あき)” の例文
政府が人権を蹂躙じゅうりんし、抑圧をたくましうしてはばからざるはこれにてもあきらけし。さては、平常先輩の説く処、まことにその所以ゆえありけるよ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
おとこおんな相違そういが、いまあきらかに袖子そでこえてきた。さものんきそうなにいさんたちとちがって、彼女かのじょ自分じぶんまもらねばならなかった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それにんずるに其人をえらめば黜陟ちつちよくあきらかにして刑罰けいばつあたらざるなくまことに百姓をして鼓腹こふく歡呼くわんこせしむことわざに曰其人を知らんと欲すれば其の使つかふ者を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
またさういふ種類しゆるい地震ぢしん爆發ばくはつともな地震ぢしんとの區別くべつも、地震計ぢしんけい記録きろくによつてあきらかにされるから、地震計ぢしんけい噴火ふんか診斷器しんだんきとなるわけである。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
ふゆ何事なにごともなく北風きたかぜさむくにつた。やまうへあきらかにしたまだらゆき次第しだいちて、あとからあをいろ一度いちどいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
だんだんにこれを究めあきらめることができるとすれば、他人はいざ知らず、自分は何よりもまず彼らの歩みきたったみちが、どれほどの変化をもって
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
いや、雪さえ降るに、御簾ぎょれんの内、あきらけくはなかったが、笛の座につかれたみ姿の線、おのずからな御威容、さすがはと拝せられ、世上、しきりに新帝の英邁えいまい
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひくくしてしづかにくる座敷ざしきうちこれは如何いか頭巾づきんえざりしおもて肩掛かたかけにつゝみしいまあきらかにあらはれぬ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ふりあきからこぼれる長襦袢ながじゅばんが梓の手にちらちらとからむばかり、さっとする留南木とめきかおり。顔を見合せて
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さらにそれから右へ折れ、月あきらかに星まれな、北国街道の岨道そばみちを、歌声を追って走って行った。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そしてくらがりからあかるくなつてて、いままであるいてゐたみちのほとりに、つる寢泊ねとまりしてゐた沼地ぬまちのようなものゝあつたことに、のついた樣子ようすが、あきらかにかんぜられます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
武運つたなく戦場にたおれた顛末てんまつから、死後、虚空こくうの大霊に頸筋くびすじつかまれ無限の闇黒あんこく彼方かなたへ投げやられる次第をかなしげに語るのは、あきらかに弟デックその人と、だれもが合点がてんした。
狐憑 (新字新仮名) / 中島敦(著)
面白くないのは平次でした。あきらかな殺しを眼の前に見せられ乍ら、身分のへだてに妨げられて、それをどうすることも出來なかつたのは、思ひ出すごとに、平次の心がかげります。
天竺てんじく仏陀迦耶ぶっだがやなる菩提樹ぼだいじゅ下に於て、過去、現在、未来、三世さんぜの実相をあきらめられて、無上正等正覚むじょうしょうとうしょうがくらせられた大聖釈迦牟尼仏しゃかむにぶつ様が「因果応報」とのたもうたのはここの事じゃ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「市場の方から、あきさんや、みっちゃんも来てるのよ」などとも誘い出すのだった。
長崎のいにしふるごとあきらむる君ぞたふときあはれたふとき(古賀十二郎翁に)
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
あきちやん、お止めよ。」正吉が、林をさへぎつた。林は、凄い顔をした。
村のストア派 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
そして私たちが彼の無限と全能と遍在へんざいとを最もあきらかに讀み得るのは、神の造り給うた數知れぬ星が音なく軌道きだうを辷りゆく雲なき夜の空である。私はロチスター氏の爲めにお祈りしようと跪いた。
すると出し抜けに笑声がして、あき座敷に谺響こだまを起していたのだ。
冬ひと日なにかきこえてある山のまだしづかにてあきらなりける
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
それをあきらめることは不可能ふかのうでなければならぬ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
多「おい久八さんあきだるじゃアねえか」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
うしほはなあきらかに
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
もし内心に此苦痛を受けながら、たゞ苦痛の自覚丈あきらかで、何のための苦痛だか分別が付かないならば、それは頭脳のにぶい劣等な人種である。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其上そのうへ氣象上きしようじようおほきな異變いへんについてはたん豫報よほうばかりで解決かいけつされないこと、昭和二年しようわにねん九月十三日くがつじゆうさんにち西九州にしきゆうしゆうける風水害ふうすいがい慘状さんじようてもあきらかであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
