身動みうご)” の例文
けれど、すずめは、ついにくるあさまで身動みうごきもできず、けることもかなわず、鋳物いもののようにえだまっていました。
春になる前夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
私は身動みうごきもせず、私の聖師の手の下に立ちつくしてゐた。私の拒絶は忘られ——恐怖は征服され——私の爭ひは麻痺まひしてしまつた。
雪難之碑せつなんのひ。——みねとがつたやうな、其處そこ大木たいぼくすぎこずゑを、睫毛まつげにのせてたふれました。わたしゆきうもれてく………身動みうごきも出來できません。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
はちはそれにとまつてしばらをつと氣配けはいうかゞつてゐるらしかつたが、それが身動みうごきもしないのをると、死骸しがいはなれてすぐちかくの地面ぢべたりた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
といってがりました。そしていきなりふたをげてとびそうとしますと、上からおもしがのしかかっていて、身動みうごきができません。
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
けれども三にんともあしうごかさない。そして五六にんおな年頃としごろ小供こどもがやはり身動みうごきもしないでばあさんたち周圍まはりいてるのである。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
さけが川へのぼってくるころになりますと、川はさけでいっぱいになり、さけはたがいに身動みうごきもできないくらいになることがあるのだそうです。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
ヤッローもほとんど身動みうごき一つしませんでした。その小人が、いまにも見つかりはしないかと、ハラハラして、じっとかたくなっていたのです。
こと気味きみわるかったのはわたくしのすぐそばる、一人ひとりわかおとこで、ふと荒縄あらなわで、裸身はだかみをグルグルとかれ、ちっとも身動みうごきができなくされてります。
おかげで、やつらはたっぷり一週間は身動みうごきひとつできないようになる。おまえが、『こん棒、ふくろへ』っていうまでは、けっしてやめはしないんだ。
ところがみょうなことには、なわがおおかたとけてしまっても、少女は石のように身動みうごきさえしないのです。
妖怪博士 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
扨文右衞門女房お政は家主あづけとなりて宅番たくばんまで付し事なればすこしも身動みうごきならず只々たゞ/\夫文右衞門が此度の災難さいなんなげかなしむ事大方ならず明暮あけくれなみだしづみ何なれば天道てんだうまこと
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
返事へんじはなくて吐息といき折々おり/\ふと身動みうごきもせず仰向あほのきふしたる心根こゝろねつらさ、其身そのみになつてもおりきことわすれられぬが、十ねんつれそふて子供こどもまでもうけしれにこゝろかぎりの辛苦くろうをさせて
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
道翹だうげうけたときあたましたはうひてにやりとわらつたが、返事へんじはしなかつた。これが拾得じつとくだとえる。ばうかぶつたはう身動みうごきもしない。これが寒山かんざんなのであらう。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
もうふかくはりすぎてゐて身動みうごきもならないやうになつてしまつてゐるのですもの。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
あやしげな一人間にんげんは、蛾次郎がここへはいったとき、上へ身をけていたものであろう。いまになって知れば、馬糧小屋の天井のはりにつかまって、ジッと、身動みうごきもしないでいる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
男は、口をきかないばかりか、身動みうごきひとつしないで、じっとつっ立っていた。
凝乎じいつと、ふゆなかよこたへられたわたしからだなかで、やはらかなあたゝかさにつゝまれながら、なんといふものさびしいこゑをたてゝわたしのこゝろのうたことだらう!一寸ちよつとでも身動みうごきをしたらそのこゑはすぐにえよう
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
かおかすめて、ひらりとちた桔梗ききょうはなのひとひらにさえ、おと気遣きづかこころから、身動みうごきひとつ出来できずにいた、日本橋通にほんばしとおり油町あぶらちょう紙問屋かみどんや橘屋徳兵衛たちばなやとくべえ若旦那わかだんな徳太郎とくたろうと、浮世絵師うきよえし春信はるのぶ彫工ほりこうまつろう
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
かるつた掛蒲團かけぶとんあしさきすそはうへこかしてすこ身動みうごきをした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
身動みうごきも出來ないしびれが
メランコリア (旧字旧仮名) / 三富朽葉(著)
B坊ビーぼうは、うえいて、せみを見守みまもりながら、身動みうごきもせず、じっとしていました。せみは、つづけて、ミン、ミン、ミン——ときました。
町の真理 (新字新仮名) / 小川未明(著)
