いれ)” の例文
よび右の話をなしたるに上方の衆は關東者とちがねんいれ候へば物をかたくする心ならんとて松葉屋桐屋共に立出たちいで對面たいめんに及びしかば大金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
法被はつぴてらとも棺桶くわんをけいた半反はんだん白木綿しろもめんをとつて挾箱はさんばこいれた。やが棺桶くわんをけ荒繩あらなはでさげてあかつちそこみつけられた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
少年こどもがこれを口にいれるのはゆび一本いつぽんうごかすほどのこともない、しかつかはてさま身動みうごきもしない、無花果いちじくほゝうへにのつたまゝである。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
からして工面くめんのいゝ長唄ながうたねえさんが、煙管きせる懷劍くわいけんかまへて、かみいれおびからくと、十圓紙幣じふゑんしへい折疊をりたゝんではひつてる……えらい。
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其傍になまぐさき血のほとばしりかゝれる痕をみたりと言へば、水にて殺せしにあらで、石に撃つけてのちに水にいれたりとおぼえたり。
鬼心非鬼心:(実聞) (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
おかあさんのはりのある綺麗きれいな笑ひ声……むすこも、むすめも、勇ましいおかあさんの男姿に引きいれられようとした想像からまた引戻されました。
秋の夜がたり (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
上にはおらせ、やっと引きいれさせたという情話をもち、待合「気楽の女将」として、花柳界にピリリとさせたおきんの名も、もらすことは出来まい。
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
少しずつしていってパセリをこまかく刻んでいれて塩胡椒で味をつけてい加減な固さになった時ブリキ皿へ盛って上をならしてバターを少し載せてパン粉を
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
自分じぶんかせめられて、おな姿すがた泥濘ぬかるみなかかれて、ごくいれられはせぬかと、にはかおもはれて慄然ぞつとした。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
さすれば政府において一意気身きしんいれて御世話があらば内外債はおろかなこと、皇宮こうぐうの御新築でも、諸官省の御普請ふしんでも、華族・士族の禄債でも、鉄路でも、電線でも
禾花媒助法之説 (新字新仮名) / 津田仙(著)
そこで自分はこの手紙を封筒へいれたまま、岡田の所へ持って行った。岡田はすうと眼を通しただけで、「結構」と答えた。お兼さんは、てんで巻紙に手を触れなかった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
新聞しんぶんながらあきなひするのとおもふてもたれど、はからぬひとゑんさだまりて、親々おや/\ことなればなん異存いぞんいれられやう、烟草たばこやろくさんにはとおもへどれはほんの子供こどもごゝろ
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
リンクでちょっと相識になった人が帰ると聞いて、こっそり買いいれた最新型の自動車を出発の朝ホテルの玄関へ廻して置いて「驚かしサプライズ」たりする「巨大な人々ビッグ・ピイプル」にとっては
踊る地平線:11 白い謝肉祭 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
我翁わがおう行脚あんぎゃの頃伊賀越いがごえしける山中にて猿に小蓑を着せてはいかいのしんいれたまひければ……」
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
……衣裳いしょう袖口そでぐちは上着下着ともに松葉色の様なる御納戸の繻子しゅすを付け仕立も念をいれて申分なく
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
其様そんな貴方あなた劇剤げきざい分度外ぶんどぐわいにおいれになりましてはえらことになりませう。殿「ナニよろしい、心配しんぱいをするな、安心してすぐ此場このばめ、さア/\今度こんど其方そのはうてやらう、何歳なんさいぢや。 ...
