おんな)” の例文
はじめの二、三にちは、そのおんなたいして、べつにしたしくしたものもなかったが、また、悪口わるくちをいうようなものもありませんでした。
青いボタン (新字新仮名) / 小川未明(著)
もなく、おんなのマリちゃんが、いまちょうど、台所だいどころで、まえって、沸立にえたったなべをかきまわしているおかあさんのそばへました。
「いや、むほどのことでもなかろうが、なんわかおんな急病きゅうびょうでの。ちっとばかり、あさから世間せけんくらくなったようながするのさ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
といって、何遍なんべん何遍なんべん藤太とうだにおれいをいいました。そしてたくさんごちそうをして、おんなたちにうたうたわせたりまいわせたりしました。
田原藤太 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
現代いまのよ人達ひとたちから頭脳あたまふるいとおもわれるかぞんじませぬが、ふるいにも、あたらしいにも、それがその時代じだいおんなみちだったのでございます。
「およそ人心じんしんうちえてきのこと、夢寐むびあらわれず、昔人せきじんう、おとこむをゆめみず、おんなさいめとるをゆめみず、このげんまことしかり」
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
おんなにもしてみたいほどのいろしろで、やさしいまゆ、すこしひらいたくちびるみじかいうぶのままのかみ子供こどもらしいおでこ——すべてあいらしかった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それだから僕は夢子の夫になつておんなの藝術を保護してやる。………僕は結婚したら、夢子を連れて亜米利加アメリカへ行かうと思つて居るんだ。
おりから下坐敷したざしきより杯盤はいばんはこびきしおんななにやらおりき耳打みゝうちしてかくしたまでおいでよといふ、いやたくないからよしてお
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
下男げなんおとこ使用人しようにん)が病気びょうきになれば、みずくみもしました。女中じょちゅうおんなのおてつだいさん)にさしつかえがあれば、台所だいどころのてつだいもしました。
其結果から論じたら、わたくしは処世の経験に乏しい彼のおんなを欺き、其身体しんたいのみならず其の真情をももてあそんだ事になるであろう。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
歩かされて、城下のおんなどもにまで、この顔をありありと見覚えられては、どう身扮みなりを変えても次にはすぐ見顕みあらわされてしまう
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたしは、おんなより金魚きんぎょほううつくしいとおもうんですよ。あなたはにわ老人ろうじん立話たちばなしをしたつていいましたね。そのとき金魚きんぎょは、どんな恰好かっこうしてました?
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
家鴨あひるくちばしつつかれたり、牝鶏めんどりはねでぶたれたり、鳥番とりばんおんないかけられるなんかより、どんなにいいかしれやしない。
先刻さつきうつくしいひとわきせきつたが、言葉ことばつうじないことがわかつたところで、いま日本語にほんごのよくはなせるお転婆てんばさんらしいおんな入替いれかわつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「ね、あたしどんなとこへいくのかしら。」ひとりのいちょうのおんなそらあげてつぶやくようにいいました。
いちょうの実 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
母は、午前中はある病院びょういんのそうじおんなとしてはたらき、帰ってからは輸出向ゆしゅつむきのハンケチのへりかがりを内職ないしょくにしていた。
美しき元旦 (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
まちには、病院びょういん新院長しんいんちょういての種々いろいろうわさてられていた。下女げじょ醜婦しゅうふ会計かいけい喧嘩けんかをしたとか、会計かいけいはそのおんなまえひざって謝罪しゃざいしたとか、と。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
むすめは母のめいもあるし、すっかり山路を信頼して、山路のするままにしていると、山路は卒業してふいと福岡へ帰り、何時いつの間にか土地のおんな細君さいくんにしていた。
指環 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
されど、われは徒爾に哭して慟する者にあらず、おんなこどものすなる仏いじりに日を泣暮なきくらす者にあらず。
父の墓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
今時分——日はカンカンと照っているのに、自分でさえが、こうして、早く、いくつもの法帖を楽しんでいるのに、かのおんなは、今になってようやく寝床を離れたものらしい。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
台屋だいやのかたでは、源四郎の細君さいくんまさとままははわかいやといおんなとの三人が、なにかまじめに話をしながら、ままははははすのかわをはぎ、お政と女はつと豆腐どうふをこしらえてる。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
あるいはヒステリーおんなの憂鬱ではなくて健康なはらの憂鬱である。すなわち彼の衷に秘められた闇と憂鬱とは光と快活とを生みそして育てるところの闇と憂鬱とである。
語られざる哲学 (新字新仮名) / 三木清(著)
つて、あかくなつたわたしあつくちびるでひつたりとひました。布団ふとん眼深まぶかかにかぶつた小鳩こばとのやうに臆病をくびやう少年せうねんはおど/\しながらも、おんなのするがまヽにまかせてゐた。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