先方さき足袋跣足たびはだしで、或家あるいへて、——ちつとほいが、これからところに、もりのあるなかかくれてつたきり一人ひとり身動みうごきも出來できないでるんです。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
病人は身動みうごきもせず昏睡してるかのやうに、横になつて、蒼ざめた顏は枕に埋もれ、火は爐格子ろがうしの中に消えかけてゐた。
そのまましばらくことば途切とぎれた。青木さんもおくさんも明るい、たのしげな表情へうじやうで、身動みうごきもせずにかんがへこんでゐた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
それがあんまりはやかったものですから、オオカミはちっとも気がつかず、身動みうごきひとつしませんでした。
地元じもとさとはいうまでもなく、三近郷近在きんごうきんざいからもたいへんな人出ひとでで、あのせま海岸かいがん身動みうごきのできぬ有様ありさまじゃ。往来おうらいには掛茶屋かけちゃややら、屋台店やたいみせやらが大分だいぶできてる……。
少年はまったくきみがわるくなってきました。どろぼうがしのびこんできたのかもしれない……そう思うと、こわくなって、身動みうごきすることもできず、じっとこしかけたまま、かがみの中を見つめていました。
男は、うつぶせになったまま、身動みうごきもしない。
最早もは身動みうごきするのもいやになつた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
これをくと、運命うんめいほしは、身動みうごきをしました。そして、おそろしくすごいひかりはっしました。なにか、自分じぶんにいらぬことがあったからです。
ある夜の星たちの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
きりかすれて、ひた/\とまとひつく、しもかとおもつめたさに、いたが、かれ硝子がらすおもてをひたとけたまゝ、身動みうごきもしないで見惚みとれた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
めら/\と火を吐く垂布カアテン。その焔と煙の眞中にロチスター氏は身動みうごきもせず横たはり、ぐつすりと眠つてゐるのだ。
とうとうしまいには、若者が身動みうごきひとつすることができないほどになってしまいました。
ニールスは、身動みうごきもしないで、眠ったふりをしていました。すると、アラシは、ニールスのうでをつかんで、くぼ地のまんなかにある、古風こふうな土のかめのところへ、すなの上をひきずっていきました。
いさむくんは、こういいました。賢二けんじくんは、だまって、ただ、ねずみのわたるのを身動みうごきもせずにじっと見守みまもっていました。
ねずみの冒険 (新字新仮名) / 小川未明(著)
入道にふだうの、のそ/\と身動みうごきするのが、暗夜やみなかに、くもすそひく舞下まひさがつて、みづにびつしより浸染にじんだやうに、ぼうと水気すゐきつので、朦朧もうろうとしてえた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
けれども、おかみさんは、まるで木のようにしゃちほこばって、身動みうごきひとつしません。
あねは、なにをおもい、なにをかんがえているのか、身動みうごきすらせずに、だまってしろはなしたにたたずんでいました。
灰色の姉と桃色の妹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
すくんだていだつた、長頭ながあたま先達盲人せんだつめくらは、とき、のろりと身動みうごきして、よこがけはうかほけた。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ところが、ハツカネズミはまんなかまではいらないうちに、身動みうごきができなくなってしまいました。そして、かわをなくすだけではすまないで、いのちまでもなくしてしまったのです。
そして、しばらくは、じっとしてとまりにとまったまま身動みうごきもせずに、なんとなく陰気いんきにしていました。
自由 (新字新仮名) / 小川未明(著)
貴方あなた……そんなにせつなくつたつて、一寸ちよつと寢返ねがへどころですか、醫師せんせい命令いひつけで、身動みうごきさへりません。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
けれども、その白いものはうんともすんともいわず、身動みうごきひとつしません。
それからのこと、くらがりでおよいでいたあひるは、あしについたなわおもみで、身動みうごきができなくなったのか、きしがって、やぶかげにうずくまってしまいました。
縛られたあひる (新字新仮名) / 小川未明(著)
ものもはなければ、身動みうごきもしないで、うへから、わたしかほ見詰みつめてるぢやありませんか。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それから、火をかきたてては、プウプウふいて、からだがよくあたたまるように、みんなを火のまわりにすわらせてやりました。ところが、みんなはすわったきり、身動みうごきひとつしません。
せまい、身動みうごきもできないようなくらはこなかしこめられて、わたしはしかたなくじっとしていました。おじいさんは、どこをとおっているのだかわかりませんでした。
子供の時分の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
どうをゆら/\と身動みうごきしたが、はしたなき風情ふぜいえず、ひとなさけ汲入くみいれた、やさしい風采とりなり
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
せめて今夜こんやだけは、かってなまねをさしておいて、明日あしたは、そのかわり、身動みうごきのならないように束縛そくばくをしてやろうとおもいながら、カフェーのまえはなれたところです。
灰色の姉と桃色の妹 (新字新仮名) / 小川未明(著)