こゝ)” の例文
翌朝よくてうセルゲイ、セルゲヰチはこゝて、熱心ねつしんに十字架じかむかつて祈祷きたうさゝげ、自分等じぶんらさき院長ゐんちやうたりしひとはしたのでつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
汲ませ玉へやといふ先に家のおほいなるに合せ奮發したる茶代の高こゝに至ツて光を放ちぬしかしながら此家は夫是それこれの事に拘はらず山を祝ふて酒を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
お話し二つに分れまして、蟠龍軒はお村を欺き取って弟の妾にして、御新造ごしんぞとも云われず妾ともつかず母諸共もろともこゝに引取られて居ります。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
壽阿彌の假名文は海録に讓つてこゝに寫さない。末に「文政六年癸未きび四月眞志屋五郎作新發意しんぼつち壽阿彌陀佛」と署して、邦字の華押くわあふがしてある。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
こゝに於てわれみづから名づくるに来青花らいせいかの三字を以てしたり。五月薫風簾をうごかし、門外しきりに苗売の声も長閑のどかによび行くあり。
来青花 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
こはヱネチアの心胸と稱すべき處にして、國の性命はこゝに存ずといふなるに、その所謂いはゆる繁華は羅馬のコルソオに孰與いづれぞ、又拿破里ナポリの市に孰與ぞ。
丁度凸凹でこぼこなりの姿見の前で、職工風の一人の男の頭にバリカンをかけてゐる、頭髮のモヂヤ/\した貧相なこゝの親方に、『今日こんちは。』と挨拶する。
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
彼にあつて自由に華やかに澄徹した調を送つた歌の鳥もすでに聲を收めて、いつしかその姿をかくした。こゝには孤獨の思ひをいだく島崎氏あるのみである。
新しき声 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
くらまさんとなす強情者がうじやうもの古今ここんまれなるこゝな大惡人め穀屋平兵衞を殺せしに相違さうゐ有まじサア申立よと問詰とひつめられしかども段右衞門あらぬていにて平兵衞を殺しかね
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
休憩時間きふけいじかんには控所ひかえじよ大勢おほぜいの中を奔走ほんそうして売付うりつけるのです、其頃そのころ学習院がくしうゐん類焼るいしやうして当分たうぶん高等中学こうとうちうがく合併がつぺいしてましたから、こゝへも持つて行つて推売おしうるのです
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
当時は仔細あつて私の心は彼に在つてこゝに無しといふ有様で、好加減いゝかげんに聞流して置いたが、其後北京へ行つて暫らく逗留してゐると、或日巴里パリから手紙が来た
エスペラントの話 (新字旧仮名) / 二葉亭四迷(著)
『言語に絶えたる亂心にも、君が御事忘れずや、不忠を重ぬるわざとも知らで、殘しありし此の一通、君の御名を染めたれば、捨てんにも處なく、餘儀なくこゝに』
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
〔譯〕周子しうしせいしゆとす、こゝろ本體ほんたいを守るを謂ふなり。※説づせつに、「よく無し故にせい」と自註じちゆうす、程伯氏ていはくしこれに因つて天よくせつ有り。叔子しゆくしけいする工夫くふうも亦こゝに在り。
たまらねえ、去年きよねん沙魚はぜからびたあたまばかり、こゝにも妄念まうねんがあるとえて、きたいてそろつてくちけてら。わらびどうにつけてうよ/\と這出はひだしさうだ、ぺつ/\。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これは小千谷の下た町といふ所の酒楼しゆろう酌採しやくとり哥妓げいしやどもなり、岩居がんきよ朋友はういうはかりてひそかこゝまねきおきてきやうさせんためとぞ。かれは狐にあらずして岩居がんきよばかされたるなり。
「然うかね。」と少女は、林檎を見𢌞して、突如一つ握ツて、「こゝらが、ま、好いとこだね。」
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
論じてこゝに到れば、吾人われらは今文明の急流中にさをさして、両岸の江山、須臾しゆゆに面目を改むるが如きを覚ふ、過去の事は歴史となりて、巻をかれたり、往事は之れを追論するも益なし
三番目の抽出ひきだしから出たのは二人のをなごの子の物ばかりで、色のめたメリンスの単衣ひとへが五六枚、外へこゝ双生児ふたごの娘が生れた時、美奈子がなにがし書店に頼んでお伽噺を書かせて貰つて其の稿料でこしらへた
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
かるが故にこゝに一コスモポリタンあるひは一外人を
国民性と文学 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
あさはふたゝびこゝ
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
かしかるべし御覽ごらんぜずやとわりなくすゝめてしばめづらしくともなでぬひとこゝろのうやむやはらずやしげ木立こだちすゞしくそでかぜむねにしゝうえはたす小田をだ早苗さなへ青々あほ/\として處々ところ/″\かわずこゑさま/″\なるれもうたかや可笑をかしとてホヽしうれもうれしく彼方かしこかやぶきこゝ垣根かきねにはうちしきやうなりはな
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
なんためわたしだの、そら此處こゝにゐる不幸ふかう人達計ひとたちばかりがあだか獻祭けんさい山羊やぎごとくに、しゆうためこゝれられてゐねばならんのか。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
誓譽淨本居士としたのが其一で、他の一本にはこゝ淨譽了蓮信士じやうよれうれんしんしが入れて、「十代五郎作、のち平兵衞」と註してある。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
