一筋ひとすぢ)” の例文
けむりつて、づん/\とあがるさか一筋ひとすぢ、やがて、けむりすそ下伏したぶせに、ぱつとひろがつたやうな野末のずゑところかゝつてました。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さけといつてもれた分量ぶんりやうであるが、それでもわら一筋ひとすぢづつをきざんで仕事しごとまうけにのみ手頼たよかれふところかなしくした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
代助は幾たびか己れを語る事を蹰躇した。自分の前に、これ程幸福に見える若い女を、まゆ一筋ひとすぢにしろ心配のためうごかさせるのは、代助から云ふと非常な不徳義であつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
日本紀略にも罪状は出て居らぬが、都まで通つた悪事でもあり、人数も多いから、いづれ党を組み力をあはせてた事だらう。何にしても前科者だ、一筋ひとすぢで行く男では無い。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
なが大河おほかはみづしづ覺悟かくごきわめしかどひかれしうしがみ千筋ちすぢにはあらで一筋ひとすぢふといふ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
太刀たちなにかはえなかつたか? いえ、なにもございません。ただそのそばすぎがたに、なは一筋ひとすぢちてりました。それから、——さうさう、なはほかにもくしひとつございました。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かんじてゐるところはよろしいが、うへ三句さんくがごた/\として、かんじた氣分きぶんがすっきりとあらはれてゐません。けれどもこのひとは、まづ大體だいたいかういふ調子ちようしに、一筋ひとすぢうたふのが得意とくいだつたとえます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
猛狒ゴリラ大奮鬪だいふんとう塲所ばしよからおよそ七八ちやうあゆんだとおもころふたゝうみえるところた。それから、丘陵をか二つえ、一筋ひとすぢ清流ながれわたり、薄暗うすくら大深林だいしんりんあひだぎ、つひ眼界がんかいひらくるところ大佐たいさいへながめた。
さりとも知らぬ宮はありの思を運ぶに似たる片便かたたよりも、行くべき方には音づるるを、さてかの人の如何いかに見るらん、書綴かきつづれる吾誠わがまことの千に一つも通ずる事あらば、掛けても願へる一筋ひとすぢいとぐちともなりなんと
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
旨となしかりにもまがりし事はきらひ善は善惡は惡と一筋ひとすぢにいふ者なれば如何いかにせんみづきよければうをすまずのたとへもれず朋輩の讒言ざんげんに依り浪人なし此裏借家うらじやくやうつり住み近頃多病たびやうになりたれど心持のよき其日は此護國寺の門前へ賣卜ばいぼくに出わづかの錢を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
きりきりとめ直す黒い繻子しゆす一筋ひとすぢ
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
金髪の一筋ひとすぢのやうな声
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
若き心の一筋ひとすぢ
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
くさひらいて、天守てんしゆのぼみち一筋ひとすぢじやうぬまみづそゝいで、野山のやまをかけてながすやうに足許あしもとからうごいてえる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
格子かうしうち三和土たゝきで、それが眞直まつすぐうらまでけてゐるのだから、這入はいつてすぐ右手みぎて玄關げんくわんめいたあがぐちあがらない以上いじやうは、くらいながら一筋ひとすぢおくはうまでえるわけであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
りつなぐさめつ一方かたへこゝろかせんとつと一方かたへ見張みはりをげんにしてほそひも一筋ひとすぢ小刀こがたな一挺いつてふたかれさせるなよるべつしてをつけよと氣配きくば眼配めくば大方おほかたならねば召使めしつかひのものこゝろかぜおと
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
峽上けいじやうには一筋ひとすぢはしがあつて、それをわたるとてつとびらだ。
一筋ひとすぢ降れるかと。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
は、二筋ふたすぢけた、ゆる大蛇おろち兩岐ふたまたごとく、一筋ひとすぢさきのまゝ五番町ごばんちやうむかひ、一筋ひとすぢは、べつ麹町かうぢまち大通おほどほりつゝんで、おそちかづいたからである。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あし分船わけぶねのさはりおほなればこそおやにゆるされにゆるされかれねがこれひよしや魔神ましんのうかゞへばとてぬばたまかみ一筋ひとすぢさしはさむべきひまえぬをもし此縁このゑにしむすばれずとせばそは天災てんさい地變ちへんか。
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
可哀かはいさうな、どくらしい、あの、しをらしい、可愛かはいむしが、なんにもつたことではないんですけれど、でもわたしかねたゝきだとおもひますだけでも、こほりころして、一筋ひとすぢづゝ
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ときに、一筋ひとすぢでもうごいたら、の、まくら蒲團ふとん掻卷かいまき朱鷺色ときいろにもまがつぼみともつたかほをんなは、芳香はうかうはなつて、乳房ちぶさからしべかせて、爛漫らんまんとしてくだらうとおもはれた。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ぐつすりと寢込ねこんでた、仙臺せんだい小淵こぶちみなとで——しもつきひとめた、とし十九の孫一まごいちに——おもひもけない、とも神龕かみだなまへに、こほつた龍宮りうぐう几帳きちやうおもふ、白氣はくき一筋ひとすぢつきいて
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とき御新姐ごしんぞみじか時分じぶんことえん端近はしぢかて、御前ごぜん誕生日たんじやうびにはをつと着換きかへてようとふ、紋服もんぷくを、またうでもない、しつけのいと一筋ひとすぢ間違まちがはぬやう、箪笥たんすからして、とほして
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これが角屋敷かどやしきで、折曲をれまがると灰色はひいろをしたみち一筋ひとすぢ電柱でんちういちじるしくかたむいたのが、まへうしろへ、別々べつ/\かしらつて奧深おくぶかつてる、鋼線はりがねまたなかだるみをして、ひさしよりもひくところを、弱々よわ/\と、なゝめに
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
大目玉おほめだまで、天守てんしゆにらんで、ト其処そこられてござるげな、最惜いとをしい、魔界まかい業苦がうくに、なが頭髪かみのけ一筋ひとすぢづゝ、一刻いつこく生血いきちらすだ、奥様おくさま苦脳くなうわすれずに、くまでれさ、たふれたら介抱かいはうすべい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……いて、眞實ほんたうにはなさるまい、伏木ふしき汽船きせんが、兩會社りやうくわいしやはげしく競爭きやうさうして、乘客じようきやく爭奪さうだつ手段しゆだんのあまり、無賃銀むちんぎん、たゞでのせて、甲會社かふくわいしや手拭てぬぐひ一筋ひとすぢ乙會社おつくわいしや繪端書ゑはがき三枚さんまい景物けいぶつすとふ。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とき御新造ごしんぞみじか時分じぶんことえん端近はしぢかて、御前ごぜん誕生日たんじやうびには着換きかへてようとふ、紋服もんぷくを、またうでもない、しつけのいと一筋ひとすぢ間違まちがひのないやうに、箪笥たんすからして、とほして
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)