返事へんじ)” の例文
たけは、さもとがめられたようにかおあかくして、なんと返事へんじをしていいかわからず、ただ、したきながら仕事しごとをするばかりでした。
だまされた娘とちょうの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
家の中はまっくらで、しんとして返事へんじをするものもなく、そこらにはあつ敷物しきもの着物きものなどが、くしゃくしゃらばっているようでした。
ガドルフの百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いろよい返事へんじしたためたおせんのふみを、せろせないのいさかいに、しばしこころみだしていたが、このうえあらそいは無駄むださっしたのであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ボズさんの本名ほんみやう權十ごんじふとか五郎兵衞ろべゑとかいふのだらうけれど、この土地とちものだボズさんとび、本人ほんにん平氣へいき返事へんじをしてた。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
そして田舎ゐなかかへつてから、慇懃いんぎん礼状れいじやう受取うけとつたのであつたが、無精ぶしやう竹村たけむら返事へんじしそびれて、それりになつてしまつた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
それで、時々とき/″\お手がみやおうたをおおくりになると、それにはいち/\お返事へんじをさしげますので、やう/\おこゝろなぐさめておいでになりました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
あやしや三らう便たよりふつときこえずりぬつには一日ひとひわびしきを不審いぶかしかりし返事へんじのち今日けふ來給きたま明日あすこそはとそらだのめなる
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
すると、話しかけられたほうは、気おくれがしてしまって、返事へんじをするために、くちばしをひらくことさえできないようでした。
返事へんじいから二けましたがそれでも返事へんじいからじゆくではどうなつたことかと非常ひじやう心配しんぱいして責任せきにんつたものは一ねむらなかつたくらゐ
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
御米およね御前おまい子供こども出來できたんぢやないか」とわらひながらつた。御米およね返事へんじもせずに俯向うつむいてしきりにをつと脊廣せびろほこりはらつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ひとりひとり、名前をよんでも、たれも返事へんじをするものがありません。おしまいに、いちばん下の子の名前まで来て、はじめて、ほそい声で
其時そのとき日本帝國にほんていこく』から何程なにほど利益りえき保護ほごとをけてゐるのかとはれたら、返事へんじには當惑たうわくするほどのミジメな貧乏生活びんばふせいくわつおくつてゐたくせに。
「あのひところしてください。」——つまはさうさけびながら、盜人ぬすびとうですがつてゐる。盜人ぬすびとはぢつとつまままころすともころさぬとも返事へんじをしない。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
『おゝ、』と飛附とびつくやうな返事へんじかほしたが、もとよりたれやうはずい。まくらばかりさびしくちやんとあり、木賃きちんいのがほうらかなしい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
右の通りしたゝめて有りければ城富も老母らうぼ先々まづ/\安心あんしんなりとて委細畏まり奉つり候と返事へんじを養母に認めもらひて使の者を返しける
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
もしかの女が私はやなぎの娘ですからたくへ届けてくださいといったなら、おかみさんはふた返事へんじで応ずるのであった、ところが文子にはそれができなかった。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
源四郎は、ただハッハッと返事へんじをしながら、なおせっせと掃除そうじをやってる。老人ろうじん表座敷おもてざしきのいろりばたに正座せいざして、たばこをくゆらしながら門のほうを見てる。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
水車すゐしやこたへました。この水車すゐしやものふにも、ぢつとしてないで、まはりながら返事へんじをしてました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
なんでも返事へんじをしないにかぎるとおもって、だまってすたすた、うまいて行きました。ところがどういうものだか、ばかりあせって、うま自分じぶんおもうようにすすみません。
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
かへしラランのんだが、その返事へんじがないばかりか、つめたいきりのながれがあたりいちめん渦巻うづまいてゐるらしく、そのために自分じぶんのからだはひどくあふられはじめた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
その返事へんじだと、五がつよる着色ちゃくしょくにしろ無色むしょくにしろ、西部劇せいぶげき上映じょうえいしていたかんひとつもない。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
道翹だうげうけたときあたましたはうひてにやりとわらつたが、返事へんじはしなかつた。これが拾得じつとくだとえる。ばうかぶつたはう身動みうごきもしない。これが寒山かんざんなのであらう。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
法師はぎょっとして、すぐ返事へんじもできずにいると、かさねて、さらにふとい声で
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