思ひ出すには閑靜しづかなる所がよきものなり因て見張みはりつけるによりあき長屋ながやいたとくと考へ見よとて同心に遠見とほみ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
我欲がよく目當めあてがあきらかにえねばわらひかけたくちもとまでむすんでせる現金げんきん樣子やうすまで、度〻たび/\經驗けいけん大方おほかた會得えとくのつきて、此家このやにあらんとにはかねづかひ奇麗きれいそんをかけず
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
御身も危うければく帰れというままに、その在所をも問いあきらめずしてかえれりという。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そのとりこゑのするあたりから、だん/\けかけて、あちらにひとかたまり、こちらにひとかたまりといふふうに、やまさくらはないろあらはれて、だん/\あきらかになつてく。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
加之しかのみならず、この時に際し、外国の注目する所たるや、火を見るよりもあきらけし。しかるにその結果たる不充分にして、外国人もひそかに日本政府の微弱無気力なるを嘆ぜしとか聞く。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
ねむからばまこと寝よとしかきおこしあきらけし女童めわらはを母は
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あきちゃん……」
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかしその自信を彼に認めたところで、私は決して満足できなかったのです。私の疑いはもう一歩前へ出て、その性質をあきらめたがりました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
覺悟かくご次第しだい斷念あきらめもつくべし、いま此文これげて、あきらかのおこたいてたまはれ、次第しだいにて若樣わかさまにもおわかれにるべければと虚實きよじつをまぜて、子心こごヽろあはれとくやうたのみければ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
吉野山よしのやまは、ふるくからずいぶんながく、ぼうさんそのほか修道者しゆどうしやといつて佛教ぶつきよう修行しゆぎようをするひとこもつてゐたことは、あきらかな事實じじつでした。その經驗けいけんから、はじめのうた出來できたのであります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
聞て扨々然樣さやうなるか如何さまかれ小鬢こびんに半分眞黒まつくろに入墨をしてありしがとん不屆ふとゞきなる奴先生が御出下されしゆゑ早速さつそくらちあきしなり彼奴先年の舊惡きうあくを云れてはたまらぬ故夕方までには屹度きつと離縁状を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
けれども其安住の地は、あきらかには、かれに映じてなかつた。たゞ、かれのこゝろの調子全体で、それをみとめた丈であつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
されどもお美尾みを病氣びやうきはお目出度めでたきかたなりき、三四がつころよりれとはさだかにりて、いつしかうめおつ五月雨さみだれころにもれば、隣近處となりきんじよ人々ひと/\よりおめで御座ござりますとあきらかにはれて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
梅子はなんとかして、はなし其所そこへ持つて行かうとした。代助には、それがあきらかに見えた。だから、なほそらとぼけてかたきを取つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
つきそひのをんなかゆぜん持來もちきたりて召上めしあがりますかとへば、いや/\とかぶりをふりて意氣地いくぢもなくはゝひざよりそひしが、今日けふわたし年季ねんあきまするか、かへこと出來できるで御座ござんしやうかとてひかけるに
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
すはくたびれたと見えて、枡の仕切しきりこしを掛けて、場内じようない見廻みまはし始めた。其時三四郎はあきらかに野々宮さんの広いひたいと大きなを認める事が出来できた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其代りふでちつとも滞つてゐない。殆んど一気呵成かせい仕上しあげた趣がある。したに鉛筆の輪廓があきらかにいて見えるのでも、洒落なぐわ風がわかる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
三四郎はめしも食はずに、仰向あほむけに天井をながめてゐた。時々とき/″\うと/\ねむくなる。あきらかに熱とつかれとに囚はれた有様である。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おもて左右さいうからみせあきらかであつた。軒先のきさきとほひとは、ばう衣裝いしやうもはつきり物色ぶつしよくすること出來できた。けれどもひろさむさをらすにはあまりに弱過よわすぎた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かれあたまなか色々いろ/\なものがながれた。そのあるものはあきらかにえた。あるものは混沌こんとんとしてくもごとくにうごいた。何所どこから何所どこくともわからなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)