不幸ふかう)” の例文
何故なぜそうきふしたかとのきみ質問しつもん御尤ごもつともである。ぼく不幸ふかうにしてこれきみ白状はくじやうしてしまはなければならぬことに立到たちいたつた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
不幸ふかうにも、この心配しんぱいくれ二十日過はつかすぎになつて、突然とつぜん事實じじつになりかけたので、宗助そうすけ豫期よき恐怖きようふいたやうに、いたく狼狽らうばいした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
蜥蜴とかげ鉛筆えんぴつきしらすおと壓潰おしつぶされて窒息ちつそくしたぶた不幸ふかう海龜うみがめえざる歔欷すゝりなきとがゴタ/\に其處そこいらの空中くうちゆううかんでえました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
始めとして富澤町の實父じつぷにも兄にも先立さきだつ不幸ふかうの罪おゆるなされて下されよ是皆前世の定業と斷念あきらめられて逆樣さかさまながら只一ぺんの御回向を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あゝ僕等は何うして恁う不幸ふかうなんだらう。精神上せいしんじようにも肉躰上にくたいじようにも、毎もはげしい苦痛ばかりを感じて、少しだツて安らかなときはありやしない。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
我々われ/\まちはなし面白おもしろい、知識ちしきのある人間にんげん皆無かいむなのは、じつ遺憾ゐかんなことぢやりませんか。これ我々われ/\つておほいなる不幸ふかうです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
モン長 なう、なさけなや、我君わがきみ! 我子わがこ追放つゐはう歎悲なげきあまりにおとろへて、つま昨夜やぜん相果あひはてました。なほ此上このうへにも老人らうじんをさいなむは如何いかなる不幸ふかうぢゃ。
さるゆゑに不幸ふかうありて日のたゝぬいへにては、行者ぎやうじやのきたるをまちてものくはせんなど、いかにも清くしてまつ也。
歳暮せいぼにはなにほどくださりますかと、あさより寢込ねこみてちゝかへりをちしは此金これなり、は三がい首械くびかせといへど、まこと放蕩のらおやばかり不幸ふかうなるは
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そこで私は、かつて前に、つかれた心をぼんやりとさせたやうに、今また不幸ふかうつかれた心をぼんやりとやすめてみた。私は私の心の中から、なにか得がたい感想かんさうが浮び出しはしないかと待ちながら。
美しい家 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
不幸ふかう彼女かのぢよぬぐふことの出來できない汚點しみをその生涯しやうがいにとゞめた。さうしてその汚點しみたいするくゐは、彼女かのぢよこれまでを、さうしてまた此先このさきをも、かくて彼女かのぢよの一しやうをいろ/\につゞつてくであらう。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
が、想像さうざう矢張やはりわるはうへばかりはしらうとする。如何どうかすると、恋人こひゞとつたことを、すでうごかすべからざる事実じゞつめてしまつてゐる。さうして、其事実そのじゞつのうへに、色々いろ/\不幸ふかう事実じゞつをさへきづきあげてゐる。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
し、吾等われら不幸ふかうにして、この深山しんざんつゆえもせば、他日たじつ貴下きかが、海底戰鬪艇かいていせんとうてい壯麗さうれいなる甲板かんぱんより、あほいで芙蓉ふえうみねのぞとき吾等われら五名ごめいものかわりて、たゞ一聲いつせい大日本帝國だいにつぽんていこく萬歳ばんざいとなへよ
不幸ふかうそうはつく/″\このさまみまはし、慨然がいぜんとして
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
しかし將來このさきこれをさいはひであつたとときいへども、たしかに不幸ふかうであるとかんずるにちがいない。ぼくらないでい、かんじたくないものだ。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
なんためわたしだの、そら此處こゝにゐる不幸ふかう人達計ひとたちばかりがあだか獻祭けんさい山羊やぎごとくに、しゆうためこゝれられてゐねばならんのか。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それもはじめから宿やどたねがなかつたのなら、まだしもだが、そだつべきものを中途ちゆうとおとしたのだから、さら不幸ふかうかんふかかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