華族のお医者 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
即於南光坊調美之体、いとにが/\しくぞみえにける。貧僧心ぼそげにたくはへをきし味噌の中へ、魚鳥のはらわたいれけがし給ふ。其外放埒はうらつの有様、ものにこえてをこがまし。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
サアと成る迄は仮令たとえ長官にもしらさぬ程だけれど君は先ずわしが周旋で此署へもいれやった者ではあるし殊に是がいくさで言えば初陣の事だから人に云われぬ機密を分けて遣る其所の入口を
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
何故なぜ入場を許さない」「集会の自由を如何にする」「圧制政府」「警察の干渉」「僕は社会主義に反対のだからいれて呉れい」「ヒヤ/\」「ノウ/\」「馬鹿野郎」「ワハヽヽ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
てうど時候も初袷に、天ぷらの外二三種は、お好み次第に庖丁いれ、直に仕立したてて差上ぐれど、行丈ゆきたけ揃はぬ器の上、糸さへ笑ふ手際のふつゝか、只あざらけき本場の魚を、遣ふを曠衣の売出しに
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
ガラス戸の箱へいれた大きな人形だの、袋入りの琴だの、写真挟みだの、何だのだの体裁よくならべてあって、留守のうち整然きちんと片附いているけれど、帰って来ると、書物を出放だしばなしにしたり
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
福円の妻女は至って優しい慈悲深きたちゆえ親も及ばぬほど看病に心をつくし、桃山ももやまの病院にまでいれて、世話をしてやった、するとある夜琴之助が帰りきたり、全治なおりましたからお礼に来ましたと
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
ところで、この一場の争闘が、さしもの相撲興行を、ほとんどいれかけにするほどの騒ぎになったから、お角、お銀様の一行も、角力見物すもうけんぶつはそのままで打ちきって、もと来た方へ戻ることになりました。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
物もお手においれになったあなたを、任意に、誠実に
手枕たまくらに細きかひなをさしいれて 芭蕉
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
重四郎はこれさひはひと娘の部屋へやのぞき見れば折節をりふしお浪はたゞひと裁縫ぬひものをなし居たるにぞやがくだんのふみを取出しお浪のそでそついれ何喰なにくはかほ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
愚図々々ぐづ/\してはられぬから、我身わがみわらひつけて、つた。ひつかゝるやう、きざいれてあるのぢやから、さいたしかなら足駄あしだでも歩行あるかれる。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おつぎは與吉よきちはららしてときにはこめみづひたしていて摺鉢すりばちですつて、それをくつ/\と砂糖さたういれめさせた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「あア悉皆みんな内へいれちゃったよ。外へ置くとどうも物騒だからね。今の高価たかい炭を一片ひときれだって盗られちゃ馬鹿々々しいやね」
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
自分じぶんもかくかせめられて、おな姿すがた泥濘ぬかるみなかかれて、ごくいれられはせぬかと、にわかおもわれて慄然ぞっとした。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
従弟いとことおまっちゃんと三人で、炎天ぼしになって掬ったが、いれものをもたないで、土に掬いあげたのはすぐ消たようにかたまってしまった。三人はつばきをした。
だから素人を山へいれるのはよほど高い代価をもらわなければ引合ひきあわないといいます。松茸ばかりでありません。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
夫から警察本署へ着た頃は少し心も落着た様子でしたが、やがて牢の中へいれますと
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
此樣このやう人形にんぎやうりしとほこかほすれば、姉樣ねえさまうた御覽ごらんなされしや、してなんおつしやりしとへば、なんともはずに文庫ぶんこいれてお仕舞しまひなされしが、今度こんどまたあのやううたみて
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
由「こりゃアどうも酷うごすね、貴方を質にいれて流す気ですね、酷いこと」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
何でも物価高直こうじき折柄おりから、私のいれる食料では到底とてまかない切れぬけれど、外ならぬ阿父おとっさんのたっての頼みであるに因って、不足の処は自分の方で如何どうにかする決心で、謂わば義侠心で引受けたのであれば
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
取り入って手においれなすったでしょうが
待人まちびといれ小御門こみかどかぎ 来
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
致して居る樣子を格子かうしそとにて承まはりしが黄昏頃たそがれごろゆゑそつのぞきし所百兩包を取出し御門跡へ納める金なりと云ひ又箪笥たんすの引出へいれたる處を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それでも葬具さうぐ雜費ざつぴには二せんづつでもむらすべてがつて香奠かうでんと、おしな蒲團ふとんしたいれてあつたたくはへとでどうにかすることが出來できた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
母は堅く信じて疑がわないので、僕等も持余もてあまし、の鎌倉へでも来て居て精神を静めたらと、無理に勧めてつい此処ここの別荘にいれたのは今年の五月のことです。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
いれものが小さき故に、それが希望のぞみを満しますに、手間のること、何ともまだるい。いわしを育てて鯨にするより歯痒はがゆい段の行止ゆきどまり。(公子に向う)若様は御性急じゃ。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
セーゴのはセーゴ大匙二杯を水へつけて牛乳一合砂糖二杯で煮て白身を二つ今のようにいれます。そのほか米の粉でもきびの粉でもタピオカでもアラローツでも何でも出来ます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
一番美しいものを手においれなさるかた
えら茶話がもてて、何度も土瓶をかわかしたで、いれかわって私もやらかしますべいに、待ってるだよ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
別に篩の中へメリケン粉を大匙五杯にベーキングパウダー即ち焼粉やきこを大匙一杯いれ篩出ふるいだします。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
思案に尽きてついに自分の書類、学校の帳簿などばかりいれて置く箪笥たんすの抽斗に入れてその上に書類を重ねそしてかぎは昼夜自分の肌身はだみより離さないことに決定きめっと安心した。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
縁邊えんがはにはまめふるぼけた細籠ざるいれほしてある、其横そのよこあやしげな盆栽ぼんさいが二はちならべてありました。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「構っちゃ可厭いやだよ。」とと茶の間を抜ける時、ふすまけんの上を渡って、二階の階子段はしごだんゆるかかる、拭込ふきこんだ大戸棚おおとだなの前で、いれちがいになって、女房は店の方へ、ばたばたと後退あとずさりに退すさった。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もしか反古ほぐと間違っておたもとへでもおいれになりませんでしたろうか、一応お聞申します
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)