蒲團ふとん)” の例文
新字:蒲団
勘次かんじはひつそりとしたいへのなかにすぐ蒲團ふとんへくるまつてるおしな姿すがたた。それからおしなあしさすつてるおつぎにうつした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
一寸ちよつとたまへ」とつて、燐寸まつち瓦斯ガス煖爐だんろいた。瓦斯ガス煖爐だんろへや比例ひれいしたごくちひさいものであつた。坂井さかゐはしかるのち蒲團ふとんすゝめた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
第一 毎日まいにちき、寢衣ねまき着替きかへ、蒲團ふとんちりはらひ、寢間ねま其外そのほか居間ゐま掃除さうじし、身體しんたい十分じふぶん安靜しづかにして、朝飯あさはんしよくすること
養生心得草 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
ほん商賣人しようばいにんとてくらしいもの次第しだいにおもふことおほくなれば、いよ/\かねて奧方おくがた縮緬ちりめん抱卷かいまきうちはふりて郡内ぐんない蒲團ふとんうへ起上おきあがたまひぬ。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
引開れば是はまた家は裳脱もぬけのからころもつゝなれにし夜具やぐ蒲團ふとんも其まゝあれど主はゐず怪有けふなる事の景況ありさまに是さへ合點がてんゆかざりけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
蒲團ふとんをすつぽり、炬燵櫓こたつやぐらあし爪尖つまさきつねつてて、庖丁はうちやうおときこえるとき徐々そろ/\またあたまし、ひと寢返ねがへつて腹這はらばひで
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
日光につくわうやはらかにみちびかれ、ながれた。そのひかりやうや蒲團ふとんはしだけにれるのをると、わたしかゞんでその寢床ねどこ日光につくわう眞中まなかくやうにいた。それだけの運動うんどうで、わたしいきははづみ、ほゝがのぼつた。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
化學藥品かがくやくひん油類ゆるい發火はつかたいしては、燃燒せんしようさまたげる藥品やくひんもつて、處理しよりする方法ほう/\もあるけれども、普通ふつう場合ばあひにはすなでよろしい。もし蒲團ふとん茣蓙ござ手近てぢかにあつたならば、それをもつおほふことも一法いちほうである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
自分じぶん蒲團ふとんそばまでさそされたやうに、雨戸あまど閾際しきゐぎはまで與吉よきちいてはたふしてたり、くすぐつてたりしてさわがした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
仕方しかたがないから、今朝けさあげた蒲團ふとんまたしてて、座敷ざしきべたまゝよこになつた。それでもえられないので、きよ濡手拭ぬれてぬぐひしぼらしてあたませた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
串談じようだんはぬきにして結城ゆふきさん貴君あなたくしたとて仕方しかたがないからまをしますが町内ちやうないすこしははゞもあつた蒲團ふとんやのげん七といふひと
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あたゝかかす事ならずかねて金二分に質入しちいれせし抱卷かいまき蒲團ふとんあれども其日を送る事さへ心にまかせねばしちを出す金は猶更なほさらなく其上吉之助一人口がふゑ難儀なんぎの事故夫婦はひざ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
くすりせんじて、ぼんげたが、しろい。おつやが、納戸なんどつてく、と蒲團ふとんながらした。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
第八 衣服いふく精粗美惡よしあしひと分限ぶんげんるといへども、肌着はだぎ木綿もめんフラン子ルをよしとす。蒲團ふとん中心なかわたあたらしくかはきたるものをたつとゆゑに、綿花わたかぎらずかま穗苗藁ほわら其外そのほかやわらかかはきたるものをえらぶべし。
養生心得草 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
主人しゆじん挨拶あいさつかく明日あすのことにするからといつただけだといふ返辭へんじである。勘次かんじはげつそりとしてうちかへると蒲團ふとんかぶつてしまつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
彼女かのぢよが三週間しうかん安靜あんせいを、蒲團ふとんうへむさぼらなければならないやうに、生理的せいりてきひられてゐるあひだ彼女かのぢよ鼓膜こまくこの呪咀のろひこゑほとんどえずつてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
なん商買しようばいなどがおありなさらう、そんなのではいとひながら蒲團ふとんうへせてきし紙入かみいれをとりあげて、お相方あいかた高尾たかをにこれをばおあづけなされまし
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ときに、一筋ひとすぢでもうごいたら、の、まくら蒲團ふとん掻卷かいまき朱鷺色ときいろにもまがつぼみともつたかほをんなは、芳香はうかうはなつて、乳房ちぶさからしべかせて、爛漫らんまんとしてくだらうとおもはれた。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
くらくらんで附添つきそひの女子をなごとも郡内ぐんない蒲團ふとんうへいだげてさするにはや正躰しやうたいゆめるやうなり、あにといへるはしづか膝行いざりりてさしのぞくに
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わびしさは、べるものも、るものも、こゝにことわるまでもない、うす蒲團ふとんも、眞心まごころにはあたゝかく、ことちと便たよりにならうと、わざ佛間ぶつま佛壇ぶつだんまへに、まくらいてくれたのである。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
蒲團ふとんやの時代じだいからのみのをとこおもはなんだがあれこそは死花しにばな、ゑらさうにえたといふ、なににしろきく大損おほぞんであらう、には結搆けつこう旦那だんながついたはづ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ずつとお月樣つきさまのさすはうへ、さ、蒲團ふとんれ、蒲團ふとんへ、うもたゝみきたないので大屋おほやつてはいたが職人しよくにん都合つがふがあるとふてな、遠慮ゑんりよなにらない着物きものがたまらぬかられをひて
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
れも蒲團ふとんかぶつて半日はんにちればけろ/\とするやまひだから子細しさいはなしさと元氣げんきよく呵々から/\わらふに、亥之ゐのさんがえませぬが今晩こんばん何處どちらへかまゐりましたか、かわらず勉強べんきよう御座ござんすかとへば
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
みねほめてつてれとて、ちゝ蒲團ふとんをかぶりてなみだこゑをしぼりぬ。
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
母親はゝおやあやしき笑顏ゑがほをしてすこてばなほりませう、いつでもきまりのわがまゝさんさぞ友達ともだちとも喧嘩けんくわしませうな、眞實ほんにやりれぬぢようさまではあるとてかへるに、美登利みどりはいつか小座敷こざしき蒲團ふとん抱卷かいまき持出もちいでゝ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)