)” の例文
かくてこれ展望てんぼうをほしいまゝにしたわが郵船ゆうせんはナポリこう到着とうちやくし、ヴェスヴィオを十分じゆうぶん見學けんがく機會きかいとらへられるのである。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
こゝかしこにたくさんにありますから、これひととほり見物けんぶつしてあるくだけでも、ロンドンで一週間いつしゆうかんぐらゐは、大丈夫だいじようぶかゝるでせう。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「もうええ、ええ。その話めといて。———私が悪かったよってに、これからきっとそないするわ。顔が壊れてしまうやないか」
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
垣根のかえでが芽をく頃だ。彼方あちらの往来で——杉林の下の薄暗い中で子供が隠れ事をしている。きゃっきゃっという声が重い頭に響く。
黄色い晩 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おなしきおなもんうりふたツの類型土器るゐけいどき各地かくちからるのである。それすうからかんがへても、大仕掛おほじかけもつ土器どき製造せいざうしたとへる。
事件に関係のありそうな「謎」は後から後へと山積さんせきしたものの、これを解くべき「キー」らしいものは一向に見当らないのだった。
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あみつたと、つたとでは、たいの味が違ふと言はぬか。あれくるしませては成らぬ、かなしませては成らぬ、海の水を酒にして泳がせろ。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
懐良王は、後醍醐ごだいご帝の皇子、延元えんげん三年、征西大将軍に任じ、筑紫つくし鎮撫ちんぶす。菊池武光きくちたけみつこれに従い、興国こうこくより正平しょうへいに及び、勢威おおいに張る。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「伝十郎」とまるで人間の名のように呼ばれるこれの桃の名をおもい出して可笑おかしくなった。私は、あはあは声を立てて笑った。
桃のある風景 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
んと奇妙きめうではありませんか、これてん紹介ひきあはせとでもふものでせう、じつわたくし妻子さいしも、今夜こんや弦月丸げんげつまる日本につぽん皈國かへりますので。
しかもその金の行衛ゆくえは、一体どうなったんだときいて見ても、女の返事はあいまいで判然としない。わたしは内心ここがあきらめ時だ。
あぢさゐ (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「おつうだつていまえこともあらな、そんだがおつかゞくつちや衣物きものしくつてもこればかりはやうがねえのよな」女房にようばうはいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それなかには橘姫たちばなひめよりもはるかに家柄いえがらたかいおかたもあり、また縹緻きりょう自慢じまんの、それはそれは艶麗あでやか美女びじょないのではないのでした。
しばらくみょうな顔をして、それに聞入っていた後、彼は、何だか彼の言葉の意味がわかるような気がする、と、傍の者に言った。
木乃伊 (新字新仮名) / 中島敦(著)
これの件々は逐一ちくいちかぞうるにいとまあらず。到底とうてい上下両等の士族はおのおのその等類の内に些少さしょう分別ぶんべつありといえども、動かすべからざるものに非ず。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
やがて、彼女が世を忍んでいた同じ村の出身者である実業家の小山田氏が彼女等の前に現われた。それが救いの手であった。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
おどろいてあと見送みおくつてゐるりよ周圍しうゐには、めしさいしるつてゐたそうが、ぞろ/\とてたかつた。道翹だうげう眞蒼まつさをかほをしてすくんでゐた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
或る朝、私は例の気まぐれから峠まで登った帰りみち、その峠の上にある小さな部落の子供二人と道づれになって降りて来たことがあった。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
遺族の人達は自分の耳を疑ふやうに、顔を見合せたが、誰の耳にも「居士」と響いたのに違ひはなかつた。で、早速坊さんに注意をした。
ベンチの横に立っているお情けのような終夜燈の光が、それ落ちて行く寺内氏の過去を、ひらひらと、幻燈のように青白く照らしてくれた。
地図にない街 (新字新仮名) / 橋本五郎(著)
されば芝居をつくる処、此役者が家はさらなり、親類しんるゐ縁者えんじや朋友はういうよりも人を出し、あるひは人をやとひ芝居小屋場の地所の雪をたひらかにふみかため
そうして、それのすべてが彼を無言のうちにあざけり、おびやかしているかのような圧迫感に打たれつつ、又もガックリとうなだれて歩き出した。
木魂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
紋「云っても宜しい、あれへつらい武士じゃ、佞言ねいげん甘くして蜜の如しで、神原あるいは寺島をお愛しなさるのは、勧める者が有るからじゃの、惣衞」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かうなると、探索の範囲もよほど広くなるわけであるが、流石さすがじゃの道はへびで、手先は、づ近所の新宿に眼をつけた。
赤膏薬 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
加之それに妙にねち/\した小意地こいぢの惡い點があツて、ちつ傲慢ごうまんな點もあらうといふものだから、何時いつも空を向いて歩いてゐる學生がくせいには嫌はれる筈だ。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
