かわ)” の例文
「あはははは、なるほど、まだ前祝まえいわいは少し早いな、では後祝あといわいにいたして、じぶんがご一同にかわり、まずさいさきを祝福しゅくふくしておく」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はあ、こんなに早くあがって済みませんでしたけれど……。そのかわりめったにお目にかかれない御主人にお目にかかれまして……。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そのかわ機嫌きげんよくにこにこしているときは、三つ四つの子供こどももなついて、ひざにかれてすやすやとねむるというほどの人でした。
田村将軍 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
若き御連枝はムッとしてそのまま訪問されず、しかも、その人も配偶をむかえてから、かわものはなかったとのたんをもたれたのだから悲しい。
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
それから十年のち、すなわち七十×年八月八日、私は日記を書くかわりに、金博士に対して次のような手紙を書いたのだった。
青年書生は勿論もちろん、家内の子供を取扱うにもその名を呼棄よびすてにすることは出来ない。かわりに政治社会の歴々とか何とかう人を見ても何ともない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
かれらは暗い部屋にかくれてゐる娘をたづねて、親たちにかわつて色々に説得したが、彼女は矢はり得心とくしんしなかつた。
梟娘の話 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
うと、それをしたらしました。王子おうじのぼってたが、うえには可愛かわいいラプンツェルのかわりに、魔女まじょが、意地いじのわるい、こわらしいで、にらんでました。
本職でなくてもい。腫物できもののあるのや禿頭病とくとうびょう白雲しらくも田虫たむし湿瘡しっそう皮癬ひぜんなんてのを見繕みつくろって、かわり立ち代り坐り込ませる。これなら親類にいくらもあるだろう?
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
かわって今度こんど良人おっとほうで、わたくし経歴けいれきをききたいということになりました。で、わたくしいま丁度ちょうどあなたに申上もうしあげるように、帰幽後きゆうごのあらましを物語ものがたりました。
侍「何を家来めが無調法ぶちょうほうを致しましたか存じませんが、当人に成りかわわたくしがおわび申上げます、何卒なにとぞ御勘弁を」
そのかわりしゅっこは、そこら中を、一けんごとにさそって歩いて、いいことをして見せるからあつまれとって、まるで小さなこどもらまで、たくさんあつめた。
さいかち淵 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いまから其樣そんなよわつては駄目だめだ、んでも今夜こんやはあの深林しんりん眞中まんなかあか覺悟かくごだ。』と元氣げんきよく言放いひはなつて立上たちあがり、つかれたる水兵すいへいかわつて鐵車てつしや運轉うんてんはじめた。
正成の予言は的中し、翌朝公綱は陣を撤し、京都をさして帰って行き、かわって正成が天王寺へ這入った。
赤坂城の謀略 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あいのおさえのという蒼蠅うるさい事のないかわり、洒落しゃれかつぎ合い、大口、高笑、都々逸どどいつじぶくり、替歌の伝受など、いろいろの事が有ッたが、蒼蠅うるさいからそれは略す。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「そうでしょうな。しかし、こられんならこられんで、かわりの先生がきてくれんと困りますな」
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
まだ、貴下あなた、そんな事を言っていますね。持つものか! なんて貴下あなた、一生持たないでどうなさる。……また、こりゃお亡くなんなすった父様おとっさんかわって、一説法ひとせっぽうせにゃならん。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
高橋れい悪口わるくちを言出せば、先生、だまって見てれ、そのかわりに我れ鰻飯うなぎめしなんじおごらんと。
山の頂の夕焼は最後の光を見せている。あの広野ひろの女神達めがみたちが歩いていて、手足の疲れるかわりには、とうとい草を摘み取って来るのだが、それが何だか我身に近付いて来るように思われる。
はツかけの、やなやつめ、這入はいつてたら散々さん/″\いぢめてやるものを、かへつたはしいことをした、どれ下駄げたをおし、一寸ちよつとてやる、とて正太しようたかわつてかほせばのきあまだれ前髮まへがみちて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
東京が段々だんだん西へ寄って来て、豊多摩とよたま荏原えばらの諸郡は追々市外宅地や工場等の場所になり、以前もっぱ穀作こくさく養蚕ようさんでやって居た北多摩郡が豊多摩荏原にかわって蔬菜そさい園芸品えんげいひんを作る様になり
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
廻したらいいだろう。おッと、おかわだッた。おい、まだかい。酒だ、酒だ
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
かずにしたら何万本なんまんぼん。しかも一ぽんずつがみんなちがった、わかおんなかみだ。——そのなかだまってかおめてねえ。一人一人ひとりひとりちがったおんなこえが、かわがわりにきこえてる。このながらの極楽ごくらくだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
木客の一人は、壮い木客を突き飛ばすようにしておいて、自分でかわって
死んでいた狒狒 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
A博士はかつて、人工心臓即ち人工的に心臓を作って、本来の心臓にかわらしめ、もって、人類を各種の疾病しっぺいから救い、長生ちょうせい延命をはかり、更に進んでは起死回生の実を挙げようと苦心惨憺さんたんした人であって
人工心臓 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