昔から阪東男ばんどうおとこの元気任せに微塵みじんになる程御神輿の衝撞ぶつけあい、太鼓の撥のたゝき合、十二時を合図あいず燈明あかりと云う燈明を消して、真闇まっくらの中に人死が出来たり処女むすめおんなになったり
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
お延はどうしたい。行こう行こうと思いながら、つい貧乏暇なしだもんだから、御無沙汰ごぶさたをしている。よろしく云ってくれ。お前の留守にゃひまで困るだろうね、おんなも。いったい何を
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
コウㇳ、もう煮奴にやっこも悪くねえ時候だ、刷毛はけついでに豆腐とうふでもたんと買え、田圃たんぼの朝というつもりで堪忍かんにんをしておいてやらあ。ナンデエ、そんなつらあすることはねえ、おんなぷりが下がらあな。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
あなたは覚えていて? あたしがあなたのへやにはいって鏡に顔を映してみたあの日のこと、それからまた、日雇ひやとおんなたちのそばで大通りであなたに会った日のことも。小鳥が歌ってたわ。
ロミオ てもきつ射手いてぢゃの! そしてそのおんなれがにも美人びじん
触るよ、触るどころか、抱いて寝るんだ。何、玉香が、香玉こうぎょくでも、おんなもうじゃは大抵似寄りだ、心配しなさんな。その女じゃああるめえよ、——また、それだって、構わねえ。俺が済度して浮ばしてる。
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
思いがけなく、おんなが傍へ来たので、筆屋の若旦那は、もうゾクゾク心臓の高鳴たかなりを感じて、何とかうまくモーションをかけよう……機会をねらっているうちに、お絃と吃勘どもかんはアッサリお茶を飲んで
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ひんがしのはなれ小島をじまに子をおきておんなゆゑ寒き船かな
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
色気のあるおとこおんなを閉じ籠めたのですか。
わたくしはおんなのことですから
「かのおんなは何者か。」
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
あちらで、それをおくさまは、おんなはだれでも、かがみがあれば、しぜんに自分じぶん姿すがたうつしてるのが、本能ほんのうということをらなそうに
だまされた娘とちょうの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
するとだんだんがふさいで、病気びょうきになりました。それから八つきったときに、おんなおっとところって、きながら、こういました。
おとこおんな相違そういが、いまあきらかに袖子そでこえてきた。さものんきそうなにいさんたちとちがって、彼女かのじょ自分じぶんまもらねばならなかった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「おまえさんより、おんなだもの。あたしのほうが、どんなにいやだかれやしない。——むかしッから、公事くじかけあいは、みんなおとこのつとめなんだよ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
くちるきおひとこれをきて、さてもひねくれしおんなかな、いまもし學士がくしにありて札幌さつぽろにもゆかず以前いぜんとほなまやさしく出入でいりをなさば
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「まあ、元気げんきがあってよいなんておっしゃって。おんなですから、もうすこし、おとなしくしてくれるといいんですが……。」
おんなあぶらつぼ断崖がけうえりまして、しきりに小石こいしひろってたもとなかれてるのは、矢張やは本当ほんとう入水にゅうすいするつもりらしいのでございます。
「おろかなことを。政治まつりごとだんをくだすものが、おんなげんなどにくらんでよいものか。……いや、さような繰り言はけ。……尊氏は、どうしているか」
山姥やまうばひつの中にはいると、おんなそとからぴんとじょうろしてしまいました。そして石のひつの中から女の子をしてやって
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
しかして「おんな」なる言葉はその用うる場合により、「人」の場合と同じく、善悪両様の意味を別々に含ませている。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
己は今迄、ぼんやりと自分の脳裡のうりに描いて居た、「」だとか、「」だとか、「藝術げいじゅつ」だとか云うものが、彼のおんなに具体化されて居たのを認めたのである。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
おんなはまた父が歿くなって一家が離散したので、金蓮と二人で月湖げっこの西に僑居かりずまいをしているものだとも云った。
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
この小屋こやには、一人ひとりおんなと、一ぴき牡猫おねこと、一牝鶏めんどりとがんでいるのでした。ねこはこの女御主人おんなごしゅじんから
「それは普通ふつう無智むちおんなたいしてのことさ。IならS、Hくんでもきつとおとなしくするよ。」わたし自家じかけん遜の意味いみつたが、いくらかの皮肉ひにくもないとはへなかつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
耳の遠い髪の臭い薄ぼんやりしたおんなボオイに、義理一遍のビイルや紅茶を命ずる面倒もなく、一円札に対する剰銭つりせんを五分もかかってもつて来るのに気をいら立てる必要もなく
銀座 (新字新仮名) / 永井荷風(著)