因果いんぐわ)” の例文
よろこばるゝといへどもおや因果いんぐわむく片輪かたわむすめ見世物みせものの如くよろこばるゝのいひにあらねば、決して/\心配しんぱいすべきにあらす。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
因果いんぐわですね、彦太郎には義理の父親、菊屋市十郎の二人めかけのうちの、若くて綺麗なお袖そつくりといふから嫌ぢやありませんか」
なみだ各自てんでわけかうぞと因果いんぐわふくめてこれもぬぐふに、阿關おせきはわつといてれでは離縁りゑんをといふたもわがまゝで御座ござりました
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かみ引拔ひきぬかれますやうに……骨身ほねみこたへるやうなんです……むしにはまないとぞんじながら……眞個ほんと因果いんぐわなんですわねえ。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
うよなあ。り、あゝことがあると、ながまであとひゞくものだからな」とこたへて、因果いんぐわおそろしいとふうをする。叔母をばかさねて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
殺す時機じき因果いんぐわづくだが斷念あきらめて成佛じやうぶつしやれお安殿と又切付れば手を合せどうでも私を殺すのか二人の娘にあふまではしにともないぞや/\と刄にすがるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「さうだともよ、こらおつうでもくつちやそだたなかつたかもんねえぞ、それこそ因果いんぐわなくつちやなんねえや、なあおつう」女房等にようばうらはいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
武弘たけひろ昨日きのふむすめと一しよに、若狹わかさつたのでございますが、こんなことになりますとは、なん因果いんぐわでございませう。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
此様こんなものをまけられたものこそ因果いんぐわで、これのみまして御前ごぜんさがると、サアうも大変たいへん当人たうにんひどい苦しみやう、其翌日そのよくじつヘロ/\になつて出てました。登
華族のお医者 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
かゝる片邊かたほとりなるひなには何珍しき事とてはなけれども、其の哀れにて思ひ出だせし、世にも哀れなる一つの話あり。問ひ給ひしが因果いんぐわ事長ことながくとも聞き給へ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
因果いんぐわと私はこれと離るゝ事が出來ず、既に中毒性の病氣見たいになつてゐるので殆んどもうその質のよしあしなどを言ふ資格はなくなつてゐると言つていゝ
花吉は瞑目めいもくしてかしらを垂れぬ「其の御講釈なら、養母おつかさん、最早もう承はるに及びません、何の因果いんぐわでお前の手などに拾はれたものかと、前世の罪業が思ひやられますのでネ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
汝、六五家を出でてほとけいんし、六六未来みらい解脱げだつの利慾を願ふ心より、六七人道にんだうをもて因果いんぐわに引き入れ、六八堯舜げうしゆんのをしへを釈門しやくもんこんじてわれに説くやと、御声あららかにらせ給ふ。
賓人まれびとよ、わらごとではありませぬ、こくといふのは、一年中いちねんちゆうでも一番いちばん不吉ふきつときなのです、ほか澤山たくさんあるのに、このこの刻限こくげん御出帆ごしゆつぱんになるといふのはんの因果いんぐわでせう
その大久保おほくぼふところによると、彼女かのぢよはそのあに肉的関係にくてきくわんけいがあるといふのであつた。そしてその因果いんぐわむくいをかれのところへ持込もちこんでたといふのであつたが、竹村たけむらにはしんじられなかつた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
ヂュリ (獨語的に)類無たぐひないわがこひが、たぐひないわが憎怨にくしみからうまれるとは! ともらではや見知みしり、うとったときはもう晩蒔おそまき! あさましい因果いんぐわこひにくかたきをば可愛かはゆいとおもはにゃならぬ。
人智じんちつくしてのちはからざる大難だいなんにあふは因果いんぐわのしからしむる処ならんか。人にははかりしりがたし。人家の雪頽なだれにも家をつぶせし事人の死たるなどあまた見聞みきゝしたれども、さのみはとてしるさず。
なん因果いんぐわだらうね、おたがいに」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
あきらめさんせの、因果いんぐわなもんだよ
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そして、お銀さんと私とに因果いんぐわを含めて、圓三郎はまさか打首にもなるまいから此處に殘つてゐるが宜い。二人は仇を討ち過ぎた。
させるのは親の本意と思はねど身に替難かへがた年貢ねんぐ金子かねゆゑ子にすくはるゝのも因果いんぐわなり娘のつとめは如何ならんさぞ故郷こきやうの事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
やが父親てゝおやむかひにござつた、因果いんぐわあきらめて、べつ不足ふそくはいはなんだが、何分なにぶん小児こどもむすめはなれようといはぬので、医者いしやさひはひ言訳いひわけかた/″\親兄おやあにこゝろもなだめるため
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其上そのうへすこしのひまぬすんですわりでもすると、うしろから意地いぢわる邪魔じやまをされる、毒吐どくづかれる、あたまてにはなん因果いんぐわ坊主ばうずになつたかとくやことおほかつたとつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
