出来でき)” の例文
旧字:出來
笠森かさもりのおせんだと、だれいうとなくくちからみみつたわって白壁町しろかべちょうまでくうちにゃァ、この駕籠かごむねぱなにゃ、人垣ひとがき出来できやすぜ。のうたけ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
わたくしおもうには、これだけのぜにつかうのなら、かたをさええれば、ここに二つの模範的もはんてき病院びょういん維持いじすることが出来できるとおもいます。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それでは魔物まもの不承知ふしようちぢや。前方さきちつとも無理むりはねえ、るもらぬもの……出来でき不出来ふでき最初せえしよから、お前様めえさまたましひにあるでねえか。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ひとひととのあひだすこしでも隙間すきま出来できるとるとあるいてゐるものがすぐ其跡そのあと割込わりこんで河水かはみづながれと、それにうつ灯影ほかげながめるのである。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
かはつてかへつてたのはくま膏薬かうやく伝次郎でんじらう、やちぐさんだかさかむたぬき毛皮けがはそでなしをて、糧切まぎりふぢづるでさや出来できてゐる。
わたしはおまえさんのためをおもってそうってげるんだがね。とにかく、まあ出来できるだけはやたまごことや、のどならことおぼえるようにおし。
いだらう、僕はまだ見た事がないが。——然し、そんな真似まね出来できあひだはまだ気楽なんだよ。世のなかると、中々なか/\それどころぢやない」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
みやというものは、あれはただお賽銭さいせんあげげて、拍手かしわでって、かうべげてきさがるめに出来できている飾物かざりものではないようでございます。
きました。ぼうさんはこわごわって、をあけて、裏手うらてをながめますと、そこにふか出来できていて、みずがいっぱいあふれていました。
人馬 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
見ることはめにして、サア写すのだ。しかし千頁もある大部の書を皆写すことはとて出来できられないから、末段のエレキトルの処け写そう。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
今の青年は恋は出来できないと云っていてしかも恋はするけどごく刹那せつな的恋を追って行くという傾向だろう。だから女の方の傾向もそうじゃないかね。
新時代女性問答 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
それから一週間しゅうかんばかりあとになって、ようや袖子そでこはあたりまえのからだにかえることが出来できた。あふれてるものは、すべてきよい。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
これは写真や画の出来できが悪いという意味ではないので、ファラデーの顔の生き生きして、絶えず活動せるのを表わし得ないというためなそうだ。
「蒲原とのことならば、もう一月も前から……が出来できていたのだが、私はあなたに対する尊敬は、今日でも持っている。」
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
しかしわたし決定的けつていてきでなかつた。くなら一やつたほうがいゝとわたしひそかにおもつてゐた。Iばんしてついてくやうなことはわたしには出来できなかつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
まだくことさえよく出来できないうちから、家計簿かけいぼかみをちぎりとっては、いろいろな音符おんぷを一生懸命しょうけんめいきちらした。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
出来できるんですよ。それにね豆のを附けてお婆さんは売りにも行くのです。清水きよみづさんの滝の傍へ茶店を出してねえ。」
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
一体いったい出来できが面白い都会で、巴里パリーに遊んでそのいにしえをしのぶとき、今も悵恨ちょうこんはらわたを傷めずにはいられぬものあるが
不吉の音と学士会院の鐘 (新字新仮名) / 岩村透(著)
これから、その母のはなしというのを一つ二つ紹介しょうかいするが、僕は出来できるだけ彼女の話しっりをそのままつたえることにしよう。これがまた素敵すてきなのである。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
家中では霞の半兵衛という綽名あだな出来できている位槍をもたしては名誉の武士であった。又右衛門が鍵屋の辻で
鍵屋の辻 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
全滅後、死体の収容も出来できんで、そのまま翌年の一月十二三日、乃ち、旅順開城後までほッとかれたんや。
戦話 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
さすれば同じく平均だけの仕事をするものをもって一人前の任務を終えたものとみなすことが出来できようか。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
出来できちまったことは、もう取返とりかえしがつかないんだからね。あのはスープにでもしちまいましょうよ。
十分な事を書くわけには行かんのでありますから、当時たうじ往来わうらいしてつた人達ひとたち問合とひあはせて、各方面かくはうめんから事実をげなければ、沿革えんかくふべき者を書く事は出来できません
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
英国出来できの飛び切りっていうのをサア。一寸ちょっと御覧なさいってば……このよく斬れること……妾の腕の毛がホラ……ヒイヤリとして……ね。ステキでしょう。いいこと。
支那米の袋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
文学者ぶんがくしやもくして預言者よげんしやなりといふは野暮やぼ一点張いつてんばり釈義しやくぎにして到底たうていはなし出来できるやつにあらず。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
毎日宮仕に出てゆく男のためにもそれまでのように支度を調えることも出来できにくかった。それがことに女には苦しかったけれども、どうすることもその力には及ばなかった。
