)” の例文
だれが、そのあいだにやってきてもあわないつもりで、ぐちかためた。そして、まめふくろからして、熱心ねっしんかぞえはじめました。
幸福の鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
其跡そのあと入違いれちがつてたのは、織色おりいろ羽織はおり結城博多ゆうきはかたの五本手ほんて衣服きもの茶博多ちやはかたおびめました人物、年齢四十五六になるひんをとこ。客
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ぼんやりした顔をぬっと突き出して帰って来たところを、いきなり襟を掴んで突き倒し、馬乗りになって、ぐいぐい首をめあげた。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
しかし入口からぽつぽつ出て来る人たちの評判を立聞きすると、「腰巻なんぞめていやがる。面白くもねえ。」というのである。
裸体談義 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
寺に用のあるはずはなし、また寺の門はもうまっているのに、女は盛装したまま暗い所をたった一人で上って行ったんだそうである。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこで、私はさっと輪をなげてかれのくびにかけてめてしまった。そのままぐっとひきしめて息の根をとうとする仲間なかまを、私は
それでの一ちやうはう晝間ひるまめたといふほど、ひどい臭氣しうきが、ころくさつた人間にんげんこゝろのやうに、かぜかれてつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
斯く爲しつつ空中の鳥を目掛けてげる時は、あみを以て之をおほふと同樣、翼をおさへ体をけ鳥をして飛揚ひやうする事を得ざらしむ。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
伯父をぢさんはもうこまつてしまつて、とうさんのめておび手拭てぬぐひゆはひつけ、その手拭てぬぐひとうさんをいてくやうにしてれました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
餘所よそをんな大抵たいてい綺麗きれいあかおびめて、ぐるりとからげた衣物きものすそおびむすしたれて只管ひたすら後姿うしろすがたにするのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「指図役だ。何しろ三、四十人もちりぢりばらばら入り込んでいるから、誰かめくくりをつける者がいなくてはならないからな」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
面は火のように、眼は耀かがやくように見えながら涙はぽろりとひざに落ちたり。男はひじのばしてそのくびにかけ、我を忘れたるごとくいだめつ
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
戸があくとすぐに、衣の上に鼠色ねずみいろ木綿合羽もめんかつぱをはおつた僧侶が二人つと這入はひつて、低い声に力を入れて、早くその戸をめろと指図した。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
つまみして障子せうじめた、殘暑ざんしよといふものはわるあつい、空氣くうきかよはないかららである、くもつてゐるから頭痛づつうがする、たまらぬ。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
一體いつたい家屋かおくあたらしいあひだはしら横木よこぎとのあひだめつけてゐるくさびいてゐるけれども、それが段々だん/″\ふるくなつてると、次第しだいゆるみがる。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
うら若いむすめの面影は、眼の前にちらついて、動悸どうきはもう落着いていたけれど、胸が何か快くめつけられる思いだった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
私の母は気性の派手な、負けず嫌いな、その癖くくりのない、学者の妻というよりは、まあ事業家の妻にした方が適任と思われる性質の女でした。
扉の彼方へ (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
十五の時に、はかまをひもでめる代わりに尾錠びじょうで締めるくふうをして、一時女学生界の流行を風靡ふうびしたのも彼女である。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
年とったこの頃では寒い頃には身体をめつけられているようでやりきれません、風邪でも引いたりすると、ずきずきと痛むようなこともあります
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
にんじんは、さっきまで、この鉄砲を、それこそ、胸にめていた。突然、彼はそれを失った。ところが、今また、それが彼の手に戻ってきた。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
夫人は、前川氏を意地悪く、真綿で首をめるようないじめ方をして、つまり精神的にサジズムによって、その不満をいやしているような傾向があった。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「魚子夫人はアルプスの山中さんちゅうめ殺してあると博士の日記に出ています。さあ、これからアルプスへ急ぐのです」
俘囚 (新字新仮名) / 海野十三(著)
太夫たゆうめておどったとて、おせんの色香いろかうつるというわけじゃァなし、芸人げいにんのつれあいが、そんなせまかんがえじゃ、所詮しょせんうだつはがらないというものだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ドクトルがまるで乞食こじきにもひとしき境遇きょうぐうと、おもわずなみだおとして、ドクトルをいだめ、こえげてくのであった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
かれたように立ちなおった弥生が、見るまに血相をかえて手早く帯をめ出したとき、やにわに本降りに変わって、銀に光る太い雨脚あまあしのきをたたいた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「町内の湯屋ゆやで——一と月も前ですよ。晝湯につかつて、良い心持にうなつてゐると、どこの野郎か知らないが、あつしの三尺をめて行つちまひましたよ」