努力、死、自然の冷淡、生命(親と子)の矛盾と愛——これのものの関係を汝の墓ほど直截ちよくせつかたるものはほかにない。
愛は、力は土より (新字旧仮名) / 中沢臨川(著)
すでにして大夫たいふ鮑氏はうしかうこくぞくこれみ、景公けいこうしんす。景公けいこう穰苴じやうしよ退しりぞく。しよやまひはつしてす。田乞でんきつ田豹でんへうこれつてかうこくうらむ。
おそらくこれいてのかんじがわかるといふだけでも僕等ぼくら日本人にほんじん歐米人達おうべいじんたちよりもずつとずつと麻雀マアジヤンあぢはたのしみかたふかいだらうと想像さうざうされる。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
そうすりゃあいつは、ぼくがこんなにみっともないくせして自分達じぶんたちそばるなんて失敬しっけいだってぼくころすにちがいない。だけど、そのほうがいいんだ。
「わしもさ、晝間ひるまはそれでも見物人けんぶつにんにまぎれてわすれてゐるが、よるはしみじみとかんがえるよ。かゝあどものことを……どうしてゐるかとおもつてね」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
長い間、病気のため姿を現さなかった三津井老人が事務室の片隅かたすみから、憂わしげに彼の様子をながめていたが、このとき静かに片山のそばに近寄ると
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
丁度ちょうど某氏が同じ夢を見た晩と同じ晩の同じ時刻に、その病人が『今、自分は、色んな人にあって、色んな愉快な話をして来たので、心持こころもちになった』
取り交ぜて (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
最初には黄いろいこととまるいこととが伴なって結びついて居り、緑いろとしわのあるのともそうであったのに、ここではこれの性質が離れてしまって
グレゴール・メンデル (新字新仮名) / 石原純(著)
私の全然知らない事実がその中に盛られ、後で調査して見ると、これことごとく正確であることが確かめられた……。
宿やどの者此人を目科めしなさん」とて特に「さん」附にして呼び、帳番も廊下にて摺違すれちがうたびに此人には帽子を脱ぎて挨拶あいさつするなどおおい持做もてなしぶりの違う所あるにぞ
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
ワシントン、那波翁なおう云々うんぬん中々なかなか小生はいの事にあらず、まん不幸ふこう相破あいやぶかばねを原野にさら藤原広嗣ふじわらのひろつぐとその品評ひんぴょうを同じゅうするも足利尊氏あしかがたかうじと成るを望まざるなり
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
僕の上にいた課長というのが、後に資生堂の重役になった男だが、この課長が僕といっしょに昼飯を食う。
美味放談 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
通りがかりの他所よその衆や、町の商人や、ええ衆がこの願書さ名前書いてくれねえのは、まだ仕方ねえ……。
天狗外伝 斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
一二年ぜんに横浜の怪しい家で知った独逸ドイツ人の混血児と云う女の肥った肉体もその中にまじっていた。それの女の肉体は電車の動くたびに動くような気がした。
青い紐 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
其方をつと三五郎儀平生へいぜい身持みもちよろしからず重四郎と申合せ金兵衞の子分三人を元栗橋燒場前に於て殺害せつがいし右死骸を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そんなつまらぬかんがえ打消うちけすと、結局けっく夢中にそんな所も過ぎるので、これまことによいことだと自分は思う。
死神 (新字新仮名) / 岡崎雪声(著)
私の苦しみを理解しない友人の忠告が何の価値があるでしょう。二十一歳になった春、私はとうとう学校をふりすてなければならなくなってしまったのでした。
悪魔の弟子 (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
支那人はそれをきいていた。それから又どもりのように、日本の言葉を一つ、一つ拾いながら、話した。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
カピューレット長者ちゃうじゃさきに、ヂュリエットおよ同族どうぞくもの多勢おほぜいぱうよりで、他方たはうよりきた賓客ひんきゃく男女なんにょおよびロミオ、マーキューシオー假裝者かさうしゃの一ぐんむかふる。
あの虚無主義者と看做みなされている主人公の医学生に賛同しているというので、貴族は作者を攻撃する。
現にジヨホオルで護謨林ごむりんを経営して居る日本人は三井の二万五千エエカア、三五公司こうし阿久澤あくざわ)の二千町歩をしゆとし、二三百エエカアの小経営者は数十人にのぼ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
もう待草臥まちくたびれたと云ふやうに鏡子が目をとぢて居る所へそのはいつて来て、汽車はぐ動き出した。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
伸一先生しんいちせんせい柔和にうわにして毅然きぜんたる人物じんぶつは、これ教訓けうくん兒童こどもこゝろむにてきしてたのです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
大きなる家のにぎははしげなるに立ちよりて一宿ひとよをもとめ給ふに、田畑たばたよりかへる男黄昏たそがれにこの僧の立てるを見て、大きにおそれたるさまして、山の鬼こそ来りたれ
第二の盗人 いえ、こいつは二人とも大泥坊です。これは皆わたしのものなのですから、——
三つの宝 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)