つゝみ)” の例文
飲むのよりも珍しものきの私が見たこともないやうないろいろの色をして交つたつゝみだの小箱だのが私の所有になつたのが嬉しいのである。
六日間:(日記) (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
返事はきこえなかつたが、つぎつゝみ投出なげだす音がして、直様すぐさま長吉ちやうきち温順おとなしさうな弱さうな色の白い顔をふすまあひだから見せた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
改めらるゝになかには紺糸縅鐵小脾こんいとをどしてつこざね具足ぐそくりやう南蠻鐵桃形なんばんてつもゝなりかぶと其外籠手こて脛當すねあて佩楯はいだて沓等くつとうとも揃へて是ありまたそこかたなに疊紙たゝみの樣なるつゝみあり是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
以前いぜん少年せうねん手傳てつだつて、これからつゝみいて、人參にんじん卓子テエブル一杯いつぱい積上つみあげる。異香いかう室内しつない滿つ——で、たふとさが思遣おもひやられる。
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いゝあんばいにからだいてました、うなるとよくが出てまたあがつてつゝみはす背負せお道中差だうちゆうざしをさしてげ出しました。
老母ばあさんかまへてゞもたやうに小風呂敷こぶろしきつゝみいて手織ておりのやうにえる疎末そまつ反物たんものして手柄相てがらさうせた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
日は既に森蔭に落ちたる博物舘前を、大きなる書籍のつゝみ、小脇に抱へて此方こなたに来れるは、まがうべくもあらぬ篠田長二なり、図書舘よりの帰途にやあらん
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
濱島はまじまおくつてれたかずある贈物おくりものうち、四かく新聞しんぶんつゝみは、しや煙草たばこはこではあるまいかとかんがへたので、いそひらいてると果然くわぜん最上さいじやう葉卷はまき! 『しめたり。』とてんじて
いのちたすかりたるのち春暖しゆんだんにいたればはれやまひとなり良医りやういしがたし。凍死こゞえしゝたるはまづしほいりぬのつゝみしば/\へそをあたゝめ稿火わらびよわきをもつて次第しだいあたゝむべし、たすかりたるのちやまひはつせず。
何の奧樣一の忠義振かと腹は立どさすがえりかき合せ店に奧に二度三度心ならずもよろこび述て扨孃樣よりと、つゝみほどけば、父親のこのみ戀人の意匠、おもとの七づゝ四分と五分の無疵むきずの珊瑚
うづみ火 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
此二このふたつ悲劇ひげきをわつて彼是かれこれするうち大磯おほいそくと女中ぢよちゆうが三にんばかり老人夫婦としよりふうふ出迎でむかへて、その一人ひとりまどからわたしたつゝみ大事だいじさうに受取うけとつた。其中そのなかには空虚からつぽ折箱をりも三ツはひつてるのである。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
心臟ハート王樣わうさま女王樣ぢよわうさまとがおちやくになり、玉座ぎよくざにつかせられましたとき多勢おほぜいのものどもが其周そのまはりにあつまつてました——骨牌カルタつゝみおなじやうな、小鳥ことりけもののこらず、軍人ネーブくさりつながれて
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
かれ坂井さかゐして、うちかへ途中とちゆうにも、折々をり/\インヷネスの羽根はねしたかゝへて銘仙めいせんつゝみへながら、それを三ゑんといふやすつたをとこの、粗末そまつ布子ぬのこしまと、あかくてばさ/\したかみ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
午頃ひるごろまで長吉ちやうきち東照宮とうせうぐう裏手うらての森の中で、捨石すていしの上によこたはりながら、こんな事を考へつゞけたあとは、つゝみの中にかくした小説本を取出とりだして読みふけつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
引寄ひきよせれば如何いかに市之丞が持來りし廿五兩の金子きんすつゝみまゝ火入ひいれわきに有ければ文右衞門は女房お政をび此金子は何如いかゞいたしたるやあれほどことわりたるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
じゃア手前てまえ荷物をあらためさしてるまいものでもないが、つゝみほどいて中の荷物が相違致すと余儀なく手前の首を切らなければならん、武士の荷物を撿め