乃至ないし眞夜中まよなかうまたてがみ紛糾こぐらからせ、また懶惰女ぶしゃうをんな頭髮かみのけ滅茶滅茶めちゃめちゃもつれさせて、けたら不幸ふかう前兆ぜんてうぢゃ、なぞとまするもマブが惡戲いたづら
おそらくはふたゝ其部屋そのへやからられる機會きくわいがないとつたときには、んなにあいちやんはつく/″\不幸ふかうかんじたでせう。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
されば傳吉おせんが物語りを聞て歎息たんそくし扨々世の中に不幸ふかうの者我一人にあらずまだ肩揚かたあげの娘が孝行四年こしなる父の大病を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
此時七十老僧らうそう也しが、まへにいへる何村なにむらの人の不幸ふかうくらぶれば万死に一生をえられたる天幸てんかうといひつべし。よはひも八十余まで无病むびやうにして文政のすゑに遷化せんげせられき。
此處こゝあるじ多辨はなしずきにやしわぶき勿躰もつたいらしくして長々なが/\物語ものがたいでぬ、祖父そふなりしひと將軍家しやうぐんけおぼあさからざりしこと、いまあしにて諸侯しよかうれつにもくわたまふべかりしを不幸ふかう短命たんめいにして病沒びやうぼつせしとか
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ばん彼女かのぢよ」を不幸ふかうにしたことは、かれ性格せいかく普通社会人ふつうしやくわいじんとして適当てきたう平衡へいかうたもつてゐないことであつた。無論むろんこんな仕事しごとはいつてくるひとのなかには、性格せいかく平衡へいかう調和てうわれないひとたまにはあつた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
私達わたしたちも廻るであらう。今に、不幸ふかうが亡くなるだらう。——
美しい家 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
ぼく不幸ふかうにして外國ぐわいこく留學りうがくすることも出來できず、大學だいがくはひることも出來できず、ですからぼく教育けういく所謂いはゆる教育けういくなるものは不完全ふくわんぜんなものでしよう。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
不幸ふかうにしていま小六ころくは、このあによめ態度たいどたいしてほど調子てうしだけ餘裕よゆう分別ふんべつあたまうち發見はつけんなかつたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
左樣さやうさ、不幸ふかうまちです。』と、イワン、デミトリチは溜息ためいきしてわらふ。『しかし一ぱんには奈何どうです、新聞しんぶんや、雜誌ざつし奈何云どういこといてありますか?』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
不幸ふかうなるちひさな甚公じんこうは、なんにも痕跡あとのこらぬのをつて、一本指ぽんゆび石盤せきばんくことをめました、ところで、そのかほからインキのれてるのをさいは
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
もま不幸ふかうの上に大不幸だいふかう異見いけんらしくも言散しサア何處いづこへなり勝手に行とおもての方へ突出つきいだ泣倒なきたふれたる千太郎を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ロミオ けふのこの惡運あくうん此儘このまゝではむまい。これはたゞ不幸ふしあはせ手始てはじめ、つゞく不幸ふかうこの結局しまつをせねばならぬ。
不幸ふかう由來もとさとめて、ちヽこひはヽこひしの夜半よはゆめにも、かぬさくらかぜうらまぬひとりずみのねがかたくなり、つヽむにもれ素性すじやうひとしらねばこそ樣々さま/″\傳手つてもとめて、香山かやま令孃ひめくるしく
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それほど「彼女かのぢよ」は不幸ふかう位置ゐちたせられてゐた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
しかあるひはこれがぼくさいはひであるかもれない、たゞぼくいまこゝろたしかに不幸ふかうと感じてるのである、これをさいはひであつたと知ることは今後こんごのことであらう。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
故郷こきやう風景ふうけいもととほりである、しか自分じぶん最早もはや以前いぜん少年せうねんではない、自分じぶんはたゞ幾歳いくつかのとししたばかりでなく、かう不幸ふかうか、人生じんせい問題もんだいになやまされ、生死せいし問題もんだい深入ふかいりし
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)