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留南木
と
間を
措いて、
緩く引張つてくゝめるが如くにいふ、
媼の
言が
断々に
幽に聞えて、其の声の遠くなるまで、桂木は
留南木の
薫に又
恍惚。
それ、と
二つ
三つほこりをたゝいたが、まだ
干しも
何うもしない、
美しい
夫人の
移り
香をそのまゝ、
右の
座布團をすゝめたのである。
敢てうつり
香といふ。
留南木のかをり、
香水の
香である。
袷の
衣紋の乱れたまま、
前褄を取ったがしどけなく
裾を引いて、白足袋の爪先、はらりと
溢るる
留南木の薫。
振の
明から
溢れる
緋の
長襦袢が梓の手にちらちらと
搦むばかり、
颯とする
留南木の
薫。顔を見合せて