ごうしつであるとき、にわからすぐ別室べっしつり、玄関げんかん立留たちとどまると、丁度ちょうどこう話声はなしごえきこえたので。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ふとくびすかえして、二あしあしあるきかかったときだった。すみ障子しょうじしずかにけて、にわった春信はるのぶは、蒼白そうはくかおを、振袖姿ふりそですがた松江しょうこうほうけた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
はなった障子しょうじ隙間すきまからはおにわもよくえましたが、それがまた手数てかずんだたいそう立派りっぱ庭園ていえんで、樹草じゅそう泉石せんせきのえもわれぬ配合はいごうは、とても筆紙ひっしにつくせませぬ。
あかるいひるま、みんなが山へはたらきに出て、こどもがふたり、にわであそんでおりました。大きな家にだれもおりませんでしたから、そこらはしんとしています。
ざしき童子のはなし (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
諭吉ゆきちは、にわであそんでいるわが一太郎いちたろう捨次郎すてじろうのすがたをみながら、かんがえこみました。
にわにいっぱいひとがいて、おれのふえくらいのおおきさのお釈迦しゃかさまに、あまちゃをかけておりました。おれもいっぱいかけて、それからいっぱいましてもらってました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
と、人間たちのときの声が、その日のいくさを「勝った」「勝った」と誇り狂っていた。のりにわを血臭い姿の剣光にうずめて、かがり火やら松明たいまつやら、まるで天魔鬼神の乱舞なのだ。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たばこに火をつけ、ぶらぶらとにわを歩きまわっている。いかにも、ものうそうだった。
幾人いくにんかの子供こどもがおにわはいってました。そしてみずにパンやお菓子かしれました。
あくるあさ勇吉ゆうきちは、きてぶりになったにわると、とんぼは、ぬれながら、じっとして、やはりおなじところにまっていました。
雲のわくころ (新字新仮名) / 小川未明(著)
まま母がふたさらぶんのおまめはいのなかにぶちまけてしまいますと、女の子はうら口からにわへでて、大きな声でよびました。
島本しまもとは、ぼたんのはち老人ろうじんのところへつてきて、にわ老人ろうじん立話たちばなしをしたというのですから、そのときに、金魚きんぎょたはずだとおもつたからです。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
頼政よりまさおおせをうけたまわりますと、さっそく鎧胴よろいどうの上に直垂ひたたれ烏帽子えぼうしかぶって、丁七唱ちょうしちとなう猪早太いのはやたという二人ふたり家来けらいをつれて、御所ごしょのおにわにつめました。
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
見ると、自分はしろにわ芝生しばふの上にころんでるのでした。からだ中あせぐっしょりになってむねが高く動悸どうきしていました。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
これよりしてイワン、デミトリチは日夜にちやをただ煩悶はんもんあかつづける、まどそばとおものにわものみな探偵たんていかとおもわれる。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
明和めいわ戌年いぬどしあきがつ、そよきわたるゆうべのかぜに、しずかにれる尾花おばな波路なみじむすめから、団扇うちわにわにひらりとちた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
諭吉ゆきちのおじさんのいえにわのかたすみに、おいなりさんをまつったちいさなほこらがありました。
童子どうじはしょんぼりにわから出られました。それでも、また立ちどまってしまわれましたので、母さまも出て行かれてもっとむこうまでおれになりました。そこは沼地ぬまちでございました。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ではおにわはなしなどはこれでげて、早速さっそく乙姫様おとひめさまにお目通めどおりをしたおはなしうつりましょう。——もっとわたくしがそのときにかかりましたのは、玉依姫様たまよりひめさまほうで、豐玉姫様とよたまひめさまではございませぬ。
で、とうとう、まだかれ無我夢中むがむちゅうでいるあいだおおきなにわなかてしまいました。
雅人がじん住居すまいでもありそうな茅葺かやぶきの家、かけひの水がにわさきにせせらぐ。ここは甲山こうざんおくなので、晩春ばんしゅんの花盛夏せいかの花、いちじにあたりをいろどって、きこまれた竹のえんちりもとめずにしずかである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかしぼくたちむらのものにとっては、いつまでもわすれられないかねだ。なぜなら、尼寺あまでらにわ鐘楼しゅろうしたは、むらのこどものたまりばだからだ。ぼくたちが学校がっこうにあがらないじぶんは、毎日まいにちそこであそんだのだ。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
ピストルの音がしずまると、にわはしいんとしずまりかえった。