おつたは重相おもさう風呂敷包ふろしきづゝみをうんと脊負しよつてむねむす兩手りやうてけてつゝみすわりをくするために二三ゆすつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
きよとんとして、小姉ちひねえふたゝつゝみわたすと、だまつてちやみにく、石頭いしあたまのすくんだ、——まるさ。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
覚え憎いので今日けふの稽古は見合せて貰つた。こんな頭の悪い時に習字でもして置かうと思つて自分の名だの良人の名だのを書いて居た。古尾谷さんに今朝けさ貰つた煙草たばこを一つゝみ上げた。
六日間:(日記) (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
桐油合羽とういうがつぱちいさくたゝんで此奴こいつ真田紐さなだひもみぎつゝみにつけるか、小弁慶こべんけい木綿もめん蝙蝠傘かうもりがさを一ぽん、おきまりだね。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
元より隣座敷でのぞいて居りましたからつゝみの中から出た物をよく視ると、親の形見に貰った萠黄金襴もえぎきんらんの守袋、それが出たからうしてこれが貴方の手に有ると云われ
卯平うへいみじか時間じかんであつたががついてから心掛こゝろがけたので財布さいふにはいくらかのたくはへもあつた。わづか衣物きものであるがそれでもすゝけたやうにめた風呂敷ふろしきおほきなつゝみが二つ出來できた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
と成され印をすゑし一書を下しおかれ短刀は淺黄綾あさぎあやあふひ御紋ごもん染拔そめぬき服紗ふくさつゝみて下されたり。
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
と、眞中まんなかゆはへたつゝみせる、とたびつて顏色かほいろかはよわいのを、やつこ附目つけめ
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
端折はしょりを高く取って木剣作ぼくけんづくりの小脇差を差し、二十四ふしの深編笠を冠り、合切嚢がっさいぶくろはすに掛け、鼠の脚半に白足袋に草鞋で、腰に大きなつゝみを巻き附けて居ります、極く人柄の服装なりの拵え
を、そつばして、おくすりつゝみつて、片手かたてまる姿見すがたみ半分はんぶんじつて、おいろさつあをざめたときは、わたしはまたかされました。……わたし自分じぶんながら頓狂とんきやうこゑつたんですよ……
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
見ているうちに喧嘩となり、汝の父を討ったる刀、中身は天正助定なれば、是を汝に形見としてつかわすぞ、又此のつゝみうちには金子百両とくわしく跡方あとかたの事の頼み状、これをひらいて読下よみくだせば
うまつたか、身軽みがるになつて、ちひさなつゝみかたにかけて、に一こひの、うろこ金色こんじきなる、溌溂はつらつとしてうごきさうな、あたらしいそのたけじやくばかりなのを、あぎとわらとほして、ぶらりとげてた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
知れたところがおれが追掛けて往って捕まえるという訳にもかぬ、しか其方そちも素ッ裸で、さぞ寒かろう、あの舁夫、其方も裸体はだか同様だが、今の駕籠の中に少しのつゝみがあるから持って来てくれんか
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
つゝみ脊負しょってわず旅籠町はたごまちを歩いたぐらいでは何程の事も有りませんで、此の頃は萬助の世話で瞽女町ごぜまちきますが、旅籠屋も有りますから些とは商いも、瞽女町だけにまア小間物は売れますが
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それでは、土産みやげつゝみうぞ。」とやつこふ。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うらのような百姓にそべへ参ってゆっくりてえ挨拶して行くたアえらいねえと噂アして、おめえさま帰って仕舞ったあとで見ると置いたつゝみえから後を追掛おっかけておまえさまア尋ねたが、混雑中こむなかだから知れましねえ
と文七がつゝみを持って旦那のあといて観音様へ参詣を致し
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
重「此のつゝみは折角の思召おぼしめしでございますから貰ってきます」
あったかいから脱ぎまして、つゝみへ入れて喘々せい/\して
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)