よひ)” の例文
あけしに驚きさす旅宿屋やどやの主人だけよひことわりもなき客のきふに出立せしはいかにも不審ふしんなりとて彼の座敷をあらためしにかはる事もなければとなり座敷を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「もう何時なんじ」とひながら、枕元まくらもと宗助そうすけ見上みあげた。よひとはちがつてほゝから退いて、洋燈らんぷらされたところが、ことに蒼白あをじろうつつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
一昨日をとつひばんよひくちに、まつのうらおもてに、ちら/\ともしびえたのを、海濱かいひん別莊べつさう花火はなびくのだといひ、いや狐火きつねびだともいつた。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
もつと一昨日をとゝひは遠方から入る金があつて、よひに一寸開けましたが——え、え、それはもう前からわかつてゐたことで御座いますとも
ひつそりしたよひの町の静かさや、うるほひをもつた星の瞬きや、空に透けてみえる桜の枝などを見ても、淡い春の悦ばしさが感ぜられるのであつた。
復讐 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
よひくちにははしうへ与太よた喧嘩けんくわがあるし、それから私服しふくがうるさく徘徊うろついてゝね、とう/\松屋まつやよこで三にんげられたつてふはなしなんだよ。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
格之助も寺でよひあかつきとにあたゝかかゆ振舞ふるまはれてからは、霊薬れいやくを服したやうに元気を恢復して、もう遅れるやうな事はない。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
あけぬれば歌よむ友のもとに消息せうそこして、このほこりいはゞやとしつるを、事にまぎれてさて暮しつ。に入れば又々鳴きわたるよ。こたびはよひよりうちしきりぬ。
すゞろごと (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
吉田屋を出たのはよひ過ぎる頃であつたが、途々それを考へると、泣きたいと思ふ程に悲しかつた。何故、言はなかつたらう。丑松は歩き乍ら、自分で自分に尋ねて見る。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
これらは大方おほかたしか今年ことし六ツになるをんなのわたしたちの玲子れいこ——千ぐさは、まだやつとだい一のお誕生たんじやうがきたばかりで、なんにわかりません——に、よひくち寐床ねどこのなかなどで
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
そら夕日ゆふひひかり西にしそこふかとざしてしまつて、うすよひひくおほうていたつたときをんな井戸端ゐどばた愉快ゆくわいうたひながら一しゆ調子てうしつたうごかしやうをしてこめぐ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
嘉吉がよひの口に何処かへ出て行つてしまつて、帰りさうもないので家にゐるのが寂しかつた。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
「常はかつて念はぬものをこの月の過ぎ隠れまく惜しきよひかも」(一〇六九)、「この月の此処にきたれば今とかも妹が出で立ち待ちつつあらむ」(一〇七八)があり、巻三に
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
蕪村のの門人に田原たはら慶作といふ男がある。ある日日のがたに師匠を訪ねると、蕪村のうちでは戸を締め切つてゐる。よひぱりの師匠だのに、今日に限つて早寝だなと慶作は思つた。
夕霧の晴るるけしきもまだ見ぬにいぶせさ添ふるよひの雨かな
源氏物語:06 末摘花 (新字新仮名) / 紫式部(著)
同じきよひに生れいで、友は長槍の術により
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
「蚊一つにられぬよひや春の暮」
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
よひ短かきうたげすぎ去りしか
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
みなさん、今夜は、春のよひ
何ごとぞ、よひのほどより
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
よひ、また籠をいだいて
秋の日 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
春の夜やよひあけぼのの其中に
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
よひよひは、忘我ばうがの影を
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
枕重ねてよひ々に
小曲二十篇 (新字旧仮名) / 漢那浪笛(著)
博士はかせ旅行たびをしたあとに、交際つきあひぎらひで、籠勝こもりがちな、夫人ふじん留守るすしたいへは、まだよひも、實際じつさいつたなか所在ありかるゝ山家やまがごとき、窓明まどあかり
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
旦那がよひから清太郎さんに意見をしてをりましたが、清太郎さんが面倒臭がつて二階へ引つ込むとそれを追つかけて二階へ行つて、何か意見を
よひの口ではあるが、場所が場所丈にしんとしてゐる。庭のさきで虫のがする。独りですはつてゐると、さみしい秋のはじめである。其時遠い所でだれ