ちょうどその時、前の廊下を、ほうきをもった二人の女中が、玄がめきらずに残して行った障子しょうじ隙間すきまから私の方を覗き込むようにして見ながら通りすぎた。
小女こむすめは観音堂を右にして裏手の方へ足を向けた。山西は暗い方へじぶんから往くぞ、もうめたぞ、と思った。
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
老人は、いわれるままに、懐中からかぎをとりだして、まりをはずし、ガラガラと板戸をひらきました。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
いつも自分で行李こうりめていた一人の時の味気あじけなさが思い出されてきて、「とにかく二人で長くやって行きたい」とこんなところで、——みょうにあまくなってゆく。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
そんな事で如何どうやらうやらついに本人をしゃくり出して仕舞しまったのは罪の深い事だ。二、三日はまって居たが果していったから、ソリャめたと共謀者はまって居る。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
彼女はそれから、小筥こばこの中からそっと取りだした一枚の紙片を、鳩の足にゆわえつけると、庭へ出て、一度強く鳩を胸に抱きめながら、頬をつけてから手を離した。
(新字新仮名) / 池谷信三郎(著)
背中せなかからめて、づる/\ととほくへつてかれたやうにつて、雪枝ゆきえ其時そのときこと思出おもひだした。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
友仙いうぜんおびぢりめんのおびあげも人手ひとでりずにばしこくめたる姿すがた不圖ふとたるには此樣このやう病人びやうにんともおもるまじきうつくしさ、兩親ふたおや見返みかへりて今更いまさらなみだぐみぬ
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そして捲毛まきげをよくかして房々と垂らし、淡紅色ときいろ上衣うはぎを着け、長い飾帶をめ、レイスの長手袋ミットンをちやんとする頃には、裁判官か何ぞのやうに眞面目まじめくさつてゐた。
を通ずるまでもなく挨拶あいさつに出たが、固く引きまった日に焼けた顔の色と云い、ショボショボした、人の好さそうなつきと云い、首の小さい、肩幅かたはばの広い体格と云い
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
『まア氣持きもちだこと!望遠鏡ばうゑんきやうのやうにめつけられるやうだわ』とあいちやんがひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
長羅は唇をめて宿禰を見詰めていた。宿禰は吐息を吐いて長羅の前から立ち去った。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
鋭き言葉に言いこらされて、餘儀なく立ちあがる冷泉を、引き立てん計りに送り出だし、本意ほいなげに見返るを見向みむきもやらず、其儘障子をはためて、仆るゝが如く座に就ける横笛。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
おも背嚢はいなうけられるかたじうささへた右手みぎてゆびあしかかと——その處處ところどころにヅキヅキするやうないたみをかんじながら、それを自分じぶんからだいたみとはつきり意識いしきするちからさへもなかつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
しっとりしていて物事のくくりをちゃんと知っているさとい子供だわ。妾は始終家を留守にしているけれど、あの子がいて呉れるから万事安心と言うものだわ。それに……(行詰る)
華々しき一族 (新字新仮名) / 森本薫(著)
かのうるはしき琴はもだし、天の右手めでゆるべてむる聖なるいとはしづまりき 四—六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
このほかいへつかはれてゐるもの大勢おほぜいぐすねいてつてゐます。いへうちをんなどもがばんをし、おばあさんは、ひめかゝへて土藏どぞうなかにはひり、おきな土藏どぞうめて戸口とぐちひかへてゐます。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
今の梅幸の栄三郎のお俊が、美しい顔に涙はなくて今にも吹き出しそうにして居る。故人片市のばあさんと、故人菊之助の伝兵衛がひとり神妙しんみょうにお婆さんになり伝兵衛になって舞台をめて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
其処そこでは田舎にめづらしい海の魚が食へた。赤い帯をめて戯談じやうだんを言ふ女も大勢居た。藩のい家柄の子息むすこで女房子がありながら、此処ここでさういふ女におぼれて評判に立てられたこともあつた。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
その夜のあなたは、また、薄紫うすむらさき浴衣ゆかたに、黄色い三尺帯をめ、髪を左右に編んでお下げにしていました。化粧けしょうをしていない、小麦色のはだが、ぼくにしっとりとした、落着きをあたえてくれます。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
「お前はこの熊に似ている。くくりがないから、斯ういうことになる」
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
刀はそれで腕を切り落した。樵人の次の刀は始めて某の首を斬った。邑宰は驚いて逃げていった。樵人はひじを張り肩を怒らして四辺あたりを見まわした。諸役人は急に門をめて杖を持ってさわぎだした。
田七郎 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
あぢめて同月どうげつくと、完全くわんぜんなる大土器だいどきおよ大土器だいどき下部かぶれて上部じやうぶのみを廢物利用はいぶつりようしたかとおもふのと、土器製造用どきせいざうよう石具せきぐかとおもふのと、鋸目のこぎりめきざみたる獸牙じうがとをした。大當あたあたりである。
僕はも少しで言うのを忘れてしまうところだったが、その箱はめてありました。錠前とか、何かほかのそういったようなものでなしに、金の紐を大変込み入ったむすび方にして留めてあったのです。