因果いんぐわふくめしなさけことばさても六三ろくさ露顯ろけんあかつきは、くびさしべて合掌がつしやう覺悟かくごなりしを、ものやはらかにかも御主君ごしゆくんが、げるぞ六三ろくさやしき立退たちのいてれ、れもあくまで可愛かあゆ其方そち
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
当時いまばちあたつてういふ身分みぶん零落おちぶれ、俄盲目にはかめくらになりました、可愛想かあいさうなのは此子供このこぞうでございます、んにもぞんじませぬで、おや因果いんぐわが子に𢌞めぐりまして、此雪このゆきなか跣足はだしで歩きまして
「わしもかゝあこと因果いんぐわせてつみつくつたのりいんでがせう」かれこゑしづんだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
下品な色などをつけて見世物にしたばちで、形の見えぬ鬼神に殺された、——死んだ二代目勘兵衞の鑿で刺されたのは、因果いんぐわといふものだらう——と
あふぎ地にふしかなしみ歎き我が身程世に因果いんぐわなる者はなし主人の養子が引負ひきおひを身に引受てかくはぢも若旦那樣を眞人間まにんげんにして上たさにいとはゞこそなほ御異見を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
女房にようばうでは、まるでとしちがふ。むすめか、それとも因果いんぐわなにとかめかけであらうか——なににしろ、わたしは、みゝかくしであつたのを感謝かんしやする。……島田髷しまだでは遣切やりきれない。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
御米およね宗助そうすけのするすべてをながらたりいたりしてゐた。さうして布團ふとんうへ仰向あふむけになつたまゝこのふたつのさい位牌ゐはいを、えない因果いんぐわいとながいてたがひむすけた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「何を言やがる。人一人洒落や道樂で殺せるわけはねえ。手前のやうな馬鹿に見込まれたのが、お京さんの因果いんぐわだ」
をりがあつたら、誰方どなたぞ、かうかうおもつて、因果いんぐわ因縁いんねんで三ねんつたゞ。旦那だんなはながおきだで、な、どんな草葉くさつぱだかこゝにあつたら、一寸ちよつとつまんでをしへてくらせえ。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
けれども、かへりみて自分を見ると、自分は人間中にんげんちうで、尤も相手を歯痒はがゆがらせる様にこしらえられてゐた。是も長年ながねん生存競争の因果いんぐわさらされたばちかと思ふと余り難有い心持はしなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
平次と淺吉は、土地の下つ引に死骸と燒跡の監視を頼み、掛り合ひの十幾人には因果いんぐわを含めて、其處からあまり遠くない東海坊の堂まで引揚げさせました。
三世さんぜ一娑婆ひとしやば因果いんぐわ約束やくそくつながつたと、いづれも發起仕ほつきつかまつり、懺悔ざんげをいたし、五欲ごよくはなれて、たゞいまでは、それなる盲人めくらともろともに、三人さんにん一所いつしよに、つゑ引連ひきつれて、ひるおもてはづかしい
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
たゞせば秩父ちゝぶ山中で育つた娘で、親は獵師だつたさうですよ——親の因果いんぐわが子にむくいといふぢやありませんか
手場でばめにして、小家こや草鞋わらぢでもつくればいゝが、因果いんぐわうは断念あきらめられず、れると、そゝ髪立がみたつまで、たましひ引窓ひきまどからて、じやうぬましてふわ/\としろ蝙蝠かはほりのやうに徉徜さまよく。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何んの因果いんぐわか、私との折合ひがうまく參りませんので、隨分苦勞をいたしました。お菊も氣のよい人で、決して私を憎んでゐたわけでなく、私も精一杯のことを
四つの早生れで、幸三郎はかしこい子でした。咄嗟とつさの間に自分が川に落ちた、因果いんぐわ關係を讀んで居たのです。
大徳屋の一人娘下谷小町と言はれたお菊さんは、父親の手一つで育つたが、何んの因果いんぐわか二つのやまひがあつた。一つは癲癇てんかんで、一つは——これは言はない方が宜い。
お駒とお鐵に因果いんぐわを含め、御家人の株を買ふといふことにして、紀の國屋の娘を、千兩の持參付きで嫁に迎へ、當座は夫婦らしくして居たが、近頃はお駒とヨリを戻して
「手代の千代松でございます。——お關と一緒にして、暖簾のれんをわけてやる筈でしたが、かうなると、因果いんぐわふくめるより外に仕樣もございません。分けてやる暖簾がこんなでは」
惜ませて下さい。明日になれば、因果いんぐわを含めて、きつと名乘つて出るやうに致させます
何の因果いんぐわか、俺には物を盜まずに居られねえ病氣があるんだ。身體も輕く、智慧も人並にあるのが身の仇で、人間業で盜めさうもないものを見ると何うしても盜まずに居られねえ。
「でも、あの通りの好い男だし、女は、あんな人を憎めないんですもの、因果いんぐわね」
「曲者はどうしたものでせう、——何處へもぐつたかわかりませんが、この家の八方へ張らせて置けば、どうせ出て來るにきまつてゐますがね。生き物は、因果いんぐわと腹も減れば、のどかわく」
「まだ祝言前で、一緒に置くわけにも行かなかつたんでせう。その上何んの因果いんぐわか、娘のお喜代は浪太郎が大嫌ひで、顏を見ただけでも、身顫ひがして胸が惡くなるといふから大變でせう」
親分、私は生きて居るうちは、何か彫らずには居られない因果いんぐわな人間なのです
充分じうぶんかしこさうでも、強さうでもあるのですが、何の因果いんぐわか生れ付きの臆病者で、——『腰拔けのくせに勇吉とはこれ如何に?』——などと、のべつに朋輩ほうばい衆から揶揄からかはれて居る厄介者だつたのです。
「何んといふ因果いんぐわなことでございませう。五體滿足な男に生れながら、ひ弱く育つたばかりに、親の敵を討つこともならず、敵の姿を見つけると、泥棒猫のやうに逃げ廻らなきやならないとは——」
銭形平次捕物控:239 群盗 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)