曠野 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
此処ここの人力車は大抵二人乗にんのりで、それが日本出来できの金ぴか模様のある物である。馬車も多いが自動車の多数な事は上海シヤンハイに倍して居る。電車は香港ホンコンと同じく一本電線を用ひて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
がんこな顔色を、みどりいろの顔かけで、やはらげ、とてもおほきな両うでのとつさきに、スコットランド出来できの日がさと、だい/\いろの、かりとぢのご本をつかんでゐます。
青い顔かけの勇士 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
またもとの俗骨ぞくこつにかへり、われも詩を作ることを知りたるならば、へたながらも和韻わゐんと出かけて、先生をおどろかしたらんものをとまけだましひ、人うらやみ、出来できことをコヂつけたがる持前もちまへ道楽だうらくおこりて
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
いまごろがついたか。おれもはらつてきたので、自分じぶん眼玉めだま片方かたほうえぐりだしてつてるのだ。それにしばらくすると、またもとどほりに眼玉めだまがちやんと出来できてくるから奇妙きめうなものさ。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
時のうらかたも神のみすゞりも、十四五なるわらべ、ぢやえぢきかざて、おたかべのあらば、お祭りのあらば、うにきやらやほこて、又からやほこて、作るづくりも時々に出来できて、御祝事おいわひごとばかり
ユタの歴史的研究 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
実際馬鹿でなければ田舎住居は出来できぬ。人にすれずに悧巧になる道はないから。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
京都出来できのものを朝鮮へ埋めて置いて、掘出させた顔で、チャンと釣るなぞというケレン商売も始まるのである。もし真に掘出しをする者があれば、それは無頼溌皮ぶらいはっぴの徒でなければならぬ。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
玄渓の病家先の絹屋弥兵衛きぬややへえという者に、討入装束として着用する鉢金頭巾や、着込きごみ、羽織、その他を註文して、それも悉皆すっかり出来できあがったので、すべて手元を空にして支払ってしまっている。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
此処こゝでさん/″\たせられて、彼此かれこれ三四十ぷん暗黒くらやみなかつたのちやうや桟橋さんばしそとることが出来できた。したのはかたばかりのちひさな手荷物てにもつで、おほきなトランクは明朝みやうてうりにいとのことだ。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
おまへかうして釣度つりたいとつて、モウつりやしますまい、だれ真似まね出来できないことを武ちやんが一人おしなのだわ、むかしから、子供の鼻を食べようとしたさかなの話しはない様だ、聞いたことがないから
鼻で鱒を釣つた話(実事) (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
じいさんは、ごんごろがね出征しゅっせいを、一にちまちがえてしまって、ついにごんごろがねにおわかれが出来できなかったことを、たいそう残念ざんねんがり、くちおおきくあけたまま、かねのなくなった鐘楼しゅろうほうていた。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「どうでしょう。それなんかはくだらない出来できだけれども」
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そんなことはとてもわたしたちには出来できませんわ
奥のなみは近年の出来でき
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
これからたくかへつて支度したくをしてうち長家ながやの者も追々おひ/\くやみにる、差配人さはいにん葬式さうしき施主せしゆ出来できたのでおほきに喜び提灯ちやうちんけてやつてまゐ
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
垣根かきねなかンのめったばっかりに、ゆっくり見物けんぶつ出来できるはずのおせんのはだかがちらッとしきゃのぞけなかったんだ。——面白おもしろくもねえ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
おゝ! 君達きみたちにもほゞ想像さうざう出来できるか、おうらさらはれた、天狗てんぐつかんだ、……おそらくうだらう。……が、わたしこれ地祇神とちのかみ所業しよげふおもふ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「だからさ。衣食に不自由のない人が、云はゞ、物数奇にやるはたらきでなくつちや、真面目まじめな仕事は出来できるものぢやないんだよ」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
この感覚かんかくうちにおいて人生じんせい全体ぜんたいふくまっているのです。これをにすること、にくむことは出来できます。が、これを軽蔑けいべつすることは出来できんです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それは丸太まるたんで出来できた、やっと雨露うろしのぐだけの、きわめてざっとした破屋あばらやで、ひろさはたたみならば二十じょうけるくらいでございましょう。
「さうですね、そのへんつてゐるやうなちひさないしでも、戦争後せんさうご物価ぶつかがちがひますからな、五六千円せんゑんはかゝるつもりでないと出来できません。」
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
あきになってれをするころになると、人にしたほうはあたりまえ出来できでしたが、自分じぶんぶんつくったほうたいそうよくみのりました。
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
かく中流以下のレストラントには必ず何人かの常客じょうきゃくがいて、毎日同じテーブルに同時間に同じ顔を見ることが出来できる。
異国食餌抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)