すると、ナイフを見た矢島君は、途端にダアとなって震えながら百圓札を一枚気張ってれたよ。で、僕は札を受取るかわりに、矢島君に捕縄ほじょうを掛けさして貰ったんさ。先生、多少は駄々をねたがね。
カンカン虫殺人事件 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
この小さい屋根の下には、これまでかわがわる、𨿸、兎、豚がすんでいたのだが、今はからっぽで、休暇中は、いっさいの所有権をにんじんが独占している。彼は易々やすやすとそこへはいり込むことができる。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
で、あと患者かんじゃ代診だいしんかれかわって診察しんさつするのであった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ボートルレはかわって答えた。
『お前も来てくれたのかい? 随分ここまでは遠かったろう。何しろ途中には山もあれば、大きな海もあるんだからね。ほんとうにお前に別れてから、一日も泣かずにいた事はないよ。お前のかわりに飼った犬には、この間死なれてしまうしさ。』
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
伊那丸君いなまるぎみのおいいつけを受けて、若君わかぎみかわりとしてまいった小幡民部こばたみんぶだ。神のおきてをやぶった科者とがもの、すみやかにご神縛しんばくにつけいッ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
男は日露戦争中負傷の際に気が狂って以来ずっとここ病房びょうぼうの患者であるそうですが、病状は慢性なかわりに挙措きょそは極めて温和で安全であると聞きました。
病房にたわむ花 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そこで為朝ためとも死罪しざいゆるして、そのかわつよゆみけないように、ひじのすじいて伊豆いず大島おおしまながしました。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
いもおわらず、プイと姿すがたをおしになり、そしてそれとかわりにわたくし指導役しどうやくのおじいさんが、いつのにやられいながつえをついて入口いりぐちってられました。
そして、また別な号外売りがあとからあとへと、かわかわり、表通おもてどおりを流していった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
海賊かいぞくども如何いかにして探知たんちするものかはらぬがそのねらさだめるふねは、つねだいとう貴重きちやう貨物くわぶつ搭載とうさいしてふねかぎかわりに、滅多めつたそのかたちあらはさぬためと、いま一つにはこの海賊かいぞくはい何時いつころよりか
いろ淺黒あさぐろ面長おもながで、ひんいといふではいか、おまへ親方おやかたかわりにおともまをすこともある、おがんだことるかとへば、だん格子戸かうしどすゞおとがするとぼつちやんが先立さきだちして
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
これれば、蒙古人がの窟に棲んでいたと云うことはすでに疑いもなき事実である。が、蒙古人即ち𤢖わろであるか。蒙古人はくに死絶しにたえて、更にの𤢖なる者がかわって棲むようになったのか。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そのかわりもうキッコの威張いばりようと云ったらありませんでした。
みじかい木ぺん (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
村方の者がかわる/″\来ては世話をいたしてくれます。
蛾次郎がじろうもすばやく水独楽みずごまをふところのおくにねじこみ、かわりにあけびまき錆刀さびがたなをもってかまえをとり、つかに手をかけて屋根裏やねうら虚空こくうをにらみつけた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今日きょうはわたくしがかわっておいしますが、このぎは姉君様あねぎみさま是非ぜひにかかるとのおおせでございます。
「ええ、大丈夫です。そのかわり、何か犯人らしいものを見なかったか、教えて下さい」
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのかわり、いつのまにか顔じゅうしわになって、手も足もちぢかまって、きれいなみぎわの水にうつったかげを見ると、かみもひげも、まっしろな、かわいいおじいさんになっていました。
浦島太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
息子の居ない一ヶ所からっぽうのような現実の生活と、息子の帰って来た生活のいろいろな張り合いのある仮想生活とがかの女の心にかわがわる位置を占めるのである。かの女は雑草が好きだ。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
し、吾等われら不幸ふかうにして、この深山しんざんつゆえもせば、他日たじつ貴下きかが、海底戰鬪艇かいていせんとうてい壯麗さうれいなる甲板かんぱんより、あほいで芙蓉ふえうみねのぞとき吾等われら五名ごめいものかわりて、たゞ一聲いつせい大日本帝國だいにつぽんていこく萬歳ばんざいとなへよ
「殿が御出家なされたら、あとは誰がかわらせられまする」
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「……こう、いうのよ。ヒ、ヒットラーにかわりて、第五列部隊のフン大尉に告ぐ」
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それでもじぶんたちのあとをついで、かわりにはたらいてくれる子どもがないので、あいかわらず夏も冬もなしに、水田すいでんのなかにつかって、ひるやぶよにくわれながら汗水あせみずたらしてはたらいて
たにしの出世 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
パパの鋸楽師のこがくしと、ママンのマギイばあさんが珍らしそうに英語名前のくいものを食っている間にかわり立ち代りものはわなの座についた。しかし、英吉利イギリス人は疑い深くて完全に引っかからなかった。
売春婦リゼット (新字新仮名) / 岡本かの子(著)