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
空は鏡のやうにあかるいのでそれをさへぎつゝみ木立こだちはます/\黒く、星はよひ明星みやうじやうたつた一つ見えるばかりでこと/″\く余りにあかるい空の光にき消され
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ころ享保きやうほ丙申ひのえさるしも月十六日の事なりし此日はよひより大雪おほゆきふりて殊の外にさぶき日なりし修驗者しゆげんじや感應院には或人よりさけ二升をもらひしに感應院はもとより酒を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
美吉屋みよしやで二月二十四日の晩に、いつものやうに主人が勝手に寝て、家族や奉公人を二階と台所とに寝させてゐると、よひの五つ過に表の門をたゝくものがある。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
とりわけてこれとふ……何處どこもみんなおんなじですがね。……だが、あのほしくにへあそびにつて、よひのうつくしい明星樣めうじやうさまにもてなされたのだけは、おらが一しやうだい光榮くわうえい
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
よひ勤行おつとめも終る頃で、子坊主がかん/\鳴らすかねの音を聞き乍ら、丑松は蓮華寺の山門を入つた。上の渡しから是処迄こゝまで来るうちに、もう悉皆すつかり雪だらけ。羽織の裾も、袖も真白。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
武蔵野むさしぬ小岫をぐききざしわかにしよひよりろにはなふよ 〔巻十四・三三七五〕 東歌
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
おくさまのこのみ六づかしけれど、れも御縁ごゑんくてぎゆく、落葉おちばしもあさな/\ふかくて、かぜいとゞさむく、時雨しぐれよひ女子をなごども炬燵こたつあつめて、浮世物うきよものがたりに小説しようせつのうわさ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それからいたはじとこからそろつとてえしてつとよひくちにやさうでもねえのがひやつとさきみづさあつたときにや悚然ぞつとするやうでがしたよ、それからはあふね枕元まくらもとつないでたんだが
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
き人を忍ぶるよひ村雨むらさめれてや来つる山ほととぎす
源氏物語:42 まぼろし (新字新仮名) / 紫式部(著)
よひの明星——天上の中の最も美なるもの
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
ああ、かくれしよひやみの
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
今日けふもまたよひやみならで
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
ほんに今夜は春のよひ
たとへばつき本尊ほんぞんかすんでしまつて、田毎たごと宿やどかげばかり、たてあめなかへふつとうつる、よひ土器色かはらけいろつきいくつにもつてたらしい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まだよひのうちの出來事で、内外の戸締りもなく、庭は打ち續くお天氣に踏み固められて、足跡一つ殘つてはをりません。
道子みちこたゞなんといふわけもなく吾妻橋あづまばしのたもとがさゝうなのするまゝ、こゝを出場所でばしよにしたのであるが、最初さいしよばんから景気けいきく、よひうち二人ふたりきやくがつき
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
そのうちぐわつすゑになつて、毎晩まいばんあまがはへるあるよひことそらからつたやう安之助やすのすけつてた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
なつはじめのよひのことでした。築地つきぢせいルカ病院びやうゐんにK先生せんせいのおじやうさんをみまひました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
偖小間物屋彦兵衞は翌日よくじつ手土産てみやげもち馬喰町馬場のわきなる彼の女隱居いんきよもとゆき昨日きのふ雨舍あまやどりの禮をひてすぐ商賣あきなひに出しが是より心安くなりよひの内などはなしゆき近處きんじよへ出入場の世話を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
秋雨あきさめしと/\るかとおもへばさつとおとしてはこびくるやうなるさびしきとほりすがりのきやくをばたぬみせなれば、ふでやのつまよひのほどよりおもてをたてゝ、なかあつまりしはれい美登利みどり正太郎しようたらう
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
鎮火したのは翌二十日のよひ五つ半である。町数まちかずで言へば天満組四十二町、北組五十九町、南組十一町、家数いへかず竈数かまどかずで言へば、三千三百八十九軒、一万二千五百七十八戸がわざはひかゝつたのである。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
大空の月だに宿るわが宿に待つよひ過ぎて見えぬ君かな
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
よひ勤行おつとめが始つたのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)