これ山田やまだ前年ぜんねんすでに一二の新躰詩集しんたいししうおほやけにして、同会社どうくわいしやつてえんからこゝ持込もちこんだので、この社はさき稗史出版会社はいししゆつぱんくわいしや予約よやく八犬伝はつけんでん印刷いんさつした事があるのです
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
のぼる時は直立して天に向ふこゝは危なしおりんと云へど聞かぬ顏にていよ/\飛ばす山は恰もかけるが如く樹は飛が如くに見ゆ快といはば快爽と云ば爽なれどハツ/\と魂を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
これは小千谷の下た町といふ所の酒楼しゆろう酌採しやくとり哥妓げいしやどもなり、岩居がんきよ朋友はういうはかりてひそかこゝまねきおきてきやうさせんためとぞ。かれは狐にあらずして岩居がんきよばかされたるなり。
レナンも亦之を認む、我日本の精神的改革を図る者いづくんぞ目をこゝに注がざる、吾人は似て非なる者をにくむ、更に名を宗教に借りて実なき者を悪む、聞く獅子の身中に虫ありて獣王だも
源次郎は孝助のうしろから逃げたら討とうと思っていますから、孝助は進めば鉄砲で討たれる、退しりぞけば源次郎がいて進退こゝきわまりて、一生懸命に成ったから、額と総身そうしんから油汗が出ます。
こゝに於て予は猛然と心覚めて、寝返りしつゝまなこみひらき、不図ふと一見いつけんしてあをくなりぬ。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
取たと迄ちく白状仕はくじやうしたならばおのれも早く申上て仕舞しまうがイヽアノこゝ大盜人おほぬすびとめと砂利じやりたゝいて舊惡きうあくかぞたつれど段右衞門は落付おちつきはらい否々いや/\博奕ばくちうちても人を殺し金をぬすんだ覺えはないぞと云を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
西班牙スパニア王カルロスこゝに來て猶深く掘らせしに、見給へ、かしこの奧に見ゆる石階に掘り當てたりと云ふ。われ等はその井をさしのぞくに、日光はエルコラノのまちなる大劇場の石階の隅を照せり。
こゝにお大さんが控えて居るんだよ、莫迦野郎ばかやらうたゞは通しやしないよ。』
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
かくの如き者はたん。心學も亦こゝに外ならず。
わたくしおもふには、是丈これだけぜにつかふのなら、かたをさへへれば、こゝに二つの模範的もはんてき病院びやうゐん維持ゐぢすること出來できるとおもひます。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
然るにはからずも物語は物語を生んで、斷えむと欲しては又續き、こゝに金澤氏に説き及ぼさざることを得ざるに至つた。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
あしのとまるところにて不図ふと心付こゝろづけば其処そこ依田学海先生よだがくかいせんせい別荘べつさうなり、こゝにてまたべつ妄想まうさうきおこりぬ。
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
山田やまだ書斎しよさいは八ぢやうでしたが、それつくゑ相対さしむかひゑて、北向きたむきさむ武者窓むしやまど薄暗うすぐら立籠たてこもつて、毎日まいにち文学の話です、こゝ二人ふたりはなならべてるから石橋いしばししげく訪ねて来る
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
きゝ玉ひ驚かれしが今更いまさらあとへ引返さんも如何なり何とかせんと猶豫いうよの内に最早御墨附の長持と行逢ゆきあふ程に成たりこゝいたつて雅樂頭殿はよんどころなく駕籠かごより下てひかへられ御墨附の通る間雅樂頭殿にはかしら
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
マア貴方あんた考えて見なせえ、御城内の者が百姓のうちへ養子に来ても、何月の幾日いくかに何の種を蒔けば、何月の幾日いくかに芽をふくという事を知りアしねえ、其様そんな者を婿に取ればこゝうちは潰れるから駄目だ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
こゝおいもく最早もはやするにことば
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その浪人を以てかずてむと欲したのは、諸藩の士には各其主のために謀るおそれがあるとおもんばかつたが故である。わたくしはこゝに堂上家の名を書せずに置く。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
下る身はならはしの者なるかな角摩川かくまがはといふを渡りて望月もちづき宿しゆくるよき家並やなみにていづれも金持らしこゝは望月の駒と歌にも詠まるゝ牧の有し所にて宿しゆくの名も今は本牧ほんまきと記しあり。
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
國「お嬢さまはこゝへ連れて来た」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
鹿台ろくたいの財を発するには、無道むだうしやうほろぼさんではならぬと考へたのだ。己が意をこゝに決し、げんかれたくし、格之助に丁打ちやううちをさせると称して、準備に取り掛つたのは、去年の秋であつた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
つゝがなくうまいでしといふやうに言問ことゝひの前の人の山をくぐいでて見れば、うれしや、こゝ福岡楼ふくをかろうといふに朝日新聞社員休息所あさひしんぶんしやゐんきうそくじよふだあり、極楽ごくらく御先祖方ごせんぞがた御目おめかゝつたほどよろこびてろうのぼれば
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
これはまた格別かくべつにぎはひ、郡司大尉ぐんじたいゐ壮行さうかうをまのあたり見て、子やまごかたりて教草をしへぐさにせんと、送別さうべつほか遊人いうじんも多くして、かへさはつゑこゝきしもすくなからで、また一倍いちばいにぎはひはありしならん
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)