海蔵かいぞうさんは、おもいがけない言葉ことばをきいて、返事へんじのしようもありませんでした。だが、ぬまえに、この一人ひとりよくばりの老人ろうじんが、よいこころになったのは、海蔵かいぞうさんにもうれしいことでありました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
こと信州しんしゆうあたりの高原こうげんをかっこうのこゑきながらあるいたり、濶葉樹林かつようじゆりんすゞしい林間りんかんのぼつたりするときには、とりによびかけられるようながしてこちらからもかっこうと返事へんじがしたいくらゐです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
博士はくしの声はうわずっていた。しかし、こんどは返事へんじがなかった。
草之助さうのすけさんてば返事へんじがない、いヽよめさんでもとつたのかい」
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
ベンヺ いや、しかけられたからは、立合たちあはうと返事へんじをせう。
何処どこくんだとかさねていた。さうすると、返事へんじをした。
わたくしは二つ返事へんじでおじいさんの言葉ことばしたがいました。
ゴットフリートは返事へんじをしなかった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
かれは口笛くちぶえをふいて返事へんじを待った。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
という返事へんじおくられてきた。
ラクダイ横町 (新字新仮名) / 岡本良雄(著)
ジョバンニは、すぐ返事へんじをしようと思いましたけれども、さあ、ぜんたいどこから来たのか、もうどうしても考えつきませんでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
かれは、元気げんきづいて、そのうちぐちまで、いきらしながらたどりきました。かれは、ともだちのんだ。けれど、返事へんじがなかった。
その日から正直になった話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
のうきちちゃん。たとえ一まくらかわさずとも、あたしゃおまえの女房にょうぼうだぞえ。これ、もうしきちちゃん。返事へんじのないのは、不承知ふしょうちかえ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
年よりは、ことばをきって、返事へんじを待ちました。すると、若者はうなずいて、「つづけておくれ。さきを聞きたいよ。」と、言いました。
安井やすゐ其後そのごまい端書はがきさへこさなかつたのである。宗助そうすけ安井やすゐ郷里きやうり福井ふくゐけて手紙てがみしてた。けれども返事へんじつひなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
すると翌日よくじつかへつて大層たいそう謝罪しやざいをされるから何故なにゆゑ返事へんじをしなかつたとたづねると返事へんじ端書はがきしてきましたといふのです。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
あきらめのつくやうに、あきらめさしてくださいツて、おねがまをした、あの、お返事へんじを、ないでツてますと、前刻さつきくだすつたのが、あれ……ね。
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
不器用ぶきようなればお返事へんじのしやうもわからず、唯々たゞ/\こ〻ろぼそくりますとてをちゞめて引退ひきしりぞくに、桂次けいじ拍子ひようしぬけのしていよ/\あたまおもたくなりぬ。
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
是非ぜひやらう。葉書はがき返事へんじならぼくはどんないそがしいときでもく。オヽ、それからまだういふ面白おもしろはなしがあるよ。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
「もう一ぺんってごらん。」とおかあさんがった。「そして返事へんじをしなかったら、横面よこッつらっておやり。」
彼女かのぢよくちかたは、すこ内気うちきすぎるほど弱々よわ/\しかつた。そしてそれについて、べつにはつきりした返事へんじあたへなかつたが、わざと遠慮ゑんりよしてゐるやうにもえた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
とお政は早や声をくもらして、四に気もみする。おっとにすこし客の相手あいてをしていてくれとたのめば源四郎は「ウンウン」と返事へんじはしても、立ちそうにもせぬ。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ありける返事へんじとゞきければ十兵衞夫婦はなげきの中にも先々兄の世話にてお江戸の吉原町とやらへゆくうへは娘が難儀にも相成まじと心に悦びすぐむすめ文に其由を語りて支度したく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかしそのうつくしいつまは、現在げんざいしばられたおれをまへに、なん盜人ぬすびと返事へんじをしたか? おれは中有ちううまよつてゐても、つま返事へんじおもごとに、嗔恚しんいえなかつたためしはない。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そのこえにもがつかなかったとみえて、くず返事へんじをしないので、不思議ふしぎおもって子供こどもはそっとにわはいってみますと、いつものようにはたかっている母親ははおや姿すがたえましたが
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
やがて、れいの武士ぶしが来て、おまえの名をよぶだろうが、おまえは、どんなことがあっても、だんじて返事へんじをしてはならぬ。万一まんいち返事をしたなら、おまえのからだは、ひきさかれてしまうのだ。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
三人さんにん連名れんめい此手紙このてがみした、大島先生おほしませんせいから返事へんじ
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)